12月18日(土) 4回戦(秩父宮ラグビー場) 

第1試合

近畿大学 10-13 慶應義塾大学

今シーズンの関西大学Aリーグで2位に入る躍進を果たし9大会ぶりの大学選手権出場となる近畿大学と、関東大学対抗戦Aリーグ4位で巻き返しを図りたい慶應義塾大学の戦い。東西大学ラグビーの現状を図る上でも重要な一戦となる。

 

近大は試合開始後のスクラムでコラプシングによりペナルティを与えてしまう。慶大は近大の自陣からの脱出を許さず、スタートから10分間は近大陣地に居座った。

対する近大は、バックスライン裏へのキックからキャリーバックにより、敵陣ゴール前5mスクラムを得る。学生No.1PRの呼び声の高い①紙森陽太を擁する近大はすかさずプッシュし慶大がコラプシング。近大はここでスクラムを選択し、再び圧力を掛ける。慶大はこらえきれずペナルティを更に2回続け、レフリーより注意を与えられる。後がない慶大だが、続くスクラムで近大のコラプシングを誘い、得点を許さなかった。

慶大はキックを織り交ぜ効果的に敵陣で試合を進めるが、近大もブレークダウンでプレッシャーをかけ、ターンオーバーを繰り返す。

23分、近大のコラプシングで得たペナルティから慶大⑩中楠一期がPGに成功し最初の得点(0-3)。

その後お互いにラインブレークはするものの、ディフェンスの戻りが早く、ゴール前でのノックオンやノットリリースザボールの反則により、得点のチャンスを活かすことができないまま、慶大が0-3でリードして前半を終えた。

両チームの前半の印象について、慶大の⑩中楠は「もう少し点が取れた」と話し、近大の⑫福山竜斗主将は「ゴール前まで攻め込まれても、トライを取られなかったので、後半は勢いに乗れると確信していた」と話す。

 

後半開始直後の3分、慶大は中央付近の密集から、浅めでパスを受けた⑥今野勇久がSH⑨小城大和とのループダミー、ディフェンスの意識が外に向いた瞬間、内側に走り込んだ⑮山田響へパスし、インサイドブレーク、そのまま30mを誰にも触れさせず走りきりゴール下にトライ。山田が「この試合に向け準備した」と話すプレーでトライを取り切り、中楠のゴールも成功し0-10と点差を広げた。

早めに点を返したい近大は後半16分、ゴール前5mラインアウトからモールを組みFW連続攻撃でペナルティを得る。再びラインアウトから攻撃か、それとも強みのスクラムで勝負か、しかし⑩半田裕己は、慶大の一瞬のスキを見逃さなかった。右側に大きなスペースを見つけ⑭植田和磨にキックパス。そのままキャッチして反撃のトライ。ゴールはポストに弾かれ失敗し5-10。

後半23分慶大はゴール前で得たペナルティでショットを選択。8点差とリードを広げる(5-13)。

後半26分、近大⑦宮本学武が大きくゲイン。密集から左へ展開し⑫植田和磨がゴールまで50㎝と迫り、最後は代わったばかりの⑱辻村翔平が押し込みトライ(10-13)。

 

3点差のまま残り10分。慶大が敵陣22m付近でのスクラムを得る。3回目の組みなおしの後、近大渾身のスクラムでコラプシングの反則を引き出し、追加点を許さない。続く近大ボールラインアウトからの連続攻撃では、慶大も堅いディフェンスを見せゲインを許さない。

 

中盤での攻防が続く中、後半38分、慶大のラインオフサイドでハーフライン手前のペナルティを近大が獲得する。大会規定で両チーム同点の場合は、トライ数の多いチームが次のステージへ進むことができる。トライ数では2-1で優位の近大は、キッカーも務める福山主将が「チームに蹴らせてくれと声を掛けたら、全員がいいよと答えてくれた」と53mのショットを選択。チーム全員の祈りを込めたゴールだったが惜しくも1m右に外れた。

続くドロップアウトのボールを近大は連続攻撃。タイムアップを告げるホーンが鳴るなか、近大は痛恨のスローフォワードでロースコアの試合は10-13で終了。慶應義塾大学が準々決勝へ駒を進めた。

 

近大の中島茂総監督は「9大会ぶりの大学選手権で地に足がつかず、前半は関西のリーグ戦とは違う戦い方をしてしまった」と振り返る。スクラムでプレッシャーを十分にかけられなかった点については、「最初のヒットでいけるという感触を得たが、慶大が色々と対応し惑わされてしまった」と紙森副将。

