第1試合 京都産業大学 33-34 早稲田大学 マッチレポート

「9度目の挑戦で何とか歴史を作りたい。壁を破りたい。その一心でした」

10大会連続36回目の大学選手権出場で、9度目の準決勝進出となった京都産業大学ラグビー部の元日本代表SO廣瀬佳司監督の言葉がいつまでも耳に残った。

 

試合開始後最初に得点のチャンスを得たのは39大会連続56回目の大学選手権出場となった早稲田大学。前半4分、京都産業大学が強みであるスクラムでコラプシングを取られてえたペナルティをCTB吉村がPGを狙うが失敗。

その後、京都産業大学が9分にSO西仲が、早稲田大学が16分に吉村がペナルティを決めて3-3で迎えた前半20分。京都産業大学がマイボールのスクラムから出したボールをWTBシオネ・ポルテレが直接もらい早稲田大学のタックルを連続して外してこの試合の初めてのトライをゴール下に決める。ゴールも決まり10-3と再びリードを奪う。

ここから早稲田大学も奮起。京都産業大学の不安定なラインアウトと小さなミスを突いて前半26分にNo8の村田陣悟が、30分にWTB槇瑛人が連続してトライを奪取。それぞれゴールも決まり10-17とリードした。だが、京都産業大学は粘り強く前半終了間際にSO西仲がPGを決めて13-17と4点差に詰めて前半を終了した。

 

後半開始から吹っ切れたように仕掛けたのは京都産業大学。キックオフ後からボールをキープして攻め続けて2分にロックのアサエリ・ラウシーがトライで18-17と逆転。ゴールも決まり、20-17に。京都産業大学は接点で強く身体を当てていき10分早稲田大学が密集で犯したペナルティを決めて23-17とリードを拡げる。ここで早稲田大学は左プロップを川崎から井元正大に、FB小泉怜史と野中健吾を入替。大田尾監督が「後半に入った井元が(スクラムで)頑張ってくれた」と試合後に語ったこの入替が功を奏した。

 

リスタートから早稲田大学がギアを上げた猛攻が始まる。後半14分には左ライン際を抜けたWTB松下怜央からのパスを受けたSH宮尾がハーフウェイライン近くから走り切ってトライ。ゴールも決まり23-24と逆転。後半24分には京都産業大学にPGを決められて26-24と再逆転を許すが、後半27分には伊藤大祐がトライ。ゴールも決まり、26-31と逆転。さらに6分後にはCTB吉村がPGを決めて26-34と点差を8点に拡げる。

36分にロックのソロモネ・フナキのトライと西仲のゴールで33-34と1点差に迫った京都産業大学は、初めての決勝戦進出をかけた猛攻を仕掛ける。が、早稲田大学は強みのタックル&ディフェンスではね返して33-34で決勝の切符をつかんだ。

 

12月4日の早明戦での敗戦から、3回戦の東洋大学戦、準々決勝の明治大学戦、準決勝の京都産業大学戦と試合ごとにチーム力を高めてきた早稲田大学が、中5日で再び、王者帝京大学に挑む。

昭和57年度の第19回大会での初対戦から11度目となる早稲田大学との大学選手権での対戦。平成9年度の第34回大会(京都産業大学69-18早稲田大学)以来3度目の対早稲田大学戦勝利と初の決勝進出がかなわかった京都産業大学。新たな「歴史を作り、壁を破る」ための旅がこの日からまた始まった。

高林功


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第1試合 記者会見レポート

▼京都産業大学共同記者会見

廣瀬佳司監督

「決勝進出に向け、9度目の挑戦で歴史を作りたいと思って臨みました。今年も達成できなくて残念ですが、選手は80分間ひたむきにプレーしてくれたので満足しています。壁を乗り越えられなかったことを実感しているので、また来年に向けて強化していきたいと思っています。4年生は強く引っ張ってくれて、良いシーズンでした」

 

ースクラムは押せたと感じますか。それとも想定以上に早稲田のプレッシャーを感じていたと思いますか?

「両方だと思います。今はスクラムにあまり時間をかけない指針になっていますが、もう少しスクラムに時間をかけたかったというのが本音になります」

 

ーFWを鍛えながら、BKでも点をとれるチームが今年の形だと思いますが、来年に向けて強化の方針は?

