マオリABの鋭いカウンター攻撃に失8トライ
スクラムや新戦力の活躍などポジティブな面も

11月1日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸でリポビタンDチャレンジカップ2014、日本代表(JAPAN XV)対マオリ・オールブラックス(マオリAB)第1戦が行われた。
計8トライを重ねたマオリABに対して、日本もモールやスクラムでのペナルティトライなどで3トライを奪ったものの、21対61での大敗。
04年以降の国内の日本代表関連試合で最多となる2万1234人の大観衆に勝利をプレゼントすることはできなかった。

リポビタンDチャレンジカップ2014、日本代表(JAPAN XV)対マオリ・オールブラックス第2戦は8日、東京・秩父宮ラグビー場で行われる予定となっている。

(text by Kenji Demura)

04年以降の日本代表関連試合では国内最多となる大観衆が見守ったマオリAB戦。21-61で大敗もポジティブな面も多く「来週は面白い試合に」(ジョーンズHC)
photo by RJP Kenji Demura
前半25分にモールでペナルティトライを奪う日本。終始圧倒したスクラムなどFWプレーでは世界トップに通用することを証明した
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「この3年、ジャパンが大敗しているのは、アスレティックであり、ターンオーバーがうまいチーム。フレンチバーバリアンズ、オールブラックス……」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)
間違いなく、そうした条件を満たしていたマオリABに対して、日本は立ち上がりから自分たちのミスやブレイクダウンでのターンオーバーでボールを失うたびに、一気にトライまで持っていかれるシーンが続いた。

「立ち上がりからファイトすることとディフェンス」(FLリーチ マイケルキャプテン)

「相手は攻守の切り替えが速い。ターンオーバーされた時の対応を注意しないといけない。」(SH日和佐篤)

日本としても当然ながら相手の長所がどこにあって、どういう戦いをしなければいけないかは理解していた。
それでも、「ひとつひとつのスキルのレベルがかなり高い。(W杯で対戦する)サモアよりも強いのでは」(FB五郎丸歩バイスキャプテン)というマオリABのターンオーバーからトライまで持っていく能力は、現時点で日本が止めるのはなかなか厳しいものだった。

08年にジュニア・オールブラックスのコーチとして日本代表との対戦経験を持つマオリABのコリン・クーパーヘッドコーチが「当時よりもシステムとストラクチャーがしっかりして、セットプレーも強い」と日本を警戒していたこともあって、試合開始3分、5分とマオリABはPG を狙う慎重な試合運び。

この2本のPGはSOイハイア・ウェストが外したが、前半7分にターンオーバーの応酬からPRクリス・イーブスが先制トライを奪った後は、「(マオリABの8個のトライ中)6個のトライがジャパンのミスからのカウンターで取られたもの」(ジョーンズHC)というパターンで前半だけで失4トライ。

日本も 25分に敵陣深くのラインアウトからモールを押し込んでのペナルティトライを返したものの、35―7とマオリABの28点リードで前半は終了した。

途中出場ながら、後半12分にトライを奪う(写真)など抜群の突破力でチームに勢いを与えたNO8レレィマフィ。ジョーンズHCの評価もうなぎ上りだ
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日本代表としての初トライは次戦以降にお預けになったが、途中出場のWTBヘスケスも十分にインパクトを与える走りを見せた
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「素晴らしいのはまたチャンスがあること。
来週は面白い試合になる」(ジョーンズHC)

後半に入ると、リーチキャプテンが「リザーブの選手たちのエネルギーが良かった」と振り返ったとおり、NO8アマナキ・レレィ マフィ、WTBカーン・ヘスケス、PR稲垣啓太、同・垣永真之介のノンキャップ組など途中出場選手たちが持ち味を出したプレーぶりでチームに勢いを与え、日本がアタックする時間も多くなる。
12分に、自陣からFB五郎丸が持ち出したのを起点にしっかりフェイズを重ねた後、こちらも後半から途中出場し「ゲインラインにフラットに立ってプレーすることを心がけた」というSO小野晃征からNO8マフィへとつないで日本が2トライ目。

さらに、33分にもこの日、日本が80分間を通して優勢だったスクラムを押し込んで、今日2本目となるペナルティトライ。「スクラムは通用した。下があれだけゆるい中でしっかり組めたのは自信になる」(PR稲垣)

試合後の記者会見でマオリABのクーパーHCが「日本のセットプレー、特にスクラムが強かった。この点は修正しないといけない」と語ったとおり、しっかりとセットプレーでプレッシャーをかけてトライを奪った日本だが、いったんボールを失うと一気のカウンターでトライまで持っていかれる点は前半と変わらず、後半も4トライを重ねられた。

最終的にマオリABに奪われた得点は1年前のオールブラックス戦を上回る61点。
繰り返し述べてきたとおり、日本のミスやブレイクダウンでのターンオーバーからのカウンターアタックで一気にトライまで持っていかれる連続だった。

「結果は残念だが、過去10試合よりも、この試合で学べることが多かった。一番素晴らしいのは来週またチャンスがあるということ。
経験こそが『ベストティーチャー』。来週は面白い試合になる。攻守の切り替えをもっと速く。スマートに戦わなければいけない。」(ジョーンズHC)

「まずミスを減らす。ミスが起こった時には素早く反応する。それをしないと、また同じことになる」(LO伊藤鐘史)

「カウンターアタックに対してはリアクションとコミュニケーションしかない。自分たちが攻めた上で課題が出たので、まだまだレベルアップしていける」(FB五郎丸バイスキャプテン)

確かに、「世界ランキングで言えば6、7位」とジョーンズHCが評価していた、マオリABのカウンターアタックは強烈だった。その一方で、日本代表の課題も明らかなだけに、1週間後の東京での第2戦では、より進化したJAPAN XVの姿を披露してもらいたいところだ。

マオリ・オールブラックスの激しいタックルを受けるCTB立川。相手の好ディフェンスやブレイクダウンでボールを奪われカウンター攻撃を受けるケースが目立った
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インサイドCTBとして、今まで以上にボールタッチが多かったサウ。度々いいゲインは見せたがトライにはつながらなかった
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PR三上の負傷もあり前半17分からプレーしたPR稲垣。日本代表として初出場ながらスクラムにフィールドプレーに貢献度は高かった
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キックオフ前にハカのパフォーマンスを見せるマオリAB。世界ランキング6、7位相当と言われる実力をいかんなく発揮した
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