「全国大学ラグビー トークバトル 2007」

12月5日(水)、第44回全国大学ラグビーフットボール選手権プレマッチイベントとして、恒例の「全国大学ラグビー トークバトル 2007」が、東京・大崎の「ゲートシティー大崎」で開催されました。
16日(日)に迫った大学選手権開幕に向けて、出場チームや選手の見どころ・そして各監督ご自身の思いなどを語っていただきました。
"バトル"は、例年通り、トーナメントの組合せをみながら、行われました。

■「全国大学ラグビー トークバトル2007」出演者

パネリスト
中竹竜二監督(早稲田大学)
大西健監督(京都産業大学)
坂田好弘監督(大阪体育大学)
武村秀夫(日本協会大学部門長、法政大学元監督)
(着席順)
コーディネーター
上田昭夫(U21日本代表及び、慶應義塾大学元監督)
村上晃一(ラグビージャーナリスト)
司会
黒氏康博(NHKアナウンサー)

 

 

黒氏 「さて、まずは、早稲田の中竹さんからお願いします」
中竹 「いや、権丈とも話してたんですけども。我々、初戦しかまだ見てないんで」
黒氏 「場内からちょっと笑いが…」
中竹 「いや、本当ですよ。今度、きちっと分析するために仙台まで行って。スタッフがビデオに撮り、本気で準備します」(注/1回戦の対戦相手、関東大学第5代表決定戦が9日、仙台で行われ、中央大学が勝ち上がった)
黒氏 「昨日は上井草にお邪魔しましたけども、いい練習してましたね」
中竹 「大勝のあとなんですけども。もう、会う人会う人が『ここから油断するなよ!!』ってもう200回くらい言われて」
(客席ウケる)
黒氏 「さあ、続いて大西さんいかがでしょうか?」
大西 「まぁ、あの‥‥‥‥‥‥」
黒氏 「もうちょっとマイクを近づけていただけますか?すみません」
武村 「新鮮でいいですね。非常に新鮮」
上田 「大西さん、春もそうだし、秋もそうだし‥‥。いつでも同じ感じですね、いつもね、この口調で」
大西 「え~私…。ちょっと関係ないんですけども、慶應大学に20数年通いまして、今年の春、初めて慶應大学が私達の大学に訪ねて来てくれて…。ものすごく嬉しかった。(客席ウケる)それがもう…本当にもう…すべてってくらい嬉しかった」

大西健監督(京都産業大学)
大西健監督(京都産業大学)
村上 「グラウンド開きか何かで、慶應と試合したんですよね」
大西 「そうなんです。ええ」
上田 「慶應が弱い時もね、必ず5月の連休に来てもらって。それで、弱い時ですみません、ていうと『いいえ、上田さん。スクラムはやっぱり慶應ですわ。(関西のイントネーション。客席ウケる)『慶應にスクラムを教わりにきました』ってね」
大西 「はい。何とかあの…私たちもやっとグラウンドができまして。そのグラウンド開きに慶應に来ていただいて…。嬉しかったですね。…ええ」
黒氏 「大会については、いかがですか?」
(客席ウケる)
大西 「大会はもう、早稲田がダントツだというのは、これはもうみなさん‥‥。ただ学生のことですから、やっぱり"夢"とか"ドラマ"があってもいいんじゃないかなとは思っております」
黒氏 「一波乱起こしそうですか?」
大西 「いやぁ~。それは分からないですけども。とにかく"夢"を追いかけて、なんとかたどりつければなと思ってます」
上田 「ちょっとケガ人が多いですからね」
大西 「ま、ラグビーですから。でも、一番イタいプロップだとか‥‥ケガは仕方ないですね」
黒氏 「注目の長江選手が、アキレス腱断裂で」
大西 「ええ」
村上 「大学選手権、間に合いそうですか?」
大西 「いやいや、あの~アキレス腱ですから、ちょっと無理ですね」
黒氏 「ちょっと、これ以上話してると悲しくなってきてしまいそうです」
(客席ウケる)
黒氏 「坂田さん、お願いします」
坂田
坂田好弘監督(大阪体育大学)
坂田好弘監督(大阪体育大学)