「47年間大西先生が築いた伝統校にチャレンジするスタイルが、スクラムを中心としたセットピースラグビーを確立したので、しっかり継承していきたいと思っています。今年は西仲・家村でボールを動かすことができ、新加入のポルテレがいたのでBKで得点力が上がりました。来年については、その年の素材を見ながら、また考えていきたいと思っています」

 

ーDFについて、どのように早稲田を止めようと考えていましたか?

「セットプレーでプレッシャーをかけ、特にタッチライン際のラックは孤立するケースがあるので、ターンオーバーを狙っていこうと話していました。選手は準備してきたとおりやってくれたと思っています」

 

ー選手交代については?

「最後まで悩みましたが、試合が拮抗していたので、今日は中々控えの選手を出すことができなかったです」

 

ー早稲田がモールを組ませてくれない点については?

「我々はモールを組みたかったのですが、早稲田が組ませてくれないのは、予想していたことなので、その後のプレーを準備してきた通りやってくれました。ラック周辺を、色々なバリエーションを持たせてアタックすることができたので、後半最初のトライや最後のトライで、非常に良いプレーをしてくれました」

 

ースクラムにこだわる信念は?

「京都産業大学はタフなチームという印象を与えたいと思っています。その一つが、スクラムやラインアウトからのモールといったセットプレーでインパクトを与えることで、京産らしさを皆に見てもらえたらと思っています」

 

ー夏合宿の早稲田戦(敗戦)から改善できた部分と改善できなかった部分は?

「改善できなかったのは、ちょっとの隙を15人全員で攻めてくる、試合巧者である早稲田のアタックを、わかっていても止められなかった点です。改善できたというか嬉しかったのは、ハーフタイムにおいて、夏合宿での思いを選手が話していて、後半40分はいくぞというチームになっていたので嬉しかったです」

 

ー準決勝の壁を突破するには?

「チーム理念が”いつ如何なるときもチャンピオンシップを目指す”です。大学ラグビーは一年ごとに戦力が変わるなか、毎年日本一を目指すチームをつくり、その結果が今年は準決勝敗退となりました。来年もこれを続けていくしかないと思っているので、来年はまたチャンピオンシップを目指しどこまでいけるかチャレンジしていくだけだと思っています」

 

福西隼杜主将

「4回生なのでこの試合にかけてきて、日本一という目標もあるなか、結果は勝ち切ることができなかったですが、ひたむきに京産らしくラグビーができたと思うので、あとは後輩たちに日本一という目標は託そうと思います」

 

ーちょっとしたミスしか差はないように感じるが、敗因はどう思いますか?

「京産も一番の力を出すことができたと思いますが、小さなミスがトライやビックゲインに繋がってしまったので、ミスを減らせればよかったと思います」

 

ーこのチームはどのような思い入れのあるチームでしたか?

「日本一という目標に向かって一丸となれたので、最高の仲間だと思っています」

 

ー前半を終えて手ごたえのあった部分は?

「DFは前に出れてプレーできたと思います。後半も継続しつつ自分たちのボールを増やしてアタックしようと話していました」

 

ー試合が拮抗したまま進みましたが、メンバーのスタミナはどう感じていましたか?

「練習してきたので80分間走りきれたと思っています」

 

ーセットプレー重視のラグビーを貫くことで見えてきたものは?

「セットプレーで勝てば前に出れるという思いで、やってこれたのはよかったです」

 

ー準決勝の壁を突破するには?

「全力を出し切ることができ、悔いはありませんが、小さなミスを練習から突き詰めてやっていかなければならないと感じているので、自分たちでもっと練習を厳しくやっていくのが大事だと思いました」


▼早稲田大学共同記者会見

大田尾竜彦監督

「今日の試合は準々決勝から、非常に準備するのが難しい所もあったのですが、苦しい中、(選手が)これまでの成長を十分見せてくれて、良く勝ち切れたと思います」

 

ー勝ち切れた理由は?

「試合中に修正することができているのかなと。特にアタックに関しては自分たちのプランと相手のディフェンスの出方を見ながら空いている所へしっかりボールを運べていたので。もちろん、最後のランナーが走ったというのもありますが、その辺りの修正能力が非常にレベルアップしたかなと思います」

 

ー今日のスクラム、ラインアウトは?

