12月26日(日) 準々決勝(秩父宮ラグビー場)

第1試合

明治大学20-15早稲田大学

 

明治大学が終始スクラムで圧力をかけて早稲田大学のアタックを封じ、12月5日の対抗戦(明治7-17早稲田)の雪辱を果たした。

 

場内時計はまだ1分30秒だった。明治のキックオフから始まり、早稲田が蹴り返したボールを明治WTB石田吉平が好捕してカウンター、最後は1年生FL木戸大士郎が左隅に飛び込んだのだ。その後明治は自陣深くからのキックをチャージされ、早稲田に右隅まで運ばれる。あっさり取り返されたかと思いきや、相手WTBに飛び込まれる寸前、SH飯沼蓮が足元を刈るようなタックルでタッチラインを超えさせた。主将の気迫溢れるプレーで明治フィフティーンは奮い立つ。以降も出足よく早稲田のアタックを封じていた明治だが、前半20分、攻めの中での落球から逆襲され、トライとゴールで逆転される。その後両チーム1PGずつをあげた後の前半37分、早稲田に2つ目のトライを奪われ、スコアでは明治劣勢で前半を終える。

 

明治は風上となった後半、早稲田陣深くに居座り、後半10分、FWが密集を押し込みPR大賀宗志がトライ、2点差に詰める。後半21分過ぎにハーフウェイ付近のスクラムで得たPKから、FB雲山弘貴のこれ以上ないというようなタッチキックで相手ゴール前まで迫る。その自ボールラインアウトから更にFWで圧力をかけ、相手を自陣に封じ込め続けた。そして後半30分、再三の組み直しとなったスクラムから明治にアドバンテージが与えられた中、またも密集から大賀が押さえ、ついに逆転する(ゴールも決まって20-15)。後半37分には相手WTBに走られるが、最後尾から上がった雲山と戻った飯沼のディフェンスでノックオンを誘い、この日最後のピンチを凌いだ。

 

一方、準決勝進出を絶たれた早稲田。先の早明戦を怪我で欠場していたCTB長田智希主将が復帰。明治にノーホイッスルトライを許した後、相手のキックを味方がチャージ。長田はこの好機を逃さず、SO伊藤大祐を介してWTB小泉怜史を走らせた。ここは明治飯沼の好ディフェンスに阻まれたが、前半20分、自陣からのカウンターでも巧みに抜け出て伊藤へ送り、先制トライを創出した。ディフェンスでも判断よく飛び出し、相手に猶予を与えないタックルを見舞っていた。長田は試合後、「スコアを動かす(トライを取り切る)ことができなかった」ことが敗因だと語り、完全燃焼できなかった悔しさを滲ませた。副将でこの日は本来の右PRに入った小林賢太は、ポイントとなったスクラムについて、「お互いのスペースの取り方の違い」(小林)から再三の組み直しや反則を取られ、「そこで時間を使い過ぎて、自分達でアタックする時間を無くしてしまった」(同選手)ことを悔やんでいた。それにしても後半のトライ確実と思われたシーンでのノックオンと、終盤明治陣内で得たPKをタッチインゴールへダイレクトタッチしてしまったキックミスがあまりにも痛すぎた。早稲田にとっては、第54回(平成29年度)の初戦で東海大学に敗れ、準々決勝にも進めなかった時以来の、越年できなかった年度となった。(米田太郎)


■試合後の記者会見

早稲田大学 大田尾竜彦監督

「今日の試合は対抗戦での早明戦の再戦となりました。厳しい相手と厳しい勝負になることはわかっていました。今シーズンこれまで40週間練習を積み重ねて日本一を狙えるところまでは来ていると思ってきましたが、その中の一つのチームは明治であることは間違いありません。自分たちがやってきたことをしっかりやりきれるかということで試合に臨みました。早明戦と変わったところ、変わっていないところもありますが、トライを取り切るところでしっかり取ることができたチームが勝ったということだと思います」

 

―対抗戦が終わってから、どのような準備をしてきたのですか?また、PR小林賢太選手をこれまでの1番から3番に変えましたが、今日の小林選手については?