「え~と、大阪体育大学です。このトークバトルですか、連絡受けたのがシーズン前でして。日本協会から電話あって。『こういう催しがあるんだけど』と。今年の大学選手権に出れるかどうか分からん時にこんな電話しおって(笑)。出れるようだったら出席しますということで。そういうくらい今年のチームっていうのが(大阪)体育大学…。まぁ(大学選手権は)試合するまで分からない。夏合宿も関東の大学とやって連敗してましたし…。で、シーズン始まってみて何とかごまかしながら、一戦一戦勝って5連勝までして。で、最後、同志社大学と京都産業大学に、やっぱり力の差があって、負けたんですけども。今年のチームっていうのは、そんなには特徴ないんですけども、特徴ないのが、まぁ今年のカラーですね。でも、伝統的に最後までがんばろうというのが、(大阪)体育大学ですので」

黒氏 「去年はタレントがいっぱいいました」
坂田 「そうですね。去年のベスト4まで行ったあとに、こういうトークバトルやってたら、なんぼでも話します。(客席ウケる)今年どうなるか分からないんで、なかなか…一応、謙虚に話をさせてもらいたいと思いますけども」
黒氏 「そういうお話を、教え子の村上さんはどのようにお聞きになりますか?」
村上 「そうですね。でも本当にね、今年の大体大…毎年観るんですけれど、体ちっちゃいんですよね。No.8も173センチの80何キロで。関東勢の大学ではあまりいないようなちっちゃいNo.8で。先生、人材がちょっと…サイズがちっちゃくなってますね」
坂田 「そうです。やっぱり、それはありますね」
黒氏 「以前は、大体大いうと、ヘラクレス軍団、と呼ばれていましたが」
坂田 「はい。それに比べると、やっぱり体のサイズは非常に小さくなりましたね。でもまぁ、体(だけ)でやるわけじゃないですから、ここまでなんとか来てます」
黒氏 「武村さん、いかがでしょうか? 今回は『法政大学前監督』という立場と『大学部門長』というお立場ですが」
武村 「そうですね。法政大学はもう、今年のスタートはめちゃくちゃですね。三流チーム。本当に。なんであんな試合やってんのかと思って、本当に不思議でした」
黒氏 「やっぱりそれは監督が替わったのがよくなかった」
(客席ウケる)
武村 「じゃ私がいいみたいじゃないですか。そういうことじゃなくて(笑)本当に、このチーム、入替戦にいくんじゃないかって…。最初はね、勝っても1点差。そして、ひと桁の差。ただ後半になって、大東文化大学の試合は、やっと少しチームが、選手が分かったかなっていうゲームになりましたね」
黒氏 「タックルが戻ってきましたよね」
武村 「そうですね。あれに負けたら本当に入替戦に行くか、代表決定戦に回るか、どっちかなんですね。確実に。それに勝ったことによって、まあ、大学選手権に出られるということですから。まあ(大学選手権では)2回戦の早稲田(戦)がどのくらいの出来になるか…少しチームも良くはなってきてますけれども」
村上 「立命はけっこうやりますよー」
武村
武村秀夫(日本協会大学委員長、法政大学元監督)
武村秀夫(日本協会大学部門長、法政大学元監督)

「もちろん、立命戦も大事なのですが(客席ウケる)え~いつも言ってるように一戦一戦、先のこと考えないで。階段10段いっぺんに上がれないんだから、一段一段上がってけ!ってことを言ってますけども。それと、やっぱりみんなが話題にするのは、同志社と筑波(の対戦)ですね。それから拓大と帝京。拓大の誰が一番いいかというとスタンドオフの外国人選手(ピータース選手)。この子のキック力は凄いですね。それからセンターとウィングの双子の兄弟(横山選手)。このバックス3人が注目されるとこでしょうね、関東の中では。あとはですね、まあ、大東文化・明治は、後半15分くらいにどっちが走ってるかでしょうね」