「スクラムに関しては良く組んだと思いますし、やはり、後半に井元選手が押せているという所は、我々としては、リザーブの選手が、もう一段階スクラムの強度を上げるということができたと思います。ラインアウトは準備して来たことが色々あったのですが、獲得の所はそこまでは苦労していない、あれくらいは許容範囲内という事で、セットプレーに関しては良かったと思います」

 

ー大学選手権に入って、一番選手たちの成長を実感している所は?

「そうですね。先攻されても焦らない、あとはトライを取る所で取り切れている、そこまでのプロセスでのアタックプレッシャーだったり、そこに運べるようになってきている、皆で共通のビジョンを見る、その辺りが非常に良くなってきていると思います」

 

ー伊藤選手をスタンドオフからフルバックにする早稲田のスタイルが定着してきた実感は?

「小泉選手の左脚(のキック)は、ウチのゲームを作る上で非常に大きくて、前半、10番に伊藤大祐が入り、小泉が15番に入ってゲームを作って、お互いにどこにギャップが見えるかとなった時に、最後に(伊藤)大祐をスペースに走らせるというのが、ウチとしては良いアタックとしてパターン化してきたかなと思います。野中選手を10番に入れたら、球離れがすごく良いので、外側の選手は走りやすいと思いますし、(伊藤)大祐くらいの力があると、ああいったスペースがあったら走り切れるかなと評価しています」

 

ーチームのピークをこの辺りにもってきたと思うが?

「今日の試合に関して言えば、出来としては必ずしもベストではなかったと思いますが、その中で、京都産業大学さんのような非常に強い相手に勝ち切れたというのは、ベースの力が伸びてきたのかなと思います。ペナルティはちょっと多かったのですが、多かった理由も自分たちのコンタクトが前に行けていたからこそのペナルティだったりもしたので、その辺りも成長を感じています」

 

ー準々決勝から準決勝が難しいと仰っていたが?

「やはり、準々決勝の早明戦は照準としては定めやすくて、選手もそこに乗っかってくるすごいものがありました。そこで勝って、ちょっと時間がプラス一日できたので、どこまでリカバリーをさせるのか、どこまで練習の強度を上げるのかという所と、その期間、どうしてもやはり、練習に余韻が残るというか。選手たちも一生懸命やってない訳ではなく、一生懸命やっているのですが、慢心でも、やる気がないわけでもないのですが、何となく空気感として少し難しいものがあったのではないかなと。まあ、目には見えないものですね。そういう所は難しかったなと思います」

 

ー宮尾選手の活躍の理由は?

「反応の速さです。チャンスと思った時、ピンチと思った時の。あとは、やはり、去年、彼が色々な所で痛感した反省点として、もう一度そこら辺を思い出したのかなと。今日の最後のトライの時も、最後はすごく丁寧にグランディングしているんですね。去年は、やはり、あの辺が雑で、そこをもう一度、自分の中で大事な事として捉えて復調しているような感覚があります」

 

ー相手は決まっていないが、決勝で勝ち切るために大事な事は?

「僕が思うに、ラグビーチームにはタイプが二つあって、とにかく自分たちの事にフォーカスして、自分たちのやる事をやり切ろうというストロングスタイルなチームと、ウチみたいに相手の色々な所を研究して、この1週間でゲームプランを変えて、それを自分たちの今日のプランとしてやり切るチームと。ウチは明らかに後者で。それを、監督、コーチがこういうプランだったら勝ち切れるよね、というようなプランニングを組んで、それを選手が同じ絵を見て、選手たちがこれなら行ける、と信じる事ができるくらいの落とし込みが必要ではないかと思っています」

 

ー吉村選手が傷んでいても、結果的に決勝点となったペナルティゴールを狙わせた意図は?

「やはり、ゲームが動いて行く中で、PGを狙う、狙わないという、色々な判断があると思いますが、やはり、7点プラス1点の場所に行くというのは、こういう負けたら終わりというトーナメントでは非常に大事になります。あの局面では必ず狙うべきでしたし、吉村選手が傷んでいるというのは把握していたのですが、本当に、吉村だったらやってくれるだろうという信頼感からです。素晴らしい選手です」

 

 

相良昌彦キャプテン

「今回のテーマはfastest set speed でしたが、そこの部分、アタックもディフェンスもできていたと思うのですが、やはり、ブレイクダウンの所で、京都産業大学さんのプレッシャーを受けてしまって、自分たちの思うようなゲーム展開をする事ができなかったと思うので、そこはしっかり修正して決勝に臨みたいと思います」

 

ー最後の京都産業大学のトライまで、22mの内側まで攻め込まれなかったのは?