「(早明戦後には)リカバリーをしっかりしてレビューをしました。それからいろいろなことを足すことはなく、これまでやってきたこと一つ一つをシンプルに頭の中でクリアにして、この試合で出し切れることにフォーカスしました。セットプレーについては再確認することに時間を割きました。PR小林を3番に戻したことは、もともと選択肢にありました。次のステップに行くための準備でもありました。亀山選手、木村選手にも充分チャンスはありましたが、選手権では小林を3番に戻しました。(前半37分の)小林のトライでは、小林を外に立たせて小林の第3列並みの走力を生かすことができました」

 

―(後半31分に)SOを伊藤大祐選手から吉村紘選手に交替させましたが、吉村選手を入れたタイミング、また、その狙いなどは?

「逆転されて70分過ぎで5点差となり、また、風下でもあり、トライを狙いにいきました。大祐がそれまで内側に切れ込むことが多く、明治が内側へのディフェンス中心となっていたので、外のスペースに強い吉村の特長を出したいと考えました」

 

―後半にSO伊藤からWTB小泉へ、そしてその次のパスが通らず、トライに繋がらなかったところのプレーについては?

「『何やってんだよ!』と思いました。あそこで取り切れなかったら勝てません。あそこでスコアしていたらリードが9点差になって、その後のお互いの戦い方も、選手のメンタル的にもかなり違ったと思います。明治にとってはラッキーな、早稲田にとっては痛いプレーとなりました」

 

早稲田大学 長田智希主将(CTB) 

「対抗戦での再戦となりましたが、対抗戦で勝ったことには関係なくこの試合に全てをかけて戦おうと臨みました。最後の場面では僕自身を含め、取りきることができませんでした。明治が一つ上だったということだと思います」
 

―終盤にSO吉村選手がタッチキックをミスしたり、FB河瀬選手にボールハンドリングのミスが出たりしたシーンがありましたが、選手に焦りはあったのでしょうか?

「あの(5点ビハインドになっていた)スコアでしたので、プレーヤーには緊張はあったと思います。僕や小林(副将)から選手達にいいコミュニケーションを取ることができなかったと思います。キックミスもチームとしてチャレンジした結果ですので気にしていません」


 大田尾監督(左)、長田主将(右)


早稲田大学 小林賢太副将(PR)

「対抗戦の早明戦でのスクラムで明治にプレッシャーを受けたこともあり、今日の試合に備えてセットプレーの修正をしようと改善をしてきました。明治のスクラムに対して早稲田のスクラムは組めたと思います。しかし、時間を使いすぎて早稲田のアタックの時間をなくしてしまったことや、アタックでの簡単なミスや接点でのミスが出ることになりました。早稲田のやりたいラグビーをできなかったと思います」

 

―対抗戦の早明戦までは1番で出場しましたが、今日は3番でした。1番と3番の違いでのやりにくさやしんどいところはありましたか?

「1番は今年の新チームでチャレンジしました。成長するスクラムが組めてきたと思います。3番は高校から大学3年まで6年間やっていたので、急にポジションが変わり3番に入っても戸惑いはありませんでした。今年の早稲田のスクラムにコミットできたと思います。今日で終わってしまったので仕方はありませんが、ただただ悔しいです」

 

―特に前半は、スクラムの組み直しが多く、時間がかかっていましたが?

「早稲田と明治のフロントロー同士で自分たちの組みたいスクラムのためのスペースの取り合いがありました。それで何回も組み直しとなりました。今日の明治は少し距離を離してヒットして組んできました。スクラムは選手権の明治戦のために準備してきたので、僕たちもスクラムでしっかり戦えるという意識はありました」

 

早稲田大学 伊藤大祐選手(SO)

「前半は風上だったので、僕のPGやコンバージョンを含め、もう1本取れていたら勝てていたと思います。後半も1本抜けてそこに入っていれば、、、と思うゲームで、早稲田のかたちで勝てる試合だったのですごく悔しいです。今年の4年生と一緒にラグビーをできたことが楽しかったです。来年は上級生になるので頑張っていきたいと思います」

 

―今シーズン、10番として成長してきた点、また、今日、もう少しできたと思う点は?

「今シーズンは慶大戦からスタメンの10番をやらせてもらいました。いろいろな失敗はありましたが、ちょっとずつは成長できたと思います。春にはケガで試合に出られなかったので、その点も含めて来年度はもっと頑張りたいと思います。今日の試合では、取り切れないところがあり、また、前半のPGやラインアウトからのボールキープのミス、後半にもキャッチミスがでてしまいました。そういった早稲田が絶対やってはいけないことをやってしまいました。」

 

―早稲田のアタックと明治のアタックの違いについてどう感じますか?