 

慶大の栗原徹監督のコメント「対抗戦終盤に勝つことができず、やっと接戦に勝つことができ大きな勝利になった」。原田衛主将も「4年生でミーティングを行い、チームが変わったと感じる。スクラムも警戒していたが、フロントローで話し合い上手く対応できた」と話した。チームがまとまり次の準々決勝へ向け、準備は整いつつある。(中村 琢)


■試合後の記者会見

近畿大学 中島茂総監督

「近畿大学にとって9年ぶり10回目の節目の大会で、出場を大変喜んでおります。慶應義塾大学さんは伝統と実績のある大学で対戦を非常に楽しみにしていました。11年前に近畿大学が関西大学Aリーグに1年で復帰した時に3位になり、大阪の花園ラグビー場で対戦したのですが、スコアは7-43の惨敗の試合でした。それから11年ということで慶應義塾さんにリベンジということで、今日の試合を楽しみにしておりました。慶應義塾さんは非常に学生らしくひたむきで、地を這うような粘り強いディフェンスを信条としていると感じていました。それ以外に慶應義塾さんと当たるに当たってマイボールラインアウトの獲得率が試合に大きく影響すると思っていました。

近大は9年ぶりの全国大会ということで、ちょっと前半は地に足の付いていないような感じでした。関西のリーグ戦とはちょっと違うような戦い方をしていたということで、ちょっとバタバタしているような感がありました。ただ、そういう内容であったにもかかわらず、前半はトライを許していなかったということで、後半に逆転できるように期待をしていたのですが、最後までボールが手に付かないような形で、FWの前進とボールを左右に振って縦横無尽に走るという展開が最後までできませんでした。やはり慶應義塾大学のブレイクダウンの強さと、粘り強いディフェンスをかわし切れなかったのが非常に残念です。

振り返ってみれば、選手はよくやってくれたのですが、やはり9年間のブランクにより慶應義塾大学さんとの全国大会での経験値の差が出たかなと思います」

ー最後の中央付近からの福山主将がペナルティゴールを狙った選択については?

「大会の規定上、同点の場合はトライ数が多い方が勝ち上がるということは、スタッフは理解しておりましたので、こちらからは指示することなく、キャプテンがそういう判断をしたということでした。結果的には入りませんでしたが、あれで良かったかなと思っています」

 

近畿大学 福山竜斗 主将(CTB)

「9期ぶりの大学選手権ということで、僕たちは選手権に出場するのが目標ではなくて、ここでしっかり勝って年越しを迎えるというのを目標にしていたので、ここで勝利できず大会を終えてしまったということが本当にすごく悔しいです。

試合の中では、しっかり全員がベストを尽くしたかなと。ミスはありましたが、その場その場でしっかり全員が身体を張って、ベストは尽くしてくれたので。

最後のペナルティでチームが僕の右脚に、最後のショットに賭けてくれて、そこを決められなかったというのは、本当に僕の練習不足が出ました。本当に決めたかったのですが、決められなかったのは、僕の弱さが出てしまったかなと思います。それでも最後までやり切ったこのチームに感謝しますし、特にFWは身体を張ってボールを前に出してくれたので、BKがもっと点を取って手助けしてあげたかったのですが、慶應義塾さんの最後まで取らせないぞという所が出て、こちらは何度もゴール前に行きましたが、最後、ジャッカルでまた相手にボールを与えてしまうという点で、本当に慶應義塾大学さんのプライドを見せつけられたという印象がありました。

僕たち4回生はここで終わってしまいますが、3回生以下が絶対強くなって、またこの舞台に帰って来てくれると思うので、来季からまた近畿大学に注目してくれたら良いなと思います」

ー前半、0-3という展開については?

「僕たちとしては、前半、0-3で折り返したということは想定内で、逆転できる自信も、身体を当てた感じでありましたし、特に何度も攻められても、ディフェンスでトライラインを破らせなかったというのは、後半に勢いが出ると確信していました。でも、後半に慶應義塾さんが予想以上にギアを上げてきて、最後、ちょっと追い付かなかったという印象です」

ー秩父宮で戦った印象は?

