安全対策委員会委員長・高森 秀蔵

昨夏、高校生の重症事故が多かったことから、関連する委員会が合同で重症事故撲滅を目指して取り組んできた内容が、「夏合宿を前に」という形で発信されています。それ故、安全対策委員会のこの案内は夏合宿に限った問題でなく、年間通して注意してほしい内容となっています。両方あわせて夏合宿の注意として受け止めてほしいと思っています。

大相撲の先場所での横綱・朝青龍の怪我は、トレーニング不足と指摘する識者も多い。投げられた時の受身のトレーニングが不足していてとっさの対応ができなかったのではとの指摘です。ラグビーは同じ格闘技の要素をもつだけに、同じ轍を踏むことのないよう、このことを受け止めたいと思っています。

  1. 最近の高校生の事故で、側頭部を相手の腰部にぶつけての重症事故が数件現出しています。ボールキャリヤーがサイドアタックでタックルに備えて低く構えている状態でのタックルで起こっています。空中のボールをキャッチした直後のプレーヤーへのタックルも同様の状態が起こります。双方ともボールキャリヤーがタックルに備えて身構えている状態では上体へ鋭く当たり、押し倒すようなタックルが望ましい。
    タックル練習は画一的な練習でなくゲーム場面の状況を説明して、その状況にあったタックルの指導を行ってほしいと思います。同時に、プレーヤーの体力・経験にあわせて、段階を追って段々に実戦に近い形に近づけて行くように練習してください。

  2. 脳振盪の可能性のあるときのプレーヤーへの問いかけに注意してください。「大丈夫か」「ハイ大丈夫です」くらいの応答で試合を続行させて重症事故につながった例も散見されます。プレーヤーは無意識下で本能的に応答している例があります。コンタクトプレーの後に倒れているプレーヤーには、見当識の問いかけを必ず行ってください。プレーを続行してセカンドインパクトにつながる可能性もありますので十分注意してください。「脳しんとうの報告義務について」を参照してください。脳振盪の定義に関してIRBより通達が出されています。こちらのページで確認してください。あわせてプレー復帰の条件に従ってください。
  3. 「熱中症」に関しては近年の協会あげての啓発活動と皆様方の努力が実ってほとんど見られなくなりました。しかしながら、雨続きのなかの急な晴れ間の暑い日に特にご注意ください。
    夏合宿前に暑い気候に慣れる(暑熱順化)は2~3日の体験で得られるといわれています。涼しい地域で合宿できないチームは、合宿前には合宿地にあわせた暑さを体験させておくことにもご注意ください。
    4.雷に注意。合宿地ばかりでなく、日頃練習しているグラウンドでも不意の雷が発生することがあります。建物の中等へ避難してください。

事故の予防に次のチェックを忘れずに(年間通して)

1. 定期的な健康診断(メディカルチェック)
2. 体調のチェック(体重、睡眠、体温、脈拍、食欲)
3. 体力レベルのチェック
4. 練習量、練習環境(天候、グラウンド状態)のチェック
5. 現場での救急処置の準備と実践
6. 非常時の連絡網の整備

救急体制の責任者を必ず決めてください。合宿地等では救急車の要請等が多く出現する日もあります。最近目だって苦情が寄せられるのは、携帯で救急車が要請され、出動してみると友達の肩に捕まって歩いてくる怪我人に遭遇することが多々あるそうです。「イタイ・イタイ」等で救急車の要請をしないようご注意ください。上記の責任者の判断で救急車を要請してください。

不幸にも重症事故が発生した場合、直ちに(家族への連絡と同時に)当該都道府県協会に事故報告を提出することとなっています。日本協会の指定の報告書で報告することもあわせてご注意ください。1ヵ月後、2ヵ月後の報告義務も忘れずにお願いします。