4年間のハードワークを結集させ
最強23人が世界を驚かせる戦いへ

英国時間19日(日本時間20日深夜)、イングランド南部ブライトンでラグビーワールドカップ(RWC)2015プールB、南アフリカ対日本戦が行われる。
常々、「(RWCでは)初戦の南アフリカ戦が一番大事」と言い続けてきたエディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる日本代表にとっては「4年間のハードワーク」の真価を世界に向けて発信する大舞台となる。

 

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FLリーチ主将を筆頭にベストメンバーで歴史を変える戦いに臨む日本代表。ジョージア戦で自信を深めたスクラムも鍵に
photo by Kenji Demura

「4年間、“明後日”のためにやってきた」
日本代表にとって史上初となる対南アフリカ戦を2日後に控えた英国時間の17日午後。
戦いの場であるブライトンで記者会見に臨んだ日本代表FLリーチ マイケルキャプテンは落ち着いた表情でそう語った。

まさしく、歴史を変える戦いがまもなく始まろうとしているーー。

「南アフリカはワールドカップ史上、最も勝率の高いチーム。とてつもなくフィジカルで経験値が豊富。一方、我々はワールドカップの勝率が悪く、一番小さいチーム。それでも日本代表としては最も経験値の高いチーム。
素晴らしい機会になる」
そんなふうに、RWC2015プールB初戦の意義を語るジョーンズHCは当然ながら「ベストの23人」で過去2回RWCを制している強豪に真剣勝負を挑むことを宣言する。

「セットピースを中心に据えた戦いをする。まずはここでしっかり戦わないといけない」
間違いなく世界有数のスクラム、ラインアウトを誇るスプリングボクスに対しても、セットプレーで一歩も引かないことがポイントになるというジョーンズHC。
その屋台骨を支えるFW第1列はPR三上正貴、HO堀江翔太という、ここ4試合連続同じ顔触れで先発出場を続ける1、2番コンビに、3番は畠山健介。
「最初の仕事はスクラム。それから2度目のスクラムに臨む。すべてを出し切って、次の選手に替わることになる」
そんなふうに、南アフリカ戦におけるフロントローの仕事に関してジョーンズHCが語るとおり、8月以降、畠山と先発と途中出場を入れ替えながら日本代表のスクラムを支えてきたリザーブPR山下裕史も含めて、総力戦で平均キャップが68のスプリングボクスFW第1列と対峙していくことになる。

LO陣は共に3度目のRWCとなるトンプソン ルーク—大野均のベテランコンビ。
南アフリカ戦が自身にとって95試合目のテストマッチとなる大野は「過去2大会は開幕スターティングメンバーで出られなかった。そういう意味でも、しっかりプレーしたい。07年はワラビーズ、前回フランス。初戦で当たるチームにフォーカスしないで準備したようなところもあったが、今回はずっと南アに特化してきた。(後に大会ベスト8入りする強豪を追いつめた07年の)フィジー戦の前に近い」と、自身の抱負とチームの雰囲気を語る。

FW第3列はリーチキャプテン、マイケル・ブロードハーストのFL陣にNO8ツイ ヘンドリックという前に出る能力に長ける顔触れ。
リーチキャプテンが「キャプテンらしいプレーをしていきたい。ボール持って前に出て、ディフェンスでも前に出る」と、チームを鼓舞するようなプレーでチームを引っ張っていくことを宣言すれば、ブロードハーストは「南アフリカの7番は(ビレム・アルバーツ)は体重120キロのビッグマン。自分がステップアップしているのを証明するはいい機会」と、巨漢スプリングボクとの直接対決に闘志を燃やす。

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常に前に出続けるプレーでチームを引っ張ることを宣言するFLリーチ主将
photo by Kenji Demura

「自分たちで歴史を変えたいというのが一人ひとりから」(FB五郎丸副将)

特別な試合でゲームメイクを担当するハーフ団はSH田中史朗—SO小野晃征のコンビ。
「オーガナイザーとして上」と、ジョーンズHCは指令塔に小野を指名した理由を説明する。

CTB陣はすっかり日本代表のミッドフィールドの顔となった感のあるクレイグ・ウィング—マレ・サウのペアが先発。

WTBは松島幸太朗と山田章仁という顔触れになるが、山田は「(試合の)ポイントはウイング。(対面に入る南アフリカWTBブライアン)ハバナさんサイドでしっかり勝っていきたい。大きな舞台は好き。そういうところでしっかりパフォーマンス出せるという自信もある。しっかりプレーしていきたい」と大舞台に強い特徴を出していくことを宣言。
自分の生まれ故郷の代表チームとRWC初戦で対戦する栄誉を得ることになった松島に関しては、ジョーンズHCは「ベストプレーヤー」としてのWTB起用であることを強調する。

いつも通りに、チーム最後列を締めるのはFB五郎丸歩。
すでに53キャップを重ねてきた副将は、「僕自身が一番緊張している。平常心で臨むのは無理。頭がまっ白になるんじゃないか」と、初のRWC前に尋常ではない緊張感が襲っていることを隠さないが、その一方で「自分たちで歴史を変えたいというのがひとりひとりから出てきている」と、決戦を前にしたチームメイトの昂りを代弁する。

「世界からリスペクトを勝ちとる。真剣にラグビーをしている国という評価を受けたい」RWCこそ、世界を驚かす絶好の機会だという認識を示すジョーンズHCは南アフリカに対してやるべきことを「フィジカルで対抗する。ボール取ったらボールを動かす。相手に与えたボールを奪い返すことも重要になる」と、シンプルに訴える。

相手は、総キャップ数880という史上最多キャップ数軍団である最強スプリングボクス。NO8スカルク・バーガー、リザーブベンチにSHフーリー・デュプレアという日本を知り尽くしているメンバーもいる。

日本から約1万㎞離れた南イングランドきってのリゾート地で、最強軍団相手に歴史を変える戦いを迎える準備は整った。

text by Kenij Demura

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強力な南アフリカのスクラムに対して日本は低さと8人のまとまりで勝負する
photo by Kenji Demura
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オーガナイズ能力に期待がかかるSO小野(中央手前)。NO8ツイ(左)、WTB松島(中央奥)の突破力も武器になる
photo by Kenji Demura
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得点チャンスにはFB五郎丸の正確なキックで得点を重ね、食らいついていきたい日本

photo by Kenji Demura