「僕たちとしては4年間で初めての秩父宮での試合で、観客と距離が近くて歓声も聞こえましたし、恐らく僕たちの声はお互いに届かないだろうと、いつもより声を上げて近大のムードにもって行きたいところだったのですが、前半は、もっともっと上げられたと思いました。後半は皆、声が出ていたのですが、前半から声を出すことが思い通りにいかなかったのは、これが初めてのグラウンドに立った時の差だったと思いました。来年は3回生以下がこの場を一度経験しているので、次に来た時はそこで緊張せずに近大らしいラグビーをしてくれたら、と思います」

ー近大で学んだ事をどう生かしていきたいか?

「近畿大学では、本当に1年生の頃から、たくさんの経験を積ませてもらって、ゲームに出させていただいたこともそうですが、特に一番学んだのは自分たちでしっかり考えて練習したとか、本当にチームをイチから作ったことでした。1年生の時から話し合ったりしても上手くいかない時が多かったですけれど、そこで折れず全員が一つになって4年間ここを見据えてしっかり戦えたこと、大学でしか経験できないことをたくさん教えていただきました。

これからもラグビーは続けるので、環境や周りのせいにしないで、より貪欲になって、さらに自分自身が成長しなくてはいけないと思うので、この4年間で授かったたくさんの物を社会人になっても生かして行きたいと思います」

ー最後にペナルティゴールを狙った場面の気持ちは?

「規定上、トライ数で勝ち越していたので、あそこで3点決めれれば勝利に近づく。風上で真ん中だったし、僕もゴールキックは得意で自信をもっていたので、チームには蹴らせてくれと問いかけたら、全員がいいよと言ってくれたので、あそこで蹴る選択をしました。

関西大学Aリーグの第二戦の同志社戦で、45m程のペナルティゴールを決めていたということもありましたし、僕が練習中からも決められると思った位置なら蹴らせてくれと言っており、3点でもしっかり狙える位置なら蹴ってくれと全員で決めていたので、あそこは自信をもって選ばさせていただきました」

ー見ている観客が楽しめるラグビーをしたいと言っていたが?

「仰るとおり、FW、BK一体となった躍動感のあるラグビーで、力強く前へドンドン出続けつつ、80分間守り続けるディフェンスをテーマにこの1年やってきて、出せている場面もたくさんあったのですが、それ以上に慶應義塾大学さんのディフェンスのプレッシャーがあって、最後も取り切れませんでした。プレッシャーが掛かってミスも増えてしまったので、すべてできたと言えない部分もありますが、しっかりお客様に楽しんで見てもらえて、次から近大を応援してもらえるようなラグビーが少しは見せられたのかなと思います」

 

近畿大学 紙森陽太 副将(PR1)

「福山主将が言ってくれたように、僕たちはベスト4を目標にして来たのですが、ここで負けてしまったというのは本当に悔しい思いで一杯です。最後の所で福山がキックを蹴ろうとした時は、皆が是非蹴ってほしいという思いがあって、本当にそれくらい頼れるキャプテンでした。このチームでやれて光栄に思います。プレーヤーとしてはラインアウトの所で、もう少し獲得率が高かったらという思いがあります。そこは来年の後輩たちに思いを託して、絶対頑張ってほしいと思います」

ースクラムの感触は?

「最初の感触としては、ヒットで勝てている、もしくはイーブンだったので、正直、行けるという感じがあったのですが、やはり慶應義塾大学さんがそこで色々な対応の仕方をしてきたので、そこで惑わされてペナルティを取られてしまいました。そこが慶應義塾大学さんの強みであって、自分たちがその対応にあまり付いて行けなかったというのが課題だと思います」

ー秩父宮で戦った印象は?

「会場の空気に呑まれてしまったという部分がどうしてもあったので、そこが選手権の怖い所だと感じました。そこの経験を来年に繋げて、後輩たちには頑張ってほしいです」

ー近大で学んだ事をどう生かして行きたいか?

「練習に臨む際も自分自身あまり自から発信するような人間ではなかったのですが、やはり大学に入って自分から発信することの大切さを学んだので、その経験を次のステージで生かして行きたいと思います」

 

中野監督(中央)、福山主将(左)、紙森副将(右)

 

慶應義塾大学 栗原徹監督

「今日もこういう素晴らしい環境の下で試合ができました。関係者の皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。

試合に至るプロセスの所で、原田キャプテン中心にチームが一つとなって、試合に臨む事ができました。試合自体は近畿大学さんのプレッシャーを受けてしまって接戦になりましたけれども、対抗戦の終盤でなかなか勝つことができなかったのに今日は接戦でもしっかり勝つことができましたので、慶應にとっては大きな勝利だったと思います。これで昨年のチームと同じ所まで来ましたので、今年の目標であるもう一つ上に上がるために、この1週間準備したいと思います」

ー4年生のミーティングを経て?