「明治のアタックは大きいフォワードを前に出してコリジョン(衝突)でノットロールアウェイなどを誘うものでした。早稲田は前に出られず、ペナルティを取られることもありました。早稲田がもっとディフェンスで圧をかけなければいけないと思います。アタックでは早稲田はスペースの共有と、中での『えぐり』をテーマにやってきました。それについては何回かいいシーンはあったと思います。SOとしてはアタックの時間をもっと増やして、敵陣でゲームすることができれば勝機はあったかなと思います。しかし、これができなかったということは完敗だということです」


 小林選手(左)、伊藤選手(右)


明治大学 神鳥裕之監督

「今日はありがとうございました。多くのお客様の前で素晴らしい試合ができたことに感謝します。学生達は対抗戦での早稲田への敗戦での悔しい気持ちを、選手権での対戦で体現してくれました。敗戦を踏まえて成長してくれた選手達に感謝したいと思います。今日の結果を踏まえてまた成長して、次の試合に備えたいと思います」

 

―今日は反則数が非常に少なかったです(注:PK数 明大3,早大9)。これは対抗戦の早明戦よりも半分以下の少なさだと思いますが、事前に特にチームで考えてきたことは?

「早明戦の後、チームの分析担当とコーチとで課題や問題を洗い出してくれました。あれもこれも言うと選手達に伝わりにくいので、ある反則(注:追加質問への答えで『ラインオフサイド』)だけは無くそうと言いましたが、それが選手達に伝わってパフォーマンスに生かされたと思います」

 

―次は国立競技場での準決勝です。まだ対戦相手は決まっていません(注:対戦相手は東海大になった)が、準決勝進出へのコメントは?

「去年は準決勝で敗退しているので、まずはここまで戻ってこられたことを良かったと思います。対戦相手は未だわかっていませんが、我々は今日の試合を良く見直して、そこから出た反省点を次に生かしていくことの繰り返しだと思います」


 明治大学 飯沼蓮主将(SH)

「(対抗戦での敗戦に)リベンジできて素直に嬉しく思います。まだまだ選手権は続きます。僕たちの目標はあくまで優勝ですので、今日出た課題をしっかり修正してまだまだ成長して優勝に向かっていきたいと思います。」

 

―対抗戦での早明戦に比べて、コンタクトでは2人目の寄りなど修正されていましたが、逆に早稲田には最後のアタックでは少し焦りもあったのではないかと思います。それについてはどう感じていましたか?

「後半、最後のところでは早稲田が少し焦っていたと感じました。それに助けられたと思います」

 

―前半は明治にとってはあまりいい流れではありませんでした。ディフェンスも前に出られていなかったと感じましたが?

「バックスでは状況状況でプレーの合間で選手達がしっかり喋って、SOや僕に情報を伝えてもらうようにしていました。今起きたことに対して、次にどう攻めるかなど試合中に修正できたと思います。選手間で喋ることができていました。そこについては手応えを感じていました。ハーフタイムで(8-15と、)7点差になっていましたが、焦りはなく、逆に『やれる』と思っていました。体の重さも感じませんでした。あとは気持ちだけだったと思います。スクラムなどセットアップのところでは早稲田と噛み合っていないところはあり、FKを取られたりもしましたが、フォワード選手の『絶対行ける』という言葉を信じて良かったと思います。」
 

―後半35分頃、リードして逃げ切れそうな状況のところでボールを取られて、慌てて戻ってタックルしましたが、あのシーンでは?

「反省点になりますが、あの時、残り時間が4分-5分くらいでしたが、時間を掛けるのか、トライを取りに行くかというところが選手間でちょっと統一できていませんでした。そのためちょっと迷いがあったので、あいまいなプレーになりました。次の試合にはそういったところの準備までしっかりしたいと思います」

 

―次は国立競技場での準決勝です。まだ対戦相手は決まっていません(注:対戦相手は東海大になった)が、準決勝進出へのコメントは?