「そこはチームとして、自陣で揉まずに敵陣に行こうという意思統一ができていたので、後半は22mに入れさせずにプレーできたと思います」

 

ー前半、ペナルティからショットを狙ったり、タッチを狙ったりしていたのは?

「最初、ショットを狙ったのですが、京都産業大学さんはFWに強みをもっていますし、14番も怖い選手でしたので、とにかく、自陣に入れないでずっと敵陣で戦いたかったので、自陣からボールを蹴ってしまったらロストしてしまうので、トライが取れなくても、タッチキックを狙って、とにかく敵陣でプレーしようという意思統一ができた結果だと思います」

 

ー後半、宮尾選手のトライは、自陣のドロップアウトを蹴り返さないで、ゴール前からの長いアタックになったが?

「早稲田はこの一年間、アタックマインドというスタイルを磨いてきて、チャンスだと思えば自陣からでもどんどん回して行く、ボールを繋いで行くという事をやってきて、それができた結果があのトライに繋がったと思います。前が開いていて、多分、それを吉村が判断して始めたのだと思います」

 

ーキャプテンとして、皆を、難しい準々決勝からここまでもってきたのは?

「今週、練習している中で、やはり、day2、day3辺りの練習で少し強度が上がった時に、先週より皆の身体が動いていなかったり、声が出ていなかったり、感覚的な事ですが、そこを不安に感じていて、京都産業大学さんは強いし、去年、準決勝の帝京戦で苦しめた相手で、本当に乗せたら怖い相手だというのを毎日、伝え続けて、早明戦以上のマインドで臨もうという話は何回もしたのですが、そこは、なかなかそのマインドが切り替わらなくて、先週の早明戦が今季一番大きな相手だったので、去年のリベンジの思いがあって、少し達成感に浸ってしまっている選手が多くて、そこのマインドを替えようというのには苦労しました」

 

ーそういう苦しみの中で実感している成長は?

「僕が不在の中、東洋戦と早明戦と戦ったのですが、その2試合で吉村を中心に4年生がまとまって、いつもはリーダーシップを発揮しない選手も、無理矢理声を出したり、ミーティングに積極的に参加したり、そういう事があって、チームが一丸となれた、本当のチームになれたという感覚があります」

 

ー宮尾選手が、今、良い結果を出せている理由は?

「元から良い選手ではあったのですが、やはり、少し雑な部分が、夏から対抗戦の初め辺りまであったのですが、そこが丁寧になったので、という所はあります。まあ、使われなくなった2ヶ月くらいで宮尾自身が考えて、自分なりに修正した結果だと思います」

 

ー相手は決まっていないが、決勝で勝ち切るために大事な事は?

「毎試合、色々な対策とか分析をしていますが、やはり、そこを全員が意思統一してやり切るという所が一つと、正直、分からないですけれど、今年一年間、信じてやってきたスローガンのタフ・チョイスとか、千分の一のこだわりだとかを、ひたむきにやり続けることが、勝利への近道だと思います」


第2試合 帝京大学 71-5 筑波大学 マッチレポート

関東大学対抗戦Aグループで対戦した帝京大学と筑波大学が、大学選手権で再び対戦することとなった。対抗戦では45対20で帝京大が勝利している。対抗戦5位ながらここまで大学選手権を勝ち上がってきた筑波大が、連覇を目指す帝京大にどのようにチャレンジするのか。

 

開始早々、帝京大は筑波大陣内で攻撃する。筑波大はブレイクダウンで帝京にプレッシャーをかけ、さらには、ディフェンスの上りも早く、全員が素早く前に出て対抗する。帝京大はSO高本のキックやHO江良の突破により、再三筑波ゴール前に迫るが筑波大のゴールを割ることができない。11分。帝京大に最初のトライが生まれる。筑波大のゴール前のスクラムの反則を得た帝京大はゴール前のラインアウトとする。モールから左に展開し、フォワードでの連続攻撃を仕掛け、最後はSO高本からのパスをWTBの小村がトライ。ゴールも成功し7点を先行する。

