第1試合 流通経済大学 27-33 筑波大学 マッチレポート

雲一つない快晴の秩父宮ラグビー場。第60回を迎えた大学選手権も、3回戦からは関東大学対抗戦とリーグ戦の上位校の対戦がスタートし、9月から始まった大学ラグビーも、佳境を迎えようとしている。第一試合は関東大学リーグ戦2位の流通経済大学と、関東大学対抗戦A4位の筑波大学の対戦。前回の大学選手権での対戦は令和2年度の第57回大会で、19-19の引き分け。抽選の結果、流経大が次戦へ進出した。その時の1年生が最終学年となり、3年越しの決着をつける試合は、流経大のキックオフで試合が始まった。

 

 前半8分、筑波大学は自陣10mのスクラムからNo.8谷山隼人主将が右サイドアタックで前進しすかさず左へ展開、HO平石颯がギャップを突き、最後はFB増山将がフィニッシュし最初の得点を決める。対する流経大は21分、筑波ボールスクラムでのペナルティを起点に、ラインアウトモールを押し込み、最後はFL篠澤輝が右隅に飛び込みトライを返す。流経大は続く28分に、自陣22mに蹴りこまれたオープンキックを、WTBアポロサ・デレナラギでカウンターアタックで筑波ゴールラインに迫り、再び篠澤がトライを決める。更に38分にはゴール前10mで得たペナルティにてスクラムを選択。PR吉村一将が筑波大の押しをいなし、No.8ティシレリ・ロケティの推進力を引き出しトライを呼び込んだ。トライ数では3-1と流経大が優っていたが、フェイズアタックを確実に止めた筑波大DFの奮闘とSO楢本幹志朗の3PG1Gにより小刻みに得点を重ね(17-16)と流経大のリードはわずか1点で前半を終えた。

 

 後半開始早々、筑波大FB増山が再度魅せる。エリア脱出のキックを自陣10mで捕球すると、DFをスピードで抜き去り、触れられることなくノーホイッスルトライを見舞い、筑波大が逆転(17-23)。流経大は16分再びスクラムでのペナルティを起点に、ラインアウトモールを押し込みペナルティトライを奪う(24-23)。筑波大にはシンビンも出され10分間を14人で戦うことになる。流れが流経大に傾くと思われた直後のキックオフリターンの密集で筑波大FWがプレッシャーをかけペナルティを奪取。頼れるキッカーの楢本がほぼ正面のPGを決めて再逆転(24-26)。筑波大は中盤でのアタックに対し、粘り強くDFし、劣勢だったスクラムでもFKを獲得、自陣を脱出する。そのまま敵陣ゴール前8mでペナルティを得たところでの、選択はタッチキックからのラインアウト。FWが一人少ない状況で、本日ゴール成功率100%の楢本の左足で、時間を使い点差を広げる選択肢もあるなか、その判断に運命は微笑む。27分筑波大はラインアウトモールを押し込み、PR大塚椋生が値千金のトライ。筑波大嶋崎達也監督が「非常に難しいところが、たくさんあるなか、谷口主将はゲームリーダーの楢本と話して、よく対応し粘り強く戦った」と語るように、一人少ない10分間で点差を離されるどころか、逆転、さらには7点では追いつかない点差まで広げた(24-33)。

 追いつくには2度スコアしなければならないため、早く7点差以内に詰めたい流経大だが、筑波大のDFは後半になっても崩れず、敵陣に中々入り込めない。残り5分を切り、ようやく敵陣22mまで侵入した流経大、インゴールになだれ込むがグラウンディングできず、インゴールドロップアウト。残り2分となり、流経大は敵陣10mで得たペナルティにおいて、SO佐々木開が冷静にPGを決め逆転圏内へ持ち込む(27-33)。筑波大のリスタートにより、自陣から攻める流経大は、ロケティが右サイドを突破するが、WTB大畑亮太が懸命に戻り、後ろからボールに仕掛けノックオンを誘う値千金のプレー。最後のスクラムも流経大の猛プッシュを堪え、タッチに蹴りだしフルタイム(27-33)。

 

「しぶとくディフェンスできたことが今日の勝因だと思います。このまま勢いを持って、明治大学にリベンジできるよう頑張っていきたい」と話す谷山主将。一方、流経大も「しっかりといい準備ができたと、自信もって今日の試合を臨んだ」(池英基監督)、「セットプレー中心に敵陣に入ってプレイを進めていく、外の強いランナーにスペースを与えてアタックするというゲームプラン通りのところができた部分も多かった」(原田季弥主将)と、監督・キャプテンの言葉通り、持ち味を充分に出した試合だった。スタンドから逆転を信じて熱く尊い声援を送った控えのラグビー部員・RKUグレース・応援に来てくれた流通経済大学サッカー部・野球部・チアリーディング部にも「流経のこころ」は届いたに違いない。

