第1試合 早稲田大学 34-19 東洋大学 マッチレポート

39大会連続56回目出場の早稲田大学が、初出場の東洋大学の勢いに苦しみながらも66分(後半26分)にWTB槇瑛人のトライで逆転、その後も1T1G1PGを加えて勝ち抜いた。25日の準々決勝では、今月4日の関東大学対抗戦(早稲田21-35明治)で苦杯を喫した相手、明治大学と再戦する。

 

早稲田は15分、相手が中央付近のスクラムから仕掛けてきたプレーの途中でSH宮尾昌典がインターセプト。そのままゴール中央へ走り込んで先制した。しかし29分にはマイボールラインアウトを奪われたところから相手BKに走られ同点にされると、前半終了間際にもラインアウトモールから相手にトライを与え、前半を7-12とリードされての折り返しとなった。

早稲田は大田尾竜彦監督が試合後に「予定通りではなかった」と説明した後半頭からの入替で、この日ベンチスタートだったHO佐藤健次とLO前田知暉のレギュラーFW陣を投入する。しかし始まってすぐ、またもラインアウトモールから相手にトライを献上し、7-19と引き離されてしまう。「正直焦っていた」(CTB吉村紘主将)という状況の中、主将自ら相手の勢いを断ち切るプレーを見せる。中央付近のマイボールスクラムから宮尾が持ち出し絶妙なタイミング放ったパスへ直線的に走り込むと、吉村はゴールへ一直線。ゴールも決めて14-19と差を戻した。その後吉村のPGで2点差まで詰めた後の66分には、ボールを大きく動かし、後半からの出場でFBに入った伊藤大祐が再三ライン参加。最後は丁寧なラストパスを槇へ送り、槇が右隅に飛び込んで逆転。吉村はこの難しいキックも決めて24-19と逆に5点をリードした。この日吉村はGとPG合わせた6回のキックを全て成功させた。さらに73分、再びライン参加した伊藤の長いパスを受けたWTB松下怜央が左コーナーにトライ(ゴールも成功)。終了間際にもPGを加え、早稲田に常にかかってくる「ここで負けてはならない」(吉村)というプレッシャーを乗り越えた。

 

敗れた東洋は、関東大学リーグ戦の初戦で前年覇者=東海大学を破るなど、29年ぶりに復帰した1部で5勝2敗という好成績をあげ、同リーグ3位に食い込んでこの日を迎えた。

「セットプレーやモールで自信を持った」(LO齋藤良明慈縁主将)というFWが相手に圧力を掛け、SO土橋郁矢はスパイラル回転のハイパントを多用して相手を攪乱しようとした。FB田中康平やSH神田悠作らの好走によりBKでもトライを挙げるなど前半を優位に進め、後半立ち上がりには7-19までリードしたが、「もう一本ほしかった」(福永昇三監督)ところで失速してしまった。今季これまで快進撃を続けてきた、福永監督と部員達の今年の旅は終わった。


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第1試合 記者会見レポート

▼東洋大学共同記者会見

福永昇三監督

「本日はありがとうございました。選手は精一杯力を出しきってくれました。隣にキャプテンがいますけど、本当にお疲れさまでしたという気持ちです。そして今日は本当にたくさんの人が応援にきてくれて、すごく期待をしてくれた中で、残念な気持ちはありますけど、選手たちは自分たちの力はしっかり出せたと、そう思っております。今日は本当にありがとうございました」

 

―今日の試合ですが、少し体力的には厳しい試合だったでしょうか?

「体力的な部分とメンタル的な部分と、これまでに経験したことがない舞台ですので、さまざまな影響があったと思います」

 

―今日のような試合を勝ちきるには来年以降どんなことが必要でしょうか?

「今日の会場での経験も含めて準備段階からいろんな経験が必要なチームだと思いますので、今日経験出来たことは、先ず何よりもチームとしての収穫だと思います。ですので、これからチームがどんどん良くなっていくための準備を進めたいと思っております」

 

齋藤良明慈縁主将 (LO) 

「本日はお越しいただきありがとうございます。今回の試合を出来たことに感謝の気持ちでいっぱいです。去年まで2部でやっていた自分たちが大学選手権に初出場出来て、しかもその相手は大学ラグビーの歴史をずっと築き続けてきている早稲田大学という名門中の名門のチームと全力で戦えることに感謝の気持ちでいっぱいです。でも、やっぱり、悔しいです。自分たちは日本一になるためにトレーニングを積んできたので、それを果たせなかったのが悔しいです。でも、まだ東洋大学ラグビー部は続いていくので、自分たちの代は終わりましたけど、これからの東洋大学に期待していただければ幸いです」

 

――後半途中にトライを取ったあとくらいから少し動きが落ちてきたようにみえましたが?