17分。筑波大が帝京大のゴール5mに迫る。筑波大ボールのラインアウトからモールを組み左に展開。CTB松島のパスを受けたWTB一口が左隅にトライ。7対5(ゴール不成功)とする。

帝京大は攻撃の手を緩めることなく筑波大陣内で攻める。筑波大のブレイクダウンに苦しみ、なかなか自分たちの形に持ち込むことができないが、ラインアウトやスクラムで終始、筑波大にプレッシャーをかけ続ける。25分。帝京大、筑波大ゴール前でのスクラムを押し込みNO8延原がトライ(ゴール不成功 12対5)。

 

ここから帝京大の猛攻が始まる。34分、グランドを広く使い、フォワードとバックスが一体となった連続攻撃から、SO高本をFL青木がサポート。青木がトライ(ゴール成功 19対5)。36分には自陣からオープン攻撃、CTB二村が抜けてWTB高本とむにパス。高本が50mを走り切りノーホイッスルトライ(ゴール不成功 24対5)。さらに38分にもSH李がノーホイッスルトライ(ゴール成功 31対5)。

筑波大は、前半最後に帝京大ゴール前に迫るが、帝京大の前に出るディフェンスの前にトライすることができない。前半終了

 

前半は、終盤までは拮抗したゲームであったが、帝京大の2連続ノーホイッスルトライを含む前半終盤の3トライにより流れは帝京大に。筑波大の嶋崎監督は「帝京大は自陣のエリアに入れると厳しいことはわかっていたが、キーマンの高本選手を走らせてしまったり、キックのワンタッチなどの予期せぬところでトライを取られてしまったことが非常に痛かった。もっと差をつけて前半を終わりたかった。」と語っていた。

 

後半は、筑波大は前半の流れを断ち切るためにも先にスコアをしたかったが、流れは変わらず、得点したのは帝京大であった。「後半は先にスコアをしたかったが、相手に先に取られてしまった。後半から相手を止めることができなくなってしまった」(嶋崎監督)というように、帝京大の猛攻は続き、後半だけで6トライ(5ゴール))40点を奪い勝負を決める。

筑波大も再三帝京大陣内深くに攻め込むが、帝京大の前に出る分厚いディフェンスにより、後半は得点することができなかった。71対5でノーサイド。

帝京大はフィジカルの強さを前面に出し、筑波大学にプレッシャーかけ続け、特にスクラムでは相手を圧倒していた。ディフェンスでは、豊富な運動量を基に、全員が懸命に走り相手を止めていた。また、準々決勝の同志社大学戦では16あった反則数は7と半減し、ノックオンなどのハンドリングエラーも少なかった。松山主将は「試合前から、80分間気を抜かずにやることを全員に言いました。」というように、全員で一つ一つのプレーを丁寧に体現していた。

敗れた筑波大も、最後まであきらめることなく、全員でアタック、ディフェンスで帝京大にプレッシャーをかけ続けていた。チャンスとみれば果敢にアタックを試みるなど、集中力、立ち向かう姿勢は最後まで途切れていなかった。

決勝に駒を進めた帝京大は、大学日本一をかけて、1月8日に国立競技場で早稲田大学と対戦する。

(二谷保夫)


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第2試合 記者会見レポート

▼筑波大学共同記者会見

嶋崎達也監督

「最後まで体を張ろうと取り組んできました。一度前に出られると止められないとわかっていたのですが、いくつかの部分で前に出られて、スコアされてしまいました。このチームはなかなか勝てないところから成長を見せてくれました。最高の選手達を誇らしく思います」

 

―これからの筑波大が伸びていくのに必要な点は?

「選手はよく体を当てていましたが、体重差が響き、ちょっとずつ動きが落ちてしまいました。コンタクトスポーツの原点だと思うので、体を戦えるレベルに全体であげて、筑波の練習において、体の当て合いを体験しないと、大きな差が出てしまうのを今回感じました」

 

―前半終盤に3連続トライを奪われた点について

「(帝京大を)自陣のエリアに入れてしまうと、強いセットプレーとキーマンがいるので難しいとわかっていましたが、キックのワンタッチなど、予期せぬ形で自陣に入って来られて点をとられたのが痛かったです。それまでディフェンスで健闘しており、もっと差を詰めて前半を終われたはずなのですが、そこを見逃さなかった帝京さんの強さだと思います」

 

―試合のターニングポイントは?