「ディフェンス、コネクトの所に関連すると思いますが、今日も何本かディフェンスラインを切られて抜かれていますが、対抗戦ではそのままトライに繋がったと思います。ただ、今日はそのままフェイズを重ねられながらも最後の最後まで皆で追いかけるということは、本当にキャプテン中心にミーティングをしてくれたことで、チームのメンバーがしっかり心と心がコネクトできたと思っています。学生スポーツ、ラグビー、そういう人と人との繋がり、気持ちというのが、今日の最後に接戦の勝ちを拾えたのかなと思っているので、帝京戦の負けからは本当に素晴らしい期間でした。(トライのシーンは)本当に良い時間帯の、良い抜け方をしたなと言えると思います」

 

慶應義塾大学 原田衛 主将(HO)

「対抗戦で負けが続いている中で、選手権で勝てると信じて、チーム一丸となってできて、勝てたので、次に繋がったかなと思います」

ー帝京戦の負けから、どのように立て直して来たのか?

「ディフェンス面ではコネクト、繋がりの所は、あまり時間がなかったので。やはり、メンタル面の所は結構変わったかなと思います。4年生でミーティングをして、もう一回、ここでもう一段階、上げて行こうというミーティングをして、チームが変わったかなと思います」

ースクラムをどのように立て直して行ったのか?

「僕たちは春、スクラムがあまり組めなくて、正直、できていませんでした。今日は最初に間合いの部分で関東と違う所があったのですが、レフリーがどっちも平等に見てくれて、僕たちの悪い所もありましたが、向こうにも合わせて下さいと言ってくれて、そこから結構、スクラムの対応ができたのかと思います。近畿大学さんは縦のギャップでなくて、横のギャップがあまりなくて、そこをレフリーに見てほしいとお願いしました。しっかり見てくれて、ギャップができて、それでやり易くなったと思います。紙森君がキーマンになると思っていましたので、どうやってこちらの3番を助けるかというのをフロントローで話し合って対応できたと思います」

ー試合を通じて僅差の試合だったが、どう気を遣ったか?

「ペナルティーをしないこと、規律のことは僕からはあまり言うこともなく、周りの選手が声を掛け合ってくれて、試合ができたと思います」 

栗原監督(左)、原田主将(右)


慶應義塾大学 中楠一期 選手(SO)

「今日の試合は関西のチームとの試合ということで、ちょっと力加減が想像つかない中、タイトな試合になると予想していましたが、しっかりアタックをして行く中で点の取れる所で取って、勝ち切れたというのは大きかったと思います」

ーどういうプランで戦おうと思ったのか?

「セットプレーが強いチームという印象があって、特にスクラムですごいプレッシャーを受けると思っていました。いかにスクラムでプレッシャーを受けながら試合を進めるかという所と、あとはコリジョンの点で力強いという印象があったので、そこでいかにオプションを使って、いなしながらも、しっかり自分たちのアタックをして前に出ようと話していました。キャプテンの衛さんとはしっかり点が取れる所では取って行こうと話し合っていて、ショットも選択肢として試合の前から頭にありました」

ーどういうプレーをしたら、次の試合に勝てると思うか?

「アタックプランについては、しっかりチームで一週間かけて準備して行きますが、東海大学さんもセットプレーが一番の強みだと思いますので、そこでプレッシャーを掛けられるのは想定内なので、それにいかに上手く対処していくか、一週間かけてしっかりチームで準備して行けたらと思います」

 

慶應義塾大学 山田響 選手(FB)

「厳しい試合になるのは分かっていたので、そこを勝ち切れたというのは成長できたかなという点です。関西のチームということもあって、どういったチームか見えない中で準備するというのは厳しいものがあったかと思います」

ースクラムについては?

「スクラムについては、チームで話し合って、まあ大丈夫だろうという話でした。自分としては、それを信じ切れていない所もあって、最悪の想定もしていたのですが、意外とFWが頑張ってくれて、リリースできていたので、そんなにプレッシャーは感じていませんでした。前半に関しては、もうちょっと点は取れたかなという印象もあって、それは僕らの精度や、落ち着きが足りない所もあったとあったと思うので、しっかり修正してもうちょっと楽な攻め方があったのじゃないかと感じています」

ートライの所は?

