再び強力セットプレーの欧州強豪とのアウェー戦
フィジカルバトルを制してテストマッチ12連勝を

欧州遠征中の日本代表は23日、トビリシで「リポビタンDツアー2014」最終戦、グルジア代表とのテストマッチを戦う。
2年前、最後のワンプレーで飛び出したSO小野晃征の“サヨナラDG”で劇的な逆転勝利(25-22)を収めた相手との再戦。
ノートライながら、試合をしっかりコントロールしてFB五郎丸歩バイスキャプテンの6PGで18-13と勝利した前週のルーマニア戦に続いて、この2年間で進化した日本代表のセットプレーの力試しをするにはかっこうのテストマッチとなる。

(text by Kenji Demura)

1週間前のルーマニア戦で厳しい戦いを制した日本代表はグルジア戦で2014年の有終の美を飾る勝利を手にすることができるか
photo by RJP Kenji Demura
前週に続いてスクラムが大きなウェートを占める試合になることは間違いないだけにトビリシ入りしてからの練習でも多くの時間がスクラムに割かれた
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「グルジアのタイトファイブ(FW前5人)はスクラムに人生をかけているフランスのトップ14でプレーしている選手ばかり。以前よりもボールを動かすようになっているようだが、日本に対しては同じスタイルでくるはずだ。すなわち、スクラムで圧倒しようとしてくる」(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ=HC)

「ルーマニアはスクラムを押せなかったら回してきたりしたけど、グルジアはイタリアみたいにどこまでもまっすぐ押してくる。映像を見る限りルーマニアよりも強そうだ」(PR三上正貴)

2012年11月17日。
前週にそれまで1度も勝てなかった欧州での欧州の代表チームに対するテストマッチ初勝利を挙げた1週間後。
今回と同じようにブカレストからトビリシに移動した日本代表は、1週間前のルーマニア戦勝利がたまたまではなかったことを証明するように、当時は世界ランキングで日本よりも上位だったグルジア(=15位、日本は当時16位)に対して劇的な逆転勝利を収めたが、スクラムに関しては再三ペナルティを取られるなど苦しんだ。

24ヶ月を経て、再びやってきた東欧。遠征初戦のルーマニア戦では、試合の行く末が決まってからまくられた最後の1本を除けば、2年前に“完敗”していたスクラムで圧倒される場面はなかったと言っていい。

2週続けて日本のスクラムの真の実力が試されることになるグルジア戦。
先発フロントローは1週間前と同じ顔触れ(三上―木津武士―畠山健介)。
「正直、最終週でだいぶ疲れが出てきている。マオリ戦もスクラムはこちらが優勢で押せたので逆に疲れたのもあるし、その後の長距離移動があったし、ルーマニア戦でもスクラムでの激しいバトルがだいぶあった。スクラムでの疲労がたまってきてはいる」
ルーマニア戦で負傷した左肩のコンディションもあり大事を取ってグルジア戦は欠場するFLリーチマイケルに代わってゲームキャプテンを務めるPR畠山は、ハードな試合と遠征を続けているがゆえの厳しいコンディションを正直にそう語る。
実際、ジョーンズHCが「今週は本当にいい練習ができた。たぶん、いままで一番いい」と語るほど充実した練習内容が続いたトビリシ入りしてからのトレーニングでも、前の試合でのダメージが残るフロントローに関しては別メニューで調整する場面もなくはなかった。

もちろん、グルジア戦本番では「練習メニューをコントロールしてもらって、いいコンディションまで持ってくることができた」(HO木津)と、3人とも万全な状態で臨めそうだ。

そして、リザーブのPRには、出場すれば前週の稲垣啓太に続いて初キャップ獲得となる垣永真之介の名も。
ルーマニア戦を間近で見て、「接点とかセットピースとか激しさが全然違う。これがテストマッチなのか」と驚嘆したという垣永は「ルーマニア戦同様、スクラム、ラインアウトのセットピースが大事になってくる。タイトヘッドPRとして、責任をしっかり果たす。日本全体を背負っているという覚悟を決めて、体が壊れてもいいくらいに頑張る」と、静かに抱負を語ってくれた。

「相手はスクラムでペナルティを取ることを狙ってくる。(ルーマニア戦では)相手のバックファイブの重さを感じていたので、こちらも引き続き8人でまとまって押していくことが重要になる。たぶん、LOにも負担がかかっている」
元々スクラム担当のリーダーである畠山ゲームキャプテンがそう語るとおり、ラインアウトだけではなくスクラムでの仕事も大きな比重を占めるようになっているLO陣は伊藤鐘史、トンプソン ルークというマオリAB第1戦の先発ペアに戻ったかっこう。
共に1試合ずつ休み(伊藤=マオリAB第2戦、トンプソン=ルーマニア戦)をもらったが、ポジション柄常にフィジカルコンタクトを続けているため「ルーマニアはまっすぐまともにぶつかってきたし、ダメージはある」(伊藤)とも。

リーチキャプテンがメンバー入りしない関係もあって、リザーブにも大野均、真壁伸弥というLO陣がふたり並ぶ。
そのため、FW3列もカバーすることになるトンプソンは、「(グルジアは)でかくて、めちゃ重い。セットピースとディフェンスをしっかりするのはもちろん、賢いラグビーをする必要がある」と、試合のポイントを語る。