「フィジカルやセットプレーは自信を持ちながら戦えたのですが、後半のラスト20分くらいはすこし足が止まってきたのかなと思いました。相手の修正能力も凄くて、うちが走らされて動きが少し止まってきたところを外にふられたりして。相手の修正の仕方がとても上手だと思いました」

 

――後輩たちにはどんなことを伝えておきたいですか?

「3年生以下の部員たちにもポテンシャルを持った選手たちがたくさんいるので、伝えたいのは気持ちだけです。強い気持ちを持って、メンバーにからむ選手だけではなくて、チーム全員が高い意識を持って、同じ方向を見てやっていくことが出来れば、これからも全国の舞台でも戦えると信じていますので、気持ちの部分が大事だと思います」

齋藤良明慈縁主将と福永昇三監督


▼早稲田大学共同記者会見

大田尾竜彦監督

「今週の試合に対して、選手達には非常にプレッシャーがあった感じではありましたが、しっかり1週間準備をして、それに打ち勝ってくれたことがとても誇らしく思えます。チームとして大きく成長できるような試合でしたし、いい準備ができた結果だと思います」

 

―監督からはハーフタイムに特別な指示をしましたか?

「『反則をしないこと』だけです。あと、後半にリザーブの佐藤健次、前田知暉、伊藤大祐

を入れて、どこかでギアは変わるだろうと思っていました。内容自体は前半もそんなに悪くはなかったので自分たちの時間が必ず来るだろうと思って選手達を送り出しました」

 

―後半最初から佐藤選手、前田選手を投入しましたが、これは予定通りのタイミングだったのでしょうか?

「『予定通り』ということではなかったです。もう少し引っ張れるかなと思っていました。前半のセットプレーでは決して劣勢ではありませんでしたが、ああいう取られ方をしてしまったこともあり、佐藤を早めに出しました。また、前田にはラインアウトでのスキルに期待して早めに投入して変化を見たいと思いました」

 

―後半逆転して勝利できた勝因は何だとお考えですか?

「(後半の勝因としては)いくつかありますが、精度の高いキックをほとんどの局面で処理できたことが大きかったことと、ラインアウトでは1回マイボールをスティールされましたが、あれだけ大きな相手にラインアウトで負けなかったことが大きかったと思います。スクラムは前半から行けると思っていました。東洋大戦にはチームとして取り組もうと言っていたのはラインアウトとキックの処理の2点でした。ラインアウトではフォワードがいつでもボールを投入できるようにバックスは早く(ラインを)そろえるということを徹底していました」

 

―『チームとして大きく成長した』と言いましたが、具体的には?

「対抗戦を振り返ると、『入り』の10分間が非常に良くなかったゲームが続いていました。今日の試合ではその点をしっかりやることを言っていました。結果として今日は早稲田が先制できて、その後逆転されたもののペースとしては悪くはなかったことが成功体験になったと思います」

 

 

吉村紘副将 (CTB) 

「今週の試合を迎えるにあたって、正直、相当怖かったです。それは東洋大学をリスペクトしているからこそなのですが、皆も『早稲田がここで負けてはいけない』というプレッシャーの中から相当緊張感を持って一週間を過ごしてきました。そういったいい準備ができてきたからこそ、試合では80分の中で何度かリードされましたがそこで一つになって最終的に勝つことができたのだと思います」
 

―『(東洋大は)ちょっと手強いぞ』という気持ちがあったと思いますが、その中で前半は押され気味になって、チームとして焦りはありましたか?それとも、後半に逆転できるという手応えはあったのですか?

「前半にアタックは通用するとは感じていましたが、本当のところでは選手には焦りもありました。そのたびにしっかり選手達でハドルを組んで、ハーフタイムにもしっかり話をしました。チームとして焦りはありましたが乱れることなくできたことが、勝利の要因だと思います」

 

―前半、繋がりのところで早稲田らしくないところもありましたが、うまく行かないところもあったのでしょうか?