「まず、自分たちにフォーカスして、修正して臨みたいと思います。2年前、(決勝で)僕が新国立を経験した時は、観客の多さや初めての会場ということで慣れていないところがありましたが、そういったところも経験のある選手から皆に伝えて気持ちの部分での準備もしっかりしたいと思います」

 

―今日の試合ではやっと”Meiji Pride” (注:今年のスローガン)とプレーが噛み合ったと思いますが?

「今日の試合は“Trust”というテーマで臨みました。『信じよう』、自分たちがやってきたこと、自分自身、仲間、やってきた練習など全てを信じて戦おう、最後に勝つのは自分たちだ、ゲームの主人公は自分たちだということを全員が信じ続けられたので、皆、足が動いていたのだと思います」


神鳥監督(左)、飯沼主将(右) 


明治大学 大賀宗志選手(PR)

「今年、練習試合を含めて4回目の早明戦でしたが、対抗戦での対戦を含めてこれまで勝っておらず、選手権でリベンジする機会を与えられました。4年生に1年間、1回も早稲田に勝てずに終わるということは絶対にさせられないという思いで試合に臨みました。結果として勝利することができて本当に嬉しいです」

 

―前半、スクラムの組み合いで時間を取られましたが、そこでの焦りはありましたか?

「スクラムでは前の3人同士でなかなか合わずに、時間が取られていきましたが、自分たちはあのエリアに入ったら『フォワードで取り切ろう』という話はしていて、取り切れる自信はありました。時間がかかっても大丈夫だとは思っていました」

 

―対抗戦の帝京大戦や早大戦ではあと一歩というところで取り切れないところがありました。そこで『取り切ってやる』というような気持ちの強さはどのように準備してきましたか?

「帝京大戦、早大戦では相手陣に入っても自分たちのミスでなかなか取り切れないところがありました。今日は、もう1回、相手陣22mに入ったら、もうフォワードの力勝負で、必ずスコアして帰ろうとフォワードでしっかりまとまっていました。今日は、時間はかかりましたが、それがスコアにも繋がって良かったと思います。スクラムでもゴール前の攻防でも、負けていないという感覚があり、取り切れる自信はありました」

 

―スクラムで特に意識したところは?早稲田の3番が今日は小林選手に替わりましたがこれはどのようにとらえましたか?

「スクラムでは相手が前に詰めてきて、ヒットさせないスクラムを組んでくることは対抗戦の時からわかっていました。これに自分たちは付き合わずに、しっかりスペースを取って自分たちから当たりに行こうという自分たちのスクラムを組むようにしました。小林選手が今日は3番にコンバートされていましたが、明治の1番の中村公星が、去年も組んでいる相手だったのであまり意識せずに組めました」
 

―なかなかすっきりスコアを取れない時間の後での2つのトライでした。その間、どのように自分たちの攻め方などを修正しましたか?(後半、自身で2トライしたが、)トライでボールを押さえた時の感触は?

「チームとして、『もし取り切れなかったらこうしよう』というのは決めていて、相手陣の5mに入ったらフォワードで行こうとか、決めていました。スクラムやモールできれいに取りきることはできなかったのですが、やることは明確になっていたので取りきれることができたのだと思います。結果的に僕自身でも2トライできましたが、あそこまで全員で持って行って、最後、トライをできたのでフォワード全員のトライです」

 

―今日、フォワードがいいプレーをできた原動力になったものは?

「選手権1試合目で天理大に勝ち、早稲田にリベンジできるとなってから、練習で滝澤(佳之)FWコーチが『フォワードで取り切ろう』という意識を植え付けてくれて、22mの中に入ったところでの練習を何回も何回もしてくれました。そこは練習したことが試合に出て良かったと思います。また、試合前に大石副将が涙を流しながらチームに『絶対勝とう』と言ってくれて、僕も泣いてしまいましたが、4年生の思いを感じ『絶対負けられない』と思いました」

 

明治大学 雲山弘貴選手(FB)

「前半、風下だったので、『耐えて(ビハインドが)3点以内でいけたら、後半、風上なので行ける』と話していました。前半終えて7点差でしたが、前半1トライ差に抑えられたことで、後半いい展開に持ち込めたと思います」

 

―前半、スクラムの組み合いで時間を取られましたが、そこでの焦りはありましたか?

