14日、全国4会場で第51回全国大学ラグビーフットボール選手権大会セカンドステージが開幕する。

関東大学対抗戦A、関東大学リーグ戦1部、 関西大学Aリーグから各上位5校、さらにファーストステージを勝ち抜いた朝日大学(東海学生A1リーグ)の計16大学が4大学ずつ4プールに分かれて3節に渡る総当たり戦を行い、各プール1位となった4大学がファイナルステージ準決勝へ駒を進めることになる。

text by Kenji Demura

第50回 全国大学選手権大会
<プールA>
帝京大学(関東対抗戦A1位)
法政大学(関東リーグ戦1部3位)
天理大学(関西Aリーグ4位)
朝日大学(ファーストステージ1位)

大学選手権5連覇を続ける帝京大学は、今季も全く危なげなく関東対抗戦を制した。2つの100点ゲームを筆頭に計7試合で498得点。
しかも、2位の早大戦、3位の明大戦ともに、後半を無得点で乗り切っているとおり、修正能力も高い隙のないディフェンス力でも他の追随を許さない。
HO坂手淳史、LO小瀧尚弘、姫野和樹と、代表クラスがズラりと揃うFW陣のパワー、SO流大主将、SO松田力也、CTB森谷圭介、FB重一生など才能集団で固められたBK陣のスピード、そして意思統一された防御力にブレイクダウンへの反応など、目指しているのは大学6連覇だけにとどまらず、その先に控える日本選手権でのトップリーグチームからの勝利だ。
対抗戦でのパフォーマンスも見ても、いまのところ死角は見当たらない。

そんな大学チャンピオンがセカンドステージ初戦で対戦するのは関西Aリーグ4位の天理大学。今季の同リーグで一歩抜きん出た存在だったと言っていい全勝優勝の関西学院大学を唯一追いつめるなど(20-21で惜敗)、ポテンシャルは高い。
成長したスクラムがどの程度、帝京大相手に持ちこたえられるか、そして198センチ、98キロのCTBジョシュア・ケレビの突破力で相手ディフェンスを混乱に陥れたいところだ。

昨季以上に圧倒的な力強さを見せてファーストステージを制した朝日大学は関東リーグ戦1部3位の法政大学にチャレンジ。
大黒柱FL西内勇人主将などをケガで欠く法大に対して、ファーストステージでは圧倒したセットプレー、ブレイクダウンである程度ボールキープして自分たちのかたちに持ち込みたい。

※第1戦対戦カード
法政-朝日(12:00 福岡レベスタ)
帝京-天理(14:00 同上)

試合写真

大学選手権6連覇を目指す帝京大を止めるチームは現れるのか

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<プールB>
流通経済大学(関東リーグ戦1部1位)
京都産業大学(関西Aリーグ2位)
慶応義塾大学(関東対抗戦A4位)
中央大学(関東リーグ戦1部5位)

史上稀にみる混戦となった関東リーグ戦1部を苦しみながら制して2連覇を成し遂げた流通経済大学。やや浮き沈みの多いシーズンを過ごしてきたと言えるかもしれない。
10月11日に法政大学に17-52で大敗した時には2連覇は難しくなったかに思われたが、11月1日に宿敵・東海大に持ち前のディフェンス力が復活して12-10で競り勝ち、リーグ戦最終2試合では相手に20点以上の失点を与えながらも、いずれも逆転勝利。特に、優勝を決めた中央大戦はロスタイムの逆転トライで際どくV2を達成した。
木村海斗主将、シオネ・テアウパのCTBコンビを中心に「守りでも攻めでも80分間、相手にプレッシャーをかけ続ける」(同主将)スタイルで初の“正月越え”を目指す。

その流通経済大学と初戦で対戦するのは、関西A2位の京都産業大学。
シーズン前の評判は高くなかったが、元木由記雄ヘッドコーチ、田倉政憲FWコーチ、クリス・ミルステッド分析・ディフェンス担当コーチなど蒼々たる顔触れの指導陣に基礎を叩き込まれた選手たちは関西リーグで格上と考えられていた同志社大学、天理大などを破り、堂々関西NO2として関東勢に対峙する。
リーグ最終戦では、全勝優勝した関西学院大学に終盤引き離されたが、前半はむしろ優位に試合を進めていた時間帯も多かった。
「FWの集団プレー使えないとうちのプレーができない」(大西健監督)という伝統のスクラムやモール、そして今季の躍進の鍵となった前に出るディフェンス力を高めて、8年ぶりの4強入りを目指す。

関東対抗戦4位の慶応義塾大学とリーグ戦5位の中央大学は共にひたむきなプレーぶりが際立つチーム。
慶應義塾大は最後、攻め込みながら早稲田大と引き分け、中央大は流通経済大にロスタイムに逆転されるというリーグ戦での悔しさを全国大会で晴らしたいところだ。

※ 第1戦対戦カード
流通経済-京都産業(14:00 大阪・近鉄花園)
慶應義塾-中央(14:00 東京・秩父宮)

試合写真

シーズン前には降格候補とも言われながら関西2位となった京産大。伝統のFW力とDFで4強入りを狙う

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<プールC>
関西学院大学(関西Aリーグ1位)
明治大学(関東対抗戦A3位)
大東文化大学(関東リーグ戦1部4位)
筑波大学(関東対抗戦A5位)

