2年前は欧州アウェー戦初勝利もスクラムでは惨敗
セットプレーとコンタクトエリアでの進化を証明する

欧州遠征中の日本代表は、11月15日、ブカレストで遠征初戦となるルーマニア代表とのテストマッチを行う。
ルーマニア代表は2年前の同じ場所での対戦で、欧州での欧州の代表チームに対する記念すべき初勝利(34-23)を挙げた相手だが、その時の対戦でもスクラムでペナルティートライを取られるなど、強力FWのセットプレーには苦しめられた。
「世界ランキングなら6、7位」(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ)と評されるマオリ・オールブラックスからスクラムでペナルティートライを奪うなど、この2年間、間違いなく進化の過程を歩んできた日本代表のセットプレーの現時点での真の実力を体感するためには、格好の対戦相手となる。

(text by Kenji Demura)

2年ぶりとなるルーマニアでのアウェー戦。日本代表にとってはマオリAB戦で見せた進化を欧州の強豪相手に証明する戦いとなる
photo by RJP Kenji Demura
ルーマニア指揮官をも驚かせたマオリAB戦で日本が奪ったスクラムトライ。2年前にスクラムでは惨敗した相手に日本のセットは通用するのか
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「スクラム、スクラム、スクラム」
2年前の対戦時。試合前日に行われた公式記者会見で、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチはそんなふうに、対戦相手の印象を語っていた。
今回は試合3日前に繰り上がったかっこうの同会見。逆に、相手のスクラムに対して警戒感を露わにしたのは、むしろルーマニア代表のリン・ハウェル監督の方だった。
「最近の日本チームの印象? 日本がスクラムでペナルティートライを取るのを初めてみた。
スクラム、ラインアウトのセットピースとコンタクトエリアでの強さが世界10位以内を実現させたのだろう」

直接的に世界ランキングへの影響のないノンテストマッチではあったものの、見たもの誰もが世界トップレベルのチームだったことを感じたに違いないマオリABに対してスクラムで圧倒するなど、力強さでは対等以上に戦ってみせた日本代表(JAPAN XV)。
「常に、速くて、ワイドにプレーするのが日本の特徴」(ハウェル監督)
2年前のアウェー戦勝利でルーマニア代表に植え付けたイメージに加えて、今回は前回圧倒されたセットピースで、いかに主導権を握れるかがポイントとなる。

スクラムの鍵を握るFW第1列では、マオリAB戦で負傷退場した左PR三上正貴のコンディションが戻り、先発に復帰。マオリAB戦でインパクトあるプレーを見せた稲垣啓太が控えに回る。
HO木津武士、右PR畠山健介は今秋3戦連続での先発となる。
先発フロントローの中で唯一2年前のルーマニア戦に出場(後半25分からの途中出場)している畠山は、「直にルーマニアがどれだけ強いかを体感したので、恐怖というかナーバスになっている部分もなくはない」と、正直に語る。
「ジャパンのスクラムもこの2年で成長できた部分もあるので、しっかり自信を持って自分たちのスクラムを出しながら、今ジャパンとして持っている課題をふまえて、いいスクラム組みたい。
大切なのはいいテンポでアタックするために、いいスクラムを組むということ。ディフェンスでも相手が押してくることはわかっているので、いいスクラムでプレッシャーを与えて、向こうの攻撃源を半減させることターゲットにする」

一方、三上も「2年前を知らないので、どうなるかわからない部分はある」と、初めて対戦するがゆえの不安も抱えてはいるが、「稲垣が入ってもスクラム押せたように、自分の仕事をしっかりやって、全体が進化しているところを見せたい」と抱負を語る。

FW第2列ではラインアウトのキーマンでもある伊藤鐘史が先発復帰し、「LO陣の中で最もパワーとスピードがある」(ジョーンズHC)との評価を受ける真壁伸弥とコンビを組む。
もちろん、これも強力なルーマニアFWにセットプレーとコンタクトエリアで対抗するための布陣。
ツイ ヘンドリック、リーチ マイケルキャプテン、アマナキ・レレイ・マフィと並ぶFW第3列。
「2年前はセットピースでプレッシャーをかけられた。2年でチームがどう成長したかを証明できる試合になる」と意気込むリーチキャプテンは「今度はジャパンがスクラムトライを取り返したい」とも。

対マオリAB第1戦で負傷したPR三上も復帰。フロントローにとってはマオリAB戦以上に真価が問われる欧州でのアウェー戦となりそうだ
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マオリABにも通用する突破力を見せたNO8マフィも再び先発メンバー入り。出場すれば初キャップ獲得
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5年ぶりに日本代表復帰のSH矢富など
経験豊かなメンバーがBKのリザーブに

一方、BK陣の先発メンバーはマオリABを追い込んだ1週間前の東京・秩父宮ラグビー場の時の7人から不動。
「13のポジションは自分がやりたいことができるし、しっくりくる」という松島幸太朗も、2戦連続でアウトサイドCTBでの先発となる。

「2年前に来た時は16位、それが今は9位。この2年間の自分たちが成し遂げてきたことを誇りに思うし、それに恥じないプレーをしたい。
ルーマニアの印象は変わっていない。強いセットピース、そしてフィジカル。ジャパンとしてはフィジカルで負けないで、60%くらいはボールキープして、自分たちのテンポでアタックしていきたい」
2年前にセットで圧力を受けながらも、少ないチャンスをものにして勝ち切った経験を持つSO小野晃征(フル出場)は、前回よりも日本が試合を支配する時間帯を多くして、成長した姿を披露しながらテストマッチ連勝記録を11に伸ばすことに自信をのぞかせる。

BK陣のリザーブには、出場すれば実に5年ぶりのテストマッチ復帰となるSH矢富勇毅、SO/CTB立川理道、SO/WTB廣瀬俊朗という経験のある3人が並び、マオリAB第2戦で「しっかりと試合を終わらせなければいけなかった」(ジョーンズHC)部分などを補うことになる。

もちろん、ジョーンズHCは今回の布陣が「現時点でのベスト」であることを公言。
「すごくフィジカルな試合になる。ルーマニアはいいスクラムとラインアウトのチーム。FW第3列のボールキャリーにも注意が必要。大型CTBもいる。そういう強い相手に対して、強いセットピースから速いテンポのラグビーをしていく」(同HC)ことで、9位に世界ランキングを上げた日本の成長ぶりを厳しい欧州でのアウェー戦で証明する。

2年前もフル出場して欧州でのアウェー戦初勝利に貢献したSO小野。前回以上にボールキープする時間が長くなれば司令塔としてプレー選択肢も広がる
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アウトサイドCTBとして頭角を表す松島も再び先発。「自分らしさを出せる」というポジションでの思い切ったプレーでチームに貢献したいところ
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出場すれば5年ぶりのテストマッチとなるSH矢富もリザーブ入り。相次ぐケガのため思い通りにプレーできない期間が長かったが「やっと戻ってきた」
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2年前は34-23で日本が勝利。前回はプレッシャーを受けたセットプレーでいかに対等以上に戦えるかがポイントになる
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