「あのスクラムの組み合いでは時間を20分くらい取られたと思いますが、僕たちはフォワードを信じていました」

 

―早稲田のアタックと明治のアタックには、それぞれどのような印象がありましたか?

「早稲田は長田でゲインを切って、河瀬で勝負を仕掛けてくるというイメージがあり、明治のディフェンスではその2人を十分注意して、長田にゲインを切らせないこと、河瀬がボールを持ったときはダブルタックルで止めることを話し合っていました。いいディフェンスができたと思います。早稲田の流してくるディフェンスに対してもっとフラットに仕掛けようと、話し合っていましたが、まだコミュニケーションの部分で合わないところがあったのでもっと、もっとコミュニケーションを増やして、次の試合に臨みたいと思います」

 

―後半の(21分ごろ明治が敵陣に攻め込むきっかけとなった)雲山選手のナイスタッチキックについては?一方、早稲田はその直後にタッチキックの失敗があり、その一本ずつのキックが大きく勝敗に影響したと思いますが?また、今日の試合テーマの“Trust”については?

「あそこでは、風の向きなど考えて蹴りました。絶対にトライを取れると信じていたので、思い切って蹴りました。練習中からバックスでコミュニケーションをとって、また、早明戦の後にもチーム皆でバーベキューをするなど、チームビルディングを通じて全体がさらに仲良くなってより信頼できたと思います」


雲山選手(左)、大賀選手(右)



第2試合

帝京大学 76-24 同志社大学


同志社大は昨年のこの大会を、コロナ陽性者が出て無念の辞退をしている。その時に対戦するはずだったのが、今回の対戦相手である帝京大である。今期一番の寒気の影響により、秩父宮は晴れているにもかかわらず、厳しい寒さであった。

 

帝京大のキックオフで始まる。帝京大は同志社大陣ゴールライン前5mでのラインアウトからモールを組み、前半3分LO青木恵斗が先制トライ(ゴール成功)。さらに、帝京大は同志社大のノットロールアウェイの反則からゴール前に迫り、またもラインアウトからのモールでHO江良颯がトライを決める(ゴール不成功)。前半7分で12-0とする。同志社大は帝京大のモールに対して懸命にパックしてディフェンスするが、強力なフォワードに押し切られる。帝京大はさらに加点する。13分、同志社大のオーバーザトップの反則からゴール前に迫り、ラインアウトからのモールの後、ラックを連取し、最後はSH李錦寿―SO高本幹也―FB谷中樹平と渡り谷中がトライ(ゴール成功)、19-0と差を広げる。

同志社大もグラウンドを広く使い、キックパスを織り交ぜながら速いテンポの攻撃を繰り返すが、帝京大の強力なディフェンスの前になかなかゴールを割ることができない。帝京大はその後も、攻撃の手を緩めることなく同志社大ゴールをたびたび陥れ、前半18分、20分にもトライをとり33-0とする。

帝京大はボールを広く動かし、深くて速いアタックをしており、ボールを持った選手は縦に走りこんでくる。同志社大は前に出るディフェンスで対抗しているが、これを組織的に止めることができていない。帝京大はディフェンスでも全員が前に出て同志社大にプレッシャーをかけ続けており、ブレイクダウンでも終始圧力をかけている。ラインブレイクされても全員が走って戻り、同志社大に簡単にはゴールを割らせない。

同志社大が得点したのは前半37分。帝京大陣内22mのスクラムでの帝京大の反則からクイックスタート、16フェイズに亘り攻撃を繰り返し、最後にSO嘉納一千のキックパスでWTB和田悠一郎がトライ(ゴール不成功)。40-5とする。しかし帝京大は前半終了間際にもトライ。45-5で前半を終了。

 

後半も帝京大が先に得点する。後半2分、同志社大のラインアウトをターンオーバー、右にバックス展開し、同志社大のディフェンスを破り、ラックの後、NO8奥井章仁がトライ(ゴール成功)。52-5とする。帝京大の選手は走りこんでボールをもらっており、同志社大は帝京大の攻撃を止めることができない。

同志社大は後半8分、帝京大陣内22m付近からのラインアウトから右に展開、WTB和田がライン参加して大きく前進。和田はタックルを受けながらもよく持ちこたえラックとする。そこに走りこんできたFL梁本旺義がトライ(ゴール成功)。52-12とする。しかし帝京大は後半13分にもトライを追加し57-12とする。

