1月2日(日) 準決勝(国立競技場)

第1試合

東海大学 24-39 明治大学  試合情報はこちら

前半3T3Gをあげた明治大学が、後半盛り返した東海大学に一度はリードを許しながらも終盤のトライで再逆転して勝利。2大会ぶり24度目となる決勝進出を果たした。

昨夏にはオリンピック・パラリンピックが行われた国立競技場。約2万の観衆が集まった最新のスタジアムに、試合前BGMの重低音が響き渡る。快晴だが元旦からの寒気が残る中、約半分がスタンドの影に覆われたピッチで明治のキックオフ。

明治は相手に先制PGを許した後の12分、相手陣左ラインアウトからの2フェイズ目でSO伊藤耕太郎からCTB江藤良へのパスと見せ、その裏でブラインドから走り込んだWTB石田吉平がSO伊藤からパスを受け一気にゴールまで疾走。「用意していたプレー」(伊藤)で先にトライをあげた。その後25分には、東海のキックを自陣でキャッチした石田がカウンター。右サイドでWTB松本純弥が前進したポイントから左へ展開。CTB廣瀬雄也、江藤、伊藤、FB雲山弘貴と流れるようにボールが渡り、最後は再び石田が左隅に押さえた。35分にも副将NO8大石康太がトライを追加した明治が3-21と前半で大きなリードを奪った。

前半ほとんどいい場面が作れなかった東海は、後半立ち上がりから盛り返す。相手陣左のラインアウトからFLレキマ・ナサミラがラインブレイク。数フェイズ重ねた後、空いたショートサイドをSH柴田凌光が突いてCTB伊藤峻祐へ。伊藤が右ライン際を走り切って最初のトライ。さらにその後、明治のリスタートキックを受けてから、一気に相手ゴール前まで攻め上がると、CTB丸山凜太朗が左サイドにいたWTB谷口宜顕へキックパス。谷口が粘って左隅へトライ。いずれのゴールも丸山が決め、後半始めの5分間に14得点して17-21と、前半18点あった明治との点差を4点差まで削った。勢いづいた東海は14分にも相手ゴール前スクラムから右に左に攻めた後、SO武藤ゆらぎが相手ディフェンスの間隙を突いてポスト右へ飛び込み逆転する(ゴールも決まって24-21)。

しかし明治は、「準決勝はこうでなくちゃ面白くないだろう」とSH飯沼蓮主将がメンバーを鼓舞し、そこからは「明治タイム」(同主将)となった。直後のリスタートキックからの蹴り合いで雲山が自陣から好キック、50:22(世界的試験実施ルール)で相手陣ゴール前の自ボールラインアウトを得る。雲山は、準々決勝(早稲田戦)同様、局面を大きく打開するキックを見せた。その後の展開で得たPGを廣瀬が決めて24-24のまず同点に。そして26分、相手陣左のラインアウトからNO8大石がファーストレシーバーとなり、SO伊藤へ。「内側のWTBに返す予定だったプレー。でもそこが空いてなかったので自分で」という伊藤がディフェンスを弾いて前へ。伊藤はさらに横へ流れながら次々とタックラーを跳ねのけてゴールまで辿り着き、ゴールも決まって明治が24-31と再逆転。明治は32分にも雲山のゴロキックに反応した齊藤誉哉(途中から出場)がダメ押しのトライ(24-36)、37分には廣瀬がPGを追加して勝利を決定づけた(24-39)。

明治は通算で14度目となる優勝を目指して決勝へ。一方、勝てば第53回(2016年度)以来4度目となる決勝戦進出だった東海。試合後の木村季由監督は、「学生たちは素晴らしかった」とまず選手達を労い、関係者への謝意を表した。悲願の優勝は来季以降に託された。(米田太郎)


■試合後の記者会見

東海大学 木村季由監督

「本日はありがとうございました。前半から、今までやって来たことをすべて出そうと、細かな技術的なことより、やはり強いマインドをもってしっかり試合に臨むことを、キャプテンやリーダーを中心に全員で共有しました。やるべきことは皆、分かっていますので。

しっかりと強い気持ちをもって臨もうというゲームだったのですが、前半、少し自分たちのプレーがうまくいかない所がありました。その中で明治大学さんの勢いが上回ってスコアされてしまい苦しい展開になったのですが、後半からしっかり取り戻した点は非常に良かったと思います。FWでミスが起きたことがきょうの結果に繋がってしまったのかと思っていますが、最後まで本当にやって来たことを出そうと、自分たちにしっかり矢印を向けて戦った学生たちは素晴らしかったなと感じています」

ー後半、役割がスッキリしてシンプルになったように見えたが?

「戦術的に何か変えたということはないのですが、前半から、ああいう形を出して行きたかったというのはありました。前に出る人間がしっかり前へ出て、ボールを動かして行くというプランを大きく変えることはないのですが、敵陣でプレーする時間が短かったこともあって、後半は攻める時間を多くするということはあったものの、何かを特に変えたということはありません」

ー個別に選手が動いたということか?

「やることははっきり分かっていますので。ただ、何かストレスを感じていることが前半あったのかという点についてはハーフタイムに確認しましたけれど、修正できる範囲でしたので」

ー丸山選手のパフォーマンスは?

「怪我をしたのがちょうど日大戦の前あたりで、そこから一旦回復したのですが、同じ部位を痛めるなどで出られなかったので、ちょっと選手権には正直、難しいかなと思いました。奇跡的に治療が功を奏して何とか間に合ったということです。12月26日には諦めたのですが、1月2日であればとここまで引っ張って来ました。彼の場合、入ればチーム全体のいろんな水準が上がることは分かっていたので、合わせるというよりも、そこにいることが非常に重要でした。その点で、きょうは役割を果たしてくれたと思います」

ーFW戦で圧倒できなかったのは?

