マッチリポート 第50回 全国大学選手権大会

明治大学 7-43 筑波大学
【セカンドステージ 2014年12月27日(土) /東京・江戸川区陸上競技場】
この日、江戸川区陸上競技場に足を運んだ観客の方は、おそらく全国大学選手権の「準々決勝」が観られるとの期待だったのではないだろうか。全国 大学選手権セカンドステージ第3戦の2試合が行われた同競技場は、共に勝ったほうが準決勝進出となる試合。

その第一試合、関東大学対抗戦A3位の明治大学対5位の筑波大学の対戦になった。まだ残暑を感じた9月14日の秩父宮では、41-21で明治が圧倒している。 江戸川での試合後の記者会見では両校とも、この結果にはあまり意味はないとも言っていた。 事実、その時点での筑波の負傷者を考えると果たして別のチームと言っても過言ではないかもしれない。

筑波の古川監督が言うように、FW8人のまとまりの良い筑波が、試合開始直後からそのFWのしつこいディフェンスが目立つ。 明治も、2試合ぶりに復帰のSO田村熙を中心にキック、ランと多彩な攻撃を仕掛けてきた。

こういう試合は、ミスが命取りになる。 そして両校とも細かいミスからトライを取られてしまう。

7分、明治のノックオンから筑波FWがゴール前になだれ込み、最後は筑波12番CTB鈴木啓太が抜け出してほぼ中央に先制トライ。 山下一のゴール成功、明治0-7筑波。
14分、筑波14番WTB山内俊輝のキック処理のミスからラインアウトになり、明治が筑波ゴール前でフェーズを重ね、13番CTB尾又寛汰がトライ。 田村のゴール成功、明治7-7筑波。
そして20分には、またも明治はミスから筑波1番PR橋本大吾にトライを許す。 山下のゴール成功、明治7-14筑波。
ここまで、両校とも小さなミスをすべて相手にトライに結びつけられている。 勝たなければという気持ちとミスは出来ないという気持ちが空回りしていて、前半の半分くらいまでは緊張感もあったのかもしれない。

試合はこのままノーサイドまでもつれそうだと誰もが思い始めた矢先、それを見事に打ち破ったのは、今回の大学選手権初登場の日本代表の筑波11番WTB福岡堅樹だった。
23分、ケガのブランクを感じさせないスピードある中央突破を見せ約30mを独走し、明治ゴール前まで攻め込み最後は10番SO亀山兄(宏大)が仕留めた。 山下一ゴール成功、明治7-21筑波。
前半はこのまま終了したが、結果的にはこのトライが、明治にダメージを与えた形になった。

後半は、一方的とは言えないまでも、終始筑波が接点やセットプレーで激しくかつ安定した動きを見せた。明治は選手を入替えたりして、戦況を打破しようと試みたが攻撃にはまとまりがなかった。
19分に鈴木啓太、35分に橋本がそれぞれこの試合2本目のトライを決めた。 そして28分から登場の23番WTB竹中祥が、この日開幕した全国高校ラグビー大会で、自身が出場した当時、近鉄花園ラグビー場を沸かせた動きを見せた。38分、右タッチライン際をステップとスワーブを駆使し、インゴール右隅にトライを取り、勝利に花を添えた。

明治7-43筑波の結果に、下剋上というには筑波に失礼なほどの自分たちの強みを生かした堂々とした勝利だった。対抗戦の前半戦では、今年はFW、特に第一列の頑張りがなければ勝ち上がりは厳しいと思われていたが、よくここまで克服してきたものだ。

一方明治は、対抗戦前半戦を全勝で終え、負けん気を前面に出す勝木来幸主将のもと、今年は好結果を期待されていた。 丹羽監督以下、決して気が緩んだわけではないだろうが、長いシーズンのピーキングの持っていき方を再考しなければいけないのかもしれない。

筑波は、この日の調子を維持出来れば、他の準決勝進出のどのチームに対しても良い勝負が出来るだろう。

(久米 司)

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(c) JRFU 2014, photo by H.Nagaoka
会見リポート
 

監督・キャプテン
明治大学の丹羽監督と勝木キャプテン

明治大学

○丹羽政彦監督

「お疲れ様でした。2年続けて勝てるチャンスを自ら手放してしまったという気がします。チームスタッフとして、12月にどう過ごしていくか、もう一回、考えていかなくてはいけません。当初、帝京さんの対抗馬と言われた明治でしたが、全ては僕の責任です。マインド、フィジカルのすべて含めて、学生に申し訳ない。あとは、チームとしてやるべきことを年間通してやれるか、その変化がなければ、明治は一生、こんな負け方をします。そこを見据えて、来季に備えたいと思います」

──田村君の負傷がパフォーマンスに影響したのでは?