同志社大は21分、帝京大陣内での帝京大の反則から速攻で攻め、WTB和田が2本目のトライ(ゴール不成功)、57-17とするが、帝京大も23分、27分にも追加点を上げ69-17と差を広げる。後半32分、同志社大は、自陣内22mでのマイボールスクラムからWTB和田にパス、和田は帝京大陣内まで大きくゲインしSH新和田錬にパス、そこでラックから右に展開し、FB山口楓斗から最後はWTB大森広太郎に渡りトライ(ゴール成功)。69-24とする。しかし帝京大は終了間際にもトライを上げる。76-24でノーサイド。

 

帝京大はセットプレイが安定しており、全員がよく走り、前に出ていた。ブレイクダウンでの攻防でも勝っていた。ディフェンスでも同志社大に終始プレッシャーをかけ続けていた。

同志社大は組織的なディフェンスができず、特に前半の大量失点が痛かった。80分間を通して自分たちのペースでゲームを進めることができず、帝京大の圧力の前に、得意とするスピードある展開、連続攻撃をすることができなかった。

勝った帝京大は1月2日の準決勝に進むが、今日の試合では反則と失点が多かったことから、これらの課題を修正することが必要だと思われる。(二谷保夫)


■試合後の記者会見

同志社大学 伊藤紀晶ヘッドコーチ
 
「今日の試合は力を出し切れなかったかなと感じています。試合の最初の入りがあまり良くなく、それが継続して80分間相手のペースになってしまいました」

 

―今日のような相手に勝って日本一になるため、どのような積み上げが来季以降に必要ですか?

「いつもしっかり前に出て相手を止めることをやっていますが、広くて深いアタックに対し、ディフェンスが最後のところで止まってしまい、アタックを上手くやられた感じがあります。同志社はまだ波があり、安定的に力を出さないと上のチームに勝てません。本当に安定した力を出し続けられるチームを作らないといけないと思います」

 

―そのためにどのようにすれば?

「去年、今年と試合が組めないこともありました。全国の強豪校と試合する機会がなかなか少なかったので、その経験値が足りていない部分もあると思います。試合の経験値や練習の一つひとつの精度と強度を更に上げていく必要があると感じています」

 

同志社大学 南光希共同主将(LO 
 「自分達はこの1週間、帝京大さんと戦うためにアタックもディフェンスも準備してきたものがあったのですが、相手の速さと強さのため、80分間出せなかったところが、力の差を感じた部分でした」

 

―関東の力のあるチームと対戦して感じるものは?

「チームによってアタックの色はあると思いますが、帝京大学さんが深く広くアタックしてくるところで、自分達の前に出るディフェンスの一人ひとりのコネクションのズレで生じたギャップを、突かれてしまいました。前半の最初、自分達の組織的ディフェンスが、相手の広く深く速いアタックについていけず、我慢ができませんでした」

 

―フィジカルの強い相手にタックルしたり、されたりする中で感じたことと、後輩達に来季臨んでほしいことは?

「相手のフィジカルの部分は試合前から分かっていたので、自分達は相手1人に対し2人、3人かけて前で止めたかったのですが、組織的ディフェンスが崩れて1対1になったときに、簡単にゲインを許してしまったことがありました。この春からの関西Aリーグで組織的に2~3人でディフェンスができて、全国でも通用するものを僕達は持っていたと思うので、来季もう一度強みの組織的ディフェンスを整備してやって欲しいです」

 

―連戦を重ね、今回は移動もあり疲労的なものを試合の中で感じましたか?

「1週間ごとの連戦ではありましたが、疲労は1週間でケアできるものであり、そこは言い訳になってしまいます。試合の入りから80分間通して、受け身に回ってしまったところがあったと思います」


伊藤ヘッドコーチ(左)、南主将(右)


同志社大学 和田悠一郎選手(WTB

「今日に向けて1週間しっかり準備してきましたが、ディフェンス部分で相手に思うような攻撃をさせてしまったのが敗因かなと思います。相手が外に振って来るのに対し、味方のディフェンスが寄ってしまったという課題が出ました」

 

―同志社大学のアタックやスピードで十分見せるものがあったと思いますが、ご自身のプレーの手応えは?

