いよいよ6月27日、「ワールドラグビー ジュニアワールドチャンピオンシップ2026」が開幕する。昨年11月に始まったU20日本代表の選考は、国内外での合宿や実戦を経て、ついに30人へと絞られた。選ばれたのは大学1年生9人、2年生19人、3年生2人。異なる3世代の才能がひとつのチームとなり、決戦の地・ジョージアへ。世界の強豪に挑む若き桜たちの戦いが、まもなく幕を開ける。


世界トップ16の国と地域が集い、20歳以下の世界王者を決める「ワールドラグビー ジュニアワールドチャンピオンシップ」。今年は、ジョージア国内2都市で開催される。

首都・トビリシを拠点とするプールAとプールC。日本が属するプールBは、プールDとともに古都・クタイシで予選3試合を戦う。

 

プール戦の順位に応じて、その後の戦いの場は変わる。上位2チームはトビリシで行われる決勝トーナメントへ。下位チームはクタイシでの順位決定戦に臨む。

 

U20日本代表を率いて3年目。大久保直弥ヘッドコーチは、一つの明確な目標を掲げた。

「予選プール2位以内に入り、トビリシへ行くこと。それがこのチームの目標です」

同組には昨年度準優勝のU20ニュージーランド代表に、先日U20イングランド代表を破ったばかりのU20イタリア代表、そして伝統国・U20スコットランド代表と実力者が並ぶ。決して容易な組み合わせではないが、それでも日本は、世界の強豪に挑み、トップ8入りへの決意を示した。

掲げるは「コスモアタック」。超速をも超える意識でアタックするラグビーを目指す

 


■体を張り、我慢強く牽引する主将


そんなチームのキャプテンを託されたのは、帝京大学3年のNO8・坪根章晃選手。力強いボールキャリーを武器とするバックローについて、大久保HCはこう評する。

「コンタクトの多いスタイルを掲げるチームですから、体を張れる彼がキャプテンを務めるのは理にかなっています。NZU(ニュージーランド学生代表)戦でも痛みを見せることなく、最後までチームを引っ張ってくれました」

 

もっとも、坪根選手にとって主将就任は予想外だった。

実はこれまでのラグビー人生で、キャプテン経験が一度もない。もともと人前で多くを語るタイプでもない。

「本当に一回もキャプテン経験がなかったので驚きました。『僕でいいのかな』という気持ちもありました」と素直な気持ちを口にする。

 

それでも主将を引き受ける覚悟が決まったのには、理由があった。

「直弥さん(大久保HC)から『喋りじゃなくていい。背中で見せてくれ。プレーで示してくれ』と言ってもらいました」

その言葉で、自分らしく主将を全うしようと思うことができた。

黙々とボールを前に運ぶ仕事人。高校・大学とロックを務めてきたが、U20日本代表ではNO8に



■ニュージーランド遠征の収穫


5月末、U20日本代表はニュージーランド遠征を実施した。NZU(ニュージーランド学生代表)と2試合を戦い、1戦目が12対74。2戦目は後半序盤まで互角に渡り合ったが、26対57と引き離されて試合を終えた。

 

ニュージーランドの地で知ったのは、世界基準だった。

 

たとえばモール。

「2列目からの勢いやインパクトを十分に作れず、モールの中でまとまり切れない場面がありました」と話すは、PR本山佳龍選手(静岡ブルーレヴズ)。世界との違いを肌で感じ、「全員が同じポイントを目指して一体となって押し込めるように」と改善点を見出した。

 

またトライライン目前まで迫りながら、得点を取り切れなかった場面も少なくなかった。坪根主将は、細部の重要性を痛感したという。

「サポートやブレイクダウンの細かな部分、倒れ方など、まだ伸ばせるところはたくさんあります。そこはチームでも修正に取り組んでいます」と早速策を講じた。

 

そんなチームの成長を、大久保HCも感じ取る。

「1戦目より2戦目の方が確実に良くなりました。ただ、最後の10分で4トライを奪われた。体重差もあり疲労が蓄積する中で、どうエネルギーを使うかが課題です」

さらに指揮官は、世界と戦うための鍵としてゲームマネジメントを挙げた。

「9番、10番、12番を中心に判断を共有しながら試合を進めること。そして残りの選手たちが、その判断を支えられるかが重要になります。過去の大会を振り返ると、最初の20〜30分で試合を決められてしまうケースが多い。だからこそ最初の40分をどう戦うかが肝です」

 

ニュージーランド特有のスキルや懐の深さは、日本国内ではなかなか経験できないものだった。だからこそ、この遠征で得られたものは大きかった。

 

坪根主将は振り返る。

「途中で少し気持ちがふわふわする場面もありました。でも、負けたことでチーム全体が引き締まったと思います」

そしてこんな言葉を残した。

「このチームで負ける経験ができたこと。それが、まずは“良いこと”だと思っています」

日本人らしい組織力を最大化したアタックとディフェンスで挑む大久保ジャパン



■桜を胸に、世界舞台へ


11月末に始まった選考から約7か月。選ばれた30人のこれまでの歩みは、決して一様ではない。

 

通っていた中学校にラグビー部がなく、自ら校長に直談判しラグビー部を創設したのはFL藤久保陸選手(帝京大学2年)。

CTB岩倉吏臣選手(山梨学院大学2年)は高校1、2年時に合同チームでプレーしながら力を磨いた。

花園常連校の出身者もいれば、そうではない者も。

それでも共通しているのは、ラグビーと真っ直ぐ向き合い続けてきた、という事実だ。

「1度の仕事で終わらせるのではなく、2回も3回も働く。フランカーとしての役割を全うしたい」と意気込む藤久保陸選手


そしてその積み重ねの先に訪れた、U20日本代表の座。

 

2024年度・第50期高校日本代表主将を務めたFL申驥世選手(慶應義塾大学2年)は、世界への強い思いを胸に抱く。

「僕たちの代は、高校日本代表として、あと一歩のところでU19イングランド代表に敗れました。本当に悔しかった。だからこそ、もう一度世界に挑戦したい気持ちがずっとありました。今回、このようなチャンスをもらえたことに感謝しています。何度でも体を当て続けて、相手が嫌になるようなプレーをやり続けたいです」

 

坪根主将も、迷いなく言い切った。

「戦う相手は全部倒したいですし、負けることが嫌い。だからチーム全員で勝ちに向かっていきます」

 

これまで積み上げてきたすべてを、出し切る80分間へ。

「ディフェンスで体を張り続けること。動き続けること。そして80分間戦い抜くこと。それが僕たちの強みです」

 

日本の代表として桜のジャージーを胸に、若き戦士たちが挑む世界舞台。運命の1か月が、いよいよ始まる。