PRハイマンが圧力をかける強力なスクラム、HOオリバーが投げ入れる巧みなラインアウトを足場に地域、ボールともクラシックオールブラックス(CAB)に立ち上がりを支配されていたジャパンは前半15分、自陣10mライン左のスクラムからブラインドサイドのWTB小野澤にゲインラインを超えさせた後の折り返しラインで、CTBニコラスのディフェンスライン背後へのキックが右WTB遠藤に繋がりファーストトライ。その後もジャパンはニコラスを中心にしたディフェンスやブレイクダウンで対抗し、前半終了直前のラインアウトモールからオリバーにトライ(G成功5-7)を奪われるまで試合をリードした。 そして後半の始め、両チームの切り札WTBのランに、なかなか降り止まぬ雨に肩を狭めていたスタンドのファンも大いに沸いた。まずは7分、CAB SOナゼワの短すぎたキックをジャパンBKがファンブルしたところへ鋭く走り込んだCTBマクラウドからFBスペンサー、そしてWTBハウレットへとボールが繋がる。つい1週間前にはハイネケンカップ決勝に出場、欧州No.1クラブの一員となったハウレットは、ジャパンCTB今村、遠藤を振り切り国立競技場のインゴールにもボールを置いた。しかしその後のリスタートプレーで小野澤が見事なトライをお返しする。CABのノータッチをライン際で受けると、狭いスペースの中でハウレットをかわし、ナゼワのアンクルタップに倒されながらもインゴールへ滑り込んだ(10-12)。 その後もジャパンは果敢に攻め続けたが、両チーム1PGずつのみで2点差のままでタイムアップ。惜しくも"金星"を逃した。 ジャパンは活躍した小野澤以外にも、今やサントリーの大黒柱であるニコラスはジャパンBKの要になりつつあり、また正確なスキルや適格な判断を見せたSH田中は先日の代表デビューから一気にテストSHの座を獲得しそうである。(米田) JAPAN XV 13-15 クラシック・オールブラックス(5月31日(土)14:00 at東京・国立競技場) ◎Classic All Blacks ○W.シェルフォード 団長 「タイトなゲームができました。ジャパンXVは素晴らしいトライも見せてくれました。最後に2点差をつけて勝つことができたのは良かったです。もう一つ獲られたら危ないところでした」 ○P.スローン 監督 「ジャパンXVはよく訓練されていました。特にディフェンスは素晴らしかった。また、アレジのコーナーへのキックなどは、戦略的にも優れたパフォーマンスで、ジャパンXVは勇気づけられたことでしょう。我々もこのジャージを着たときの勝つことの意味を考えさせられ、良いレッスンを与えてくれました」 ○A.オリバー キャプテン代行 「ジャパンXVはフィジカルで身体を張ったプレーをしていました。特にディフェンスは我々よりも優っていたと思います」 ──対戦してみて予想と違っていたことは。 ○A.オリバー キャプテン代行 「ワールドカップでジャパンが良いチームであることは知っていましたし、その成長もある程度予測できたのですが、チーム一体となったプレーやチームスピリットが予想以上でした。今日の試合で勝つことができたのはスクラムで勝てたからにすぎません」 ──ハンドリングミスが多かったが、晴れていたら。 ○A.オリバー キャプテン代行 「難しい質問です。Classic All Blacksも効果的なバックスラインを使ったでしょうが、同じ事はジャパンXVにも言えますから」 ──パシフィックネーションズカップに向けて。 ○P.スローン 監督 「ジャパンXVはスクラムに進歩が見られました。今日の試合では我々のFWが経験豊富で、世界一と言われる選手もいる中で、スクラムを抑えるのが当然と思われていましたが、強くなっていると実感しました。パシフィックネーションズカップは楽しみです。また、JKの下で、セルフビリーブがいかに大切かを理解しているようです」 ──1987年の対戦と比べて。 ○シェルフォード 団長 「当時とテクニックもスタイルも違うので、比較は難しいのですが、ジャパンXVは強くなったと思います。着実に、非常に進歩しています。ワールドカップを経てステップアップしている印象を受けました。特にラックは世界で日本が一番低く入ってくると思います。北半球でも、スーパー14でもできない大変良い経験をさせてもらいました」 ◎JAPAN XV ○ジョン・カーワン ヘッドコーチ 「まず、選手全員が非常に頑張ったと思います。ストラクチャーについては改善が必要ですが、よくタックルしてくれて、パシフィックネーションズカップに向けての完璧な準備ができたと思います」 ○箕内拓郎キャプテン 「できれば勝って、今までやってきたことに自信を付けようと臨んだ試合でした。新しいメンバーとギャップがあって苦しむかと思っていましたが、選手はよくやってくれました。来週からの試合も頑張ります」 ──ストラクチャーを詳しく。 ○カーワン ヘッドコーチ 「特にスクラムです。Classic All Blacksに対してプレッシャーをかけて、わざと引っ張ったり回したり、レフリーをコントロールしようとしましたが難しかった。今後、マネジメントしていくことが必要です。ラインアウトもアタックしていくのかコンテストしていくのか考えていきたいと思います」 ──手応えがあったプレーは。 ○箕内キャプテン 「一番大事なのは、こうした競った試合の経験です。今日の試合がゴールじゃないことを選手が認識してくれていて、点差の少ないゲームができました。また、今日はブレークされても一人一人が集中して、ワンオンワンのディフェンスができ、身体を張って規律を守ってくれました。そこは満足しています」 ──残り5分で2点差、勝つプランは。 ○箕内キャプテン 「まず、敵陣でしっかりプレーをすることでした。相手も自陣で反則をせず、規律がしっかりしていました。僕らがダイナミックにボールを動かせばトライが獲れたかもしれませんが、経験から言って、まずは敵陣で試合をすることです。選手は皆、勝つつもりで、自信を持ってプレーしていました」 ──手応えは。 ○カーワン ヘッドコーチ 「まず、大畑がいなくても、今日のウィングの二人はどうだったでしょうか。世界のトップ選手に対して、遠藤はあのようなアタックを見せてくれましたし、小野澤も素晴らしいトライを決めてくれました。ライアンもビッグヒットでチームを鼓舞してくれました。コリ、箕内、ハリの3人もよくやってくれました。前半の1回しかなかった田中の抜いた右サイドのチャンスで獲っていれば、前半は10-0か12-0で終わっていたと思います。選手のことは本当に誇りに思っています。一生懸命ディフェンスしてくれました。また、10分間、ゴール前に張り付いていた時に、あきらめないでくれたところです。今日も試合が終わって箕内と『もう少し』とお互いに言いました。あと少しで勝てる試合でした。自信を持って前に進んで行きたいと思います」 ──田中選手の評価は。 ○カーワン ヘッドコーチ 「世界で一番小さいが、最高のハートを持った選手です」 ──最後に攻めきれなかったが。 ○カーワン ヘッドコーチ 「違います。今日はそうは思いません。最後までどちらが勝つか分からない試合でした。相手の5人はワールドカップ出場選手にもかかわらず。オリバーが久し振りにきつい試合だったと言ってくれたことからも分かります」 ──IRBパシフィック・ネーションズカップの具体的なターゲットは。 ○カーワン ヘッドコーチ 「まず、今日のパフォーマンスで細かいところを見ていきます。結果より中味です。コーチとして、私はいつも勝ちたい。全部勝ちたい。そういう人間です。勝ちにこだわっていきたい」 ○箕内キャプテン 「全試合、勝ちに行きます。今日の試合を見てくださったら、そういう発言をしても、信じてもらえる選手たちです。本当にすごいと思います」 ──円陣で何を。 ○箕内キャプテン 「勝てた試合だったと。勝たなきゃいけなかったと。自信を持って、それをどう出すか。明日から切り替えてほしいと言いました」