(中村 琢)


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第1試合 記者会見レポート

▼流通経済大学共同記者会見

池英基監督

「リーグ戦最終戦の東海大学戦が終わった後、筑波大学戦に向けてしっかりといい準備ができたと、自信もって今日の試合を臨んだのですが、自分たちの小さなミスで勝利することができませんでした。それでも、原田キャプテン中心に、学生達はすごく頑張ってくれたと思いますし、今日の試合で出た課題は、これから、流通経済大学ラグビーの発展のために、いい課題になっているので、それを活かして次のシーズンに向かいたいと思っています。今日はありがとうございました」

 

―守って切り返すというのは、自分たちの形が出たと思いましたが、手ごたえは。

「今週1週間の練習の中で、学生たちの成長を感じました。練習通りやれば、今日の試合は必ず勝てるというところまでやってきたので、自分たちの課題となる、先ほど話した小さなミスのところが修正できれば、もっともっといいチームになるんじゃないかなと思っています」

 

―今日のゲームで、取り組んできたところが出たと思う点は。

「年間を通して取り組んだ、セットピース、早いテンポでアタックというところに関しては、うまくいかなかったところもありますが、色々見えたところもあるので、そこを活かしていけば次に繋がると思っています」

 

原田季弥主将 

「本日はありがとうございました。監督のおっしゃった通り、自分達の細かいミスのところで、今日勝ちきれなかったのかなと思います」

 

―ゲームの初めはモールを少し止められていたのを、自分たち本来の形に持っていったと思いますが、どのように修正をしたのでしょうか。

「特に修正したというよりは、今までやってきたことを思い出して、強いプラットフォームで押し切るという、ただ原点に帰っただけかなと思っています」

 

―カウンターアタックなど、強みがいくつかあったと思いますが、自分たちの中心にあったのはどの部分でしょうか。

「セットプレー中心に敵陣に入ってプレイを進めていく、外の強いランナーにスペースを与えてアタックするというゲームプラン通りのところができた部分も多かったと思います」


―守って切り返すというのは、自分たちの形が出たと思いましたが、手ごたえは。

「春からやっていた部分が、しっかり出たところだったかなと思います」


―数的優位になったところで、相手にトライを取られた点は。

「相手の早い展開はわかっていましたが、そこに対してのディフェンスが、うまくいく部分と、うまくいかなくて数的に余られてしまった、間を抜かれてしまった点があったのが悔しいところかなと思います」


―後輩たちに、こういう点を修正したら上に行けると思うのは。

「去年は自分は出てないですけど、何もできずに終わったというところがありましたが、今年はしっかり自分たちの形を出して終われたので、そこは良かったと思います」


―今日はどのように声をかけて試合に臨み、試合が終わった時の気持ちを教えてください。

「本当に1年間やってきたことを出すだけだったので、それを出そうということを声かけて試合に行ったのですが、最後負けてしまったので。やってきたことは間違ってなかったので、これを継続して、春から、えーっと、もう明日からですね。下級生達には頑張って、今年できなかったことを、達成してもらいたいと思っています」


―池監督に変わって、大きく違ったことはどういう点ですか。

「特に大きく変わったというところはありません。僕らのやるべきことも明確になっていますし、試合に対しての準備の部分も、今まで通り、毎週毎週、全員で気持ちを1つにして、準備することができた1年間だったと思います」


原田季弥主将と池英基監督


▼筑波大学共同記者会見

嶋崎達也監督

「本日は学生のために、いい舞台を関係者の皆様に準備していただいて、ありがとうございます。チームは対抗戦でやってきて培った部分を、しっかりぶつけようということで、いつも交流させていただいている流通経済大学の、予想していた通りのモール・スクラムのプレッシャーをどう跳ね返すかという点を意識していました。本当に我慢強く選手は戦って、しっかり勝負をものにしたと思います。この後中5日という限られた時間ですが、流通経済大学の分も含めて、もう1回チームをビルドアップして、明治大学にぶつかっていければと思います。本日はありがとうございました」

 

