4月3日(木)

最終日を迎えた2008年度日本代表スコッドタイト5キャンプ。今日は、クロノコーチによる最後のセッションが行われました。
まずは、軽いジョギングの後、キックキャッチでハンドリングスキルを養い、その後は、相手としっかり正対するためのドリルを行いウォーミングアップを終了しました。

キックキャッチでハンドリングスキルを養う   向かってくる相手としっかり正対   コンタクトバックを持っても基本は変わらず   ドリルの合間には、強い姿勢を作るためのスキルを紹介
キックキャッチでハンドリングスキルを養う   向かってくる相手としっかり正対   コンタクトバックを持っても基本は変わらず   ドリルの合間には、強い姿勢を作るためのスキルを紹介

続いて、スクラムの姿勢を作るためのスキルを全員で反復。ゆっくり自分の体の動きを感じながらスクラムの姿勢を作っていきました。その後は、スクラムマシーンに移り、PR/HO/LOの順でヒットスピードと姿勢を確認。その後No.8を入れた6人で組み、タイミングやヒットスピード、姿勢をチェックしました。
スクラムのスピードリーダーは、HOとNo.8。彼らのリードにより、速いスクラムは生まれます。今日のスクラムでもシャープなスクラムが何度も見られました。

続いて行われたのは、強い姿勢を作るためのコアトレーニング。バランスボールの上でスクラムの姿勢を作り、パートナーの揺さぶりに耐えるというもの。足の角度、バランスが少しでも崩れるとたちまち体の自由が利かなくなります。クロノコーチのセッションでは、スクラムの合間に、こういったコアトレーニングやスクラムスキルのメニューが組み込まれ、休む間もなく次々と速いテンポでセッションが行われていきます。
続いては、体の芯をずらさず細かいステップを踏むトレーニングが行われました。これは、重心移動のバランスを確認するためのものです。

スクラムマシーンでヒットスピードと強い姿勢を確認   続いてロック   最後は、6人で   コアを鍛えるトレーニング。スクラムの姿勢でバランスボールに乗り、揺さぶりに耐える
スクラムマシーンでヒットスピードと強い姿勢を確認   続いてロック   最後は、6人で   コアを鍛えるトレーニング。スクラムの姿勢でバランスボールに乗り、揺さぶりに耐える

そして、いよいよライブスクラムとなりました。クロノコーチ曰く「スクラムセッションは、3分の1をマシーンで、残り3分の2は実戦」とのこと。今までやってきたことを再確認し、スクラムを組みました。やはり、意識するのは姿勢とスピード。スクラムのスピードは、ボクシングのフックではなく、ジャブのような素早いストレートをイメージすると分かりやすいとのことです。
その後も、フィットネストレーニングや、再びライブスクラムなど約2時間休みなくセッションが行われ、最終日の練習が終了しました。

練習を終え、最後の円陣でクロノコーチは、「タイト5は、チームにとって特別な存在。特にプロップ、フッカーの選手たち。なぜならチームを支えるスクラムの他にもエキストラプレーがたくさんあるから。だからこそ、常に100%でなければならない。私にとって残念なのは、今日でこの合宿が終わってしまうこと。しかし、君たちはこの3日間でやってきたことを、これからの代表で、自チームでしっかりとこなしてほしい。必ずレベルアップできる。君たちの活躍を期待している。ありがとう」と語りました。そして、恒例の一本締めで合宿の終了となりました。

日本代表、ひいては日本のスクラム強化のために、多くのことを残してくれたクロノコーチ、選手たちにとっても、本当に有意義な3日間になったと思います。いよいよ、明日は、アジア5カ国対抗に臨む日本代表30名が発表されます。

芯をぶらさず、細かなステップ   ライブスクラムで実戦練習   フィットネス。背中に人を乗せて匍匐前進   フィットネス。抱きかかえながら体を一周させる
芯をぶらさず、細かなステップ   ライブスクラムで実戦練習   フィットネス。背中に人を乗せて匍匐前進   フィットネス。抱きかかえながら体を一周させる

フィットネス直後にはまた、ライブスクラム。きついときも常に100%   ラインアウトのスローイングもチェックした
フィットネス直後にはまた、ライブスクラム。きついときも常に100%   ラインアウトのスローイングもチェックした

4月2日(水)

2008年度日本代表スコッドタイト5キャンプ2日目。本日は、ラグビーとは異なるスポーツからスクラムに必要なスキルを学ぶということで、相撲トレーニングを行いました。今回は、武蔵川部屋を訪問させていただきました。