「後半先にスコアしたかったところを取られてしまい、(帝京大の勢いを)止められなくなってしまいました」

 

―リザーブ投入について、どのような考えだったのでしょうか?

「対抗戦や選手権を戦う中で、けが人が出たことにより、長い時間このレベルを体験していないプレーヤーも(リザーブに)多くいました。ファーストの15人がこれまで80分動いてくれる選手たちでしたので、こうした判断となりました。ただプレッシャーにより足が動かなくなり、大きく崩れてしまったので、判断が遅れたのかもしれません」

 

―肉体強化のために、これからの計画を教えてください。

「コロナ禍により、満足にトレーニングができる状況には戻っていないのですが、昨年の結果を受け、食事やトレーニングを変えていこうと着手してきました。個人の意識も含め、できることすべてを変えてやっていくしかないと思っています。」

 

 

木原優作主将(PR)

「今シーズン通してやってきた接点の部分においてアタックでもディフェンスでもプレッシャーをかける点を意識してやりましたが、帝京さんの素晴らしいアタックやディフェンスで、自分たちの接点が通用せず、点差が開いてしまいました。それでも体を張る意識のところは、最後までフィールドで言葉が飛び交っていたので、今後に繋がる部分だと思います」

 

―帝京大の激しく前に出るラグビーに対し、不屈に立ち向かう気持ちはどこからくるのでしょうか?

「ラグビーの基本である体を当てるところを、時間をかけてやってきました。選手の人数も安定してそろわない環境の中ですが、体を当てるところで、筑波としてここで引かないというポリシーとして、入学した時から掲げて、筑波の伝統として、引かずに、ただひたむきに4年間やってきただけです」

 

―対抗戦5位から選手権準決勝進出までできたのは、来年以降のチームに残せたものがあると思いますが、どのように感じていますか?

「シーズンが始まる前に掲げた日本一という目標に対して、今シーズン通してぶれませんでした。ジャージを着て試合に出ている23人が、一貫性を持って筑波のグラウンドで取り組んだことがあったからこそ、下のB、Cチームのメンバーも、目標を疑わずに練習に対して向き合ってくれたのが大きかったと思います」



▼帝京大学共同記者会見

相馬朋和監督

「本日は協会関係者の皆様、筑波大学の皆様、ファンの皆様、本当にありがとうございました。筑波大学相手に学生たちが本当に素晴らしいパフォーマンスを示してくれたと思います。次の試合に向けて、また、もう一段階、上のチームになれるように残された時間をいい準備に使いたいと思います。本日はどうもありがとうございました」

 

―スピードのあるライン攻撃を繰り返しましたが、ハンドリングエラーもほとんどありませんでした。1人1人のスキルの高さもあると思いますが、どのようにハンドリングエラーのないアタックができるようになったのでしょうか?

「学生たちの日々の努力に尽きると思います。毎日毎日この日を夢見て、このフィールドで皆さんが感じたようなプレーができるように毎日努力してきた成果を出してくれました」

 

 ―今日当たった筑波大も、決勝で当たる早稲田大も、今シーズンの対抗戦で一回、戦っていいスコアで勝った相手です。それについてはどのように受け止めていますか?

「今日の筑波大もそうですし、決勝で当たる早稲田大もそうですが、対抗戦の時点でゲームをした相手(と同じ相手)だとは全く思っていません。試合を重ねる中でチームというものは成長するものだと思っています。全く違う早稲田大と決勝で当たるつもりで、これまでも言っていますように最高の準備を整えてゲームに臨みたいと思います」

 

―先ほども『一戦一戦、集中して戦う』と言っていましたが、決勝で早稲田大と戦う上でチームに何か落とし込んだり、アドバイスしたりするようなことはありますか?