―シンビンが出て、ペナルティトライをとられた中での、チームとしての力強さや集中力についてはどう思いますか。

「試合の節目として、すごい重要だったと思います。1人少ない時間で得点出来たところ、選手たちの中で3点を狙うか、モールを狙って時間を使うかの判断のところ、非常に難しいところが、たくさんあったと思いますが、しっかり彼(谷口主将)はゲームリーダーの楢本と一緒に話してくれて、よく対応して粘り強く戦ったなと思っています」


―楢本選手のキックが成功率100%の点については。

「1つの大きな武器であると、対抗戦を通じて認識してます。本人も理解しているので、 事前に谷山選手とも話しながら、モールにもラインアウトにも自信があるので、そこをどうジャッジしていくか、流通経済大学の大きいFWと組み合うのがいいか、3点を取るかという選択は、ゲーム状況から彼らが判断するとして送り出してるので、今回のPGはゴールキックを含め頼りになる武器だと理解しています」


―次戦の明治戦は、残り5日間で時間がない中で積み上げていきたい点は

「明治大学の対抗戦後半の試合を、全てを見てるわけではないので、もう一度見直した上で、僕らが何が継続で何を修正しなきゃいけないというのは、これから考えます。ただ、根幹は変わりません。その中でどこをという点は、今日のゲームを見直し、また明治大学のゲームをもう1回見直してからなので、今すぐにこれというのは、まだ明確に決まってない状況です」


―流通経済大学もFWのパワーが大きい中で、DFは通用していた部分が多いと思いますが、明治戦に向けて、手ごたえは?

「流通経済大学はワイドな展開をするチームですが、BKのランナー達が内にきるのがわかっていました。そこをFWが粘り強く壁になったのが、はまった事例だと思います。明治大学は全く質が違うので、同じようなフォーカスではないかなと思います。パスの距離も短いですし、ちょっと、スタイルが違うかと思います。ただ、体当てる部分は似てますけど、当て方とか、局面がかなり違うので、そこは作り直す練習をしたいと考えています」


谷山隼大主将

「今日の試合を勝つことができて、まずはそこが1番良かったと思います。あまりポゼッションができないところも多く、 ミスやペナルティをしてしまったところがありましたが、本当にしぶとくディフェンスできたことが今日の勝因だと思います。このまま勢いを持って、明治大学にリベンジできるよう、もう一度1週間チームを作り上げて頑張っていきたいと思います。今日はありがとうございました」


―数的不利の10分間を振り返って、どのようなことをして上手くいったか教えてください。

「時間をうまく使いながら、エリアをとって攻めていこうと話をしました。スクラムでプレッシャーを受けていたところがあったので、自分がフランカーに入ったところは、事前に確認していたところで、難なく対応できたかと思います。本当に準備してきた結果なのでよかったと思います。中盤からも、相手がモールを組んでくるので、立ち位置を変えたりして対応しました。前半なども、準備したことをしっかり出せて、止めれた部分もあったのかと思います」


―楢本選手のキックが成功率100%の点については。

「もう1回決めてほしい場面で決めたことで、常に僕らが上の点数、2点でも3点でも、上回っていたことが、精神的にすごく楽になるところでもあったので、あのPGを入れてくれて良かったなと思います」


―筑波としては相手を走りまわして疲れさせたいところだと思いますが、14人の時間帯は精神的にはどうでしたか

「フェイズ中は気にしませんでした。しっかりエリアを取れば、自分たちのアタックが通用することがわかっていたので、特に9番、10番あたりでエリアしっかり取ってもらいました。あとはセットプレイのところで、プレッシャー受ける点は予想してたので、そこはうまく反則をせずに守ることを、平石颯を中心に皆で声をかけ合って意識することができました」


―失点は自分たちが攻めているところで取られてしまいましたが、ダメージはどうでしたか。

「かなりしんどいところではありました。やはり攻めていたところで、気づいたら後ろにってという感じだったので。その中でも 何人もスプリントして戻っていた姿が見えて、前半の最後とかは特にめちゃくちゃしんどいところだったのですが、梁川健吉が走っている姿が見えたので、やはり自分も走ろうと思えて。それが時間をかけさせることに繋がったのかなと思うので、その粘り強さは筑波の誇るべき武器かなと思います」


―次戦の明治戦は、残り5日間で時間がない中で積み上げていきたい点は

「今日の試合では、チームとしてのことではなく、自分の反省が多かったです。特にDFのところは、 タックルの質が悪かったと思うので、そこはしっかり修正していきたいと思うところと、アタックはチャンスになるような場面で、 ボールをもっともらいたいと思うので、ポジショニングや仲間との声かけを、もう一度練習で試しながら、合わせていきたいと思っています」


―流通経済大学もFWのパワーが大きい中で、DFは通用していた部分が多いと思いますが、明治戦に向けて、手ごたえは?