「東洋大学がしっかり僕らのことを分析していて、僕のところにかなりプレッシャーもかけられていました。そこには、前半ではうまく対応できていなかったと思います。後半は外への展開シーンがあまりなかったのですが、展開したときの対応についてはハーフタイムにしっかり話をして修正の準備はできていました」

 

―後半最初(後半3分)に東洋大にトライを取られた直後の選手達でのハドルではどんなことを言いましたか?

「あのトライもアタックしていて早稲田のペナルティから入られたトライでしたが、テクニカル面では無理しすぎないところでハイボールを蹴って敵陣に入ろうと声かけをしました。マインド面では、『80分の最後のことは考えなくていい。一つ一つ目の前のプレーでの勝負にこだわってこの時間を過ごして行こう』と、声かけをしました。それは1週間通して声かけをしてきたことですが、ハドルでその意識をあらためて徹底しました」

 

―その後(後半6分)、サインプレーがドンピシャで決まってトライを取れましたが?

「1本目と2本目、同じサインだったのですが、1本目では相手のノックオンがあり(プレーが続かず)、2本目はSH宮尾も僕が(スペースが)空いているのがわかったようで、ほぼ宮尾の判断で僕にボールが来ました」

 

―今日は吉村選手のゴールキックは全部決まり、最後はPGを決めたときはガッツポーズも出ていましたが?

「ガッツポーズは覚えていません。しかし、この1週間、選手達には相当なプレッシャーがありましたので、勝ち切れたことにホッとしたという喜びがあったのだと思います」

吉村紘副将(ゲームキャプテン)と大田尾竜彦監督


第2試合 流通経済大学 5-45 慶應義塾大学 マッチレポート

関東大学リーグ戦2位流通経済大学と関東大学対抗戦4位慶応義塾大学の一戦。この2校は春季大会でも対戦しており、その際は26-22で流経大が接戦を勝利している。シーズンを深め、どのように両チームが進化してきたかを示す戦いになる。


試合開始直後の2分、大外に展開し裏へあいたスペースへのキックを慶應大11番佐々木隼選手が押さえトライ。更に、8分には慶應大15番山田響選手が、チャージしたボールを自らグラウンディングしトライ。流経大はリーグ戦での課題を「前半に失点し、後半に盛り返す形で戦えるほど、選手権は甘くない」と話したが、懸念が現実のものとなってしまう。開始早々の失点により、歯車に狂いが生じてしまった流経大は、試合の中で修正することができなかった。ラインアウトでは3連続でボールを失うなど攻めてもペースが握れない。留学生を軸に力強いアタックを行い、一人目のディフェンスにはフィジカルの優位を見せるも、慶應大はセカンドタックラー、サードタックラーが次々とペネトレーターに襲い掛かり、ロングゲインを許さず、ディフェンスに綻びを見せることを防いだ。低く激しいディフェンスに、流経大はハンドリングエラーが続いてしまう。慶應大のアタックは、ディフェンスをこじ開けることはなくとも、一人一人が確実にゲインラインをこえ、できたスペースでBKが勝負し、効果的なアタックを重ねる。33分には15番山田響が鋭いステップで対面を抜き去りトライを奪った。


後半に入っても、慶應陣内で試合は進むが、ブレイクダウンでのプレッシャーやハンドリングエラーにより、流経大のアタックは寸断され、フェイズを重ねることができない。慶應大は、相手のエラーを起点に攻め込むと、FWの連続攻撃から5番アイザイア・マプスアがトライ。その後モールでも2本のトライを追加し、得点の機会を着実にスコアボードに反映させた。

慶應大10番の中楠一期は7本のゴールキックをすべて成功させ、対抗戦から続くゴールキック成功率100%をキープ。フィールドプレーでも落ち着いたプレーを披露し、勝利に貢献した。


試合後の会見では、流経大内山達二監督「最後まで力が出せず、何も嚙み合わなかったゲーム」、土居大吾キャプテン「慶應大のラグビーにやられてしまい、自分たちのラグビーができなかった」と話し、力を出し切ることができずに試合が終わってしまったことを悔やんだ。慶應大の栗原徹監督、今野勇久キャプテンもそろって「点差ほどの差は感じていない」と話すように、流経大はスクラム、フィジカルで互角以上に戦ったが、持っているポテンシャルを発揮させないよう、慶應大が自分の土俵に持ち込んだように感じられる試合だった。


