SOマーテンズ主将が巧みにリードするクラシックオールブラックス(CAB)の前に、ジャパンXVは見せ場を作ることができず、ノートライで完敗した。

前半風上のジャパンは、自陣のPKはタッチ、敵陣のPKはPG狙いとキック中心の手堅い組み立て。随所にプレーが途切れるスローな展開は、平均年齢で6歳も高いCABを助けてしまった。ジャパンはSO安藤の2PGで6点を上げたが、FKからの速攻でWTBウィルソンが1トライとマーテンズがロングPGを決めたCABのリードで前半が終わった。

後半、暑さのなかスタミナに欠けるCABを振り回すようなアタックが期待されたジャパンだったが、早くも1分、CABにトライを許してしまう。LOウィリスのパスに走り込んだCTBアラティニが中央にトライ。さらに10分、ジャパンは自陣ラインアウトでミス。CABのLOメイリングに飛び込まれ、6-22と差を広げられてしまった。その後もジャパンは不用意なキックでボールを失い、思い切った攻めは最後まで見られずじまい。結局後半は無得点に抑えられてしまった。

CABは後半点差が開いてから、さすがと思わせる数々のプレーで満員の秩父宮を沸かせた。12分にはFBスペンサーがジャパンのパスミスを拾いカウンター、左サイドを疾走しながら右足のアウトサイドで内側のアラティニにキックパスして後半の3トライ目を演出。その後もノールックパスなど"らしさ"を発揮した。的確な判断と正確なスキルでチームを引っ張ったマーテンズ、後半から登場のSHマーシャルなども、まだまだNZ代表に復帰できそうな姿を見せてくれた。WTBロムーも後半15分までプレー、スピードには衰えを隠せなかったものの密集サイドでは強さを発揮していた。

試合の最後は、ジャパンが敵陣ゴール前ラインアウトという絶好のチャンスをミスで失い、最後までプレーしたスペンサーがタッチへ蹴り出したところで、インターナショナルレフリー界のクラシックであるA.コール氏(豪州)の笛によって告げられた。(米田太郎)

ジャパンXV 6-36 Classic All Blacks   ジャパンXV 6-36 Classic All Blacks   ジャパンXV 6-36 Classic All Blacks

Classic All Blacksのマーテンズ キャプテン(左)、フィッツパトリック団長
Classic All Blacksのマーテンズ キャプテン(左)、フィッツパトリック団長

MasterCard スペシャルマッチ JAPAN XV vs Classic All Blacks

ジャパンXV 6-36 Classic All Blacks(5月12日(土)14:00 at東京・秩父宮ラグビー場)

◎Classic All Blacks
○P.スローン コーチ
「非常に良い試合ができて嬉しく思います。スキルレベルの高いゲームで、ブレイクダウンとラインアウトの攻防でジャパンはよく健闘したと思います。この2試合から非常に多くのものをジャパンは学んでくれたことと思います」

○A.マーテンズ キャプテン
「インターナショナルレベルの試合を1週間に2試合も行うことができて嬉しく思います。スピーディでフィジカルな試合ができて良かったと思います。日本は2試合それぞれの15名から良いチームをW杯に向けて作れると思います。また、水曜に比べるとプレーの質も上がったと思います。こちらも前半はミスが多かったですが、後半は立て直してボールキープできました」

○J.ハート コーチ
「2勝することができて、嬉しく思います。フィジカルなゲームでしたが、ジャパンは2試合とも良い試合をしたので、W杯でも良い試合ができると思います。アンドリューもショートノーティスの中でうまく選手をまとめてくれて感謝しています。多くの日本の観客の皆さんが来てくださって、ソールドアウトになったと聞きましたが、日本ラグビーにとってとても良い試合になったことと思います」

左からピーター・スローン コーチ、アンドリュー・マーテンズ、ショーン・フィッツパトリック、ジョン・ハート コーチ
左からピーター・スローン コーチ、アンドリュー・マーテンズ、ショーン・フィッツパトリック、ジョン・ハート コーチ

――CABも歳をとったプレーヤーが多かったが。
○A.マーテンズ キャプテン

「オールブラックスの名でプレーする以上は1試合1試合に全力を尽くします。1戦目は集まって間もないこともありましたが、修正して、2試合目はもっとフィジカルな試合ができたと思います。歳はとっていると言えども、それぞれ第一線で活躍している選手が全力を尽くしたと思います。全員が今日の試合をフェスティバルマッチとは思っていませんでした」

――JAPANがW杯で勝つには。
○A.マーテンズ キャプテン

「どの選手もポテンシャルが高いと感じましたが、特にSOの4名は皆若く、良かったと思います。もっと一緒にプレーすることが上達の秘訣だと思います。今日はときどき個人的なプレーをする選手がいたので、そこも修正ポイントだと思います」