FW第3列はジョーンズHCをして「どこまでの選手になるか想像がつかないくらいの才能がある」と言わしめるNO8アマナキ・レレィ・マフィを中心に、ヘンドリック・ツイ、ヘイデン・ホップグッドのFL陣。ルーマニア戦でリーチキャプテンが下がった後の陣容のままとなる。

ルーマニア戦は休養に充てられたLOトンプソンはリーチ主将不在もありFW第3列もカバー。モールもグルジア戦のポイントのひとつとなる
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トビリシでの練習ではジョーンズHCと言葉を交わすシーンが多く見られたSO田村。SH日和佐(右)と共に試合をどうコントロールするかも鍵に
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「SOは田村でスタートして小野でフィニッシュ。
2人で80分間をシェアする」(ジョーンズHC)

BK陣では、SHは「ルーマニア戦は彼にとってのベストゲームとなった(ジョーンズHC)」というパフォーマンスを見せた日和佐篤が今秋4試合連続となる先発。
控えには1週間前に5年ぶりとなる日本代表ジャージに袖を通したものの出番はなかった矢富勇毅が再びリザーブ入り。

SOは対マオリAB第1戦で左足を痛めていた田村優が万全のコンディションに戻ったため先発復帰。
前週、激しくも賢いプレーを80分間続け、緩急つけた司令塔ぶりでチームを勝利に導いたSO小野晃征が控えに回るが、ジョーンズHCは「激しいゲームになるので、2人で80分間をシェアすることになる。あくまでも田村でスタートして、コーセイ(小野)でフィニッシュするということ」と、田村のコンディションが戻ったことで、2人の司令塔にしっかり役割分担をさせることができるようになったメリットを強調する。

「グルジアは大きくて、そこが強さ。がんばってファイトするところと、ファイトしないところはできるだけ簡単にFWが前に出られるようにしていくのもポイント。明らかにこっちの方が走れるので」
そんなふうに司令塔としてのゲームプランの一端を明かしてくれた田村が「クリアーにコミュニケーションが取れるし、ボールも動かせるので幅は広がる」と、一緒にプレーする場合のやりやすさを語る立川理道がインサイドCTBに復帰。
「先週のルーマニア戦を見てもいいフォームになってきている。フィットネスが戻ってきたし、ハンドリングスキルもよくなっている」と、ジョーンズHCが復調を訴えた立川が12番に入ったことで、マレ・サウ(12→13)、松島幸太朗(13→11)のふたりはそれぞれひとつずつ外側のポジションでプレーすることになる。

もちろん、最高列でチームを締めるのは今季ジャパンXV名義で戦ったアジア・パシフィックドラゴンズ戦以外日本代表の15番を守り続けた五郎丸歩バイスキャプテン。
「テストマッチで今年負けなしで12に連勝記録を伸ばすというのは、どんなチームだってなかなかできることではない。日本のファンも期待されているようですし、いいプレーをして結果を出して日本に帰りたい」

そのFB五郎丸バイスキャプテンではなく、PR畠山をゲームキャプテンにした理由に関してジョーンズHCは以下のように説明する。
「FBはキャプテンをするのは難しいポジション。局面からとても遠くにいることが多いので。さらに、ゴロー(五郎丸)はゴールキックの重責も担う。ハタケ(畠山)は前にもキャプテンをやっているし、他の選手からリスペクトされている。彼がベストだと思う」

「11年のワールドカップにも出ましたけど、けが人も多く出て、ずっと固定でやってきたメンバーがいなくなったという部分は少なからず影響があったように思う。
(グルジア戦に関しては)エディーさんがグラウンド上で指示してくれるわけでもない、体を張ってくれたリーチもいない状況で、他のリーダーたちを中心に選手たちが自分でこのゲームをつくっていかなくてはいけない。自分たちでゲームをコントロールしくという意味でもいいテストマッチになる。
特に相手はフィジカルの強いチームだし、(ワールドカップで対戦する)南アフリカを想定したゲームとも言っていて、体の大きな相手に日本人がどれくらいできるかも試される。
フィジカルの部分と、自分たちでゲームをコントロールしていくという部分。ふたつの点ですごく意味のあるテストマッチだと思う」

畠山ゲームキャプテンがそう語るとおり、残り10ヶ月足らずとなったラグビーワールドカップ2015でベスト8を目指す日本代表にとって、実に大きな意味を持つ14年最終ゲームとなる。

ブカレストでは途中出場ながら度々ラインブレイクを見せる復調ぶりをアピールした立川は12番で先発。SO田村とのコンビでBKラインを動かす
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ルーマニア戦で6本のPGを完璧に決めたFB五郎丸副将。グルジア戦でも高い成功率でのゴールキックを期待したいところ
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前回の対戦ではSO小野の”サヨナラDG”(写真)で劇的なアウェー戦勝利を収めた日本代表。2年間の進化を証明してテストマッチ連勝を12に伸ばしたい
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FLリーチ主将に代わってゲームキャプテンを務めるPR畠山。「フィジカルとゲームコントロールですごく意味のあるテストマッチ」
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