大事なワールドカップイヤー初戦
世界8強を十分感じさせる試合を

日本代表にとってワールドカップイヤー初のテストマッチとなるアジアラグビーチャンピオンシップ2015初戦、韓国代表との第1戦が18日、韓国の仁川で行われる(南洞アジアード・ラグビー競技場=12時キックオフ)。

(text by Kenji Demura)

昨秋のグルジア戦に続き、日本代表を率いることになった畠山主将代行を中心にW杯につながる内容で初戦を飾りたい
photo by RJP Kenji Demura
セブンズでの活躍が認められて代表スコッド入りした20歳のWTB松井はいきなり韓国戦で先発。初キャップ獲得へ
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「自分たちが見据えているのはワールドカップ。韓国戦だけではなくワールドカップまでの試合すべてが進化するためのゲーム。もちろん勝ちたいが、大切なのは9月19日にベストになっていること」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ=HC)

ラグビーワールドカップ(RWC)2015がイングランドで開幕するまで150日強。
現時点でそれまでに予定されている日本代表のテストマッチは8月15日の対世界選抜戦も含めて12試合。
5ヶ月後に始まる世界最高峰の舞台での戦いで結果を残すためには、どの試合も無駄にできないのは当たり前の事実だろう。

そんな大切な2015年初戦。日本代表は14年の最終戦だったグルジアとのテストマッチ(11月23日、トビリシ=24-35で敗戦)から23中9人を入れ替えたメンバーで臨む。
「現状は25人しかフィットしている選手がいないので、そこからベストの23人を選んだ」(ジョーンズHC)というコンディションの問題に加えて、周知のとおり日本代表スコッド中6人がスーパーラグビー(SR)に参戦中ということもあり、ノーキャップ組3人も含めたメンバー構成となっている。

SRチーフスでプレー中のFLリーチ マイケルに代わってキャプテンを務めるPR畠山健介は、4月6日に集合して宮崎合宿を続けてきたチームの現状と初戦のポイントを以下のように語る。
「みんなハードワークしている。そのひと言に尽きる。韓国戦も含めて、ワールドカップへ向けてできる試合というのは限られてくる。一つひとつを無駄にしないで、意味のある試合ができるようにチャレンジしていきたい。
日本代表の悪い習慣としてスロースターターというのがある。それをなくして、こちらからしっかり仕掛けていくというのを一つのターゲットにしたい。ワールドカップではスロースターターでは絶対勝てない。細かい部分でのミスは多々起きると思うが、そこをいかに素早く修正できるかがポイントになる」

昨年の5月18日にRWC2105のアジア予選も兼ねた形で行われた韓国とのアウェー戦。
日本は「最初の20分で韓国をスマッシュする」(ジョーンズHC)というゲームプランどおりに立ち上がりから韓国を圧倒して計9トライを重ねて62-5で快勝。
当然ながら、RWCでの8強入りを目標とする集団に求められるのは11ヶ月前以上の圧倒的なパフォーマンスということになる。
「昨年まではアジアでの試合はキックを蹴らずに攻め続けるスタイルだった。今年は次のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)を見据えた上で、キックも使いながらアタックするスタイルでプレーしていくので、イメージしやすい。あとは細かいところ。ミスが起きてもしっかりそこで修正できれば、みんな能力高いし、いいゲームになる」(昨年の韓国戦で日本最多得点記録を更新したFB五郎丸歩バイスキャプテン)

FW陣は新しいスクラムにもチャレンジ。まずはフィジカルな韓国代表相手に結果を出したい
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スロースターターの癖を直して、立ち上がりから圧倒し続けることも韓国戦のテーマとなる
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セブンズ出身の新スピードスター松井が先発
宇佐美、村田毅は途中出場で初キャップ目指す

前述のとおり、23人中9人が昨秋のグルジア戦ではメンバー入りしていなかった選手となる韓国戦の日本代表。

何と言っても、一番のサプライズは12日に日本代表に初招集されたばかりのWTB松井千士がいきなり先発すること。
「サプライズ?なぜ?松井はとても速い。インターナショナルラグビーではスピードが必要。そしてスキルフルで、大きいことも求められる。この3つの条件のうち、彼にはスピードがある」
そんなふうにジョーンズHCから高い評価を受けて、日本代表合流後わずか1週間で初キャップ獲得という栄誉を得ることになる。
「こういうチャンスは2度とないかもしれない。ボールを持たないと自分の持ち味を出せないと思うので、自分からどんどん要求して、いいところでボールもらって、走り切りたい」(WTB松井)

先の東京セブンズ2015でも活躍したおり、すでに男子セブンズ日本代表の一員として大舞台も経験している松井だが、「セブンズを経験しても、15人制のキャップとなると話が全然違う。練習の中でも緊張しているのに、小学生の時から見ていた憧れの選手たちの中に入ってのテストマッチとなったら、相当緊張すると思うが、何とか自分の色を見せたい」と、若干ナイーブになりながらも、新しいチャレンジに燃えている。

右WTBの松井同様、東京セブンズで存在感を見せた藤田慶和が左WTBに入り、アウトサイドCTBにはカーン・ヘスケスが回る。
経験の少ない選手も多いBK陣を最後列から締めるFB五郎丸バイスキャプテンは「もっともっとお互いが要求し合って、自分たちが求めているところをしっかり出せるか」がBK陣の韓国戦でのテーマになると語る。

一方、FW陣は新しいスクラムの組み方にもチャレンジ中。
「もっと8人で相手にプレッシャーを与えるという方向性。いままでやってきたものプラス、もうひとつのやり方を相手によって使い分けようかという話をしている。いまは久々に集まったというのもあって、もう少しコミュニケーションが必要。スクラム以外でも、仕事量や、フィジカルな韓国に対してFWがしっかり前に出てBKにスペース与えてあげるところを意識したい」(畠山キャプテン代行)

先発ではないものの、LO宇佐美和彦、FL村田毅という2人のノンキャップ組がリザーブ入りしている。

「選手たちの練習態度、ハードワークぶりは素晴らしい。フィジカル的にはまだまだだが」。ジョーンズHCは韓国入り前、10日間に渡った宮崎合宿でのチーム状態をそう評価した。
もちろん、前述のとおりフィジカル的には9月19日にベストになっていればいいのも明らか。

ちょうど6ヶ月後。RWC2015のプール戦を終えた日本が、目標どおり準々決勝の舞台に立っていることを十分想像させるようなワールドカップイヤー初戦となることを期待したい。

「W杯を見据えている」ことを強調するジョーンズHC。25人のフィットしている選手からベストの23人を韓国戦に送り出す
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