12月21日(土)

第二試合
明治大学 22-14 関西学院大学

 どんよりと雲が広がり、気温も上がらない天気だったが、ワールドカップ以降のラグビー人気もありスタンドは13,070人の観客で埋まった。5年ぶりの大学選手権出場となり、初戦で朝日大学に完勝してベスト8に進出してきた関西学院大学が、圧倒的な攻撃力で関東大学対抗戦を優勝した明治大学相手にどれだけ健闘できるのかが見どころだ。明治大学はバックスをリードする山沢京平、山村知也、森勇登がそれぞれケガで万全の調子ではないため欠場。SOには1年生齊藤誉哉(桐生一高)を起用してきた。

 前半7分、明治大はLO⑤箸本龍雅の突進で敵陣でのラックをつくると、SH飯沼蓮-SO齊藤から右に。PR①安昌豪とCTB⑬児玉樹のダミーランに関西学院大ディフェンスがつられたスキに齊藤からWTB⑭矢野湧大にいいパスが繋がり、矢野がタッチ際を好走、あっさりとトライを取った(5-0)。この試合はやはり明大ペースか、と思わせる好スタートを切った。しかし、その直後の10分、敵陣22m内スクラムのチャンスを得た関西学院大はSH房本泰治-SO本山泰地から、内にタテにいいスピードで切り込んできたCTB⑫山本悠大にボールが渡り、山本がゴールポスト下にトライ、FB奥谷友規のゴールキックも決まり関西学院大がすぐに5-7と逆転した。

 試合前にはフォワードでは劣勢かと思われた関西学院大は、ラインアウトではボールを確保できない場面もあったが、スクラムでは勝ったり負けたりとほぼ互角の戦いを見せた。明治大がボールを継続してチャンスになるかという場面でもナイスタックルで明治大の反則を誘い、追加点を許さない。関西学院大も前半32分にはほぼ正面で絶好のPGチャンスを得たものの、関西大学リーグでは成功率の高かったFB奥谷がゴールキックを失敗、リードを広げられない。関西学院大は、パスのインターセプトをできずにインテンショナルノックオンを取られるなど、残念なディシプリンの乱れも続き得点を重ねることはできない。明治大ビハインドの時間が続くがフィフティーンは全く慌てず、35分にはゴール前での低い姿勢の明治大選手へのタックルで関西学院大選手がハイタックルを取られると、明大はゴールライン前でのラインアウトのチャンスを得た。ラインアウトからのモールを押し込み、HO武井日向がしっかりグラウンディングしてトライ、前半終盤に明治大がようやく12-7とスコアを逆転した。

 後半に入っても、スクラムになるとスタジアムからの「押せ押せKG」の大きな声の応援に応え関西学院大フォワードが踏ん張り、スクラムは押されない。また、明治大も何度もアタックを続けるが関西学院大はナイスタックルで止め続けた。何度か関西学院大のトライチャンスにつながるかと思われるシーンもあったがトライにはつなげられない。すると、後半27分、明治大WTB⑪山﨑洋之のカウンターアタックからフォワード、バックスほぼ全員でフェイズを重ね敵陣に入りLO箸本龍雅が22m内に入って中央突破するとラックを作りいいボールを出す。そのラックからSH飯沼-SO齊藤-CTB射場大輔と右に展開、WTB⑪山﨑洋之に飛ばしパス。山﨑がインゴール右スミに飛び込んだ。むずかしいゴールキックをSO齊藤が決めスコアを19-7として、明治大にとってようやく勝利が見えてきた。明治大は更に37分にもSO齊藤のPGで3点加点し22-7とリードを拡げてきた。しかし、関西学院大も最後まで意地を見せ、ホーンが鳴った後のロスタイムもアタックを続ける。関西学院大のアタックに明治大が反則を繰り返し、最後は関西学院大がゴールポスト前のPKでスクラムを選択すると、スクラムからのラックから出たボールをSH㉑山内俊央がゴールポストの付け根にグラウンディング、最後にチームの意地を見せるトライをとってノーサイドとした(22-14)。

 王者明治大に対して堂々と戦いぬいた関西学院大の善戦が印象に残った試合だった。明治大にとっては圧倒しきれなかったスクラムや肝心のところで反則が連続するなど反省点が残る試合となった。明治大が大学選手権2連覇を獲得するためには、東海大との準決勝までにこれらの課題をしっかり修正することが必要になるだろう。
(正野雄一郎)


関西学院大学
牟田 至 監督

「本日は、どうもありがとうございました。何とかベスト4に進みたいという思いで試合に臨みました。前後半合わせて60分までは予定通りのシナリオだったのですが、最後に取られてしまって差が開き追いつけませんでした。残り20分でラッシュをかけてトライを取るというシナリオだったのですが、最後に崩れてトライ数で3対2と負けてしまいました。ゲームの内容は、凄く締まった試合であったし、僕らの強みであるセットプレーと組織で守るディフェンスが最後までできたと思います。トライ数1本差で、地力の差が最後に出で負けてしまいましたが、満足しております」
ー明治大学との力関係を鑑みて、どういう作戦を立てたか。
「明治大学が、力、フィジカル、スキルのどれも上回っているのは明確でしたので、何か僕らの強みを生かすのは、セットプレーだと思っていました。セットプレーも対戦したことのない相手と比較ができていませんしたが、ファーストスクラムでいけるという感触はありました。消耗戦をすると後半60分から僕らのフィットネスが無くなってしまうので、なるべく時間を潰していこうと、日本代表、ラグビーのトレンドと逆に時間を削っていこうと、タッチなどで体を当てる時間を削り、インプレーの時間を25分位にしたいと話をしていました。そうして60分以降に一挙に選手を交代してボールを動かす作戦でしたが、できませんでした。スクラムには相性があるので、ビデオだけでは判断できないところもありますが、同志社大学が対戦したビデオを入手して、どう組むかは考えていましたので、良いスクラムは組めたと思います」