「そこは、本当にこちらとしては優位性を作らなくてはいけないところでしたが、それは相手あってのことですから。ただ、後半は修正できていたので、前半勢いを得たい所でなかなかそれができなかったことで、こういうスコアになってしまったのかと思います。ラインアウトに関しては、確保はできますが、反則もあって我々の武器であるモールを使うという位置までなかなか攻め込む機会がなかったというのがちょっと残念でした」

東海大学 ジョーンズリチャード剛 キャプテン(FL)

「試合前からずっと、相手は関係なく自分たちにフォーカスすることを練習中からも全員が声を掛け合って意識してきたのですが、きょうは前半、噛み合わなかった部分もありましたが、80分間通して自分たちがこだわってきたことにはフォーカスできたかなと思います」

ーブレイクダウンの所は修正できなかったのか?

「ブレイクダウンの周辺で相手に絡まれてしまうことは、ちゃんとチーム内で話し合って修正する方向へ向いていたと思います」

ー後半、明治の変化を感じたか?

「アタック、ディフェンス共に自分たちのやることは明確だったので、明治さんに攻め込まれたというよりは、ただ、自分たちがディフェンスに切り替わったというだけです。そのディフェンスで何をすべきかということもグラウンドにいる選手の中では明確で、あとはそれをまっとうして行くだけでした。ディフェンスでも仕掛ける意識というのは常に自分たちにもありました。ただ、それをやり続ける時間がなかったと思います」

ー前半、意外とラインアウトモールを早めに諦めたように見えたが?

「モールを諦めるという考え方ではなく、まずスコアをするという判断でした。そして、もう一回取れるチャンスが来たら、自分たちのやってきたモールで攻めるという考え方でやりました」

ーFW戦で圧倒できなかったが?

「セットプレーの所は監督がおっしゃった通りです。前半から勢いを得られなかったというのがあったのですが、ちゃんと選手間で修正する方向へ向けていたのでそこは良かったのかと思っています」

          ジョーンズリチャード剛キャプテン(左)、木村季由監督(右)


東海大学 木村星南選手(PR1)

「前半の入りの部分では、僕らの強みであるスクラムで試合の流れをつかんで行こうとしましたが、相手もこだわりをもっているスクラムで勝負をしたことで、あまり僕らに流れが来ず、ペースをつかめなかったことが敗因かと思います。FWでこだわってきたラインアウトでの相手との競りはしっかり通用していたと思います」

ー相手のFWの印象は?

「ディフェンスで前に出て来られた時に、トップの選手は詰めていた一方でその両隣は空いていたので、そこを狙って行こうという話をしていました」

東海大学 丸山凜太朗選手(CTB 12)

「きょうの明治大学戦では、この1年間自分たちがやってきたことを出そうと、相手ではなく自分たちにフォーカスをして準備して臨みました。前半、点を取れる局面でスコアできなくて、明治大学さんのペースで終わってしまいました。ハーフタイムで切り替えてもう一回自分たちがやってきたことを出そうという話をしたこともあって、後半は点が取れて、そこからもう一本取りたかったのですが、逆に明治さんに取られて、それが敗因かと思います」

ー同点になってから何がうまくいかなかったのか?

「僕らは、強いFWを前に出して敵陣でプレーしようとしていたのですが、相手のキックで蹴り負けて相手のプレッシャーを受けた点です」

ー後半、点が取れたのは?

「前半はあまりアタックをしていなかったので、本当に後半からどんどんボールを動かしてアタックしようという話をしていて、空いたスペースを攻めようとしていました」

ー久しぶりにゲームに戻ったが、ここまでのプロセスは?

「日大戦前に肉離れをしてしまいましたが、選手権の初戦に照準を合わせていました。ところが、治りかけた時に再発してしまって、もう無理かと思ったのですが、皆が協力してくれたのできょうは出られるようになりました。感謝しています。この2年間を振り返ると、面白く内容の濃い2年間であったと思います」

          木村星南選手(左)、丸山凜太朗選手(右)

 

明治大学 神鳥裕之監督

「きょうはありがとうございました。我々としては、新年早々に国立競技場という素晴らしい舞台で学生たちがプレーできたことに本当に感謝したいと思っています。

ゲームについては、タフなトーナメントで一つ一つ勝ち上がって行く選手たちを本当に頼もしく思いながら、試合を見ていました。本当に東海大学さんの最後まで諦めない後半のタフな時間帯も、しっかりと乗り切って流れを取り戻したことを自信に変えて、決勝に向けて準備をしたいと思っています」

ーもう一度、決勝で同じ相手と試合することになったら、どう過ごすのか?

「まだ、(この会見時では)対戦相手は決まっていないので、毎回言っていますが、我々の準備としては、しっかりと今までやってきたことをルーティンとしてやって行くしかないと思います。結果的に相手が分かった時点で、そこに少し加味して準備するだけで、特別な1週間にするより、今まで通りのスケジュールに合わせて、しっかり選手を送り出せるようにしたいと思います」

ー伊藤選手の相手をぶっ飛ばす決勝トライについて、伏線はあったのか?

「確かに、彼のプレースタイルではないようなトライだったと思います。前回の早稲田戦でも本当に激しいタックルで全体を押し返すようなプレーを見せてくれていました。そういった面も含めて、やはり、トーナメントを通じて一人一人の選手が成長しているなと見ていました。本当に彼だけではなくて、一人一人が頼もしく映るようなシチュエーションも多くなってきたと思います」

ー石田吉平選手の負傷の状態は?

「ちょっとまだ詳しいレポートが来ていないので、何とも言えないですが、そんなにひどくはないと聞いています」 

明治大学 飯沼蓮 キャプテン(SH)

「きょうはありがとうございました。きょうの試合全体を通じては、走り回って東海大学さんを疲れさせて明治の持ち味であるクイックテンポで外に振って展開しようと、早稲田戦では、本当にFWに頼ってしまっていたので、きょうはBKで流れを作ってリードして引っ張ろうという話をしていて、それが体現できて良かったです」

ー前半を終わって自分たちのディフェンスをどう思った?