「DFのところは、自分も結構通用したなと思います。内からサポート行くこともそうですし、ダブルタックルにいく意識が高かったと思うので、継続して明治戦にいきたいと思います」


谷山隼大主将と嶋崎達也監督



第2試合 早稲田大学 54-12 法政大学 マッチレポート

 大学選手権で早稲田大学対法政大学と言えば、オールドファンにとっては第1回大会(昭和39年度)から第4回大会(昭和42年度)にかけて4年連続で早大と法大とが日本一を競った時代が強く記憶に残っているだろう。その後、第8回大会と第29回大会も早大と法大とでの決勝となった伝統の対戦だったが、この日の法大にとって大学選手権出場は2017年度以来6年ぶりである。両チームの選手には数十年前の歴史の記憶にはないとは思うが、試合前にそれぞれ先輩たちからこのような歴史を学んで、キックオフに臨んできたに違いない。

 この日の秩父宮は少し冷たい風が吹くこの季節らしい晴天のラグビー日和だった。今年の両チームはいずれもバックスでの速い展開から大きく繋いで得点するという同じタイプのチームとなっている。どちらがそのプラン通りの試合展開ができるかがカギになるだろう。

ゲームの序盤、法大はボールを手にして展開し敵陣に入ってもペナルティでプレーが途切れてしまうことが多く、早大が法大陣内に攻め込む時間が多くなる。前半8分、敵陣でPKを得た早大はゴール前のラインアウトからトライを狙う。ラインアウトでLO池本大喜がナイスキャッチしたボールをFW全員でゴールラインに向いて押し、モールの最後尾でボールをキープしたHO佐藤健次がボールをインゴールに押さえた(5-0)。

 その直後、キックオフのボールを受けた早大は左ライン攻撃からFB伊藤大祐が抜けて敵陣22m付近まで攻め込み、ラックから右に回す。今度はWTB矢崎由高が右サイドを走り、インゴール前に小さなパントを上げる。これはトライにはならなかったが、法大のゴールラインドロップアウトのボールをキャッチして敵陣22m付近に攻め込むと法大の反則を誘い、SO久富連太郎がPGを決め8-0とした。いずれも法大の反則から早大がきっちりと得点に繋げたプレーだった。早大はさらに24分には、中盤でのスクラムを得てラックからSO久富-FB伊藤-CTB岡﨑颯馬と右ラインに回すとボールをもらったWTB矢崎が法大のバックスディフェンスを1人、2人と抜き、さらにWTB椎葉とFB北川をうまくスワーブでかわすと、そのままゴールラインまで走りきった(13-0)。

 早大はその直後の法大キックオフの後のラインアウトからもFWのピールオフプレーからバックスが右に左にと展開して、左ラインにパスが回ったところでCTB野中の内側にすぐ後ろからWTB矢崎が走り込んでボールをもらうとそのまま法大バックスのディフェンスラインを突破してインゴールまで走りきっての連続トライでスコアを20-0と得点を伸ばした(29分)。早大はその後も31分にSO久富、35分にはCTB岡﨑のトライ、40分に久富のPGで得点を追加して37-0と大きなリードでハーフタイムを迎えた。

 今シーズン、早大バックスではSOに久富を起用し、伊藤キャプテンをFBに配置して戦ってきているが、この日は局面毎にこの2人を中心にWTB矢崎やCTB守屋らも固定されたポジション取りはせずにFBやSOのポジションをお互いにサポートし合うかたちが良く機能して、得点チャンスに結びつけていた。矢崎はこれまでの試合以上に逆サイドにもライン参加するなどの自由な動きが目立っていた。点差としてはハーフタイムで勝負が見えてきたが、後半には法大も修正して反則を減らし、早大も風下になったこともあり、法大が健闘する時間が増えてきた。

後半11分に早大はWTB福島秀法のトライで点差を広げたが、法大がボールをキープする時間が増えてきて、25分にはゴール前のラインアウトを得るとFW全員が一体となってモールをプッシュすると、後半入替で入ったばかりのHO佐野祐太がインゴールにボールを押さえ、法大がこの日初めてスコアをあげた。早大も、後半から入りユーティリティのようなポジション捕りをしていた守屋大誠が27分にバックスのいい連係からのプレーでトライを返したが、法大も38分には中盤のスクラムから左バックスラインに回し、CTB田中大誠が早大のバックスラインの裏にキックを挙げてこれをチェイスしたWTB椎葉脩嗣が早大バックスに競り勝ってトライを返した(49-12)。