(客席ウケる)
上田 「肉弾戦ですよね」
武村 「グラウンドを広く使って、横70メートルの幅をどれだけ使うかっていうのを両チームがやるか。こないだの明治を観ても、バックスに結構回してますから。大東のほうは相変わらず…昔からの特徴あるチームで、ボールのそばに行くのは外国人選手で、キープしていれば、そこに誰かが行く。外国人が倒されると、相手にボールが出る。そういうチームですから。(客席ウケる)そんなとこだと思います」
各種データから、勢力地図を読みとく
黒氏 「それでは、それぞれの大学の特徴を、データから見ていきたいと思います。村上さんに、そのデータを挙げていただきました。まず『得失点差』ですね」
各大学チーム成績

■関東大学リーグ戦1部

順位
大学名 勝敗 総得点 総失点 得失点差 総トライ数 失トライ数
東海大学 6勝1敗 282 62 220 43
拓殖大学 4勝3敗 207 240 ー33 28 36
法政大学 4勝3敗 125 154 ー29 16 22
■関東大学対抗戦Aリーグ

順位
大学名 勝敗 総得点 総失点 得失点差 総トライ数 失トライ数
早稲田大学 7勝 486 46 440 74
明治大学 5勝1敗1分 302 162 140 50 26
慶應義塾大学 4勝2敗1分 216 137 79 34 22
■関西大学Aリーグ

順位
大学名 勝敗 総得点 総失点 得失点差 総トライ数 失トライ数
同志社大学 6勝1敗 267 95 172 42 14
京都産業大学 5勝2敗 209 127 82 31 19
大阪体育大学 5勝2敗 206 147 59 32 23
村上 「はい。総得失点でいくと、リーグ戦では東海大学がやっぱり圧倒的に有利ですね。失トライが7ということで、ディフェンスも非常にいい。東海大は、本当に充実したシーズンだったということですね(注/関東学院大学は表からは除外されている)」
上田 「関東学院との試合も、1点差で(の敗戦で)したもんね」
黒氏 「はい。22対21でしたね」
村上 「でも、もう実力は間違いなくリーグ戦でトップですね。そして、対抗戦のほうは、もちろん早稲田大学がトップ。得失点差440。総トライ数74…。中竹さん…」
中竹 「改めてこう見ると凄いですね」
(客席ウケる)
上田 「取りすぎだよ」
中竹 「これで…大学選手権終わりにしますか?」
(客席ウケる)
村上 「で、関西のほうは結構、同志社大学ひとつ負けてますんで、追い込んできたっていう感じで。ただ、いろいろな関係者に聞くと『同志社もシーズンの最初と今とぜんぜん違う』ってことです。非常に実力は伸びているところですね。大西さんそうですよね。」
大西 「そうですね。あの、最初はちょっと苦労してましたけれども、最後は強かったですね」
村上 「ずいぶん簡単な‥‥」
黒氏 「どう変わったんでしょうか?同志社は」
大西 「やっぱりね、フォワードがね、あの~何ていうんですかね、"ひたむき"ですよね。本当にひたむきに全員がバインドして、スクラムをする、モールをする。そこにバックスが乗っかっていくというようなかたちで。今までバックスが切り開いてというのが同志社のパターンやったんですけども、変わってますよね、今シーズンは」
村上 「次はですね。個人の過去の代表歴ですね。ご覧のように明治・早稲田といったあたり、かなり高校レベルでのいい人材が、今は集まっていますね。京都産業大学と大阪体育大学は非常にキツいというか、そういう経歴のない選手の中で、懸命にこうなんとかチーム力を保っている。まあこれ昔からの傾向ではあるんですけれども」
各大学ユース代表選出状況

■U19日本代表選手数 ■高校日本代表選手数
順位
大学名 人数 順位 大学名 人数
明治大学 14 早稲田大学 21
早稲田大学 13 明治大学 15
同志社大学 10 同志社大学 12
東海大学
京都産業大学
大阪体育大学


東海大学
大阪体育大学
京都産業大学


 