「一人一人、本当に低く刺さって、二人目もしっかり入って、外国出身選手も前に出させないようにして全員動けていたし、自陣でも継続してアタックされている時もあったのですが、この前の早稲田戦での課題であったオフサイドもなかったし、やってきたことがやれているとハーフタイムには話していました。天理戦同様に、リードしていても気を緩めたらダメという話はさんざんしてきたのですが、1トライ目は相手がボールをファンブルしたところにBKが3人寄ってしまって、そこを突かれたもの。2トライ目は自分たちがカウンターラックを仕掛けてボールを取ろうとしてファンブルした所で抜かれてしまいました。そういう面でどこか心の緩みがあったのか分からないですが、今までの課題なので、リードしている時やトライを取ったあと、前半折り返したあとに皆に何て言おうか、そういうことをしっかり考えて次の試合に臨みたいと思います」

ーもう一度、対抗戦と同じ相手と試合をするとなったらどう過ごすのか?

「ファイナルの試合は、やはり細かいところで差がつくと思うので、神鳥監督が春からおっしゃっていた凡事徹底、本当に当たり前のことを当たり前にやる、ルースボールへの反応だったり、一人一人が速く立つことであったり、ゲインされたら全員が帰ることであったり、勝利への執念だったり、そういう面で本当に明治が強くやってきたことをやって行きたいと思います」

ーキャプテンが徹底して声を掛けた点は?

「前半、うまくいっていて折り返したものの、多分、後半にはトライも取られるし同点になる可能性もあるからそこはしっかり心に留めておこうと話しました。でも3トライ目を取られた時は『やはり、準決勝はこうでなくちゃ面白くないだろう』と皆に話して、全員を前向きにして、『これで勝ったらもっと面白くなるし、点数開いて勝つよりもこういうタフなゲームをした方が自信にもなる』ということも話して皆の焦りをなくしました。試合前にも、きょうはタフなゲームになるし、こういうシチュエーションになった時に一つになってやることを決めていつも通りのプレーをしよう、と話し合っていましたし、それができたのが良かったのではないかと思います」

ーきょうのスローガンは?

「スローガンはノーリミットで、自分たちには限界はない。早稲田戦が終わったあとにも言ったのですが、まだまだ成長できる。早稲田戦ではFWでペナルティを取って勝てたのですが、きょうはそうではなく自分たちの武器は他にもあると言って、クイックボールで展開し相手に競り勝つということをきょうの試合で体現できたのは、成長につながったかなと思います。本当に細かいプレー、例えばボールへのセービングだったりゲインされた時に全員で追いかけたり、そういった細かいプレーが勝利に近付ける、勝利の神は細部に宿るということを証明できたのではないかと思います」

ー伊藤耕太郎選手の決勝トライについて?

「耕太郎は(FBからSOへの転向で)経験も浅くて悩んだ時期もあったのですが、一戦一戦、自信が見られて、本来の自分の力をだんだん発揮できてきたのではないかと思います」

ーキャプテンも伊藤選手の弟も花園で活躍しているが?

「弟同士は同学年(高校は別)なのですが、どちらもハーフ団なので、将来、どこかで同じチームでハーフ団を組めたら良いねという話はしました。大学とか、高校代表とかで」

ー後半20分過ぎから、明治のギアが上がったように感じたが?

「本当に明治の強い時間だったし、苦しい時間が明治の得意な時間なので、ここからが明治の試合だよというのを、今までの試合よりずっと強く皆に伝えました。前半の終了間際に疲れが見えていたので、敢えて今がチャンスだと思ってワイドに展開して明治のラグビーができたかなと思います」

ーきょうのスクラムの評価は?

「スクラムはヒットした時に後半は勝っていましたし、一応BKはスクラムで負ける想定もしていましたが、相手の強みのモールもしっかり止めましたし、スクラムでもペナルティを取ってくれてメンタル的にも良かったと思います。きょうはバインドしてからヒットするまでの間(ま)が良かったし、ヒットも負けていなかったし、そのあとのチェイスも良かったと思います。田森がその辺は上手くレフリーとコミュニケーションを取ってくれていたと思います」

          飯沼蓮キャプテン(左)、神鳥裕之監督(右)


明治大学 大石康太 バイスキャプテン(NO.8)

「本日はこのような環境でラグビーをさせていただき、ありがとうございました。チームとしては、勝てたことが何より良かったかと思います。東海大学さんの強い外国出身選手の早い展開にディフェンスする時間も多かったのですが、そこで耐えられたのが一番の勝因かと思います。決勝に向けても、きょう出た課題をしっかり修正して(会見時点では)どちらになるか分かりませんが、良いチャレンジができればと思っています」

ーヘッドコーチと話し合って、何が一番良くなったのか?

「チームとして、今年、クイックテンポでラグビーがしたいというのが元々あった中で、大事なのはクイックセット、速く立ち上がるBIG(バックインゲーム)で、2秒で起き上がるということなのに、2秒で起き上がってはいても、相手に対して前を向けていない、スペースを見つけられていない、というのが課題としてありました。チームとしてはツーウェイアタックと言っていますが、ブラインドサイド、オープンサイドでもスペースがある所にしっかりボールを運ぼうというのが、一番やってきたことかと思います」

ー伊藤耕太郎選手の良くなった所は?

「本当に彼自身も(FBからSOへの転向で)悩むことがあったと思いますが、自信をもつことが一番です。彼は良いモノをもっているので、自分が思っていることを発信して、その思っていることも間違いではないので僕らもそれを信じて、互いに要求をしっかり聴くということで、だんだんパフォーマンスが良くなってきたのかと思います」

ー一週間でどんなことをやって行くか?

