■ジュニア・ジャパン PRC第1戦 ブリスベンアカデミー戦 試合結果
■3月12日(火) 18:00キックオフ (日本時間:12日(火) 17:00キックオフ)
■ジュニア・ジャパン 26 - 76 ブリスベンアカデミー
日本らしいアタックで4トライの収穫
50点差の大敗も攻める姿勢は貫いた

現在IRB世界ランキング第3位。ラグビーワールドカップでも過去2度の世界制覇を果たすなど、ニュージーランド、南アフリカと並んで世界の楕円球界をリードする豪州。
将来の日本代表を担うことが期待されるジュニア・ジャパンがPRC初戦で対戦したのは、そんなラグビー大国を引っ張るエリート養成機関であるブリスベンアカデミー。
ワラビーズに登り詰めるための英才教育を受ける10代後半から20代前半の選手ばかりで固められ、スーパーラグビー経験者も含まれていた。


チームの精神的支柱である佐々木はNO8に入り、ボールキープに留意しながらのプレーとなった
photo by Kenji Demura (RJP)

FL村田毅主将、CTB林泰基副将、そして日本代表キャップ13を誇るNO8佐々木隆道といったシニアメンバーを除けば、ほとんどが今回のPRCが実質的な世界への初チャレンジとも言えたジュニア・ジャパンに対して、将来のワラビーズ候補たちはいきなり強烈な先制パンチを食らわせた。
開始3分。日本陣10m付近のラインアウトからブリスベンCTBコンビがジュニア・ジャパンDFを突き破って先制トライ。
いきなりフィジカルの差を見せつけられるような立ち上がりとなったが、「覚悟を決めて80分間アタックし続ける」(N08佐々木)ことを意志確認していたジュニア・ジャパンも、強烈な先制パンチに意気消沈することなく、すぐにカウンターを返す。
5分。自陣10m付近で相手がノックオンしたボールをFL村田主将が確保。
「自分の勝負したいところでは勝負できた」というSH小川高廣がラックからショートサイドに持ち出して、絶妙のタイミングでWTB中づる(雨冠に隹・鳥の順)隆彰へパスをつなぎ、最後はWTBがスピードで相手DFを翻弄する、理想的とも言えるかたちで記念すべきPRC初トライを奪ってみせた。
このトライでジュニア・ジャパンの攻撃ポテンシャルが危険なものであることを察知したという面もあったのだろう。
この後はフィジカル面で上回るブリスベンアカデミーがボールキープし続ける展開となったが、12分にゴール前のラインアウトからモールを押し込んでトライを奪った後は2本続けて確実にPGで加点。
地元で負けられないブリスベンアカデミーは慎重に試合を進めていく堅実なスタイルでリードを広げた。

なかなかボールキープがままならないジュニア・ジャパンは、35分に再び相手のノックオンからすかさずカウンターアタック。
1次攻撃でいきなりSO山沢拓也が相手DFのギャップを突いてラインブレーク。約50mを走り切って、ジュニア・ジャパンとして2本目のトライを記録した。

攻撃面ではアタックテンポを作り出したSH小川の貢献度も光っていた
photo by Kenji Demura (RJP)
後半はセットも安定し、攻撃時間も増えた
高校生ながら大事な初戦でジュニアJの指令塔を務めたSO山沢。2トライを挙げる活躍ぶりを見せた
photo by Kenji Demura (RJP)

フィジカル面での差がそのままスコアに反映されるかたちで、前半12 - 45と大きくリードを許したジュニア・ジャパンだったが、後半は明らかにボールキープしてのアタックの時間が多くなる。
再開直後の3分にまたもブリスベンアカデミーが誇る大型CTB陣の個人技でトライを奪われたものの、日本ペースで試合は推移した。
8分にしっかりしたアタックシェイプで確実にゲインを切って敵陣22mまで攻め込んだ後、再びSO山沢が相手DFの穴を見つけて、ブリスベンインゴールに走り込んだ。
「みんながいいテンポでチャンスをつくってくれたおかげ。たまたまいい感じで自分のところにボールが来ただけ」と、いきなり2トライの鮮烈な世界デビューにも18歳の指令塔は冷静にチームメイトのおかげであることを強調。
13分には敵陣深くで得たPKから積極的に攻めて、LO三上匠が飛び込み、4トライ目を記録した。
前半40分間を戦って、ジュニア・ジャパンの若い選手たちが相手のフィジカルなプレーに慣れてきたという面もあっただろう。
加えて、日本が前半からどんな状況からでも攻める姿勢を徹底したことで、ブリスベンサイドに疲労がたまり、後半は運動量が明らかに落ちたのも確かだった。
「前半からプレーした選手がしっかり頑張ってくれたおかげで、自分が入った時には、相手は随分疲れていた」(後半6分に途中出場したHO坂手淳史)
前半は安定感を欠く場面もあったスクラムも後半になると、アタックの起点として機能するようになったが、攻め込みながらのミスやブレイクダウンでプレッシャーを受けてスムーズな球出しができなかった点なども響いて、結局ジュニア・ジャパンのトライは4本止まり。
逆に、FL村田主将が「自分たちのミスで失点することが多かった」と悔やんだとおりに、やらなくていいトライを与えるかたちで、最終的には点差を50点にまで広げられて、ジュニア・ジャパンのPRC第1戦は終了した。

80分間、体を張り続けたFL村田毅主将。ミスからの失点の多さを悔やんでいた
photo by Kenji Demura (RJP)

3月4日に集合してから1週間。
本格的な世界デビューとなったブリスベンアカデミー戦で、最も大事にされていたのは「『世界一のアタッキングラグビー』を目指しているジャパンの次を狙う存在として、強い相手に覚悟を決めてチャレンジしていくこと」(遠藤ヘッドコーチ)だった。

自分たちのかたちで4トライを重ねたことからもわかるとおり、「みんなのアタックしようという意志は出せた」(CTB林副将)のは間違いないところ。
それは、敵将のブリスベンアカデミー・ポール・カロッザ監督が「常にどこからでも攻めようという日本チームの意識の高さは我々も学ばなければならない」と、日本の攻撃姿勢を高く評価していたことからも明らかだった。

「セットからのアタックの精度を上げていくことやブレイクダウンでプレッシャーを受けても高速ラグビーを続けられるスキルやワークレートの高さをものにすることなど」
遠藤ヘッドコーチは、18日に控えるPRC第2戦レッズA戦に向けて、短期間での修正点に関してそんなふうに語った。

当然、アタックでのさらなるジャパンウェイの追求が第一。まずは、徹底的に攻撃面での進歩を意識した練習をチームとして続けていくことでDF面も同時に鍛える──そんなスタイルで5日間を有効に過ごし、やはりスーパーラグビー組参加も予想される強敵レッズA戦に臨むことになる。

text by Kenji Demura

後半、途中出場したWTB藤田が力強い走りをで大きくゲインする場面も
photo by Kenji Demura (RJP)
試合後、「アタックする意志は貫けた」と手応えを強調したCTB林副将
photo by Kenji Demura (RJP)