「あのトライに関しては準備して来たプレーということが一番大きくて、選手権ということもあって、やるならここだろうということも話し合って、しっかりそこを決め切れたというのは良かったと思います。対抗戦の何試合かでもやっていたのですが、うまくできなかったというのが反省点で、ちゃんとできれば良いラインブレイクができると思っていたので、しっかりそこを準備して、パサーの今野さんとコミュニケーションを取りながら、しっかり準備できたかなと思います」

ー今年、ポジションがSHから始まりましたが、今日のトライなどでその経験が生きた?

「ハーフを経験して大きく変わったのは、FWに一番近いBKのポジションということもあり、FWの感じ方や、FWとのコミュニケーションというのは密になったと思うので、それは一人になっても変わらないということで、FWが良いプレーをしたりあまり良くないプレーをしたりすると、後ろからでもしっかり近くに行ってコミュニケーションを取るというのを大事にして来れたと思います」

ートライを取られた場面の反省は?

「あのトライに関しては、個人のミスだと感じていて、一個内側の選手と話し合って、FWの選手が我慢しているのでBKはしっかり集中して行こうと。コミュニケーションと意識の部分で修正できると思うので、ああいう一瞬の気の緩みが命取りになると思うので、そういう所をなくして、東海大戦に向けて準備したいと思います」

 

山田選手(左)、中楠選手(右)


第2試合

日本大学 41-22 日本体育大学

前半を17-17の同点で終え、後半、最後までどちらのチームが15人全体のチームの力を出し切れるかが勝負を決めることとなった。前半にはあまりボールを継続できていなかった日大だが、後半開始早々SH前川李蘭のリズムのいいリードでフォワード/バックスが25フェイズにわたってよくボールを継続し、敵陣深く攻め込んだ。

日大のこの連続攻撃は一旦、日体大選手のケガで止まったが、直後のスクラムで日体大のコラプシングの反則を誘うと、日大は敵陣22m付近でのラインアウトを得た。ゴール前のラインアウトからのモール攻撃は、日大にとってリーグ戦での試合でも何回も得点に繋げた得意のアタックだ。ラインアウトからのモールで日体大がコラプシングの反則をとられ、再び日大がラインアウトからのモールでゴールラインを押し込むと、ボールを持ったHO井上風雅がインゴールに走り込み、22-17とリードした(後半7分)。

 日大は後半10分にも、日体大がアタックで攻め込んだラックでCTBフレイザー・クワークのジャッカルでノットリリースザボールを誘う。日大はPKからゴール前でのラインアウトを得ると、再び、HO井上がモールからトライを決め、リードを27-17と広げた。日体大が反則を犯し、それで得たチャンスに日大がセットプレーからの安定感のあるアタックで得点に繋げるシーンが続いた。
  後半18分、日大のミスから日体大が自陣でターンオーバーしたボールをSH梶田壮馬が大きく敵陣に蹴り込みWTB鈴木颯がチェイスすると、日大WTB水間夢翔が戻ってどうにかボールを確保したが、日大の2人目以降の戻りが遅く、日大のノットリリースザボールの反則を誘った。このPKでスクラムを選択した日体大は日大のスクラムコラプシングの反則を誘うと、PKからのクイックアタックでPRミキロニ・リサラがゴール前でつかまるが、SH梶田からパスをもらったWTB鈴木が右コーナーに飛び込み5点を返した(27-22)。しかし日体大の反撃もここまでだった。

 その直後のリスタートで日大が蹴ったキックオフのボールを日大の19番FL熊谷幸介がダイレクトにキャッチし、敵陣に攻め込む。一旦、パスミスでボールは日体大にターンオーバーされるものの、ラックで再びボールを取り戻すと日大はフェイズを展開した後、最後はSO饒平名悠斗からの飛ばしパスを受けたNo.8シオネ・ハラシリが左サイドを走り、内側にフォローしてきたFB普久原琉がハラシリからのオフロードパスを受け、インゴールに走り込んだ(ゴール成功、34-22)。日大は35分にも日体大バックスのハンドリングミスのボールを拾ったハラシリがインゴールまで走り込み、ダメ押しトライ。日大が41-22のスコアで3大会連続のベスト8進出を決めた。

 前半には、日大が井上、クワークらがチャンスメークし、ハラシリ、水間がトライを決めてのリードで始まったが、日体大もリサラ、No.8ハラトア・ヴァイレア、WTBクリスチャン・ラウイらの外国出身選手が活躍し同点での折り返しとした。しかし、後半は、日体大は前に出るディフェンスを80分間は続けられず、日大の継続するアタックを止めきれなかった。