「あと1週間でスキルがうまくなるとか、そういうことはあまりないと思うので、今年やってきたBIG、速く2秒で起き上がって前を見るとか、アタック、ディフェンスを続けるということ。相手にゲインラインを越させないとか、ショルダーをしっかりヒットするだとか、そういう細かい点に目を向けながら、1週間準備できたらよいと思います」

ー国立競技場で緊張したか?

「僕自身2年前は観客席にいたので、本当に実際にグラウンドに立つのは初めてだったのですが、チームとしてはできることを協力することができたので、そこはパニックになることなく自分たちがやりたいことができたかと思います」

ー前半、相手が得意なモールを潰したが?

「モールディフェンスに対しては、僕らはクラッシュという技を今回掛けて、相手のモールに対して、絶対点を取らせない、モールを壊すまでプレーをし続けるということを意識してやりました。全員が来ると思っていた場面で全員がしっかり役割を果たしてモールを止めて、ボールを出させなかったので、東海さんに、きょうはモールはできないなという良くない印象を与えられたのかと思っています。おととい、ディフェンスにフォーカスする練習があった際に、早稲田戦であまり良いタックルができなかったというか、高くなって受けてしまった面があったので、チームとしてどういうディフェンスをしなくてはならないのか、ハンティングディフェンスを確認する中で、もっと驚異的なディフェンスをするために、まず味方に付くこと、しっかり肩をぶつけること、レッグドライブを止めないこと、そういう所を意識してやってきたこともあって、きょうは本当にチームとして良いディフェンスができ、我慢比べで東海さんがミスをしてくれたというか、東海さんのミスを待てたと思います」 

明治大学 伊藤耕太郎選手(SO)

「きょうは東海大学さんのFWが強いということで、BKから取りに行くと狙ってトライも何本か取れたので、良い試合だったと思います」

ー決勝トライ、なかなかSOでタックラーを弾き飛ばしてのトライはないと思うが?

「あのサインプレーは、前が空いてなかったので、自分でゲインしようかと思って行きました」

ー大学に入って、あのようなトライはこれまでもあったのか?

「初めての経験だったので、自分でもビックリしました」

ー後半20分以降は明治タイムとキャプテンが言っていたが?

「明治タイムということで、ボールを継続して明治の強みを生かすという形でした」

ーあのムーブは、あそこから放す予定だったのか?

「内に返すというムーブでした。内に返しても相手がいたので、強くキャリーして少しでも立ってFWがやって来れるように、ジャイブしようと思って」

ーその次のプレーは?

「そのあとは外の相手を巻き込んで、次にBKが行ければ良いと外に行ったのですが、そこでもギリギリに耐えることができたので、トライできました」

ーキャプテンがこうでなければ、面白くないよねと声を掛けたそうだが?

「トライを取られた時に、そうおっしゃったので、スイッチが入ったと思います」

ー弟さんが花園で活躍しているが、刺激になっているか?

「弟より先に家に帰りたくなかったので。(笑)」

ーご両親はどちらの応援に?

「きょうは来てくれました。明日は多分、花園です」

ー司令塔として、ツーウェイアタックの鍵は?

「ラックに入った人たちがすぐに帰って来ることによって、順目のアタック人数が余ったり、逆サイドのアタックに行くなど、すごく10番としてもゲームが作りやすくなったので良い感じです」

ー1週間でどういうことをやって行くか?

「きょうはBKが一歩前進できたと思います。でもツーウェイアタックの所では、あまり良いアタックができなかったので、次の決勝戦、BKでも強いアタックができれば良いと思います」

ー国立競技場で緊張したか?

「僕自身、2年前の早稲田と明治が決勝で当たった時は観客席にいたのですが、やはりピッチに立つと声が全然聞こえなくて、とても緊張しました」

ー前半の石田吉平選手のトライと、裏へ転がしたトライは外を意識させていたのか?

「最初の石田選手のトライは用意してきたサインプレーで、トライを取れたのは良かったと思います。裏に蹴ったのは、強いBKの中で相手のどこにスペースがあるのかという良いコミュニケーションが取れたトライだったので良かったと思います」

ー対抗戦のあと、BKで取り切る力を持とうとしたようだが?

「今まで、BKがフェイズの中でミスしてしまった所があり、FWに助けられた部分が多かったのですが、きょうの相手はFWが強いので今度はBKがやらなければいけない試合というのは分かっていたので、そこでアタックの精度や、サインプレーの精度の向上のための練習をしてきました」

          大石康太バイスキャプテン(左)、伊藤耕太郎選手(右)


第2試合

帝京大学 37-30 京都産業大学   試合情報はこちら

京都産業大学のSO家村健太のキックオフから試合が始まった前半3分。帝京大学は左ラインアウトから展開した二次攻撃でFBの谷中樹平がゴールの右隅にトライを決める。SO高本幹也のゴールキックは失敗したものの、立ち上がりから5-0とリードを奪う。

 準々決勝で同志社大学相手に76点を奪った攻撃力を帝京大学が序盤から見せつけるのかという予感を、京都産業大学のひたむきなタックルとDFが押さえ込む。前半13分には準々決勝の日本大学戦で活躍したFBの竹下拓己がPGを決めて5-3と追い上げるが、20分に帝京大学はペナルティから右ゴールライン5mでのラインアウトから展開したボールを右WTB白國亮大がトライ。角度がありGKは決まらなかったが10-3と帝京大学がリードを拡げる。京都産業大学はスクラムでの圧力と、FL三木皓正とソロモネ・フナキ、ラウシー・アサエリの両ロックが突破口となってタテ突進で帝京大学にプレッシャーをかけ、24分にはFB竹下のPGで10-6と迫る。そして30分にスクラムでプレッシャーをかけてSH廣田瞬のパスを受けて縦に入ったCTB12番のジェイミー・ヴァカラヒが走りきってチーム初トライを決めて逆転。FB竹下のGも決まり10-13と3点差をつける。