「相手のディフェンスが裏に詰めてきたり、しっかり上がって来るプレーに対し、SO嘉納一千選手に声をかけ、キック、パスであったり外まで持っていったなど、しっかりボールを運べたところは、チーム的、個人的にもトライに繋がって良かったです」

 

―攻め続けていて、相手の強いディフェンスで感じたことは何かありますか?

「相手のディフェンスが堅く、しっかり上がってきて外側にパスをさせない、飛ばしパスの間に内からディフェンスが来るのは帝京の強いところでした。それに対し、外側に持っていく用意したプレーができたのは、自分達がやってきたことができたと思いました」

 

―去年、コロナで対戦予定の帝京大学と試合ができず、1年越しの対戦となったことへの気持ちや、去年の4年生から何かメッセージなどはありましたか?

「コロナのため出られないと決まったときの4回生が自分達のグラウンドで流した涙を見ているので、そこは帝京大学という相手に対して、去年の分も戦っていこう、チーム全体でリベンジしようというのを強く思っていました」

 

―組み合わせを聞いて、帝京大学とやるまで負けられないという思いもあったのでは?

「帝京大学に思い入れもありますが、一戦一戦、目の前の敵として朝日大学、大東文化大学とクリアしてきました」

 

同志社大学 山口楓斗選手(FB

「今日の試合は、帝京大学という格上の相手にチャレンジマインドでどんどんアタックしていく予定でしたが、前半から相手へのディフェンスで受けに回ってしまい、思い通りの試合の入りができず、前半かなりやられたと感じました。後半は、前半に点を取られ過ぎ、追いつけませんでした」

 

―アタックやスピードの部分で見せるものがあったと思いますが、ご自身のプレーの手応えはどうでしたか?

「関東との試合はなく、関西でずっと試合をしていました。僕の強みがスピードとランだったので、それは今日の試合で個人的にも通用したかなと思いました」

 

―関東の上位校と定期的に試合を組めれば、もっとしっかり戦える部分が出てくる印象ですが?

「去年辺りからコロナの関係で定期戦は少なく、関東がどのようなレベルかを体で感じることができなかったので、定期的に試合をやれば、自分達や相手の強みも理解できるかなと思います」

 

―フェーズを重ねる中で、相手のディフェンスをどう感じましたか?

「相手のディフェンスの傾向として、ブレークダウンを捨てて入らずに、面を多くするので、僕達がアタックしてもゲインを取れず、面がずっと揃っていた状態でしたので、すごいプレッシャーを感じました」

 

―去年、コロナで対戦予定の帝京大学と試合ができず、1年越しの対戦となったことへの気持ちや、去年の4年生から何かメッセージなどはありましたか?

「リベンジマインドをチームで強く持っていて、去年したかった試合ができなかった悔しさがあるので、今日は去年の4回生の分まで戦うというのがありました」

 

和田選手(左)、山口選手(右)


帝京大学 岩出雅之監督

「チャンピオンシップで試合ができる可能性は残り3試合で、一つひとつ勝って行かないと出場権がないため、今日はしっかり引き締めた試合で臨みました。前の試合から3週間ほど空いて、もう少しコンタクトの部分やフィットネスをしっかり上げるのと、ベーシックな部分、チームを超える部分を併せて時間を有効に使えたと思っています。若干、まだケガ人が戻ってきていませんので、今日は急造的なチーム編成の部分もあったのですが、逆に代役が頑張りました。中身として選手達の頑張りを感じ取れた試合でした。引き締まっている部分と、少し点差が開いて集中力の欠けることやケガを心配して見ていたのですが、リーダー陣やリーダー交替後もそれぞれの5~6名のリーダーがしっかり対応して、チームとしては前向きなゲームができたのではないかと思います」

 

―細木康太郎キャプテン、二村莞司選手、本橋拓馬選手の状況は?

「残念ながらコンディションを壊しています。ケガという範囲です。全員、決勝戦、準決勝戦と、どちらでも戻って来れそうな感じで調整しています。どこで使うかは調子によります。代わりの選手達も良いので、『出られないんじゃないか』という位のことを明日以降言いたいのですが、一生懸命治療とリハビリに努めています。僕の顔を見ると『全然大丈夫です』としか言わないので、会話しないようにしています。ドクターとトレーナーさんとの会話を密にしています。細木選手は戻って来られると思います」

 

―代わりに出た選手でパフォーマンスの良かった選手は?