原口浩明 主将

「本日は、ありがとうございました。今回の明治戦に向けて、関学の歴史を変えようと自分たちの持つ力を出し切ったと思います。出し切ったなかで、結果に繋がらなかったのは、どこかに自分たちの力不足があったと思いますし、まだまだできたところもあると思います。この試合に賭けていた思いが強かったので負けてしまい悔しい思いもありますが、ディフェンスもセットプレーも自分たちのやってきた事が出せて良かったと思います。負けてしまいましたが、関学の未来に繋がる試合ができたかなと思います」
ー明治大学と実際にスクラムを組んでどのように思ったか。
「明治大学のスクラムは、体が大きく8人が纏まって組んでくるとビデオで分析していました。僕らは、体が小さい分、低さと纏まりでしっかりと相手を上回って勝って良いスクラムを組むようにしっかり練習し準備してきました。今回の試合でのスクラムは、良い部分も悪い部分もあり、まだまだ反省しなければなりませんが、まだまだ強くなれるなというのが実感でした。自分たちがしたい低さと纏まりができた時に前へ出て良いスクラムが組めたので、自分たちがしてきたことは間違っていなかったと思います」
ー普段、学生主体で練習する上で工夫したところは何か。
「フルタイムでコーチがいないので、学生が考え考え、ミーティングも重ねてどういうやっていけば良いのかを練習以外でも話し合いました。各学年のリーダーも含めて、どうすれば良いのか、どうすれば強くなるのかを考えながら、平日は練習をしました。監督、コーチが来られる土日に平日にしている事を見てもらい成長したと思います」

明治大学
田中 澄憲 監督

「今日はありがとうございました。3週間ぶりのゲームでしたが、関西学院大学の素晴らしいファイト、本当に引き締まったゲームになったと思います。我々は、次に進めますので、関西学院大学から学んだ事を次のゲームにしっかり生かして、東海大学に良いチャレンジをしたいと思っています」
ー本日の試合内容は予想とどう違ったか。
「メンバーはローテーションではなく、小さな怪我やコンディションの状態が悪いとかがあったので、コンディションが良い選手を出しました。ゲームに関しては、理想とは全然違います。メンバーが変わり、1年生も出場していましたので、難しい試合になるなとは思っていました。1年生の齊藤君は、10番、1年生で大学選手権にいきなり出場では、凄いプレッシャーだったと思いますが、彼なりに卒なくこなしてくれましたし、そういう意味では良い経験ができたのでないかと思っています」
ー東海大学戦へ向けての課題、修正すべきところは何か。リーダーには何を求めるか。
「セットプレーは、もちろん大事だと思います。しっかり対応したいと思います。今日のように自分たちのやるべき事をしっかりやらないとこういうゲームになるので、タッチキックをしっかり出すとか、シンプルな部分をしっかりできるようにしたいと思います。今シーズンは、リーダーはしっかりやってくれていますので、求める事はないと思います。長くても1月11日まで、短いと1月2日で終わりますので、そういうものをしっかりと捉えながら毎日をどうやって過ごすかが、4年生とかリーダーの仕事になってくると思います」
ーここまで試合間隔が空いた期間に何か特別な事をしたか。
「特別な事はしていません。自分たちがやっている事のうち、小さい事の精度を上げていくかにこだわって調整してきたので、3週間空いた難しさというのは意識していませんでした。自分たちの力を出させなかった関西学院大学が素晴らしかったと思います。」
ーハーフタイムでどういう話をしたか。
「やるべき事をしっかりやる事、バックスは何となくしているプレーが多かったので、どういうプレーをするのか意思表示をしっかりやるという話をして後半に向かいました」

武井 日向 主将

「本日は、ありがとうございました。本当に勝ち切れた事だけは良かったと思っています。次に繋がるチャンスができたので、1月2日まで時間があるので、本日の課題を修正して、もっと成長していきたいと思います」
ー前半にスクラムで反則を取られて思い通りにいかなかったか。
「関西学院大学がシンプルに、強いと凄く感じました。関西の組み方や関東では経験できない組み方があったので、それに対しての対応が試合を通して完璧にできなかったのが課題だと思います。スクラムが劣勢での試合を今まで経験していなかったので、それを経験できたのは大きかったです」
ーもし力が発揮できなかったとしたら、要因は何か。
「厳しい変化は、大学選手権であり予想はしていました。僕自身も、チームを今日のような試合で纏める力やチームとして一つの方向を向いてプレーするという修正能力が甘かったと感じています。対抗戦では、こういう厳しい戦いがなかったので、それを経験し、今日のような試合でも修正できるチームになれば良いと思います」
ー東海大学戦へ向けての課題、修正すべきところは何か。
「東海大学は、スクラムに自信を持っているチームだと思います。そこに対して、自分たちのスクラムを組むという事もありますが、スクラムの優劣もあると思うので、そこをしっかり考えながら、スマートに戦っていきたいと思います」
ーハーフタイムでどういう話をしたか。
「フォワード、バックスの課題を話し合って、どう修正するかを話して、ひとり一人の役割を全うしようと話しました」