中竹 「これ多分、数年で入れ替わりますね。早稲田は減ると思います」
村上 「そういうシステムに変わる‥‥?」
中竹 「まぁちょっと誤解が…。こういうデータがあると『早稲田はいっぱい取ってる』となるんですが、我々の"推薦制度"はおそらく日本一厳しい。今年なんか、スポーツ推薦3名ですね。で、それまで自己推薦とか指定校で補ってた分があったんですけども、それもほとんど取れず、1名ですかね。結局、今年4名なんですね。本当に強化として取ったのは。これが4年間続くと、12人ですね。だからかなり厳しい状態になります」
村上 「やっぱり高校のいい選手が希望するところが、早稲田に行きたいって学生多いですからね」
中竹 「けど、本人の意志よりも高校の先生の推薦が大きい。早稲田って受験(の時期)も遅いんで、(学生が)受けたいと思ってても『ちゃんとラグビーやりたいなら、早稲田は受からない可能性が大きいから他の大学を受けなさい』となるケースが多いときいています。さらに今年は慶應さんに、あの~、相当な数のジャパンが、来年12、13名入るっていうので、かなり‥‥」
上田 「そんなに入らない。ウソ言わないでください」
(客席ウケる)
黒氏 「上田さん、一言?」
上田 「コツコツ私は人材確保をやって、今年は…なぜか成績優秀者が随分…まぁ、誘わなくても受けてくれた子がいるんですよ。だから高校代表も数名入ってますよ、今年はね(笑)。入ってますけど、それはあの"偶然"であってね」(客席ウケる)
中竹 「それで、今日ぜひお聞きしたいのは、早稲田は人材確保の組織があまり確立されてないので、ぜひ上田さんに『手紙の書き方』だとか…」
(客席ウケる)
上田 「手紙書きません!」
中竹 「『親との接触のしかた』だとか『お土産なにがいいか』とか」
(客席ウケる)
上田 「言います。お土産なにもありません。父兄とも会ってません。本人と携帯メールでやりとりしてるだけです」
中竹 「それですか‥‥!」
(客席ウケる)
上田 「土曜日に慶應は、湘南藤沢キャンパスの面接があるんです。一期と二期があって、二期で6人が出願をして2人しか合格してないんですが。この2人を面接で合格させるために、私は毎日のように携帯メールでやりとりをして、大学生が、面接のしかたを指導して。ま、そういうことで合格率を高めているというだけですかね」
中竹 「分かりました。じゃあそれ、しっかり学ばせていただき、携帯メールの練習します」
(客席ウケる)
黒氏 「ちょっと武村さん、仲裁に入っていただけますか?ちょっとマジになってきているものですから…」
(客席ウケる)
武村 「先程、裏のほうでですね、坂田先生が『大学は、"あるチーム"にやっぱり選手が偏っていく。我々の学校にはなかなか来てくれない。ドラフト制度みたいにしたらどうか。(客席ウケる)抽選をやらせてくれないかな』みたいな話をしてたんですよ。ま、それはね、冗談ですが、そんな話、裏でしてたんですよね」
坂田 「でも体大は、学生数は2500~2600なんです。全部で。もう本当にちっちゃな大学で、それで選手を確保していくのは本当に難しい。だから、ラグビーの選手とこだわらないでいこうと」
上田 「村上さんは、なんで(大阪)体大、受けたんですか?」
村上 「え?…ぼくは…坂田先生に憧れて…」
(客席ウケる)
村上 「って言うしかないじゃない…」
(客席ウケる)
上田 「ワールドカップ(2007年フランス大会)の、開会式に招待された人が監督だもんね」
武村 「ウチに入った大久保(直弥)、法政二高で、バレー部だったんですよ。3年の時に、高校のラグビーの先生から『ラグビーやってないんですけど…バレー部の学生なんですけど…大学行ったらラグビーやりたいって言うんで…。いいですかね?』って。これは凄いバネ持ってましたね。今はサントリーサンゴリアスでやってますが、最初はまったくの素人で…ただボール持って真っ直ぐ走るだけ(笑)」
坂田 「ラグビーなんてそんな競技ですよ。ボクが入った時にね、高校で始めて‥‥それまで柔道をしてました。で、合格発表の日、グラウンド見たら、なにか知らないスポーツをやってるわけです。なんかワルそうなのが汚いジャージを着て、わけの分からないボールを持って走ってるわけですよ。『あれなんや?』って言ったら『ラグビーや』って。面白そうや!って、その足で部室へ行きまして、ラグビーさしてくれって…。で、『1週間経ったら試合や』。『相手どこや?』『同志社大学の2部や』って。『えっ?』…ルールも知らないんです。『どうしたらええんや?』って言ったら、その当時の部長…監督というのが漢文の先生が教えられてて『なぁ坂田。ラグビーなんて簡単や。ボール持って走れ。(客席ウケる)(ボール)持ってる奴いたら倒せ!』『なんだ、そんなラクな競技だったらやるわ』って。で、すぐスパイク買いに行って…。で、同志社大学との試合ですわ。で、ゲームの途中、誰かが蹴ったんですね。そのボールをたまたま…バッと受けて走ったんです。走ったら後ろからね『押さえろ!押さえろ!』って言ってる。押さえろ言われても、ラグビー知らなかったんですから。で、ちょうどインゴールで、押さえたのが初トライです。(客席ウケる)それからもう、ラグビーなんてそんな簡単なもんないわ。トライなんて、なんぼでもできるわ、と」
黒氏 「今の話の続きは、(村上さんの著書)『空飛ぶウイング』で」
(客席ウケる)
大学選手権、このプレーヤーに注目
黒氏 「では、次の数字お願いします」
個人トライランキング