 

最終スコアは54-12となったが、法大は後半よく健闘して、トライ数は早大3対法大2とほぼ互角の戦いができていた。法大としては早大に前半大量得点を許した反則の多さと甘いディフェンスが残念な試合だった。早大としてはバックスのアタックは良く機能していたが、後半のディフェンスでブレイクダウンでの集散やバックアップが遅くなるなど修正するべき課題がはっきり出た試合になった。

 

 早大は準々決勝では関西リーグ1位の京都産業大と花園でぶつかる。移動日を含めて中5日のショートウィークではあるが、伊藤主将の「しっかり修正できる伸び幅はあるチーム」の言葉通り、対京都産業大戦ではディフェンスでのミスをさらに減らたうえで、アタックではテンポの速いプレーを続けて、いい試合となることを期待したい。 

(正野雄一郎)


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第2試合 記者会見レポート

▼法政大学共同記者会見

新宮孝行監督
 「今日はありがとうございました。大学選手権出場が決まって早稲田大学と当たるということになって、早稲田大とは法政大と第1回大学選手権からの長年のライバルであるので、そのことを学生に伝えました。ウチのテンポのいいラグビーをしたかったので、『超高速ラグビーにしよう』と(学生には)言い、前半の最初の20分はディフェンスで耐えることができたのですが、逆に相手のテンポが速く、特に球出しの速さに翻弄されて一歩一歩遅くなり、前半に5トライされてリズムが狂ってしまいました。後半に立て直すべく相手のテンポを遅くするために、ボール出しを遅くしようと言ったのですが、そこはうまく機能しませんでした。全体的に早稲田大にウチがやろうとしていたラグビーをされてしまいました。本当の完敗だと思います」

 

石岡玲英主将 
 「今日の試合では規律の部分やブレイクダウン周りの質の高さといったところで、早稲田大にむしろ学ばせてもらったと言わざるを得ない試合をされたと思います。自分たちも準備してこなかったわけではありません。この試合が決まってから勝つために準備してきましたが、早稲田大のほうがすごくいい準備をしてきて、早稲田大に自分たちのラグビーで勝つということを体現させてしまうような、自分たちの準備の甘さが特に前半では目立ったと思います。後半に入って修正できた部分や自分たちがやってきた部分で修正できたところは、とても実のある試合になったと思います。(大学選手権の出場が)6年ぶりということもあり、後輩たちにも繋がる試合はできたと思います」

 

―後半に向けて選手たちで意識した点は?

「早稲田大がすごいテンポのいいアタックをしてきていたのに対して、僕たちはブレイクダウンの枚数を取られてしまうというところを想定せずに練習してしまってきたというところを、(ブレイクダウンの)外側の選手も巻き込まれるから、順目に入ってきている選手もそれを他人事にせずに回ってくることを選手たちに話しました。後半に入って順目の枚数も増えてきて相手にプレッシャーを与えることができ、また、順目に返ろうという意識がついて、外側にゲインされても返ってくる選手が多くなるようになり、前半よりは粘りのあるディフェンスに修正できたと思います」


―試合前にどのような言葉を選手たちにかけましたか?また、試合が終わった後の気持ちは?

「試合始まる前には選手たちに『この大学選手権という舞台を体感できるのは自分たち23人だけしかいないこと』、また、『ここに出たくてもジャージーを着られなかった選手もたくさんいることの想いを80分間、皆で楽しむことをしっかり体現しよう』と声をかけました。

試合が終わった後の感想としては、すごく悔しい気持ちはありましたが、自分たちが準備してきたものはあったので、選手権に向けてやるべきことはやり切ったなと思いました。この経験を後輩たちがどう繋げてくれるかと思いますが、実力のある後輩たちばかりなのですごく楽しみでもあります。また、同時に、『4年間やっと終わったな、もうちょっとチームのために何かできたのではないかな?』という感情もわきました」

石岡玲英主将と新宮孝行監督


▼早稲田大学共同記者会見

大田尾竜彦監督

「対抗戦が終わって2週間の間にブレイクダウンとコンタクトのところの見直しをしましたが、その成果がかなり出て、ゲーム全体を通して安定感のある試合運びができたと思います。まだまだ自分たちで詰められるところがあると思うので、それを伸ばして、次の京都産業大学戦に向けいい準備をして臨みたいと思います。」


―今日のフォワードのプレーについて?