 前半終了間際の39分、帝京大学ボールのスクラムにプレッシャーをかけ、ペナルティを得た京都産業大学は迷わずショットを選択。FB竹下が決めて10-16とリードを広げる。次のプレーで前半終了と思った場面で、帝京大学にミスが出る。ノット・リリース・ザ・ボールの反則で得たペナルティで陣地を進めた京都産業大学はラインアウトからサイド攻撃を繰り返し、最後は主将の右PRの平野叶翔がトライ。ゴールも決まり10-23。京都産業大学が13点差とリードを広げて前半を終える。今季対抗戦公式戦と大学選手権の準々決勝の計8試合で、帝京大学のペナルティは1試合平均で7。だがこの試合は前半だけで8つのペナルティと1つのFKをとられている。京都産業大学FWの圧力が強かった証拠だろう。

 後半開始まもない5分、スクラムのコラプシングで得たペナルティで帝京大学はタッチキック。22mラインを越えた地点でのラインアウトで、相手オフサイドにより得たペナルティをSO高本が決めて13-23と追い上げる。その4分後には、ラインアウトからFWで攻めてフッカーの江良颯がトライを決めて18-23。SO高本のGも決まり20-23と追い上げる。

ここから京都産業大学はもう一度ギアを入れ直し、帝京大学ゴールラインに迫る。ペナルティやノックオンで後退した後の後半17分、主将の平野が密集から抜け出しこの日2本目のトライ。FB竹下のゴールキックも決まり20-30と再びリードを広げる。

帝京大学はここで先発の右プロップ奥野翔太に替えて、主将の18細木康太郎が出場。直後から京都産業大学が立て続けにスクラムでペナルティを取られる。後半24分、スクラムからサイドを突いたSH李錦寿がトライ、SO高本のゴールも決まり27-30と追い上げる。帝京大学は左PRの照内寿明を17津村大志に入替える。後半終盤に両プロップの入替が生きる。32分京都産業大学のコラプシングの反則からPGを狙った帝京大学SO高本のキックが決まり、試合は30-30の振り出しに戻る。試合再開の直後、京都産業大学の入替出場のCTB西仲隼が反則の繰り返し(チーム)でイエローカードを出され10分間の一時退場で試合終了までゲームに戻ることができなくなる。一人少なくなった京都産業大学はスクラムでコラプシング。タッチキックを選択した帝京大学がゴール前でのラインアウトを押し込み、38分WTBミティエリ・ツイナカウヴァドラがトライ。ゴールも決まり37-30として、逃げ切った帝京大学が2017年度以来の決勝進出を決めた。

 後半に入ってから、自らは反則を犯さずに、再三にわたって京都産業大学からペナルティを引き出していた帝京大学の修正力と、強烈な圧力は決勝でも大きな武器となるに違いない。

 一方で、大学選手権準々決勝を含めての公式戦計8試合で対戦相手にリードを奪われたのは3試合、時間にして20分間。決勝で対戦する明治大学や、早稲田大学でさえ、リードを奪えなかった帝京大学に対し、前半30分から後半30分まで40分間以上リードを奪った京都産業大学の奮闘も22,546人の観客の記憶に残る素晴らしいものだった。(高林功)


■試合後の記者会見

京都産業大学 廣瀬佳司監督

「帝京大学の関係者の皆様、協会関係者の皆様、本日はどうもありがとうございました。15大会ぶりにベスト4ということで、なんとか歴史をつくりたいという気持ちでした。強豪の帝京大学相手でしたが、京都産業大学らしさを全面に出して戦ってほしいと送り出し、本当に80分間、学生はひたむきに前に出続けて、帝京大学に向かって行ってくれたというところには、見ていて非常に頼もしく思えました。後半は、スコアで上回ることはできませんでしたが、来シーズン、次の学年が、今年の成績を目標に頑張ってくれると思っています」

―倒れずにアタックし続け、帝京から30点をとった攻撃については?

「フィジカルにダイレクトにプレーすることを意識し、強いランナーを帝京のディフェンスにぶつけることで前に出られたと思います。そこでできたスペースをうまくつけていたのが通用したと思います」

―スコアと内容に、どのくらい関東のトップと差があると感じましたか?逆転可能なのか、実感をお願いします。

「きょうの学生の頑張りは素晴らしかったと思います。十分に勝てるチャンスがあると思います。どんな戦力であれ、どんな環境であれ、優勝を狙う集団であるというのがチーム理念なので、毎年頑張っていきたいと思います」

京都産業大学 平野叶翔主将(PR) 

「きょうは前半の入りから、京産らしさを全面に出して精いっぱい戦った結果が前半には表れましたが、後半に修正してきた帝京に対しては、僕らの力が及ばなかったと思います。セットプレーであったりフィールドの部分であったり、今シーズン1年積み重ねてきたものが、目いっぱい出たゲームだと思いますが、こういうスコアになってしまったので、まだまだ僕らが足りなかったのだという意識を持たせてくれました。それを含めてこの舞台で戦って後輩に経験をさせることができたので、僕の大きな役目は果たせたのかなと思います」

―試合には負けましたが、自信になった部分も多いと思います。実感としてはいかがでしょうか?

「勝利を目指してやってきたので、足りなかったという実感だけです。セットプレーはまだまだだな、と思いました。関西にはない外に連続してアタックしてくるところに対して反則が多くなり、エラーが出て失点に繋がったと思います」

―反則を多くしてしまったのはなぜだと思いますか?

「ディフェンスで前に出られず後手後手になってしまったことが、反則の多さに繋がってしまいました」

―スクラムは前半非常によかったが、後半苦しくなりました。どういう変化がありましたか?

