■ジュニア・ジャパン PRC第6戦 ハリケーンズデベロップメント戦 試合結果
■4月8日(日) 14:00キックオフ (日本時間:8日(日) 11:00キックオフ)
■ジュニア・ジャパン 43 - 73 ハリケーンズデベロップメント
計7トライを奪ったものの勝利には届かず。ジュニア・ジャパンPRC初勝利は来年以降にお預け
photo by Kenji Demura (RJP)
アタッキングラグビー貫き7トライの猛攻も
ツアー最終戦でのPRC初勝利はならず

7日、IRBパシフィックラグビ―カップ(PRC)参戦中のジュニア・ジャパンがニュージーランドのレビンでハリケーンズデベロップメントと対戦し、43-73で敗れた。
この一戦でジュニア・ジャパンはPRCでの全日程を終了。スーパーラグビー予備軍と6戦して6敗と結果は残せなかったものの、南半球のラグビー強国に確かな成長の軌跡を残して、帰国の途につくことになった。

「まず楽しむことを心がけた」というFB藤田は思い切りいい走りでチャンスをつくった
photo by Kenji Demura (RJP)

NZ入りしてから、PRC第4戦のブルーズデベロップメント戦では、後半は14-17と健闘。続く第5戦のハイランダーズデベロップメント戦では、逆に前半20分間は互角以上の戦いぶりを見せた。
「この20分をいかに30分、40分、50分にしていけるか」
ハイランダーズD戦後に遠藤哲ヘッドコーチが語っていたとおり、スーパーラグビーレベルの強豪相手にも、いかに自分たちのペースでアタックしていく時間帯を伸ばしていくか。
そして、「攻めている時間に自分たちがどれだけ我慢して攻め切るか。その時間帯に取り切れれば、疲労度も全然違う」(中瀬真広コーチ)と、チャンスを確実にトライに結びつけていくかが、ジュニア・ジャパンのPRC最終戦のテーマだった。
その点に関しては十分合格点が与えられる80分間だった。
結論から言うなら、それが、前日に行われた対ワラタス戦にハリケーンズの一員として出場していたSHクリス・スマイリーも含む強力チーム、ハリケーズデベロップ戦でのジュニア・ジャパンということになる。

開始4分。ハーフウェイ付近で相手のキックを処理したFB藤田慶和がカウンターアタックを仕掛け、WTB中づる(雨冠に隹・鳥の順)隆彰が思い切って勝負するが、相手DFに捕まりターンオーバー。そのままラックサイドを割られるかたちで、前述の本物のスーパーラグビープレーヤーであるSHスマイリーに先制トライを許す。
続く7分にも、やはりスーパーラグビー出場経験者であるSOジェイムス・マーシャルにノーホイッスルトライを決められ、序盤で早くも12点のビハインドを背負うことになったジュニア・ジャパン。
それでも、「ここまで戦ってきて、世界一のアタッキングラグビーを目指すという自分たちのスタイルを相手も嫌がっているというのを感じていた」と、FL村田毅主将が語ったとおり、あくまでも自分たちの攻撃スタイルを貫くかたちで、試合の流れを引き戻す。

9分に敵陣22m付近のPKのから素早く仕掛けて、SH小川高廣→FB藤田→WTB中づる(雨冠に隹・鳥の順)とつないで、初トライ。
15分にも、自陣15m付近のラインアウトから、ブラインドWTB福岡堅樹がSOの外側に入ってくるサインプレーで、そのまま福岡が60m以上を走り切って同点に。
「今日は両チームともアタックが素晴らしかった。DFに関しては、どこかに置いてきた感じかな」と、ハリケーンズDのクラーク・レイドロー監督が振り返ったとおり、その後もトライを取り合う展開が続くことになる。
ハーフタイムまでに両チーム共に5トライを重ねて、前半は29-31で終了。
日本のトライスコアラーは、21分に敵陣深くのラインアウトからCTB林泰基副将が相手DFを突き破った後、ラックからの速い球出しでHO坂手淳史。
28分には、キックオフからボールをキープして、最後は再びCTB林のいい判断から好パスを受け取ったCTBトニシオ・バイフ。
39分に敵陣10m付近のラインアウトからSO山沢拓也が相手のDFギャップを突いて大きくゲインした後、パスを受けた林副将。

いずれも、「最終戦に向けたプランを立てて、選手が実行してくれた」(遠藤ヘッドコーチ)というジュニア・ジャパンのアタッキングラグビーが結実した素晴らしいトライばかりだったが、試合の駆け引きという意味では、19分、25分とトライを取った後のキックオフからノーホイッスルトライを奪われるなど、守りの面での淡白さが響いたのも間違いなかった。

瞬間的な速さでハリケーンズDの選手たちを置き去りにして3トライを奪ったWTB福岡
photo by Kenji Demura (RJP)
ハットトリックのWTB福岡は
「瞬間的なスピードは通用する」

多くのジュニア・ジャパンのメンバーにとっては、今回のPRCが世界最高峰と言っていいスーパーラグビーレベルの相手と試合をするのは初の経験。
恐らくは、そんな経験のなさが影響した面もあるのだろう。
前述の得点した後のノーホイッスルトライ同様、試合の流れをつかむためには大切だった後半の入りの部分でも、ジャパンは未熟さを露呈してしまう。
4分にノットリリースザボールのペナルティから。8分には自陣でDFで粘った後のキックミスから。
試合再開直後にハリケーンズDに連続トライを奪われ点差は一気に16に広がった。
ただし、この日のジュニア・ジャパンは「日本が目指しているアタッキングラグビーを貫くことができた」という遠藤ヘッドコーチの言葉どおり、とにかく攻める姿勢を最後まで失わず、16分にはCTBバイフ、FB藤田の好走から最後はWTB福岡が50m以上を走り切って、後半初トライ。
「WTBとしては外を抜くのが一番気持ちいいし、瞬間的なスピードでは通用するのがわかった」と語る福岡は30分にも自陣から抜け出した後、自ら足にかけたボールを拾い上げて、三たびの独走トライを決めた。
福岡のハットトリックを含めて、計7トライを奪い、43得点を挙げたジュニア・ジャパンだったが、いったんボールを失うと中々止められないパターンは最後まで続き、後半もハリケーンズDに6トライを重ねられて、最終スコアは43-73。


LO姫野など若手FW陣にとっても得難い経験になったことは間違いない
photo by Kenji Demura (RJP)

「ここに向けて凄く盛り上がりを感じたし、チームになった感触もあった。最後にこの遠征で一番いい内容の試合ができただけに、このメンバーで1勝もできなかったのは悔しい」
FL村田主将がそう総括したとおり、スーパーラグビーレベルの強豪から7トライ40点以上を取る攻撃力など、間違いなく遠征の中で成長は見せたものの、まだ30点の差をつけられるというのがジュニア・ジャパンの現実的な立ち位置であることを確認するかたちで、初のPRCでの戦いを終えた。

text by Kenji Demura

「このチームで勝ちたかった」とキャプテンとして体を張り続けたFL村田主将
photo by Kenji Demura (RJP)
厳しい遠征を続けながらチームの一体感を高めたジュニア・ジャパン
photo by Kenji Demura (RJP)