前週の40点差大敗を撥ねのけ大金星へあと1歩
「世界6、7位」マオリ ABを追いつめ進化を証明

11月8日、東京・秩父宮ラグビー場でリポビタンDチャレンジカップ2014、日本代表(JAPAN XV)対マオリ・オールブラックス(AB)第2戦が行われ、後半32分のFB五郎丸歩バイスキャプテンのPGで18―15とリードした日本だったが、終了3分前にマオリABに逆転トライを許し、18-20で逆転負け。
金星こそ逃したとはいえ、前週40点差で敗れた「世界ランキングで言うなら6、7位の実力を持つ」(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ=HC)マオリABを最後の最後まで追いつめたことで、チームの確かな成長ぶりを2万人を超える大観衆に印象付けて、ルーマニア、グルジアとのテストマッチが予定される欧州遠征へ旅立つことになった。

(text by Kenji Demura)

第1戦で40点差の大敗を喫したマオリABに対して終了3分前までリードするなど、W杯に向けてチームの進化を証明した日本代表(JAPAN XV)
photo by RJP Kenji Demura
後半32分のFB五郎丸副将のPG(写真)で3点をリードした日本だったが、終了3分前にマオリABに逆転トライを許し、悔しすぎる逆転負け
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「我々はみんなラグビーゲームを愛しているが、時々、ゲームの方が我々を愛さない日がある。まさしく今日がその日だった」
試合後の記者会見。ジョーンズHCは悔しさもにじませながら、そんな言葉で選手のがんばりを賞賛した。本当の勝者は我々ではなかったか、と。
「選手たちのパフォーマンスを誇りに思う。セットピースは素晴らしかった。アタックシェイプも良くなった。ブレイクダウンも修正できたし、ディフェンスも進歩した。ワールドカップに向けて自信になる」
第1戦で強烈なカウンターアタックから8トライを重ねられて惨敗した相手との再戦。
「エディーさんが寝ずに考えてくれた新しい戦術」(FB五郎丸バイスキャプテン)がことごとくはまり、1年前のオールブラックス戦以来の秩父宮ラグビー場での入場券ソールドアウトの試合で客席を埋めた多くのファンが大金星の目撃者になるまで、本当にあとほんの少しだった……。

「ゲームの入りが良かったので、そのままリズムよくボール動かして攻めて行くことができた」(PR畠山健介)
オールブラックスとはやや異なるマオリABのハカの余韻がまだ残るキックオフ直後から、1週間前に40点差で敗れたとは思えない勢いで日本が自分たちのペースで攻める時間帯が続く。
「マレが12で松島13の組み合わせはペースとパワーがあった」とジョーンズHCが絶賛したCTB陣が積極的に勝負を仕掛け、反応した山田章仁、カーン・ヘスケスのWTBが外側のスペースでゲインを稼ぎ、FW陣もしっかりフォローしてボールを相手に与えない。

「FWの視点で言うと、スクラム、ラインアウトで圧倒できるという印象があった」(畠山)
1週間前の神戸でも、スクラム、そしてラインアウトからのモールでのペナルティートライを奪っていた日本だっただけに、序盤のPGチャンスは狙わずに2本続けてラインアウトからの攻めを選択。
1本目がモールからサイド突いた後のノット・リリース・ザ・ボール。2本目はラインアウト自体がノットストレートでチャンスを逃して先制はならず。
7分に今度はやや距離のあったPGを五郎丸が狙うが失敗。
12分には初先発のPR稲垣啓太がマオリABゴールに飛び込むが、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)判定により直前のプレーがオブストラクションを取られて、ノートライ。

試合後、「今日はテストマッチのようだった」ともジョーンズHCは語ったが、前半5分に早くもマオリABに反則の繰り返しによるシンビン退場者が出るなど、立ち上がり圧倒的に日本がペースをつかんでいたことは間違いなかった。
あるいは、この序盤のチャンスに得点を重ねられなかったことが、最終的に厳しい試合で勝利の女神に微笑まれなかった要因のひとつにもなったのかもしれない。

立ち上がり得点を挙げられなかった日本に対して、16分、22分にいずれも日本のキックを処理したマオリABが一気にトライまで持っていった。
「ターンオーバーされた時のリアクションを今週1週間かけて修正してきた」と、FB五郎丸バイスキャプテンが語るとおり、ハンドリングエラーなどで相手にボールが渡っても、しっかり組織ディフェンスが機能していた場面も多かったが、このマオリABの連続トライのシーンだけはややディフェンスが淡白になった印象だった。

アタックではいい場面でいいランナーにボールを渡すことを修正点としていた日本。CTBサウは期待に応えるラインブレイクを度々見せた
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前半38分、マオリABのBKを外に振り切りトライを奪うWTB山田。「相手の間合い見ながら行けると思ったので勝負した」
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「試合を通してセットプレーでは
プレッシャーをかけることができた」

31分にもマオリABにPGを加えられたものの、日本も前半終了間際にしっかりフェイズを重ねた後、最後は「今日は陣地を取りながら、相手のバックスリーをコントロールして、前が薄くなったら、しっかりボール持って攻めるように意識した。自分の仕事はしっかりできたかな」というSO小野晃征、FB五郎丸バイスキャプテンなどの好判断から、WTB山田が外に相手DFを振り切って、左隅に飛び込む。
「相手の間合いを見ながら行けると思ったので勝負した」(山田)文句なしのトライとも思われたが、またもレフリーはTMOを要求。
今度はトライが認められて、5-15という10点のビハインドでハーフタイムを迎えた。

後半に入っても日本が試合を支配する展開は変わらず、7分にCTBサウが相手ゴールに迫った後、いったんはマオリABにボールを奪われたものの、「13のポジションはしっくりくる。自分がやりたいことができるし、通用した」というCTB松島が鋭い出足から相手のキックをチャージして、5mスクラムへ。
「試合を通してしっかりセットプレーでプレッシャーかけることができた」という FWリーダーの畠山の言葉通り、ここでもマオリABのスクラムを粉砕した日本がペナルティートライ。
この後のゴール、そして14分のPGをFB五郎丸バイスキャプテンが確実に決めて、同点に追いついた後も圧倒的に優位に立つスクラム、ラインアウトを軸に日本がしっかり攻める時間帯が続いた。

32分に注文通りにブレイクダウンでのペナルティーを勝ち取り、FB五郎丸バイスキャプテンが右中間から決めて、とうとう日本が3点をリード。
1週間前に40点差で敗れたマオリABからの大金星獲得が目前となったことで、2万人を超える大観衆もヒートアップしたが、37分に相手のキックを処理したWTB山田がタッチの外に出されたラインアウトをクイックスローされて、「これぞオールブラックス」という一気にアタックで逆転トライを奪われて、「ゲームに愛されなかった」日本にとって悔しすぎる敗戦となった。

前半12分、PR稲垣がマオリABゴールに飛び込むが、TMO判定の結果、その前のプレーがオブストラクションとなり幻の先制トライとなる
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プレッシャーを受けながら前に出るSO小野。「パス、ボールキャリー、キック、すべてやってほしいプレーをしてくれた」とジョーンズHCが絶賛するプレーぶりを見せた
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多くの時間帯で日本に支配されながらも、ワンプレーで試合を決めたマオリAB。2万人を超える大観衆に本物の勝負強さを見せつけた
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オールブラックスとはひと味違う魅力を見せたマオリAB。ジャパンにとってはW杯へ向けて実りある試合経験となった
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