タイト5キャンプ実施にあたり、クロノコーチからリクエストがあったのが、この相撲トレーニングでした。そこで、以前からラグビーとの親交が深い武蔵丸親方にご尽力頂き、本日のトレーニングが実現しました。残念ながら、武蔵丸親方は不在でしたが、武蔵川親方(元横綱・三重ノ海)を始め、大鳴門親方など多くの関係者の皆様にお力添えを頂きました。

全員が廻しを締めて登場   関取衆を囲んで四股を踏む   背筋を伸ばして股割り   唯一の経験者HO安江選手のすり足
全員が廻しを締めて登場   関取衆を囲んで四股を踏む   背筋を伸ばして股割り   唯一の経験者HO安江選手のすり足

少し早めの到着となった選手たちは、関取衆の稽古を見学しました。巡業明けにも関わらず厳しく激しい稽古を、固唾を飲んで見守りました。
そして、いよいよ日本代表チームのトレーニングの時間となりました。全員が廻しをつけ、準備を整えました。その間、カーワンHC、クロノコーチは、ご指導いただく大鳴門親方とミーティング。そこでコーチ陣から出たリクエストは「厳しく!」。そのスポーツの厳しさを知ることで何かを感じて欲しいということから出たリクエストでした。

全員が土俵に集まり、準備運動からスタート。まずは、四股を50回。股割りを30回行いました。特に四股は、相撲の基本動作であるにも関わらずきつい。回を重ねるごとに、バランスが崩れだし、汗が吹き出てきました。

そして、その後は、クロノコーチも、事あるごとに足の運びの大切さを語っている、すり足の練習。これが中々上手くいきません。しかし、このすり足は、相撲だけに関わらず、スクラムの足の運びにも通じるため、しっかりと行いました。これは、まっすぐ進むだけではなく、左・右と変化をつけながらも行われました。

さらに、関取衆の胸を借りて押し稽古。きちんと強い姿勢で、鋭く当たらないとびくともしません。腰を低く下げ、背筋を伸ばしてまっすぐに出るというのは、スクラムに必要な要素です。選手たちは、改めてその大切さを実感しつつ、稽古を重ねました。特に、HO安江選手(今回のスコッド唯一の相撲経験者)や、PR中野選手、LO谷口選手らは、鋭い当たりを連発、関取衆を一気に押し出す場面もありました。

ここまでで、ウォーミングアップが終了。続いて、実際に相撲を取らせていただきました。しかし、力士の力は本物。選手たちは、いとも簡単に倒されてしまいました。
最後にぶつかり稽古を一人4本から6本行いました。このぶつかり稽古がまたキツイ。びくともしない関取衆を押し込まないと稽古が終わりません。声を挙げれば、「声を出すと力が逃げる」と容赦なく厳しい言葉が飛びます。必死の形相で力士を押し込む選手たちの体が一気に熱を帯びます。それでも、全選手が全力で取り組み、稽古を終えることができました。

ここで予定では終わりのはずが、コーチ陣から選手同士で相撲を取らせたいという追加リクエスト。ここでは、様々なマッチアップが見られました。LO大野選手対LO谷口選手や、池谷選手たち尾崎選手というサントリー対決も実現。お互い死力を振り絞りながら戦い抜きました。

ここで、本当の稽古終了。大鳴門親方からは、「今日行った四股や股割り、すり足は、相撲の基本的な練習だが、十分ラグビーにも活用できるはずです。ぜひ、この練習の成果を活かし、日本代表として頑張ってください」というメッセージを頂きました。
それに対し、カーワンHCは、「今日は、本当に素晴らしい機会を提供頂き、本当にありがとうございました。日本の伝統スポーツである相撲に敬意を表するとともに、今日の練習で学んだことをまた、明日からのラグビーで応用していきたいと思います。我々、ラグビーも、この日本の伝統スポーツである相撲のように皆に敬意を表されるようなスポーツになれるよう頑張りたいと思います」とお礼の言葉が送られました。

稽古後は、武蔵川部屋特製ちゃんこを頂きました。これがまた絶品。おいしいちゃんこを沢山頂きました。
これで、キャンプ2日目を終了。すべてがスクラムに通じるこの合宿。この日も新たなエッセンスを吸収して、いよいよ明日最終日を迎えます。

今回の我々の訪問を受け入れていただきました武蔵川親方を始め、武蔵川部屋の皆様に改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