「今日は急造的に作ったチームでしたが、ずっとSHをしていた選手で、少しずつCTB、WTBとかFBもした谷中樹平選手です。今日のMVPだと思います。よく頑張りました。今日は1年生のSH(李錦寿選手)が出ていますが、谷中選手は筑波大戦ではスタートのSHで、その後に色々とやらせていました。もったいないので、どういうはまり方をするか、関東大学ジュニア選手権大会などで使ってきました。公式戦でのFBは初めてです」

 

―新国立競技場で初めて試合を行うことについては?

「新国立は早稲田さんが優勝したときに、協会の人間の一人として色々と見学をさせてもらい、だいたいのイメージを作っています。事前の見学がなければ、そのときの写真を選手達に見せたいと思います。距離感ということがありますが、やる選手達はそんなに違いを感じないでしょうし、芝生がいいので良い動きが出来るのではと思います。緊張するとか慣れないことは、最初の興奮の度合いで消えていきますので、何も心配していません」

 

帝京大学 上山黎哉副将(ゲームキャプテン、FL

「今回のゲームでは、『大学選手権では自分達は初戦』ということで、1年間積み上げてきたこと、やってきたことをしっかり出していこうとメンバーに伝えて試合に挑みました。前半の部分で良い部分や、ポジティブな部分がすごくありましたが、同志社大学の鋭いディフェンスの部分などで自分達のミスや反則が出てしまったところは修正して次に繋げていきたい」

 

―ディフェンスを整備して勝ち進んで来た同志社に対し、どのように準備してプレーしたのか?

「1年間フィジカルの部分などもしっかり積み上げてきた自信があったので、フィジカルバトルの場面で負けないというのは試合前から話をして、そこでは勝てていた時間帯が多かったかなと思います」


岩出監督(左)、上山副将(右)


帝京大学 奥井章仁選手(NO8

「帝京大学は、目の前の同志社大学に対し、80分間気を抜かずに戦い続けることにフォーカスして挑みました。その結果、多く点数を取れましたが、失点の部分でも課題が多く見つかったので、次の準決勝には修正して挑みたい」

 

―試合中に大きな声で指示を出していましたが、どのような目標設定で臨んでいましたか?

「チームとして『コネクト』ということで、横との繋がりをしっかり取っていくことがディフェンスのフォーカスでした。自分が誰をマークするのか、誰をマークして欲しいのかという『コネクト』のところでしっかり喋れたのが良かったかなと思います」

 

帝京大学 志和池豊馬選手(CTB

「今日の試合は、80分間気を抜かずに同志社大学に勝ちに行くことを意識してやりました。個人としても、ディフェンスでしっかりプレッシャーをかけたいと、フォーカスして挑みました。全体的には良かったですが、まだまだ失点に繋がる部分もあったので、準決勝、決勝で勝ち切るために準備していきたいと思っています」

 

―今日の試合は、ディフェンスにフォーカスしてプレーしたのですか?

「はい、今日はディフェンスにフォーカスしました」

 

―今年、ディフェンスを整備して勝ち上がってきた相手へのイメージと、自分のプレーの手応えは?

「同志社のディフェンスに対し、試合の始まる前にタテに強いプレーをして行こうと話があったのですが、自分はタテに行くのが苦手だったので意識しました。タックルを受けて直ぐに倒れてしまうので、もう少し強くゲイン出来ればなと思いました」

 

―今日はビッグゲインも多く、本当はタテに行くのが得意なのでは?

「タテに行くには、内側・外側の相手ディフェンスをしっかりずらしていかないといけません。体重面やフィジカルでは跳ね返される場面が多く、自分としては外で勝負したいし、タテは得意ではないので、パスを貰う瞬間やスピードをつけて貰うところを意識しました」

 

―色々な選手がリーダーシップを発揮しながら1年間チーム作りを進めてきた中、ご自身はどのようなアプローチで参加されていますか?

「上山、押川(敦治)、細木が主にリーダーシップを取ってくれていますが、自分としてはBKで、今のプレーがどうであったかったのかなどのフィードバックをするようにして、プレーの精度を上げることを考えてやっています」


志和池選手(左)、奥井選手(右)