 日大にとっては後半には快勝ペースに持ち込めた試合になったが、「ブレイクダウンを含む接点で戦えるようにすること。課題のあったスクラムも改善する必要がある」(中野克己監督)、「セットプレーの安定性を上げること、ブレイクダウンでテンポを遅らされてアタックできなかったこと」を修正すること(飯田光紀主将)などはっきり課題も出た試合になった。日大がベスト4入りするには、準々決勝で対戦する関西大学Aリーグ1位の京都産業大戦までにこれらの課題をしっかり修正することが必要となるだろう。(正野雄一郎)

 

■試合後の記者会見

日本体育大学 湯淺直孝 ヘッドコーチ
 
「本日は大会関係者の方々、皆様、本当にありがとうございました。日体大としましては、前に出るディフェンスにこだわって筑波戦の後3週間、やってきました。それを選手たちが最後まで出し続けてくれたことを誇りに思います。ただ、日大さんの前に出るプレッシャー、重さに、我々のタックルが最後まで続かなかったところが今回の敗因です。隣にいるキャプテンの髙橋君がこのチームを引っ張ってここまで持ってきてくれたことは、胸を張れることだと思います」

 

日本体育大学 髙橋泰地 主将 
 「本日はこのような素晴らしい環境で試合をさせていただき、本当にありがとうございます。日体大としましては、前に出るディフェンスを80分間継続しようという意気込みで挑みました。前半はディフェンスが機能して同点で終えることができました。しかし、後半、日大さんの前に出るアタック、モールでプレッシャーを受けてしまい、ペナルティーを重ねて自陣に食い込まれて得点される繰り返しで失点し、自分たちの流れを掴むことができなくなってしまいました。今シーズンやってきた前に出るディフェンスは80分通してできたのですが、ペナルティや少しのミスのところで食い込まれてしまったのが、今日の印象です」

ー今季、ここまで来られたのは何がよかったのか?

「新シーズンが始まるミーティングで、自分たち4年生で何回も話し合ってベスト4の目標を立てたことです。例年ですと、スタッフ陣やリーダー陣が目標を決めて進んでしまうのですが、今年は目標設定のところから4年生中心に何度も話し合い、1年間を通して勝利とベスト4の目標にこだわって、練習や私生活からまとまっていたチームでした」

湯淺ヘッドコーチ(左)、髙橋主将(右)


日本大学 中野克己 監督

「本日はありがとうございました。自分たちの持てる力をしっかり出そうと準備をしてきました。日本体育大学さんの激しいファイティングスピリッツに前半苦しめられ、少し自分たちの力を出し切れないところがありました。後半、もう一度そこを見直してゲームを進める、粘り強く継続していこうということでやりました。少しミスも多くなった試合でしたので、100%満足とはいかないですが、勝てたこと、選手が頑張ってくれたことは非常に良かったかなと思っています。これから次の試合もありますので、しっかり自分たちに矢印を向けて準備していきたいと思います」

ー次戦に向けた修正点は?

「コンタクトの強さを出していきたいと思います。ブレークダウンを含む接点で戦えるようにすることです。今日、ご覧になった通り課題のあったスクラムも改善する必要があると思っています」

 

日本大学 飯田光紀 主将

「前半は、日体大さんの前に出るディフェンスで自分たちが思うようなアタックができず競った試合になってしまいました。後半は、アタックを継続していこうということで、そこから得られたペナルティでモールトライができたことは良かったです。しかし、来週の京都産業大学さんは、もっと前に出てくるディフェンスやアタックをしてくると思います。まだまだ満足とは言えないので、この1週間しっかり準備して実戦に備えたいと思います」

ー前半、前に出てくる相手ディフェンスのどのようなところが苦しかったのか?

「FWのコンタクト部分でダブルタックルを受けてボールを思うように動かせず、テンポを出せなかったこと、ハイボールでミスが出たところが、すごく苦戦した部分です」

ー3年連続8強ですが、次戦に向けての意気込みは?

「京都産業大学さんは関西大学Aリーグ1位ですごく強い相手になるので、1週間しっかり準備し、ベスト4目指して自分たちのラグビーができるよう準備したい」

ー次戦に向けた修正点は?

「スクラムもそうですが、モールで取り切れなかった部分もありました。セットプレーの安定性を上げること、ブレークダウンでテンポを遅らされてアタックできなかったことを修正していきたい」

中野監督(左)、飯田主将(右)