「あまり面白いこと言えませんが、本当に自分たちを見つめ直して自分たちができることを、我々が思っている全てのことを出し切るだけと思っています。そう信じて一年間準備をしてきました。」

 

―キャプテンが『80分間、気を抜かずにやりきろう』と試合に臨んだと言っていましたが、他のチームを見ていてもそれを実際に行うのは簡単ではないと思いますが?

「グラウンドの中だけではなく、グラウンドの外でも、大学生として、また、試合に出ているメンバーだけでなくチームに所属する全ての部員が、そこに対して気を抜かずに毎日全力で取り組もうと努力している成果がこのように素晴らしいパフォーマンスとなったのだと感じています。努力することを厭わないですし、それが美しいもの、素晴らしいものになると言うことを皆が知っているからだと思います」

 

 

松山千大主将 (CTB) 

「本日はありがとうございました。今日の試合では、筑波大学さんが試合が終わるまで80分間、あきらめず、ハードにファイトしてくれたことによって自分たちもさらに成長ができました。決勝は早稲田大学とやることになりましたが、しっかりと勝ちきりたいと思います」
 

―1年前の選手権での準決勝(注:帝京大は準決勝で京産大に37-30で逆転勝ちの辛勝)を経験して何か今日の試合に注意したことなどありましたか?

「やはり去年の準決勝では少しゆれた部分と隙の部分が見られたので、そこはチーム全員で隙を作らず気を抜かずに、今日の試合に臨みました。僕がチーム全員に言ったのはそのところだけです。しっかり気を抜かずに80分間やろうと言いました。自分たちがしっかりラグビーをやること、フィジカルでしっかり相手にプレッシャーをかけることだけやろうと言いました」

 

―次の試合が学生としての最後に試合になりますが?

「少しさみしいですが、しっかり勝ちきって終わりたいと思います」

 

―スピードのあるライン攻撃を繰り返しましたが、ハンドリングエラーもほとんどありませんでした。どのようにハンドリングエラーのないアタックができるようになったのでしょうか?

「相馬監督が言ったとおり、この日のためにしっかりと練習してきました」

 

―先ほど、『筑波大が80分間ハードに戦ってくれて成長できた』と言いましたが、実際に戦った中で筑波大のどのようなところにハードなものを感じ、また、どのように成長できると感じましたか?

「一番はブレイクダウンのところです。相手がしっかりファイトしてくれました。事前の分析でも相手がブレイクダウンのところにかけてくるのはわかっていましたし、そこに対して自分たちがしっかりとファイトできました。自分たちがどれだけ自分たちのラグビーをできるのかというところを、日々の練習でもフォーカスしているので、そこをしっかりできたことが良かったと思います」

 

―例えば、ターンオーバーした後のアタックなどについて事前の準備をして練習していたのですか?もしくは臨機で反応していたのですか?

「事前の準備での対応と試合の中で1人1人が臨機で対応できたのとは、半分半分くらいです」

 

―今日当たった筑波大も、決勝で当たる早稲田大も、今シーズンの対抗戦で1回戦っていいスコアで勝った相手です。それについてはどのように受け止めていますか?

「過去のことは過去のことなので、自分たちは目の前のことにしっかりと準備をすることに尽くしたいと思います」

 

―優勝に向けて自信がありますか?それとも少し不安がありますか?

「自信はあります」

 

―前半34分、36分、38分の3連続トライは集中力あったもので鮮やかでした。得点を重ねていったので、(一般的には)その後、少し緩んでもしようがないという気持ちになるかも知れないという時間帯でしたが、プレーしている選手達皆さんの意識はいかがでしたか?

「試合の前から、しっかりと1人1人が80分間気を抜かないというところをテーマにして取り組んできました。(あの時間帯に)スコアが連続しても自分たちは気を抜かずに、一つ一つ手を抜かずにプレーすることが体現できていました」

 

―4年間ずっとライバルであった早稲田大には今年の対抗戦では勝利していますが、主将として、現在の段階で早稲田大にはどのようなイメージを持ちますか?

「やっぱり80分間一番タフにプレーしてくるチームは早稲田大なので、そこの部分で自分たちもしっかりファイトして勝ちきりたいです」

 

―早稲田大に対して実力的にはかなりアドバンテージはあると思いますが、どのように考えますか?

「しっかりと自分たちの強みを出すこと。フィジカルとセットプレーをしっかりと準備して臨みたいと思います」