世界最高峰のセブンズ(7人制)大会、ワールドシリーズ「HSBC SVNS」が11月29日からいよいよ始まる。昨季躍進を遂げたセブンズ女子日本代表の足跡を振り返りながら、今シーズンの注目ポイントを紹介する。



◇よりエキサイティングな大会に

 

強豪国との連戦に挑むのは、現在ヨーロッパに渡っている15人制男子日本代表だけではない。

サクラセブンズことセブンズ女子日本代表の 列強への挑戦が、11月末から始まる。

参戦するワールドシリーズ「HSBC SVNS」は、各国を転戦して世界王者を決めるセブンズ最上位の国際大会だ。

 

まずは、今季から導入される新たな大会フォーマットから紹介したい。

昨季からの大きな変更点は、コアチームと呼ばれる出場チームが12チームから8チームに削減されたことだ。

これに伴い、下部大会「HSBCワールドラグビーセブンズチャレンジャー」は解体され、3ディビジョン制に。2部の「HSBC SVNS 2」、3部の「HSBC SVNS 3」はそれぞれ6、8チームで争われることとなった。

 

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(🄫World Rugby / SVNS.com)

 

トップディビジョンはチーム数が絞られたことで、よりエキサイティングかつ競争力の激しい大会となるだろう。

ニュージーランド代表で今季ワールドラグビーの最優秀新人賞に選出された18歳の超新星、ブラクストン・ソレンセンマギーなど、今夏のワールドカップ2025イングランド大会で活躍した選手たちもセブンズの舞台に挑戦すると予想されている。

 

レギュラーシーズンは、ドバイ(UAE)、ケープタウン(南アフリカ)、シンガポール、オーストラリア(開催都市未定)、バンクーバー(カナダ)、アメリカ(開催都市未定)の6大会が、11月末から翌年3月中旬にかけて開催される。

 

その後、プレーオフにあたる「ワールドチャンピオンシップ」をおこない、シーズンの最終順位および翌年度のトップディビジョン出場チームを決める。

 

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(🄫World Rugby / SVNS.com)

 

昨季は一発勝負だったが、今シーズンからは4月中旬から6月上旬にかけて香港、バリャドリード(スペイン)、ボルドー(フランス)で3大会をおこなう。

「HSBC SVNS 2」の上位4チームを加えた12チームで争われ、3大会の総合順位で9位以下となった4チームは来季、2部で戦う。

 

◇飛躍を遂げた一年

 

サクラセブンズは初陣のドバイ大会(11月29〜30日)で、プールBに入った。

昨季準優勝のオーストラリア、3位のカナダ、5位のイギリスと対戦する(プールAはニュージーランド、フランス、アメリカ、フィジー)。

 

1日目にプール内で総当たり戦をおこない、2日目に各プール上位2チームによる決勝トーナメントと、下位2チームによる5位〜8位決定トーナメントがおこなわれる。

レギュラーシーズンはすべて2日間の開催となり、よりタフさが求められるだろう。

 

就任2季目の兼松由香ヘッドコーチ(以下、HC)も、それを理解している。

 

「トップ8に入るのに苦労してきた時代があったので、そこの仲間入りをさせてもらえたことは本当にありがたい」と感謝を述べた上で、こう語った。

 

「レベルが高い分、ケガのリスクや選手の負荷も大きいと予想しています。(大会登録の13名だけでなく)スコッドの中でメンバーを入れ替えながら、心身ともに100%臨める選手を選考することを大事にしたいと考えています」

 

(インタビューに答える兼松由香HC)

 

サクラセブンズにとって、昨シーズンは躍進の年だった。昨季はレギュラーシーズンの全6大会で準々決勝進出。初戦のドバイ大会で7位に入ると、着実に順位を上げた。ケープタウンで6位、パースでは当時の史上最高位タイの5位に入った。

 

(パース大会の5位決定戦で女子アメリカ代表に勝利したサクラセブンズ)

 

続くバンクーバーでは初めて準決勝進出を果たし、4位となった。

香港で7位、シンガポールで5位となり、総合順位でも過去最高位を更新する5位となった(ワールドチャンピオンシップは7位)。

 

前半の失点を2トライまでに抑え、後半は早い段階で交代カードを切り、インパクトメンバーが逆転勝利に導く――。

このゲームプランがハマった。

 