慶應大の次の相手は、関西大学リーグ1位の京都産業大学。今野キャプテンが「自分たちがやってきたことを表現できれば、絶対に勝てる」と自信を持って話すように、強力なペネトレーターがいる相手に今日のような戦いへ持ち込めば、結果がついてくることを示す試合となった。(中村 琢


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第2試合 記者会見レポート

▼流通経済大学共同記者会見

内山達二監督
 「本日は協会関係の皆さん、慶應大学の栗原監督や皆さん、本当にありがとうございました。最初から最後まで力を出せずに、何もかみ合わなかったゲームだという印象です。我々はラグビーをやらせてもらえなかった、慶應大学さんのプレッシャーがある中、ミスの連続、自分達の力を出し切れないまま終わってしまったゲームでした」

 

―もう少し精度が良ければ違った結果になっていたのでは

「今日は私達スタッフが思っていたゲーム結果と違う形となりました。もちろん勝つためにやってきましたし、選手達には十分なポテンシャルがあったと思います。学生達、4年生達は、去年からの厳しい時間の中で頑張ってくれましたが、最後の最後でこのポテンシャルを引き出せなかったのは何なのかを大きな課題として、これから取り組まないといけないと思っています」

 

 

土居大吾主将 
 「慶應大学さんとは最後このような試合になってしまいました。ありがとうございました。監督も今言われたように、終始慶應大学さんのラグビーをやられてしまって、自分達のラグビーができなかったという『悔しい、不甲斐ない』という言葉に尽きています。支えてくれた仲間、スタッフの皆さん、家族の皆さんにも最後、このような形で終わってしまって本当に悔しさが残ります」

 

―自分達のラグビーができなかった理由は

「リーグ戦が終わり、選手権前の準備期間で、自分達の課題は前半にあるという話をし、今までリーグ戦では後半に盛り返すゲームになっていました。しかし、選手権に入ったらそのような暇はなく、後半で毎回逆転できる程甘い場所ではないので、前半から自分達のラグビーをしようと話をしていました。しかし、今日はちょっとした個人個人のミスが目立ち、慶應大学さんにはそこの隙を逃さずにスコアに繋げられてしまいました」

土居大吾主将と内山達二監督


▼慶応義塾大学共同記者会見

栗原徹監督

「試合内容としては最初に先制できたことで慶応としてはゲームを非常に進めやすくなりましたが、個々の局面を見れば流通経済大学さんの圧力に非常にプレッシャーを受けていましたので、試合の点差ほどの差は全く感じていなくて、選手たちが規律高くプレーしてくれたことで勝ち切れたのかと思っております。大学選手権ですので、流通経済大学さんの思いもしっかり背負って、2週間後に大阪で京都産業大学さんにチャレンジできるように頑張っていきたいと思っております。本日はありがとうございました」

 

今野勇久主将

「本日はありがとうございました。徹さんもおっしゃっていたのですけど、点差ほど力の差はないと思っています。流通経済大学さんの非常にプレッシャーのあるアタック、ディフェンスに対してしっかり対応出来たのがよかったと思います。勝因に関しましては色々とあると思うんですけど、試合に出ていない下にいる選手や、支えてくれているマネージャー、トレーナー、分析係のみんなの思いを背負って戦うということを、チームとして共有できたということが大きかったと思います。次は京都産業大学戦になるんですけど、非常に強い相手になるんですが、自分たちがやるべきこと、一年間やってきたことを、グランドの上で表現できれば、勝てる相手、絶対に勝つと思うので、しっかり2週間良い準備して、自信を持って乗り越えたいと思っています。本日はありがとうございました」


―点差ほど両校の実力は離れてないと言ってましたが、それでここまで点差が離れたのは何が理由だとおもわれますか?

「今日はチャンスのところや、ペナルティのところでしっかり取りきれたというのがこの点差になっているかなと思います。今まで対抗戦のなかでペナルティをもらってチャンスになっても取り切れないという場面が多かったのですけど、今日は試合のはじめからチャンスの場面でひとつひとつ取り切れたことがチームのモーメントを生んだと思います」

今野勇久主将と栗原徹監督