■関東大学リーグ戦1部
順位
トライ数
名前 所属 学年
岸 直弥 東海 3年
シオネ・タリカビリ・バツベイ 拓殖 4年
横山 伸一 拓殖 4年
横山 健一 拓殖 3年
■関東大学対抗戦Aリーグ
順位
トライ数
名前 所属 学年
12
豊田 将万 早稲田 3年
出雲 隆佑 慶應 3年
10
宇佐美 裕太 明治 4年
■関西大学Aリーグ
順位
トライ数
名前 所属 学年
12
壇辻 勇祐 大阪体育 3年
宇薄 岳央 同志社 4年
緑川 昌樹 関西学院 1年
村上 「個人のトライランキングです。リーグ戦は、さっき武村さん、おっしゃっていたように、拓殖大学ですね、注目してる横山くん。そしてこれ、侍バツベイの弟ですね。この3人が6トライずつで、計18トライ。これでチームの全トライの半分以上取っている。そして、東海大学の、岸君が、フッカーなんですが非常に多い。そして対抗戦では(早稲田の)豊田選手ですね。このあいだまた明治大学戦で、2トライしましたけれども」
中竹 「このあいだトライのあとに、2回もボール投げてブーイングしたんで、これマイナス2でいいですよ。(客席ウケる)次から外して」
村上 「ちゃんと叱ったんですか?」
中竹 「ミーティングでも、そりゃダメだって。ちゃんと叱っておきましたんで。相当な数の、お叱りの連絡もいただいたんで。私の、監督の責任ですね。申し訳ないです。ですからこれ、1位ではないです」
上田 「71点も取ったからね。しかもああいうパフォーマンスしたから…」
中竹 「本人曰く…ま、かわいいんですけど、本当に興奮してたらしくて。(客席ウケる)嬉しくてボール投げたの覚えてないって。ビデオでもよく観たら、本当にもう…震えてましたね。それくらい嬉しかったんでしょうけど」
村上 「それから慶應の出雲選手、いい選手ですね。明治大学は宇佐美選手、早明戦でもすごく元気で」
上田 「強いよね。上背は、そんなにないですけど、やはりあの太腿の太さっていうんでしょうか。いい突進してましたよね」
村上 「関西はね、14番に結構いい選手がいるんです。壇辻、宇薄、非常に決定力あります。坂田先生、関西のウイングはいいですよね」
坂田 「そうですね。壇辻は今年、非常にがんばって。(大阪)体育大学はあんまり特徴がない、そういうチームの中で、彼がトライして、それが勝利に結びついたゲームが多いですね」
村上 「啓光学園の優勝メンバーですよね」
坂田 「そうですね。彼ひとつ技術を覚えて、チェンジ・オブ・ペースと、イン・アンド・アウト。それをずっと練習してきて、シーズン入ってうまく使えるようになって、急にトライ数が増えました」
上田 「体重は76キロくらい。そんなに重たくはないんですね」
坂田 「そうですね。ただ今年急成長したのは、今年は下半身の強化をしていって、安定感が増した分だけスピードも、ハンドオフも使えるようになって、本当に成長しましたね」
上田 「ウイングも、みんな結構大きくなったじゃないですか。でもこういう細い人が走るっていうのが、本来の日本の目指してるラグビーのウイングって感じがしますね。それから、3位に入ってる(関西学院の)緑川っているじゃないですか。彼、東海大仰星が優勝した時の、フッカーですよね。こういう子たちが、1年生が、こういうランクに入ってくるって、いいことですよね」
個人得点ランキング