「スクラムは少し不安定なところがありました。1番に杉本を起用しましたが、杉本のパフォーマンスを見ると山口とどっちがいいかという検討の余地もあるかと思います。ラインアウトに関してはそこそこ取れたと思います。モールに関してもおそらく4分の3くらいはトライを取れたと思いますので良かったと思いますが、次の京都産業大は重いですし、あそこのエリアで2本目を取れるとかなり優位に進めると思いますので、この後、どの辺を詰められるかを見つめ直して次の試合に臨みたいと思います」

 

―10番の久富選手、また、復帰したSHの宮尾選手への評価をお願いします。

「久富にはロングキックとディフェンスラインに接近したときのハンドリングを課題として見ていますが、この2点をうまくクリアしてくれています。今日は今までの下級生だったときにはなかったプレーが2つありました。ルーズボールになったときに体を張ってボールをキープしたプレーを見たときはかなり成長したと感じました。今は安心してゲームを任せられると思います。宮尾はよくゲームに戻ってきてくれました。プレーしたのは10分程度でしたが、パスのスピードや相手に掛けるプレッシャーというところでは、ちょっと違うと思いました。宮尾はまだコンディションのことを考えなければならないので、どこで使うかは悩みどころではあります」


―早明戦を終えての学びなど選手たちに話したことは?

「早明戦を振り返ったとき、自分たちのラグビー云々の以前にラグビーという競技で絶対に譲ってはいけないところがあるという話を選手たちにしました。それは戦術戦略ではなく、ラグビーの本質的な部分、コンタクトだったり、ファーストフェーズでのプレッシャーの掛け合いだったりというところを見つめ直していくこと。11月の帝京大戦の頃から戦術戦略では選手たちはうまくフォローしてくれてやりきってくれていました。しかしその裏にある、本当は見ておかなければいけないところが早明戦で露呈したと思います。選手たちもその点は大事だと理解してしっかりついてきてくれました」


―バックスの選手がいくつものポジションをこなせることのメリットについて?

「例えばバックス(ポジション)の中でランキングをつけるとしたら、その選手の一番いいところで出す。そうすると、どうしてもアジャストする選手たちも必要になります。そういったところが、例えば守屋(23番)のように潤滑油のようになり非常にうまく回っているのが一番のメリットだと思います。伊藤(FB)を下げたときも、久富があまり練習でもやっていないFBに入ってすぐにできました。そのあたりがチーム力として持っているものだと思います」


―来週はショートウィークで京都産業大戦になりますが、準備では何がポイントになりますか?

「まず、リカバリーをしっかりすること。頭の中をどれだけクリアにできるかと思っており、自分たちのスタイルとしてしっかりとした準備を選手たちの頭の中に詰め込んでゲームの臨むことをしてきていますが、この短い中で、グラウンドの中であるものに対して100%集中できる状態を作ることがポイントだと思っています」


伊藤大祐主将 (FB) 

「まず、勝てたことがすごく嬉しかった試合です。ブレイクダウン(接点)というところをテーマにしていました。多少、粗さが出たと思いますが、チームとしてやろうとしたことに対しての振り返りができると思うので、中5日のショートウィークですが、京都産業大学戦に向けて、伸び幅はあると思うのでしっかり修正して必ず勝ちたいと思います」


―例えば前半20分間では最後のパスが繋がらず、、といったプレーが多かったと感じましたが、試合を通じてどうやって修正していったのでしょうか?

「ラストパスの繋ぎのところでミスはしていましたが、早明戦から自分たちの中では皆でわかって統一されたプレーの中でのミスだったので、選手たちの間ではミスだとは思っていません。そこを次の京都産業大戦では繋がって取り切れるように厳しくやっていきたいと思っています。後半、点数が伸びなかったのは風(向かい風)も結構影響したとは思います。しかし、その中でもモールでトライを取れたり、スクラムを押せたりしていいかたちで崩せたりあったのですが、そこは修正したいと思います」


―来週はショートウィークで京都産業大戦になりますが、準備では何がポイントになりますか?

「今日もこの後、リカバリーをしっかりして、また、チームとしても『何かを加える』というより、『磨く』というところだと思います。次の試合勝たないとその次はないので全てをかけるエナジーを全力で表現したいと思います」



伊藤大祐主将と大田尾竜彦監督