
(2度目のアジア競技大会優勝を果たし、表彰式で笑顔をみせるサクラセブンズ)
第20回アジア競技大会のセブンズ競技が、10月1日から3日にパロマ瑞穂ラグビー場でおこなわれた。女子は8か国で争われ、女子セブンズ日本代表"サクラセブンズ"が見事優勝を飾った。8年ぶり2度目のアジア王者となった。
世界を転戦するサクラセブンズにあって、ホームでの開催は貴重だ。キャプテンの須田倫代は言った。「応援がすごく力になりましたし、応援してくださる方がこんなにたくさんいるんだなと感じられた大会でした」
大会最終日に瑞穂に駆けつけたファンは6611人。初日と2日目には、兼松由香ヘッドコーチ(HC)が5月に講義や実技をおこなった9つの小中学校の生徒たち3200人超も観戦した。連日「ニッポンコール」の大声援を受け、サクラセブンズはアジア競技大会を2大会ぶりに制した。
シンガポール、カザフスタン、タイとのプール戦をそれぞれ36-5、48-0、34-5と快勝。準決勝でホンコン・チャイナを27-12で破り、因縁のライバルである中国との決勝に進んだ。
(初戦のシンガポール戦で先制トライをあげた三枝千晃選手)

(プール2戦目のカザフスタン戦で縦の突破を図る吉野舞祐選手)

(プール3戦目のタイ戦でトライを決める矢崎桜子選手)
(プール3戦目のタイ戦でスピードにのって相手を抜き去る秋田若菜選手)
(プール3戦目のタイ戦でコンバージョンキックを蹴る永田花菜選手)

(準決勝のホンコン・チャイナ戦でトライを決める堤ほの花選手)
前回大会(2023年)では地元開催の中国の勢いに飲まれ、21-22で敗れている。2大会前(2018年)は7-5、3大会前(2014年)は12-14と毎大会、僅差試合を繰り広げてきた。
(決勝戦開始前の国歌斉唱での様子)
今回も接戦だった。最終スコアは10-5。現スコッドで2大会前の優勝を唯一知る平野優芽は、苦しい展開となることは「想定内だった」と話す。「たぶん、これからもそれは変わらないと思います。厳しい戦いをアジアでも経験できるのは大きい。良いライバルがいることに感謝です」
今大会に向けてチーム内でかけ合った言葉は「いつも通り」。4年に一度の大会で、32年ぶりの自国開催。宿泊するクルーズ船では他国や他競技の選手たちとの交流もある。いつもとは異なる環境でプレッシャーがかかる中でも、「みんなでいつも通りのプレーができた」と平野は言う。
6分の先制点はその象徴だ。スクラムでのターンオーバーから、平野がループで外に回り込み左中間に押さえる。「ループするコールを喋っていたわけでありません。ボールを持った人に常にみんなが動く。そうしたプレーを積み重ねてきて、自然とああいうプレーが生まれました」

(分厚い中国のディデンスを突破し、先制トライを決める平野優芽選手)
(前半終了間際に値千金の追加点を決める梶木真凛選手)
兼松HCは、オリンピックの中間年にあたるこの大会を「2年間の集大成」と位置付けていた。兼松HC体制となってから、2分以上ボールをキープし続けるゲーム形式のメニューがほぼ毎練習に組み込まれている。大谷芽生いわく「2分以上ボールキープするのは当たり前」と思えるほど鍛錬を積んだ。
その取り組みの成果が、10ー0で迎えた後半より鮮明に現れた。追加点こそ奪えなかったものの、粘り強いアタックを継続。狭いスペースであっても仕掛けてゲインを勝ち取り、タックルを受けてスムーズにボールが出ない局面ではすぐさま2人目がサポートに入り立て直した。
(相手ディフェンスを振り切る内海春菜子選手)
(ダブルタックルを受けながらも突破を図る松田向日葵選手)
(攻守ともに獅子奮迅の活躍をみせた大谷芽生選手)
(相手陣内に攻め込む大内田夏月選手)
「ディフェンスの時間が長くなれば、相手もキツくなってきます。アタックを継続していればどこかでトライが取れることはみんな分かっている」と平野が言えば、「全員が起き上がって、もう1回仕事をして、ボールをキープできた。仕事量の多さが勝ちに繋がった」と須田は誇る。
(キャプテンとしてチームを引っ張った須田倫代選手)
さらに指揮官が称えたのは、5点差まで追い上げられたあとの残り30秒の戦い方だ。「いままでは一度崩れると立て直せなかったり、前半は良くても後半に崩れることがありました。でも今回は残り30秒で守りに入るのではなく、自分たちがやってきたアタックを継続して強気で前に出続けてくれた。それが最後にペナルティーをせずに戦えたことに繋がったと思います」
苦しい展開を勝ち切れたことは、「成長する一つのきっかけになる」と平野。一方で、アジアでは快勝したかったのも事実だ。サクラセブンズは世界のトップ8か国で争うワールドシリーズ(HSBC SVNS)を戦い抜いてきたが、中国は2部リーグ(SVNS2)を主戦場としている。
大谷は「接戦になることは分かっていたけど、欲を言えばもっと差をつけて勝ちたかった」。正直な思いを吐露したのは、向上心の高さゆえだ。「目指しているのはロサンゼルスオリンピックでの金メダル。どんな状況でもそこをイメージしながらプレーしたい」と大会中に語っていた。「世界で勝つためにはチャンスを確実に取り切らないといけない」とも。
「個人としても課題が残りました。世界はもっとジャッカルが早い中で、ボールリリースはもっと丁寧に、工夫していかないといけない。相手の人数やエリアなど状況によって適切なボールリリースの仕方をまだスムーズにはできていません」
11月末からはワールドシリーズが開幕する。兼松HCが掲げる今季のテーマは「型を破る」だ。目標とするトップ4入りに向け、さらに進化したサクラセブンズを見せたい。
(表彰式終了後にスタッフ陣とともに記念撮影するサクラセブンズ)
取材・文: 明石尚之


