実質U20チームが自分たちのラグビーに手応え
強豪サモアAに後半はスコアで上回る健闘ぶり

17日、フィジーのスバで「ワールドラグビーパシフィックチャレンジ(WRPC)2016」第3戦が行われ、サモアAと対戦したジュニア・ジャパンは後半の3トライで追い上げたものの、前半の失点が響いて22-42で敗れた。

ジュニア・ジャパンとしてWRPC初勝利を挙げた初戦のトンガA戦(26-8)、優勝候補筆頭にFWが健闘を見せたものの大敗を喫した第2戦のフィジー・ウォリアーズ戦(14-44)を経て迎えた、プール最終戦の対サモアA戦。
日本は2戦目まで主将としてチームを牽引したFL金正奎、CTB石橋拓也、CTB/FB中村亮土といったトップリーグでも活躍するオーバーエイジ枠組を先発から外し、純然たるU20チームとしてサモア第2代表チームに臨んだ。

「風下、セットプレーが不安定というのがあったが、洗礼を前半に受けた」
6月に控える『ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2016』を見据え、あえて南太平洋の大男たちとの戦いに10代の若者たちだけのチームを送り出した中竹竜二ヘッドコーチがそう振り返ったとおり、完全なるU20チームであるジュニア・ジャパンは立ち上がり落ち着きのないプレーを繰り返してしまう。

現地入りしてから熱中症になる選手も出るなどのタフなコンディションに加え、強風をまともに受ける風下となった前半。
それでも、ジュニア・ジャパンが試合の流れをつかむチャンスは間違いなくあったが、国内合宿でこだわってきたはずのプレーの精度を高められずに流れを失ってしまう。
「日本がU20で世界ベスト8に入るためには、ちゃんとキックを使って、きちんと敵陣に入り、チャンスをものにするというラグビーをしていく必要がある」
中竹HCが掲げるベーシックなU20としての戦い方を実践に移すかたちで前半早々につかんだ敵陣深くでのマイボールスクラム、そして同ラインアウト。
「(スクラムは)自分たちの間合い、準備ができずに相手に合わせてしまった」(FL古川聖人ゲームキャプテン)
「(ラインアウトは)自分たちが焦って、しっかり間隔を開けなかったり、細かいミスが目立った。もっと落ち着いていれば、スローのミスなどもなかった」(LO藤田達成)
立ち上がりに訪れたセットプレーのチャンスでことごとくマイボールを奪われチャンスを失ったことで試合の流れは一気にサモアペースになってしまう。
フィジカルなサモアのアタックに対して、日本が組織で守れている限り大きな破綻はなかったものの、想定外のことが起きた途端に反応が遅れたり、パニックになったりして一気にトライまで持っていかれるパターンで、前半だけで3トライを失った。
「ファーストタックルの出足や強度。ファーストが決まらないのでダブルも決まらない。いままでできていたことができなくなって悪循環に陥って、受けてしまった」(古川ゲームキャプテン)
純然たるU20チームとしては、このサモアA戦が初めての世界との戦い。平常心で臨めという方が無理だっただろう。
現地に入ってからボールグリップの練習もしたが、タックルに来たサモアの選手に腕力でボールを奪われてそのままトライになったケースもあった。
「ちょっと意識しただけじゃ身につかない。ちゃんとものにしてもらいたい」(中竹HC)

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純然たるU20メンバーでサモアAと対戦。後半は22-16で上回るなど手応えの多い試合となった
photo by Kenji Demura

「ハードワーク、トリプルアクション。
世界に通用する」(古川ゲーム主将)

まさしく洗礼を受けたかっこうとなった前半だったが、後半はジュニア・ジャパンが自分たちのペースで戦う時間帯が多くなる。
「前半とは違うチームになろう。新しいチームとして、後半という新しいゲームに臨もうとマインドが切り替わって、うまく入れた」(古川ゲームキャプテン)
後半5分にサモアAにこの日4本目となるトライを許したものの、同15分に敵陣深くでのラインアウトをしっかりキープしてモールを押し込み、その流れのままNO8井上遼がサモアAゴールに走りこんで初トライ。
同20分にもCTB永富晨太郎のブレイクからチャンスをつかんだ後、相手ゴール前のPKチャンスから再びNO8井上が飛び込んで連続トライを奪う。

25分にサモアが1トライを加えたが、日本も36分に自陣から「スピードでは負けたとは感じなかった」というWTB竹山晃暉が思い切った走りで大きくゲインしてチャンスをつくり、FW陣も積極的に前に出て、最後はFL申賢志がサモアゴールを陥れた(判定はペナルティトライ)。
「後半は普通に戦えた」と中竹HCも合格点を与えたハーフタイム後の40分間では、グレードが上のサモアAに対して22-16とスコアで上回る健闘ぶりを見せた、実質U20チームのジュニア・ジャパン。
「ハードワークしてトリプルアクションという自分たちのラグビーは世界に通用する」(古川ゲームキャプテン)
前半の失点が響いて最終スコア22-42で敗れたものの、若い選手一人ひとりにとって収穫の多い試合となったのは確か。

プール戦を1勝2敗で終了したジュニア・ジャパンは大会最終日の21日、3位決定戦でトンガAと再戦する。

text by Kenji Demura

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前半パニックになる場面もあったが、ダブルタックルが決まればサモアの突進を止められた
photo by Kenji Demura

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15分のNO8井上のトライなど後半は3トライを奪い、アタックも通用する手応えをつかんだ
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後半3本目のトライにつながる快走を見せるWTB竹山。タフな環境の中、1人ひとりが成長を感じさせた
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最終戦はトンガAとの再戦に。サモアA戦後半のラグビーを最初から出すのが課題となる
photo by Kenji Demura