――JAPANのどんなプレーに気をつけたのか。
○A.マーテンズ キャプテン

「セブンズのようにオープンゲームにならないよう、うちは身体の大きな選手がいるので、うまく使ってラインアウトからの攻めを継続できたと思います。それでも今日も前半はヨコヨコの動きが多すぎたと反省しています」

――JAPANで印象に残るプレーヤーは。
○A.マーテンズ キャプテン

「ニュージーランドで一緒だったアレジ、マキリ、トンプソンは前から知っている素晴らしいプレーヤーですが、両試合のキャプテンのナンバー8とロックも良いプレーヤーでした。ハーフ、SOもキッキング、ランニングのバリエーションがあって良かったです。ウィングもスピードがありました」

ジャパンXV 6-36 Classic All Blacks   ジャパンXV 6-36 Classic All Blacks   ジャパンXV 6-36 Classic All Blacks

JAPAN XVのカーワン ヘッドコーチ
JAPAN XVのカーワン ヘッドコーチ

箕内拓郎キャプテン
箕内拓郎キャプテン

――差をつけられましたが。
◎JAPAN XV
○ジョン・カーワン ヘッドコーチ

「前半の出来にはとても満足しています。選手は一生懸命、テストマッチのような感じで試合に臨めていました。後半の最初の10分に自分たちのペースを落としてしまったかな。残り25分についてはペースが作れていました。その中でしっかりCABにプレッシャーをかけて、イライラさせることができていました。ラインアウトとフィフティーフィフティーパスが残念でした。W杯前にやっておかねばならない良い経験ができたと思います」

――ペースを崩したのは。

○箕内拓郎キャプテン

「メンバーチェンジの際に本当は止めてもらうべきだったのですが、まあ、そこで続けた僕たちも悪いのですが、そこでスコアされてしまい、ちょっとした不運も重なってリズムを崩したと思います。しかし、中盤のラインアウトは水曜日より良かったし、ゴール前のターンオーバーもあって良かったと思います。CABは前回と同じで、ギャップを突いてくるプレーをしてきますし、さすがに、ジャパンがやろうとしたプレーを読んでいました。今後、リズムの作り方の精度を上げていかねばならないと思います」

――オフロードパスをつながれましたが。
○カーワン ヘッドコーチ

「ディフェンスについてはすごく良かったと思います。後半、CABはかなりプレッシャーをかけてから、オフロードをやって来ました。小さなことをJAPANはしっかりやっていかねばならないと感じました」

――JKの考えるゴールから、今のJAPANはどの位のレベルなのか。
○カーワン ヘッドコーチ

「100%のうち70%くらいでしょうか。選手はテストマッチとはどのようなものなのか、ゲームマネジメントを学んでいるところです。このレベルでミスするとチャンスはなくなることを学んでくれたと思います。やはりこのトップレベルのプレッシャーの中でやらないと。今日はキックで切り返すことが多かったが、今後強くなってパシフィック・ネーションズカップ(PNC)でもきっと良い結果が出ると信じています。今日の前半みたいにトップレベルの選手たちにかけたプレッシャーを後半も続けることができればと思います。今、やっていることを80分、PNCでやっていくことが大事ですが、気持ちの部分はコーチできないところです。今日は観客の皆様がビリーブしてくださったので、選手たちに勇気を与えてくれました。信じること、チームとしてやっていかなくてはいけません」

――PNCではこの中から30名を選ぶのか。
○カーワン ヘッドコーチ

「セレクションミーティングをします。40名からPNCの30名を選び、良いチーム作りをしますが、残念ながら選に漏れた選手はチャンスがなくなるわけではなく、PNCの後でさらにW杯に向けセレクションをします」
――ノートライは解消されるのか。
○カーワン ヘッドコーチ

「今日は自信の部分の問題でとれなかったのだと思います。プレッシャーの中でどれだけ自信をもってプレーできるかが試されています。今日はちょっとキックが多かったですが、リスクは大きいがボールを継続していくことを目指しています。そこは成長していかねばならない部分です。ボールキープ、アタックがきっちりできるようにしてFIJI戦(5月26日、フィジー)に臨みたいと思います」

――満足できるプレーは。
○カーワン ヘッドコーチ

「直していかねばならないのはラインアウト、プレッシャーの中での攻撃の二つです。結果として負けたのは残念ですが、他の部分では非常に満足しています」

――フィフティーフィフティーパスについて。

○箕内拓郎キャプテン

「選手の判断だったと思います。フィフティーフィフティーパスの練習などしていませんし、選手が実際思ったシチュエーションにまわりが反応できなかったのだと思います」

――改善できた点は。

○箕内拓郎キャプテン

「低く、強くいくタックルです。渡辺さんなんかガツガツ行ってました。後は、40分しっかり戦えたことです。全員、その気持ちが持ててきました」