マッチリポート 第50回 全国大学選手権大会

慶應義塾大学 34-14 中央大学
【セカンドステージ 2014年12月14日(日) /東京都・秩父宮ラグビー場】
秩父宮の第2試合は、プールBのセカンドステージ一戦目、昨年度は崖っぷちから見事準決勝に駒を進めた、関東大学対抗戦4位の慶應義塾大学とリーグ戦5位の中央大学の対戦となった。観客はキックオフ時点で3,572人。

前半風上に立つ中央に対し、風下の慶應は立ち上がりSO矢川のキックで敵陣に入りはするが、なかなかトライには結びつけられなかったが、前半4分ラインアウトからモールを押し込みNO8森川が先制のトライ。一方、中央は24分にラックから綺麗に外に展開、人数を余らせるオーソドックスな展開でトライした。慶應はその後も敵陣にキックで攻め入るが、中央のフェアーキャッチやタッチに逃げられ、追加点のチャンスを逸する。
慶應のBKのラインがやや深すぎるのか、中央のディフェンスのプレッシャーがきついのか、中々ゲインラインが切れないまま30分が経過。慶應キャプテンの木原が出血で一時交代するなどのアクシデントもあった。どちらも決め手を欠いていたが、35分に中央がモールを押し込んでのトライ。ゴールも決まり7-14とリード。慶應はSO矢川が引き続きキックで攻め入ろうとするが、ダイレクトや大きすぎたりしてなかなか中央大陣内に攻め込めない悪いリズム。それでも終了間際に慶應1番の青木が良く走り切ってのトライ、ゴールも決まり14-14で前半を折り返した。ここまでは、ほぼ互角の勝負。

後半、慶應はFBの浦野が交代し、下川が入る。序盤は中央のディフェンスの出足が速く、ターンオーバーから慶應陣深く攻め込むが、何とか慶應も凌いだ。相変わらずキック戦法の慶應。たまにライン攻撃を仕掛けるがラインが深く、フェーズを重ねてもなかなかゲインラインが切れず、数的優位を作ることが出来ない。この苦しい状況を打開する打ち手が欲しい慶應。後半10分を過ぎたあたりから攻撃を縦へのスピードをつけたプレーヤーにボールを持たせ、ゲインラインを強引に突破する戦法に切り替えた。このあたりから慶應らしい面が出てきたところ、またもPR青木が今日2本目のトライ。ゴールは不運にもポールに当たり失敗するが、19-14とリードした。
中央のディフェンスの出足がやや衰えた16分に矢川がギャップをついてビッグゲイン。中央もタッチに逃げるが、再び攻め込まれ、ゴール前のラインアウトからモールドライブ。最後は2番の神谷がトライで24-14。
後半20分過ぎ、中央のFWの足が止まってくると、慶應のBKラインもようやくゲインラインを切れるようになってきた。SO矢川のドロップゴールも決まり、27-14。
ここからは、残り20分スタミナの勝負となり、自力に勝る慶應がスクラムも押し込み始めた。中央もメンバーを交代させて流れを変えたいところだったが、逆に慶應のゴール前まで攻め込みながら、またも慶應のプロップ青木にボールをもぎ取られ、ビッグゲインを許す。慶應はこれを一気に攻め込み、右に素早く展開しトライ。ダメ押しの34-14。青木の活躍が光る。結局、後半を無失点に抑えた慶應が見事勝利し、勝ち点6を手に入れた。

(貝塚俊樹)
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(c) JRFU 2014, photo by H.Takami
会見リポート
 

監督・キャプテン
慶應義塾大学の和田監督と木原キャプテン

慶應義塾大学

○和田康二監督

「本日の試合は選手権1試合目ということで、中央大さんも優勝した流経さんと競った試合をしていますので、粘り強いモール中心の良いチームととらえて臨みました。我々としては受けるより、チャレンジ精神でどのチームにも立ち向かって戦おうと、トーナメントのつもりでした。一つ負けると、選手権(ファイナルステージ進出)が遠くなりますので、一戦必勝と臨みました。選手が頑張ってくれて勝利したことは嬉しく思います。来週も同じように戦っていきたいと思います」

──青木君の活躍は素晴らしかったが?

「インパクトのある168cmの、ある意味、慶應らしい選手です。入学当初は走れませんでしたが、努力を積み重ねて肉体改造をして、走れるようになりました。ああいう苦しい展開のときに、ゲームを打開するプレーをしてくれました。今日はお前の試合だったな、と声を掛けました」

──けが人とバック3は?

「隠すつもりはありませんが、大きなけがはフッカーリザーブの佐藤選手です。それ以外は大きなけがはありません。今日はキッキングゲームになると読んでいましたので、経験値の高い、ハイキックに強いメンバーの浦野、下川を起用しました。11,14,15はチーム内でも競争の激しいポジションですので、相手によって、代えることもあります」

○木原健裕キャプテン

「まず、今日の試合は中央さんに対して、しっかり敵陣で戦おうと臨みました。最初に良いトライもありましたが、小さなミスやブレイクダウンでボールを取られ、自陣で戦わざるを得ませんでした。何とか、青木のトライで追いつけて、テリトリーを取って、ブレイクダウンも修正できてこのような試合になったと思います」

──前半の後半から押されたが?

「ブレイクダウンの寄りの所をしっかりやろうと言いました」

──青木君の活躍は素晴らしかったが?

「副将の自分からやると言って、やってくれました。特に今日はキックの多い試合になるので、アタックの強い意識をもたなければいけなかったのですが、青木が、俺がやってやると。普段から積極的に声を出して泥臭いプレーをしてくれますが、今日も良くやってくれました」

 

監督・キャプテン
中央大学の松田監督と檜山キャプテン

中央大学

○松田雄監督

「まず、リーグ戦の5位代表として、慶應さんに挑んで行こうとやってきました。前半は中央の思うとおりの展開で、中央のペースで試合を進めることができました。後半、ちょっとしたミスで、自陣で試合をしなくてはならなくなりました。そこのところを修正して次の試合に臨みたいと思います」

──モールは特別な練習を?

「もともと、モール、タックルにこだわってやっています。去年、ディフェンスの中央と言われたように、FWはリモートを大事にやってきました。スクラムもラインアウトも身体が大きいわけでないし、突破できる選手が少ないので、皆で一つにまとまってマイボールの時間を多くしたいとこだわっている部分です」

○檜山翔一キャプテン

「試合前から、エリアとタックルをやっていこうと言って、前半はこだわってプレーできたと思います。モールでトライも獲って、僕たちのペースでした。後半、ノックオンやペナルティから、じわじわと慶應さんに自陣でラグビーをされてしまいました。もっとミスを少なくして、精度を上げていかなくてはいけません。前半のラグビーを次は80分できると思うので、今週練習していきたいと思います」

──モールで獲られたのは?

「こちらが焦ってモールを組んで、崩されてしまったと思います」

──モールについては?
「フィールドからのモールは考えていなかったが、モールデイフェンスは慶應さんにうまくやられた部分もありました。ラックサイドはある程度対応できたと思います。Aチームがモールを組む時、メンバー外の選手がとても激しくきてくれます。どんどん精度が上がってきました。お互い、チームで切磋琢磨しています」