ミスから悪循環に陥り大量失点
「ビート・ウェールズ」ならず

現地時間の10日(日本時間11日未明)、イタリアのヴィアダーナでワールドワグビーU20チャンピオンシップ2015プールA、日本—ウェールズ戦が行われ、日本は3−66で 完敗。

この結果、予選プールAで3戦3敗の4位となった日本は9〜12位決定戦に回り、15日にサモアと対戦する。

HO堀越主将は大敗にも成長を実感。課題を修正して次戦の対サモアに臨む

HO堀越主将は大敗にも成長を実感。課題を修正して次戦の対サモアに臨む
photo by RJP Kenji Demura

 

初戦でイングランドに7—59、2戦目のフランスには7—47。

スコアだけを見るなら大敗続きも、イングランド戦の後半、フランス戦の前半はそれぞれ7−14と善戦するなど「大会で最も成長したチームになる」(中竹竜二ヘッドコーチ)片鱗を見せながら迎えたプールA最終戦。

 

「ディフェンスをコネクトしながら、アタックは素早く、広く展開するというのがまだできていない」(中竹HC)

 

「改善すべきは攻守の切り替えの部分。相手にボールが渡った時にはしっかり対応していくことと、一人ひとりのタックルの精度を挙げる必要がある」(HO堀越康介キャプテン)

 

1、2戦で出たそうした課題を修正することで、当初から掲げてきた「ビート・ウェールズ」に近づけるはずだったが、立ち上がりから試合の流れは日本の思惑とは全く違うものになってしまう。

 

3分にFB野口竜二がPGを決めて先制するが、何と80分間での日本の得点はこの3点のみ。

その後のキックオフから日本が再び攻めたが、パスをインターセプトされるミスが出て、一気に自陣深くまで攻め込まれた後のスクラムからフェイズを重ねたウェールズが最後は内側のスペースを攻略しトライを奪い、逆転。

 

10分にはラインアウトから一気に逆サイドのスペースを使って攻めたウェールズBKのスピードとランニングスキルについて行けずに2トライ目を献上した。

 

「1戦目、2戦目では自陣で無理なアタックをして、攻め疲れからターンオーバーで取られているパターンが多かった。FWのセットが安定していたので、FWの力をどこで出すかということにフォーカスして、キックを織り交ぜた」(今村友基BKコーチ)

 

この日の日本は意図的にキックを多くするゲームプランで戦っていたが、明らかにそのキックでの精度を欠いていた。

敵陣深くに蹴り込んだボールが、そのままデッドゴールラインを割り、PKからのキックもタッチへ出ない。

「キックを使うことを考えすぎて、それで逆に消極的になって、ミスが増えた。悪循環になってしまった」(WTB尾﨑晟也バイスキャプテン)

しかも精度を欠いていたのはキックだけではなかった。

最初の2トライからも明らかなように、卓越したパススキルとスピードで外側のスピードを攻めたかと思えば、そこから内に切ってくるウェールズに対して、「全部1対1になってしまった」(遠藤哲FWコーチ)結果、ことごとくファーストタックルを外されることになり、トライを重ねられた。

 

「ちょっとしたキックミス、ちょっとしたタックルミス、ペナルティ。ほとんどラグビーのプレーをしないまま点数を取られていった」(中竹HC)という前半が終了して、スコアは3—33。30点のビハインドを背負ってのハーフタイムとなった。

ウェールズの2人がかりのタックルに止められるLO斉田。世界最高峰での厳しい戦いが続く

ウェールズの2人がかりのタックルに止められるLO斉田。世界最高峰での厳しい戦いが続く
photo by RJP Kenji Demura

 

「成長していることをポジティブに受け止め、
次の試合に臨みたい」(HO堀越キャプテン)

 

「このチームは修正力がある」と若い選手たちのことを評価する同HCは「キックの精度は変えられるはずなので、裏は空いていたらどんどん蹴っていこう。継続できないとラグビーにならないので、2人目の寄りをしっかり」と、ハーフタイムに指示を出し、後半の巻き返しにかけた。

後半のキックオフから日本がボールを持って攻めたが、ハンドリングエラーやパスミスでスコアすることができず、逆に5分にはまたもウェールズに外から内のパターンでディフェンスを破られてトライを許すなど、前半と全く同じ5トライ4ゴールを重ねられての33失点。

 

試合終了間際にFWが近場、近場と攻めてウェールズゴールに迫ったが、トライラインは越えられず、3—66での大敗となった。

 

「今日はすべてがダメだった。ミスが出て、リズムに乗れないまま、アタックできずにディフェンスに回ると、長い速いパスの後、内を切られてしまった。

彼らからすると体験したことのないスピードとスキルでアタックされ続けて、ディフェンスで立て直せなかった。本当はもっとプレッシャーをかけて、内側に切れ込んできた時に止めたかったが一人ひとりのファーストタックルが弱くて、常に余られた状態でアタックされた。ちゃんと1人目が止めないと止まらない。

フォワードは1、2戦で自信をつけていたので、スクラム、ラインアウト、モールすべてで圧倒しようと言っていたが、そのチャンスもなかった。少ないチャンスもミスで終わってしまった」(中竹HC)

 

チームとしてターゲットとしてきた一戦で完膚なきまで叩きのめされたU20日本代表だが、実際に世界最高峰の場で戦っている選手たちが、大敗の中にも成長を実感しているのも確か。

 

「ビート・ウェールズを目標に国内合宿からやってきて残念な結果になったが、その中でも全体のダブルアクションとか、アタックのスリーフェイズを続ける部分など、初戦のイングランド戦に比べるといいところは増えてきている。スクラムも良くなっていたが、今日は入りが良くなくて、それでも修正できた。

反省すべき点はまだまだ個人のタックルが甘いところ。

目標はかなえられなかったが、試合は続くので気持ちを切らさずに頑張っていきたい。成長しているのは確かなので、ポジティブに受け止めて、次の試合に臨みたい」(HO堀越キャプテン)

 

U20チャンピオンシップ残留へ残りは2試合。次は「パワフルなだけではなく、BKの仕掛けがよくなっている」(今村コーチ)というサモアへのチャレンジとなる。

text by Kenji Demura

スキル、スピードで上回るウェールズに対して1対1でのタックルミスが目立った(写真はNO8タタフ)

スキル、スピードで上回るウェールズに対して1対1でのタックルミスが目立った(写真はNO8タタフ)
photo by RJP Kenji Demura

終了間際にFWでウェ—ルズゴールに迫ったがトライは奪えず。無情の試合終了の笛にPR藤野は天を仰いだ

終了間際にFWでウェ—ルズゴールに迫ったがトライは奪えず。無情の試合終了の笛にPR藤野は天を仰いだ
photo by RJP Kenji Demura

ビート・ウェールズは果たせなかったが、残り2試合で成長した姿を見せて残留を勝ち取りたい

ビート・ウェールズは果たせなかったが、残り2試合で成長した姿を見せて残留を勝ち取りたい
photo by RJP Kenji Demura