■関東大学リーグ戦1部
順位
得点数 名前 所属 学年
77 ダニエル・トニー・ピータース 拓殖 3年
山口 哲生 関東学院 4年
3
76 森 功至 東海 4年
■関東大学対抗戦Aリーグ
順位
得点数 名前 所属 学年
132 五郎丸 歩 早稲田 4年
81 猿渡 知 帝京 4年
80 大野 亮 筑波 2年
■関西大学Aリーグ
順位
得点数 名前 所属 学年
71 徐 忠植 京都産業 4年
60 壇辻 勇祐 大阪体育 3年
宇薄 岳央 同志社 4年
村上 「次は個人得点ですね。先程、武村さんからもお話がありましたが、拓殖大学のピータース。ものすごくプレースキックがうまいので、得点力はありますね。対抗戦では五郎丸選手ですね。この人はジャパンに欲しかったという感じがしましたけれども。それから、関西では京都産業大学の徐(ソ)。これはすごくいいキッカーですね。京産大は、トライというよりは、この選手のキックでいく感じですね、大西先生。…大西先生?」
大西 「…あの~、この徐 忠植(そ・ちゅんしき)というのはね、昨年の大学選手権の法政大学との試合の前に、合宿したんですよ。それまではね、真ん中(のキック)を外したり、バランスの悪い選手だったんですが、廣瀬が雨のなか、訪ねて来てくれまして。彼がね、コンコンと話をしてましたね。そのあとに法政大学との試合で、法政はペナルティ(ゴール)で勝たせてもらいました。それから少し変わってきましたね」
上田 「あのトヨタの廣瀬?」
大西 「そうですね」
村上 「京産大のOBですもんね」
大西 「そうです、はい」
村上 「だんだん最近、廣瀬君も"話"ができるようになりまして…。理路整然と、キックをね、教えられるようになったんですよね」
大西 「いや、『気持ちや』って」
(客席ウケる)
上田 「その一言で成功率が高まるって…凄いですよね」
大西 「本当に高まりました。(大阪)体育大学の試合も、あの~徐のキックで勝ったようなもんですね」
村上 「どこでもいけますね。あと左足ですよね。ロングキッカーなんで、陣地取るのが凄いですね、彼は」
上田 「ウイングじゃなくて、ちょっと内側に、スタンドオフとかにしたほうがいいんじゃないですか?」
大西 「いやもう、キックしかできないんで…」
(客席ウケる)
村上 「決める時だけ、スタンドオフの位置にいるんですよね」
大西 「そうです」
中竹 「これからキッカーは本当に重要ですね。本当にタックルもしない、パスもできない、けど(いい)キッカーがいると使いたくなっちゃうんですよね。ワールドカップ見てもそうですけど」
黒氏 「でも、五郎丸の存在は大きいですね」
中竹 「そうですね。今年かなりウェイト(トレーニング)をやって体重増えて、バランスが良くなったんで‥‥ゴールキックの練習はほとんどやってないですね。自分のなかで、その…軸があるみたいで。去年はちょっと、得点の確率が低かったんですけども、今年はもう自分の中で、しっかり芯があるんで、(キックの練習は)もう試合の前の日くらいですね。そういう意味ではかなり安定してきましたね」
上田 「軽く蹴ってますよね、プレースキックを。体重がついた分だけ思いきって蹴らなくなったんで、安定してきたような気がします」
中竹 「そうですね。まぁ、キック理論も、実はこの数年でかなり変わってて。多分、ジョニー・ウィルキンソンのようなタイプが出てきて、サッカーの知識とこう融合させていって‥‥。五郎丸のキックも、そういういろんなところから影響受けて、自分のキックを確立したんじゃないかと」