(HSBC SVNS 2025の「トライ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた谷山三菜子選手のトライ)


(ワールドシリーズで初の準決勝進出を決め、歓喜に沸くサクラセブンズ)

 

リオオリンピックにチーム最年長選手として出場し、引退後は女子セブンズユースアカデミーのHC、サクラセブンズのアシスタントコーチを歴任した兼松HCは、「(選手時代から)サクラセブンズが積み重ねてきたことは何ひとつ間違っていない」と感じていたという。

 

「一人ひとりのスピードやパワーでは敵いませんが、運動量を仕事量に変えて常に人がたくさんいるラグビーを展開しようと」

 

フィットネスを土台にしつつ、大会登録メンバー13人を満遍なく起用。一人ひとりの役割を明確にした。

 

パリオリンピックまで出場時間が限られていた辻﨑由希乃は、心境の変化をこう語っていた。

「パリまでは、今日は何分出られるんだろうと考えてばかりでしたが、いまは先発でもリザーブでも自分がどの役割を果たすべきかを考えられています」

 

(ワールドチャンピオンシップ ロサンゼルス大会でプレーする辻崎由希乃選手)

 

◇日本の強みを"超強み"に

 

今シーズンはさらなる進化を求め、テーマに「忍者」を掲げた。

タックル後の起き上がり、ポジショニング、コミュニケーション、相手への反応、対応、プレーの判断…。あらゆる面での速さ、早さを追求する。

 

「現時点でどのはやさが足りていないのか、選手たちと話し合い、10個以上出てきました。それらを一つひとつメニューで徹底的に意識しています」

 

兼松HCは世界のトップと対等に争うためには、「より独創性がないといけない」という。

 

「体格など変えられないものに時間を割くのではなく、自分たちの強みを"超強み"に変えていくことが大事だと思っています。それも特定の選手だけでなく、スコッド全体でできる必要がある。セブンズ大国と呼ばれるフィジーのように、他の国では真似できないなという存在になりたいです」

 

そこで、今季からはチームとしての決まりごとを限定し、グラウンドに立つ7人が主体的に動くラグビーに着手している。

難易度はグッと上がるが、それこそがサクラセブンズの勝ち筋と信じる。

 

「いまはミスもたくさんあるので、選手たちはモヤモヤしているかもしれません。でも、私はワクワクしながら(練習中に)笛を吹いています。私が予想していないところから、忍者のように急に出てきてぶつかりそうになることもある。時間はかかると思いますが、3年後(のロサンゼルスオリンピックのとき)に完成形に持っていきたいです」

 

(時折笑顔を交えながら質問に答える兼松由香HC)

 

◇ラグビー留学生が初の代表入り

 

今季の陣容を見ると、昨季の主力を軸にしながら新たにスコッド入りした選手も台頭している。

注目はサバナ・ボッドマンだ。

 

(アジアシリーズのスリランカ大会でトライを決めるサバナ・ボッドマン選手)

 

日本経済大学女子ラグビー部の1期生として、ニュージーランドから来日。現在は東京山九フェニックスに所属する23歳だ。


海外出身選手の代表入りは、ライテことマティトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェ以来。


ラグビーの留学生としては初めてのケースである。9月のアジアシリーズ中国大会で初キャップを獲得。決勝の中国戦ではラストプレーで自陣から突破、逆転勝利を決めるトライを挙げた。

 

そんなパワフルなランだけでなく、スティールやルーズボールの確保など献身的なプレーでも光る。

兼松HCの期待度も高い。

 

「チーム内でいつもトップクラスのスタッツを記録していますし、普段の練習は真面目に取り組み、ミーティングも一生懸命に話を聞いてくれます。日本にいる若い留学生たちに希望を与える存在です」

 

アジアシリーズは2大会とも優勝。スリランカ大会では全試合で完封勝利を収めた。

勢いそのままに、今度は世界を驚かせたい。


(文・明石尚之)


HSBC SVNS 2026 ドバイ大会

■女子セブンズ日本代表 大会スケジュール

プール戦 ※大会1日目(11月29日)

 

現地時間

日本時間

対戦相手

プールB 第1戦

11:42

16:42

女子オーストラリア代表

プールB 第2戦

14:21

19:21

女子英国代表

プールB 第3戦

17:49

22:49

女子カナダ代表


■外部リンク

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