フィジカルなトンガに競り負け、4位で大会終了

U20組、オーバーエイジ組双方に大きな収穫あり

 

21日、フィジーのスバでワールドラグビーパシフィック・チャレンジ(WRPC)最終戦が行われ、3位決定戦でトンガAと対戦したジュニア・ジャパンは30—44で敗れ、4位で大会を終えた。

 

3戦目のサモアA戦では先発メンバーを10 代の選手のみで構成するなど、 実質的にはU20チームとしてサモア第2代表に臨んだジュニア・ジャパン。

最終戦では再び、FL金正奎主将をはじめとするオーバーエイジ枠選手6人を先発起用したフルメンバーでトンガAに対峙した。

 

いきなりチャンスをつかんだのはジュニア・ジャパン。

「スタートよくしようと準備してきた。そこはうまくいった」(FL金主将)

 

試合開始のキックオフから敵陣深く攻め込み、フィジカルなトンガAに対して、真っ向勝負でトライを取りに行く。

「正攻法で行こうと決めていた」(遠藤哲FWコーチ)というFW陣がモールを押し込み、ラックサイドを攻め続けた。

トンガAは大会初戦で26—8で快勝していた相手だったが、「今回のチームは本物のトンガA。ブレイクダウンの激しさといい、チェイスの本気さといい、強かった」(中竹竜二ヘッドコーチ)と、明らかに初戦とは違うレベルの相手としてジュニア・ジャパンの前に立ちはだかり、トライラインを死守。

「いいかたちでモールを組めば絶対に取れるという話をしていたが、まとまりの部分があまりよくなくて、トンガの選手に割られてしまって、崩された。相手のペナルティで繰り返しチャレンジしたけど、我慢しきれずにこちらが反則して戻されての繰り返しになってしまった」(HO橋本大吾)

 

勢いよく敵陣に攻め込んだだけに、何とか先行したかったジュニア・ジャパンだったが、トンガDFを崩しきれず。逆に3分に敵陣からトンガにモールを組まれた後、そのまま縦に突破されて先制トライを許してしまう。

「プランとしては相手陣でFWで取りきるというところにこだわっていた。取りきれなかった時にどうするかまでは、準備できていなかった」(SO中村亮土)

 

結果的には、この立ち上がりの攻防が勝負を決めたと言っても良かった。

最終的なトライ数はトンガが5本に対して、日本は4本。

「今年のチームはキックとチェイスがすごくいい」と中竹HCが評価する通りに、後半3分には、キック&チェイスで前に出て、激しい他タックルからターンオーバー。一気に外側を攻めてトライを奪うなど、意図した通りの戦い方を実践できた場面もあり、追い上げたが届かなかった。

後半3分、WTB安田の3本目のトライにつながるビツグタックルを決めるFL金主将

後半3分、WTB安田の3本目のトライにつながるビッグタックルを決めるFL金主将
photo by Kenji Demura

 

「タックルは前より改善したが、前に出られたら一気にオフロードとハンドオフで持っていかれる」(同HC)

ディフェンス面では、フィジカルな相手に対して低いタックルで対抗したが、「受け出すと、止めようがない。80分間、フル代表がやってるような前に出るラグビーをどんどん勉強していかないといけない」(FL金主将)と、勢いに乗った相手を止めるまでには至らず。

試合開始直後にトンガが日本のアタックを粘りのディフェンスで止め切ったのに対し、日本はトンガがいったん前に出始めると止められずに、あっという間にインゴールを明け渡した。

 

「日本では経験できない大きく速い相手との試合。低いプレーの大切さ学んだ」(金主将)

「前半のポゼッションは日本が11分でトンガが4分。倍以上ウチが持っていたのに一発で取られた。取られ方がよくない。みんな、いいイメージは持っていたと思うが、プレッシャーの中で全く自分たちのプレーができなくなる時間帯がある。サインプレー、セットプレーにしろ。これが国際試合のプレッシャーなんだというのを学んでくれたらいい」(中竹HC)

 

U20メンバーを中心に、ジュニア・ジャパンの選手たちの多くは、今回のWRPCで初めて世界を知ったと言っていい選手たち。

ワールドラグビーU20チャンピオンシップ、あるいはARCでの日本代表入りに向けて、世界での戦いを始めたばかりと言ってもいい。

ジュニア・ジャパンとして初となるWRPCでの勝利も記録。1人ひとりが貴重な経験を積んだ
ジュニア・ジャパンとして初となるWRPCでの勝利も記録。1人ひとりが貴重な経験を積んだ
photo by Kenji Demura

 

「とてもいい経験ができた。まず、プレーとしては相手がW杯メンバーとか、フィジカルの強い選手たちなので、フィジカルチャレンジして、いい舞台でやらせてもらった。

そして、リーダーとしてどうチームを持っていくかという面でもいい経験になった」

すでに日本代表キャップホルダーでもある中村も、そんなふうにジュニア・ジャパンの一員として、U20メンバーと共にフィジカルなアイランダーたちと戦い通した意義を口にする。

日本代表キャップを持つSO CTB FB中村、U20チームを率いたFL古川。それぞれが成長を実感する場となった

日本代表キャップを持つSO/CTB/FB中村、U20チームを率いたFL古川。それぞれが成長を実感する場となった
photo by Kenji Demura

 

一方、U20組も、この日3トライを奪ったWTB安田卓平が「フィジカル面では相手は強かった。でも、ステップでズラせれば、しっかり前に出られるというのがわかったし、通用する部分はあった」と語り、SO中村、CTB石橋拓也というトップリーグ組に挟まれながらも遜色ないどころか、攻守に前に出るプレーぶりでは際立つ活躍を見せたCTB前田土芽は「良かったのはオフェンス、ディフェンスともに体を張って、一番前に出て体を張るというプレー。継続してできた」と、胸を張るなど、多くの選手たちがそれぞれの収穫を手にしたことは間違いないだろう。

サモアA戦で途中出場からの思い切ったプレーが評価を得て先発を勝ち取ったWTB安田は3トライを奪った

サモアA戦で途中出場からの思い切ったプレーが評価を得て先発を勝ち取ったWTB安田は3トライを奪った
photo by Kenji Demura

 

攻守に前に出るプレーが光ったCTB前田。WRPCの厳しい戦いを経て大きく成長したひとりだ

攻守に前に出るプレーが光ったCTB前田。WRPCの厳しい戦いを経て大きく成長したひとりだ
photo by Kenji Demura

 

「組織がひとつになる大切さ、小さい分、いかに前に出て止めるか。低くプレーし続けることの大切さを学んだ。大きくて速いチームと試合。日本では経験できない。ジャパンとして、いかに低くプレーできるかにこだわっていかないといけない」

(FL金主将)

南太平洋の厳しい戦いの中でそれぞれが体感した、ジャパンとしての世界での戦い方は、必ず次のステージで生かされるはずだ。

 

 

text by Kenji Demura