「細木君が入って厳しくなった点はあります。修正しながら対抗していましたが、細かいところの技術や地力の点で相手の方が強かったのかと思います」

―試合後細木君とお互いを讃えあっていましたが、どのような会話をされたのですか?

「スクラムの中でお互いキャプテンということもありコミュニケーションをとっていました。僕らは託すことしかできないので頑張ってくれ、と伝えました」

―去年天理大が優勝して、関西のチームにはどのような影響がありましたか?

「勇気をもらい、身近なチームが優勝すると、そこを倒せば優勝が見えるという実感がでてきました。やっていることは間違っていないと思い、しっかり力を出そうと思いました」

―倒れずにアタックし続け、帝京から30点をとった攻撃については?

「一週間前にコーチ陣がしっかり分析してくれて、どうやってアタックするか統一できました。少しのスペース、ギャップをつくアタックをする意識が高かったと思います」

―レフリーとスクラムについてどのようなやり取りをされましたか?具体的に

「帝京のスクラムについて組みづらい部分があったので、どういうレフリングでどこまでOKなのかしっかりお聞きしました。レフリーはレフリングに対する明確な理由を説明してくれていて、ギャップやバインドの部分も含め、コミュニケーションをとってくれてやりやすいレフリングでした」

―今後日本一のスクラムを組むために、後輩にはどのようなアドバイスをされますか?

「上には上がいるので、現状で満足せずに高みを目指して頑張ってほしいです」

          平野叶翔主将(左)、廣瀬佳司監督 (右)


京都産業大学 三木皓正選手(FL)

「本日は応援ありがとうございました。きょうの試合はプラン通り進めることができて、最後に逆転されましたが、京産らしいラグビーは見せられたかなと思います」

―フィジカルに関して大きく強い帝京と、実際当たってみた感触は?

「帝京のフィジカルは強かったですが、自分たちが1年間積み上げてきたものと、個人として積み重ねてきたものは裏切らない、と思ってグラウンドに上がり、実際に関東に、帝京に通用する、と前半の最初で思いました」

―帝京大学が盛り返した時は、どのような状況が起きていたと思いますか?

「帝京が後半に巻き返してくるのはわかっていたので、自分たちも一歩も引かないと思ってグラウンドに出ました。ただFW戦で優位に立たれて、自分たちのミスからスクラムに入り、スクラムで負けて、負のループに入ってしまったのが、この試合の負けのポイントと感じています。フィジカルでは互角に立ち合えたかもしれませんが、セットプレーがまだ課題となっています。後半突き放されるというのは、フィジカルに強い相手と当たり続けてスタミナが落ちたためなので、もう一段階ストレングスを強化し、且つスピードある選手になりたいと思います」

―昨年よりも選手権を長く戦うことができ、その分成長したところは、どのようなところですか?

「昨年はいろいろなスピードで負けていて、個人としても課題に残るシーズンでした。今シーズンは試合を重ねるにつれて、コンタクトやスピードがマッチして、今日もいいゲームができたので来年更に飛躍できる可能性を感じました」

―関東に何回も来たり、正月を越えたりと、生活面ではどのようなことを感じていますか?

「長く戦えることはもちろん、4年生と長く居られて楽しかったですし、ゲーム感覚のマインドセットもうまくできて、来年につながるシーズンだったと思います」 

京都産業大学 船曳涼太選手(WTB)

「負けてしまって悔しいという気持ちでいっぱいです。個人のミスも多く、チームに貢献できることもあまりできなくて負けてしまったので、来年も、もう一度国立に立って笑顔で終わりたいです」

―一番悔やまれるのはどのシーンですか?

「前半にゴール前で抜かれたシーンです。自分のディフェンスの甘さが出てしまったので悔しいです」

―昨年よりも選手権を長く戦うことができました。その分成長したところは

「昨年は大学ラグビーに通用するところがあまりなく、今年はスピードもフィジカルも少しずつ通用する部分が見られてきたので、来年は今シーズン課題に見えたディフェンスをしっかり練習して、がんばりたいです」

―関東に何回も来たり、正月を越えたり、生活面ではどのようなことを感じていますか?

「引退している選手がいるチームが多い中、お正月を越えて4回生とラグビーができて嬉しく感じています」

          三木皓正選手(左)、船曳涼太選手(右)


帝京大学 岩出雅之監督

「きょうの試合は、スコア、試合の流れを見ても、そのまま選手たちの心の状態が出ていました。すなわち、気持ちは入っているし、やる気はあり前向きな状態のところがある一方で、ここまで厳しいゲームを経験していなかったので、そこから来る気持ちのスキというようなものがあるのを指導者としては恐れていました。そんな中でも厳しさの方が出てくれるように期待をしてきましたが、予想以上に京都産業大学の勢いが良く、前半は厳しさのあるタックルができていなかったと思います。ハーフタイムに自分たちのできることを見直して、きちっとしたプレーをするように送り出しました。後半はしっかり立て直してくれ、根気強くやってくれたと思います。その意味できょうの試合は次の決勝戦に向けて欠かすことのできないゲームになったと思います。京都産業大学が、我々をもう一度厳しいプレーヤーの集まりにしてくれたと思います。結果的に成長できる内容のゲームだったと思います」

―次の決勝は対明治大学です。対抗戦で明治大と対戦してから時間が空いていますが、次の試合で大事にしなければいけないところは?

「(細木キャプテンに先に質問に答えさせて、細木キャプテンの言った)その通りです。」

―帝京大学としては4大会ぶりの決勝の舞台となります。今年、ここまで勝ち上がれたチームの力をV9当時のチームと比べてどのように感じますか?

