本物の世界トップの強豪に対する敗戦も
RWCベスト8に向けた成長に手応え
15日、東京・秩父宮ラグビー場でリポビタンD チャレンジカップ 2015初戦の日本代表—世界選抜戦が行われ、日本代表は前半13分のWTBカーン・ヘスケスのトライとFB五郎丸歩のゴールでいったんは7—6と逆転したものの、同20分のWTBタンゲレ・ナイヤラボロのトライで世界選抜に再びリードを許した後は、計5トライを重ねられるなどして、20—45で敗れた。
「かなり、いいテストでした。世界のトップ選手の恐ろしさが、実際に肌で感じてみて、はっきりとわかった」
先発メンバー15人中14人をニュージーランド、南アフリカ、豪州のトライ・ネーションズ組で固めた世界選抜との厳しい戦いを終えた後、FLリーチ マイケルキャプテンは正直にそう語ってくれた。
「ワールドカップの優勝候補になれるほど強いチーム」
世界選抜のメンバーが発表された時点でエディー・ジョーンズヘッドコーチはそんな感想を述べていたが、まさしく本当の世界最高峰の強さをまざまざと見せつけられることになった。
「PNC(パシフィック・ネーションズカップ)ではディフェンスの規律の部分が課題となったが、それがまた出た。PNCで問題だったブレイクダウンもまた問題になった」
試合後の記者会見で同HCも認めていたとおり、1勝3敗の成績に終わったPNCで浮上した「ブレイクダウンとディフェンスの規律」という課題がまだ完全には克服されていないことが、世界選抜に5トライを奪われた最大の要因になったことは間違いないだろう。
ただし、「正しい方向に前進している」感触は指導陣も選手たちも掴んでいる。
実際、25点差をつけられての敗戦とはいえ、課題をクリアした日本が試合の主導権を握るシーンも確かにあった。
象徴的なのは前半13分のWTBヘスケスのトライシーン。
自陣に持ち込まれたボールをしっかりディフェンスで止めてターンオーバーすると、HO堀江翔太が「後ろが空いたのでナチュラルな判断だった」というチップキックを蹴って前進。反応したWTB福岡堅樹がスピードに乗って前に出てボールを拾った世界選抜SHアンドリュー・エリスを潰して再びターンオーバー。
自らボールを奪った福岡が前に出た後、右展開して、最後は逆サイドのWTBヘスケスが右隅に飛び込んだ。
「チェイスの部分でしっかりマイボールにできてトライにつなげられたのは収穫」と福岡。
他のシーンでは対面の193センチ、123キロの巨漢WTBナイヤラボロにタックルを外される場面があったとはいえ、「堅樹(福岡)が成長している部分もしっかり見られた」と、ジョーンズHCはRWCへのセレクションも兼ねる世界選抜戦での福岡のパフォーマンスに高い評価を与えた。
「ウルグアイ戦でもさらなる改善を」(ジョーンズHC)
「スクラムはソリッド、モールは素晴らしかった」と同HCが振り返ったように、後半26分にモールでペナルティトライを奪うなど、FWによる組織的なパワープレーは世界選抜に対しても通用した。
「PNCを通して良くなかった」(同HC)というBK陣に対しても、この日高い評価を与えた。
前述のWTB福岡以外にも、「フミ(SH田中史朗)とハル(SO立川理道)も成長している。マレ(CTBサウ)は久しぶりのプレーだったが、ボール落としたりしたが、いいプレーを見せた。ウィング(クレイグ=CTB)が復帰して、違いを見せつけた」。
確かに、本人も「何度かミスはあったが、アタックでもディフェンスでもいいプレーができた」と昨秋の欧州遠征以来の日本代表でのプレーに手応えを感じていたサウがインサイドCTBに入ることで、日本のラインブレイク力が一気に高まったことは間違いないだろう。相変わらずのハードタックラーぶりも印象的だった。
そして、「ここ4、5年でいまが一番いい状態」という、途中出場したCTBウィングの攻守におけるワンランク上のプレーぶりも際立っていた。
「勝てるチャンスはあった。結果は残念だが、ワールドカップに向けての準備という意味では、正しい方向に進んでいる。(ブレイクダウンとディフェンスの規律の)2点の修正が必要。この4週間で修正できるのか? できる。ウルグアイ戦でもさらなる改善が見られたらいい」
RWC優勝候補に匹敵する強豪に対する敗戦にも、逆に自信深めた様子でそう語ったジョーンズHC。
22日の福岡、そして29日の東京でのウルグアイ戦ではさらなる成長を披露して、国内のファンにRWCベスト8への道程をしっかり認識させるパフォーマンスを期待したい。
text &photo by Kenji Demura