上田 「あと、スタンドオフの山中も、ハイパント上げると、国立競技場の上のほうまできて、ほんと1年生のわりに凄いキック力ありますもんね」
中竹 「そうですね。あれが武器だと聞いて、春から見てたんですけど、やっぱ当たるよね」
上田 「ほんと、贅沢だよな~」
(客席ウケる)
中竹 「いや、あの、本当にこの数試合で(のことです)。その前までは『飛ぶ、飛ぶ』って…体がでかいから、みんな飛んだ時のイメージしかないですけども、データで見ると相当ミスキックばかりで。春も夏も、まったく当たらず。ま、五郎丸やいろんなコーチに指示を受けて。で、やっぱり『気持ちだ』って言われてましたね。(客席ウケる)…で、気持ちが良くなったんで、最近は当たるように…」
仲が悪かった(?)大西監督と坂田監督
大西健監督(京都産業大学)=左、坂田好弘監督(大阪体育大学)
大西健監督(京都産業大学)=左、坂田好弘監督(大阪体育大学)
黒氏 「続いては、キーワードで、大会を占っていこうと思います。まず、最初のキーワード、『打倒!関東勢』。去年はベスト4に2チーム、関西勢のお二方のチームが入りましたけれども、坂田さん、大西さん、いかがでしょうか」
大西 「去年(大阪)体育大学がベスト4に入ったのは、17年ぶりです。それくらいベスト4に入るっていうのは、体育大学にとって、大きな壁でした。で、なぜか知らないけどもベスト4まで行きました。(客席ウケる)その時、京都産業大学と一緒だったんで『関西で力を併せて勝とう。打倒、関東』って。で、初戦でしたか、花園で京産大が1試合目で(こちらが2試合目で)、ウチのキャプテンが京産大がグラウンドに出る時に、全部並んで見送りたいって。で、試合前、全部並びまして、全員で拍手をして『がんばって!』って。で、そのあとの試合、今度は京産大が勝って戻って来て、次の体育大学の時は、やはり同じように拍手で送り出してくれました」
村上 「でも(それまでは)坂田先生と大西先生がしゃべっているところ、見たことないですよ。(客席ウケる)いつ仲直りしたんですか(笑)」
大西 「ぼくは坂田先生を、本当に尊敬しておりました。近寄りがたいくらい。ただ、私たちのような新興チームというのは、伝統に挑戦するのが、伝統づくりの礎になると思っていますから、新興チームはふたついらない、という考え方なんです。"伝統に挑戦するのは我々なんだ"という気持ちがものすごく強くてですね。特に坂田先生はエリートでおられましたから、私たちのような雑草とは‥‥ねたみ・ひがみ、すごかった(笑)。ですから慶應大学にも何十年と通って来ているわけです。私は強い・弱いが伝統ではないと思う。やはり、プライドをもった人たちが集まってプレーをするからこそ、先人たちの思いを次代に伝えようというプライドがあるからこそ、伝統というものが成り立つのやと思います。ですから同志社や慶應に対する憧れがものすごく強い。だから新興チームはふたついらないので、失礼なことかもしれませんが、坂田先生にものすごく対抗心があった。それが、お互い年がいったせいでしょうか、あるときから仲良くなりまして(会場爆笑)お互いすれ違っても、目も合わせなかったのが、ここ2~3年は、もうベタベタです。ただ昨年は、学生たちが関東に対抗しようという気持ちを強くもってくれまして、あそこ(大学選手権ベスト4)までふたつのチームがいけたと思っています。今年もなんとか、大体大さんや同志社さんと共に、関東勢に対抗していけるようにしていきたい。大学ラグビーの発展のパワーになりたいと思っています」