フランス大学選抜、第1戦を完勝 フランス大学選抜の来日第1戦の相手は、昨年の大学チャンピオン早稲田大学。 早大はU20の遠征メンバーを加え今シーズン初のベストに近いメンバーがそろい、この強豪チームとの準備を短期間で整えた。日本の大学ラグビーの世界での水準を試すと同時に、速いテンポの早大ラグビーが世界を魅了するシャンパンラグビーにどこまで戦えるか、日本のラグビーファンには気になる一戦となった。 しかし、ゲームはフランスチームの一方的な力強さの前に屈することとなる。全員がプロのクラブチームに所属するフランス大学選抜は、あらゆる局面でフィジカルの差を際立たせ早大を寄せ付けない。前半はタックルからのターンオーバー、モールでの破壊力で3トライを奪い、前半だけで20対0と引き離す。 後半にはスクラムの強烈なプッシュで再三早大ボールを奪い、ゴール直前に迫ってトライを狙う早大の攻撃の芽を摘んで勝負を決めた。(後半7対0) フランスは来日段階から日本ラグビーをよく研究し、速い展開への対応としてBKのディフェンスラインのプレスとタックル後のボールへのからみ、そしてラックでのドライブと防御での対応を徹底してきた。試合後のコーチのコメントからも、狙い通りのゲームが展開できたことへの満足感がうかがえた。 一方、早大のこの日の出来は、春のシーズン途中の、ひとつのピークの段階に過ぎないということか。フィジカルで優る相手へのスクラムの高さ、ドリフトしてくるディフェンスラインへの対応など、国際試合の準備としては今一歩。後半立ち上がりに見せたラックでの早い球出しからSH櫻井、CTB宮澤らがテンポよく動き出すと早大のリズムが生まれてくるが、まだフィニッシュに結びつくまでは熟成されていなかった。 この日の東京は蒸し暑く、湿度の高さは選手のハンドリングにも、ファイティングスピリットにも影響を与えた。できればお互いのベストコンディションのなかでフランスと日本の最高の展開ラグビーを見てみたいものだ。(照沼康彦) 左より中竹竜二監督、豊田将万主将 早稲田大学 0-27 フランス大学選抜 (7月6日(日)17:00 at東京・国立競技場) ◎早稲田大学 ○中竹監督 「この時期に格上の相手と試合ができるチャンスにワクワクしている。こんなチャンスはめったにない。点は取れなかったが良くやったと評価する。もっと行ける部分があった。ハーフタイム後、ボールを動かしたが、点が取れなかった。ただし、この時期としては収穫があった。セットプレー、個々の接点でボールを取る腕力を体験できたのは、今後、社会人とやるために良い勉強になった」 ──もっとやれる部分があったということだが、格上とやるにあたっての心構えは? 「体を当てるディフェンス、重さによるドライブは仕方がない。今日の試合にあたってはいかにオフロードをとめるかの練習をしてきた。1週間でここまでできたのは対応力があったからだと思う」 ──腕力は仕方がないとして、勝てる部分と言うのは? 「テンポ良く動かせれば行けたのに、相手はうまくゲームをコントロールしてイライラさせられて自分(早稲田)のゲームができなかった。ハーフタイムでそれを確認した」 ──今後の新しいチャレンジについて聞かせて欲しい。 「これからはすべてがチャレンジなので、項目が多くてとても言えない。今の練習はディフェンスが9割でアタックはほとんどしていない。そういった意味で夏を越えるまでは新しいことはあまりできないと思う」 ○豊田主将 「ゼロで終わってくやしい。ブレイクダウンで圧倒されてしまった。タックルで上を向いて倒されたのと、タックル後のボールに対する執着心が違っていた。個々の能力では負けていたが、もっとできると思った」 ──試合前での心構えは? 「局面をスピードで変えていこうと思ったが、最初の10分で行けると思い、いつものとおりになってしまった。相手につけいる隙をあたえてしまった」 ──日本のトップチームと比べてどうか? 「TLと比べても個々はフランスのほうが上と感じた。コミュニケーション、組織力ではTLが上と感じた。試合中レフリーとのコミュニケーションがすべて英語だったのでわけがわからなかった。質問をしてもレフリーの答えがすべて英語でかえってくるのでわからなかった。イエローカードもわけがわからないうちに出されてしまった。英語の勉強が必要と感じた」 左よりベルドラン・テリエ(コーチ)、ジャン・ルイ・デサック(コーチ)、フレデリック・メドゥヴェス(キャプテン) ◎フランス大学選抜 ○ジャン・ルイ・デサック(コーチ) 「日本のラグビーを初めて見ました。スピーディーでグラウンドをいっぱい使うことは知っていました。このように早いラグビーをするチームに対してフランスは良いディフェンスをしていた。日本にきてからはディフェンスを重視した練習をしていた。試合中に、何度もターンオーバーができたのは良かった。ただし、ボールがすべる厳しい環境だった。湿度が高いので、ボールが手につかなかった」 ──早稲田の試合のDVDを事前に見たか、または、Japanの試合のDVDは見たのか? 「早稲田の試合は見ていない。Japanはテストマッチやパシフィックネーションなどフランスで中継があるので見ている。日本については、コンタクトの強さとスピードがあることを認識している」 ○ベルトラン・デリエ(コーチ) 「フランスは良くやった。ありがとうと言いたい。セットプレーのディフェンスはしっかりしていた。後半のスクラムで相手ボールを獲得できたのも良かった。ただし、ラインアウトはうまく行かず、特に早稲田のNo.8にはてこずらされた」 ○フレデリック・メドゥヴェス(キャプテン) 「来日して、日本のみなさんにいろいろお世話になりお礼を言いたい。すばらしい歓迎です。早稲田はボールを動かしてくるチームと覚悟していた。ボールをよくBKに回していた。特に、ラインアウトはすばらしかった。フランスが上回ったのはフィジカル面である。早稲田は2、3ヶ月前に対戦したアイルランド学生代表と同じレベルだと思う」 ──トライチャンスでパスミスが多かったが、コンビネーションの問題か、湿度ですべったのか? 「そのとおり、両方の理由だ」 ──今日の試合とは関係ないが、学籍のある学生の立場とプロの立場について聞かせて欲しい。 「週に2~3回はクラブでの練習があり、それ以外は学業だ。大学ラグビーは年に6~7試合なので、クラブが中心である。学業とのスケジュールは、クラブ側が大学と調整してくれている。例えば、通常2年で取得する単位を3年に延長してもらうなど」 ──この暑さ、湿度への対策は。 「特になかった。早稲田に対しての対策だけだった」 ──スクラムでは相当の差があったが。 「フランスには独特のスクラムの哲学がある。早稲田はもっとスクラムを勉強したほうが良い」