「当時のチームと比べなくてもいいと思っています。(過去の連覇のことを)今の学生にそれほど意識させていません。連覇の時も素晴らしいキャプテンばかりでしたが、細木のキャプテンシーは本当にチームをたくましくしてくれています。3年間、決勝戦に出られませんでしたが、その中で、また以前と同じステージに出られると言うことは、学生たちを讃えたいですし、学生たちもその素晴らしさを感じていると思います。目の前のことをしっかりやって、そして喜び、しっかりエネルギーを蓄えて決勝戦に臨みたいと思います。今シーズン一番元気な状態で、一番成長できると実感できるゲームにしたいと思います」

―細木キャプテンの投入のタイミング(後半20分だった)は予定通りだったでしょうか?

「本人は10分~15分くらいは出たいと言っていましたが、できたら、5分くらいにしたいと思っていました。クロスゲームになっていたので、そこ(細木の投入)が一番の分かれ道だろうと思い、後半20分くらいのところで(入替の)チャンスが来ました。(選手を投入しようと)思ってもなかなかそのタイミングには時間がかかるのですが、帝京大学としてはあの時点で勝利を確信できるようなキャプテンの出番になりました」
 帝京大学 細木康太郎主将(PR、18番)

「きょうの試合は負けたら終わりのトーナメント戦で、ファイナルに進みたいという気持ちもありましたが、まずは目の前の試合、京都産業大学との戦いに集中しようということを意識して臨みました。ゲームの中で甘い部分があり、自分たちのスキ、気を抜いてしまうことが多くあり、前半はリードされてハーフタイムになりました。ハーフタイムにグラウンドに立っている選手たちがポイントを押さえて話をしてくれて、『後半から前半とは違うチームになって出て行こう』と言ってくれて、その言葉通り、後半から痛いところや苦しいところで頑張れるチームになれたかなと思います。結果として点数で勝ち越すことができたのも、僕たちが自分たちの力を信じてやってきた結果だと思います。僕としてもチームとしても自信をつけられたゲームになりました」

―後半20分、入替でグラウンドに入ったときの思いは?

「僕がグラウンドに入る前から、グラウンドに立っている選手たちは前半とは違う雰囲気になっていて、僕がグラウンドに入ってからは、僕のケガからの復帰戦ということもあったので、皆、僕を温かく迎えてくれて、その時の皆の顔や掛け声は『ここが勝負だ』という何一つ負けることのない空気感でした。『このグラウンドに立っている選手全員で勝てる』と思いながら、ファーストスクラムに臨みました。京都産業大学のスクラムは少し変わっていて、3番が2番とのオーバーバインドのところで3番が仕掛けてくると、事前に分析していました。本当にその通り、京産大の3番の選手がスクラムを組んで動いてきて、それに対して、僕たちも少し修正できずにしっかり組めないことがあったのですが、僕が入ってからはスクラムでのその動きをキチッと止めるような姿勢の取り方を、僕自身と2番の江良、1番照内、後半入った17番津村とショートトークして対応したので最後のところでは少し安定できたかと思います」

―キャプテンがグラウンドに入って、皆が前を向いている状態の時に選手たちに何か言葉を掛けましたか? 

「僕がグラウンドに入った時はスクラムのシーンだったので、バックスからも『ここでペナルティ取ってくれ』とコールもあり、フォワードでも皆が僕の強みのスクラムを信頼してくれて、『ここでペナルティを取ろう』と言葉を掛けてくれたので、グラウンドに入ってからそして言葉を掛けられてから僕の中で一段階ギアが上がって、スクラムに集中できました」

―次の決勝は対明治大学ですが、対抗戦で明治大と対戦してから時間が空いていますが、次の試合で大事にしなければいけないところは?また、明治大の印象は?

「明治大学だからといって自分たちが変わることはなく、今シーズン1年間積み上げてきたもの、帝京大学としてのプライドを持って1年間貫いてきたことをゲームにすべて出すだけだと思います」

―(後半20分にグラウンドに出たときは)気持ちの盛り上がりというか、どのようにスクラムで勝ってやろうというと思いましたか?

「先週からスクラムのライブの練習に参加しました。久しぶりに(味方でない、敵の)相手とのスクラムを組んで、帝京とは違うプレッシャーのかけ方や、いろいろな駆け引きがありました。僕はスクラムにプライドを持っているので、絶対勝とうという思いもありましたが、やはり面白さ、楽しさを感じました」

―後半32分に同点のPGを狙いましたが、あそこでスクラムを選択せずショットを選択したのは?

「点差と自分たちの得点パターンについては、その時はSO高本に任せていました。スクラムを選択していれば、また僕はスクラムをプッシュしていたと思います。高本がキチンとPGを決めてくれたのは大きかったです。同点の場合はトライ数差で帝京大が次に進めることになるのは理解していました」

―ノーサイドの後、京産大の平野キャプテンと言葉を交わしていましたが、何を話していたのですか?また、細木選手はリハビリ期間中に試合に出たくてウズウズしていたのでは?また、リハビリ期間を経て試合に復帰できた気持ちは?

「平野とはスクラムの話を少ししただけです。平野君は僕に『スクラム強かったな。決勝、がんばれよ!』と言ってくれました。僕だったら負けに打ちひしがれて何も言えなかったのではないかなと思いますが、相手ながら、負けたチームのキャプテンながら勝ったチームに声を掛けてくれるのは、心の強い人だと思いました。リハビリからの復帰ではチームのサポートが大きかったので、今日ラグビーができました。本当に感謝しかありません。体力的な面でも少し不安な面もありましたが、ハーフタイムが終わってから『後半20分から行く』と言われ、僕自身も気持ちを整理でき、最終調整としてコミュニケーションを図り、いいかたちでゲームに入ることができました」

帝京大学 奥井章仁選手(No.8)

「キャプテンが言ったとおり、目の前の京都産業大学戦に80分間力を注ぐことにフォーカスしてやりました。前半に相手の力強いところを受けてしまったということを、前半ゲームに出ていないメンバーからも言われましたし、自分もそう感じていましたが、そのところをハーフタイムにしっかり修正できて、後半しっかり体を当てることができました。それがきょうの勝利に繋がったと思います」

―奥井選手は苦戦した前半から出場していましたが、スクラムや接点で京産大がこのくらいはやってくるとは予想していましたか?また、前半は反則が多かったですが、後半の反則は非常に少なくなりました(注:帝京大の反則数:前半8,後半0)が、後半に向けて意識したことはありましたか?