「そんなにでもないと思います。向こうのディフェンスはしっかりしているので、アタックで崩しきれませんでした。ラインアウト含め、こちらの安定しないセットプレーで彼の良さを生かしきれなかったと思います。スピードがない浅いラインの状態で、キャッチャーがラインブレイクできず、前へ進められませんでした。もう一つは、フェイズを重ねることを意識させてきたが向こうのディフェンダーに差し込まれて、ディフェンスを変えて来たのにも対応できず、やはり向こうのリアクションが速かったしスピードも速かったです。ずっと練習でやってきたことができなかったのは残念です」

○勝木来幸キャプテン

「ありがとうございました。結果、負けてしまって何とも言えません。本当に気持ちは入っていましたが、自分たちのラグビーができなかったのが敗因です。しかし、後輩たちが必ずこの借りを返してくれると思います」

──ブレイクダウンで苦しかったが?

「スクラムでもっとプレッシャーが掛けられると思っていました。自分たちは、ブレイクダウンも脅威には思っていませんでしたが、後半の後半は相手が強いと思いました」

──前半の終盤にペナルティから速攻したが?

「やはり、あそこはスクラム。スクラムから9単にこだわらなければいけないところでした。こういう試合の時こそ、落ち着いてプレーしなければいけませんでした」

──シーズン途中から失速したが?

「帝京に負け、早稲田に負け、チームとして悩んだ時期もありました。ここまで立て直してきたが、この点差を考えると自分の力のなさを感じます」

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(c) JRFU 2014, photo by H.Nagaoka
 

監督・キャプテン
筑波大学の古川監督と水上ゲームキャプテン

筑波大学

○古川拓生監督

「本日はありがとうございました。本当に学生たちがしっかりと自分たちのラグビーをしてくれました。特にFWがよくやってくれました。それに尽きます」

──ブレイクダウンが良かったが?

「対明治さんということでなく、1年やってきた筑波のラグビーをやろうと言って臨みました。接点は1年間意識してきたキーワードです。選手たちがそのことを忠実にやってくれました」

──スクラムも良かったが?

「本当に3番の崔だけでなく、1番、2番もフロントローがしっかりやったということです。FW8人でしっかりやってくれました」

──ブレイクダウンが良かったが?

「対明治さんということでなく、1年やってきた筑波のラグビーをやろうと言って臨みました。接点は1年間意識してきたキーワードです。選手たちがそのことを忠実にやってくれました」

──福岡選手の出来は?

「彼の持ち味をしっかり出してくれました。まだ、本調子ではないので、年明けが楽しみです」

──山沢選手、松下キャプテンは?

「山沢は厳しいです。キャプテンも現時点では厳しいと思います。勝ち続けてくれて、戻ることができればと思いますが、今いる選手でやっていくしかありません」

──どのあたりを修正してきたのか?

「今週は、今までやってきたことをより強く意識させました。大きく変更はできないので」

──鈴木君が2トライ獲ったが?

「啓太は高校から見ていましたが、良い意味で、期待を裏切ってくれます。正直言って嬉しい誤算に入ります。上級生の怪我もあり、起用しましたが、チームになくてはならない選手に成長しました。啓太に限らず、若い選手が伸びてくれて楽しみです」

○水上彰太ゲームキャプテン

「入りから圧倒しようと臨みました。関西学院大戦もうまくいったのですが、今日もそれを大事にしようと言って入って、自分たちの思うとおりのゲームができました」

──前半の後半にディフェンスで耐えたところがキーポイントに見えたが?
「あそこで獲られなかったのが自分たちには自信になったし、相手もペースがつかめなくなったところではないかと思います」

──どのあたりを修正してきたのか?
「特に新しいことに取り組むのでなく、セットプレーや接点の安定で勝負しようとしてきました」

──試合前からブレイクダウン勝負になると考えていたのか?
「自分たちの中では、もっとFWのぶつかり合いになると思っていました。前から準備していたわけではありません」

──対抗戦で負けた相手だったが?
「あの時は、けが人が多く、チームとしての方向性も定まっていなかったが、自分たちも試合を重ねるごとに強み、弱み、負けてはいけないところが明確になって来ました」