力士の胸をかりて押し稽古。肩であたらず、脇を締めてまっすぐ当たる   力士を相手に相撲で勝負   しっかりと当たる   武蔵川部屋特製ちゃんこを頂きました
力士の胸をかりて押し稽古。肩であたらず、脇を締めてまっすぐ当たる   力士を相手に相撲で勝負   しっかりと当たる   武蔵川部屋特製ちゃんこを頂きました

4月1日(火)

2008年度新シーズンスタートの今日、東京・辰巳の森海浜公園ラグビー練習場では、2008年度日本代表スコッドタイト5キャンプが行われました。

今回の合宿は、4月4日に発表される日本代表のセレクションと、前回のワールドカップの反省を踏まえ、FW、特に前5人の強化に重点を置くことを目的としています。
この合宿のために、臨時コーチとしてニュージーランド代表のスクラムコーチであるマイク・クロノ氏を招聘し、世界トップの指導を受け、世界と戦うためのFWを目指します。

午前のセッションはフィットネス   コアトレーニングもしっかり   長い棒を使ったコアトレーニング   ミーティングは、スクラムに必要なこととは?について、選手に問いかけながら進められた
午前のセッションはフィットネス   コアトレーニングもしっかり   長い棒を使ったコアトレーニング   ミーティングは、スクラムに必要なこととは?について、選手に問いかけながら進められた

初日となった今日、午前中のセッションでは、マーティン・ヒューメフィットネス&コンディショニングコンサルタント、太田正則フィットネス&コンディショニングコーチを中心に、フィットネストレーニングを実施。セブンミニッツドリルなどの測定や、シャトルラン、体幹トレーニングなどを行い、体力向上に努めました。中には、スクラムの姿勢などを意識させるメニューも組み込まれるなど、数少ないセッションを有効にするべく、しっかりと取り組みました。

午後のセッションの前には、マイク・クロノ臨時コーチによるミーティングが行われました。世界と戦うスクラムには何が必要なのかというものを、オールブラックスの練習クリップを見ながら説明されました。クロノコーチ曰く、「スクラムにおける前3人の力は36%、残り5人の力が64%、8人一体となって組むことが大切」とのことでした。
その後のグラウンドでのセッションでは、王国のエッセンスがふんだんに練りこまれたメニューが次々に行われました。クロノコーチが語るのは、コア(体幹)を意識し、強い姿勢を作ることの重要性。これは、決して難しいテクニックではなく、意識づけ、集中力など我々、日本人でも十分補えるものばかりでした。ヒットスピードを意識するためのドリルや、理想的な姿勢で押すためのドリルなど、選手たちに基礎の大切さがしっかりと落とし込まれました。

選手たちも、クロノコーチの指導を受け、体感し「変化」に気付いたようです。実際、個人の姿勢を見るために行われた最後のスクラムマシーンを用いたドリルでは、ヒットスピードや姿勢などに顕著な変化が見られ、手応えを感じていました。

練習後も、時間を惜しむかのように、クロノコーチの指導を受ける選手たちの姿がありました。日本代表を目指す選手たちの意識の高さに、クロノコーチもバス出発ギリギリまで、アドバイスを送り続けました。
明日は、グラウンドを離れ、武蔵川部屋で相撲トレーニングを行います。

PS.
本日のトレーニングには、U20の薫田監督を始め、トップリーグ各チームの監督・コーチも多数見学に訪れました。太田GMは、「多くのトップチームの指導者の方々に、我々の合宿を見ていただくことを、非常に嬉しく思います。指導者の皆さんには、これを機会に日本代表の取り組みをぜひ、ご理解頂きたい。そして、世界屈指のトップコーチのスキルを自チームでの指導に活かし、皆で日本ラグビーを盛り上げて行きたいと思います」と語っています。

選手に語りかけるクロノコーチ   スクラムポジションのまま、引っ張り合う   姿勢を意識したトレーニングの一つ。地面をローラーの突いた棒で転がしながらしっかりとプッシュする   強い姿勢のまま、まっすぐに押す
選手に語りかけるクロノコーチ   スクラムポジションのまま、引っ張り合う   姿勢を意識したトレーニングの一つ。地面をローラーの突いた棒で転がしながらしっかりとプッシュする   強い姿勢のまま、まっすぐに押す

全員のヒットスピード・姿勢を確認   太田コーチを地面につけずにスクラムの姿勢を保ちながら運ぶ
全員のヒットスピード・姿勢を確認   太田コーチを地面につけずにスクラムの姿勢を保ちながら運ぶ