「体を当ててくるのは想定内でした。自分たちのプレーをしっかりできていなかったことが、前半しっかりゲームを作れなかった原因だと思います。レフリーと話をして、オフサイドのペナルティが多いと言われ、その原因として最初の立ち位置がオフサイドになっているということをハーフタイムに話をしました。立ち位置からしっかり戻ってディフェンスしていこうと選手たちで話をしました。これもいつも練習から取り入れている点なので、しっかり修正できたのだと思います。レフリーとしっかりコミュニケーションを取ることで、次の修正にも繋がったと思います」

―(後半13分頃)ゴール前で京産大14番(船曳選手)にトライされそうになったシーンでは奥井選手がナイスディフェンスのタックルで防ぎましたが、あそこではどのようなことを考えてプレーしましたか?

「僕も必死で、ここでトライされたらダメだという思いでした。自分はバックローなのであのようなところで仕事をやらなければいけないと思いタックルに行きトライセーブできました」

―キャプテンがグラウンドに入って、皆が前を向いている状態の時に選手たちは何か言葉を掛けましたか?また、その時奥井選手はその時、どのように感じましたか?

「細木キャプテンが入ってきたときには、僕も一言『スクラムお願いします』と言いました。それだけでしたが、それで細木さんは眼の色が変わってスイッチが入ったみたいで、そこでスコアまで持って行けたのは良かったと思います」

―後半、細木キャプテンが入ってきたことがチームにもたらした影響はどう感じましたか?

「細木キャプテンはきょうの試合だけでなく、1年間チームの先頭に立ち続けてくれたのが大きいと思います。きょうの試合に出てくれたときには、安心感がすごくありました」

―きょうは選手たちのひたむきな気持ちがいかに大事かということを教えてくれた試合でした。しかし、前半は帝京大が先にトライを取った後、すこし受けてしまったと感じましたが?

「特にそういう気持ちはなかったですが、どこかにそのような気持ちが出てしまったかもしれません。トライした後、ハドルを組んだ中でも、『気を抜かずにもう1回丁寧なプレーをしよう』と話はしていましたが、どこかで気が抜けたところはあったとは思います」

          細木康太郎主将(左)、岩出雅之監督(中央)、奥井章仁選手(右)


帝京大学 高本幹也選手(SO)

「きょうの試合はディフェンスで少し受けてしまいました。前半は少し京産大の勢いにのまれたところがありました。後半も京産大に一つトライを取られましたが、しっかり修正できて、いいディフェンスができたと思います」

―きょうのようにかなりのハードヒットをくらうゲームは、これまではなかなか帝京大としてはなかったと思います。また、事前分析はしていたとは思いますが、きょうのような苦戦は予想していましたか?

「想定はしていましたが、前半、僕たちの気持ちがあまり入っていなかったので相手に差し込まれるシーンが多くありました。次の試合ではそういったことがないようにしっかり準備していきたいと思います。僕たちがファーストトライを取って、皆が『いけるだろう』と思ってしまったところが現れたと思います。京産大のあたりは結構強く、僕もヒットした時には『結構、くるな』とは感じました」

―前半は反則が多かったですが、後半の反則は非常に少なくなりました(注:帝京の反則数:前半8,後半0)が、これについて、高本選手からハーフタイムなどに選手たちに話したことはありましたか?

「前半が終わったときに、チーム皆を集めて、『ノーペナルティでいけば僕たちのかたちが出せる』と、ノーペナルティのところは全員に意識させました」

―終盤、ずっと追いかける点差になっていたとき、焦りはありましたか?

「焦りは特にありませんでした。どうやって点を重ねようか、どうやって相手を攻めようかと考えていたので、最後7点差で勝つことができたと思います。修正点が多く見つかったという意味でいい試合だったと思います。チャンスが少ない中でアタックのミスをすると、相手にチャンスを与えてしまうので、数少ないチャンスでしっかり攻めきるというところを、来週の試合では大事にしたいと思います。1年間通して激しいコンタクトやフィットネスにこだわった練習をしてきたので、後半に落ちることはないと思っていました。しっかり後半にギアを上げてアタックしやすくなりました」

―後半(20分頃)、勝負所で細木キャプテンが入ってきましたが、見ていてもチームの盛り上がりを感じました。中にいる選手たちはどういった雰囲気で受け止めたのでしょうか?

「細木キャプテンが試合に入ってきてくれて、『スクラムは行けるな』と思い、スクラムを中心に相手を崩していこうとプランを変えました。それまでのスクラムは五分五分でしたが、細木キャプテンが入ってからはスクラムでペナルティを取っていこうとなりました。いつもの試合でも細木キャプテン中心にスクラムを押してくれます。僕たちバックスにとってはとても頼もしい8人だと思っています」

―(後半32分)3点リードされているときにPKでショットを狙い、負けをなくしましたが、そこでの判断は?

「3点取って同点にしておくと、皆の気持ちとしても楽になりますし、しっかり同点にしてそこからしっかり攻め直そうというゲームプランに変えました。3点取って同点になればトライ数で上回るので同点のままでも勝てるというのはわかっていました。」

―細木キャプテンが今日の試合にリザーブながらもメンバー入りしたことは、メンバーにはどのように感じましたか?

「頼もしい細木キャプテンはチームを鼓舞してくれます。細木さんの存在は大きいのでこのまま決勝でもチームを引っ張ってくれると思います」

           高本幹也選手