今季、関西Aリーグを制した関西学院大学。08年、09年と連続して同リーグを制した時代は「FW一辺倒」(野中孝介監督)だったのが、徐々にBKでもトライを取れるチームに変化。
今季は「FWのセットでマイボールをキープして相手にプレッシャーをかけ、BKで取り切る」(同監督)スタイルで関西Aリーグ全勝優勝を果たした。U20日本代表やジュニア・ジャパンでも活躍したNO8徳永祥尭の突破力も魅力。
同志社大学、天理大学と攻撃力のあるチームを抑え込んだ前に出るディフェンスも関西Aリーグでは機能した。

そんな、充実の関西王者に敵地に乗り込んで初戦を戦うことになるのが関東大学対抗戦A3位の明治大学。
王者・帝京大学にも個々のFWの前に出る力では通用した部分もあり、力強さでは往年のメイジに近づいた印象もあるが、早稲田戦ではFB藤田慶和、WTB荻野岳志といったスピードランナーに走られて、BKのディフェンスなど脆さも露呈。
今季ほぼ不動の司令塔としてプレーしてきた田村煕に代わって10番に入る1年生SO堀米航平がどんなゲームメイクを見せるのか、すでに高校生の時に日本代表合宿に呼ばれた経験を持つ同じ1年生CTB梶村祐介などと共に、若手BKの出来も鍵を握りそうだ。

今季の関東リーグ戦1部で開幕から4連勝飾った大東文化大学だが、上位陣と当たった後半3試合は3連敗。
SH小山大輝、SO川向瑛野ハーフ団の巧みなリードによって大型WTBホセア・サウマキがリーグ戦で計15トライを記録するなど、独特のアタッキングラグビーで、今世紀初となるベスト4進出を目指す。

3年連続で大学選手権ベスト4の筑波大学だが、今季はSO/CTB松下真七郎主将をはじめ故障者が多く、苦しいシーズンとなっている。
対抗戦では、帝京大学、早稲田大学、明治大学、慶應義塾大学に敗れて5位となり、ギリギリ大学選手権に生き残った。
それでも12月7日の青山学院大学戦では、SO山沢拓也、FBとしてプレーした福岡堅樹が復帰。
福岡は大東文化大学戦では再びメンバーから外れたが、将来的に日本代表の司令塔を担うことも期待される山沢の復帰は大きな戦力アップとなることは間違いないだろう。

※ 第1戦対戦カード(12月14日)
筑波-大東文化(11:40 東京・秩父宮)
関西学院-明治(14:00 京都・西京極)

試合写真

全勝で関西Aリーグを制した関西学院大。NO8徳永の突破力も魅力

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<プールD>
早稲田大学(関東対抗戦A2位)
東海大学(関東リーグ戦1部2位)
同志社大学(関西Aリーグ3位)
立命館大学(関西Aリーグ5位)

今年6月のパシフィック・ネーションズカップのカナダ戦で日本代表WTBとして出場し、右肩を痛めた藤田慶和が12月7日の早明戦で復帰。
同時にそれまでSOでプレーしてきた小倉順平副将をCTBに下げ、SOには1年生の横山陽介を起用するBKラインが機能して、明治大学を翻弄した早稲田大学。
セットが安定し、密集の仕事人FL布巻峻介副将の存在に象徴されるようにブレイクダウンでも粘り強いプレーで明治大学になかなかゴールを割らせないなど、11月2日の帝京大学戦で11-55と大敗した時よりも遥かにチーム力が上がっているのは間違いないところ。

対する立命館大学は、昨季、関西Aリーグを制した上級生が抜けたこともあって、シーズン序盤は苦しい戦いが続いたが、後半戦に入って全勝だった京都産業大学に土をつけ、同志社大学とも互角の戦いをするなど、自信を取り戻しての大学選手権入り。
セットプレー、ブレイクダウン、ディフェンスといったベースとなる部分で前に出られるかどうかがワセダ討ちのキーになりそうだ。

東海大は優勝こそ逃したものの、雨の中、流通経済大学ディフェンスを崩し切れずにロースコアのまま2点差で敗れた(10-12)一戦以外は全勝。
リーグ戦ベスト15に選ばれた、五十嵐優、平野翔平の両PR、SO野口大輔、CTB林大成主将、日本代表合宿に呼ばれた石井魁、ジュニア・ジャパンやセブンズ代表の経験を持つ小原政佑のWTBと要所に人材は揃う。
LO 陣には外国出身選手を並べる大型FWがまずはセットプレーとブレイクダウンで主導権を握りたいところ。

対する同志社大学も、ジュニア・ジャパンのPR北川賢吾がリードするスクラムなどFWのセットプレーに自信を持ち、BKの決定力も高い。
セットプレーやブレイクダウンで後手に回らないことが、厳しいプールDを勝ち抜く条件となる。

※ 第1戦対戦カード(12月14日)
東海-同志社(12:00 京都・西京極)
早稲田-立命館(12:00 大阪・花園)

試合写真

再びインサイドCTBのポジションでゲームを組み立てることになる早大・小倉

photo by RJP Kenji Demura