東日本大震災復興支援チャリティーマッチ
日本代表 vs トップリーグXV
日本代表 vs トップリーグXV

text by Kenji Demura

あるいは、結果論ということになるのかもしれない。
それでもあえて記しておくと、15日のトップリーグXVのメンバー発表時、記者仲間とある種の不安材料に関して囁き合ったのは、紛れもない事実ではあった。
<PRとLOが足りないのでは……>
まったくもって自慢話をする意図はないが、そんな危惧は現実のものとなった。

日本代表 49-7 トップリーグXV   日本代表 49-7 トップリーグXV   日本代表 49-7 トップリーグXV   日本代表 49-7 トップリーグXV

史上初めてトップリーグ選抜チームが日本代表と対峙することになった東日本大震災復興支援チャリティーマッチ。

「いいキャラクターとスキルを持っていて、しかもそのキャラクターとスキルを試合で出すための勇気を持つ、素晴らしい選手ばかり」

エディー・ジョーンズ監督(=サントリーサンゴリアスGM兼監督)がそう自負していたトップリーグXVは、いきなりセットプレーが崩壊するかたちで、大量失点を許してしまう。

11分、トップリーグXVゴール前でのスクラム。

恐らく、セットに関しては日本代表第1列の中でも最高の組み合わせと言っていい、平島久照-青木佑輔-畠山健介の3人を中心に組まれたスクラムで相手ボールにプレッシャーをかけたジャパンがターンオーバー。FL菊谷崇主将が悠々とサイドを突破して先制トライを決めた。

以降、スクラムやラインアウトを起点にジャパンは前半だけで4トライを奪い、28-0。ハーフタイム前に勝負自体は決した。

「かつて、バーバリアンズの監督として今回と同じように短い期間のチームトレーニングだけでワラビーズ(豪州代表)と対戦したこともあるので大丈夫」

試合前日までは、そんなふうに強気な姿勢を崩さなかったエディーさんだったが、短期間でセットピースや組織DFを作り上げるのが難しかったのは事実だろう。

ただし、スコア的には引き離されたものの、WTB山田章仁(パナソニックワイルドナイツ)が相手のキックボールをあえて自陣インゴール内にとどめてカウンターにうって出たり、FB田邉淳(同)が無理な体勢からクイックスローインしたり、ジャパンに対して悔しい思いも持っている選手たちのいつも以上に積極的なプレーに観客席が沸く場面は随所にあった。

そして、この日のチャリティーマッチのために集まった6,626人の善良なラグビーファンが本当に盛り上がったのは、勝負が決した後の40分間だったかもしれない。

後半開始と同時に、FL佐々木隆道(サントリーサンゴリアス)、LO熊谷皇紀(NECグリーンロケッツ)、CTB大西将太郎(近鉄ライナーズ)といった前回のW杯メンバーでもある元日本代表選手が登場。

さらに、10分には「本当は20分間の予定だったが、ゲームのテンポを上げてもらうために早めに投入した」(ジョーンズ監督)という、NO8箕内拓郎・元日本代表主将(NTTドコモレッドハリケーンズ)、SHジョージ・グレーガン元豪州代表主将(元サントリーサンゴリアス)の大御所2人もそろい踏みでピッチへ。

そんなふうに数々の修羅場をくぐり抜けてきた強者たちがチームを奮い立たせるようなプレーを連発。

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その一方で前述した日本代表の最強第1列も後半16分までには全員が交代し、さらに26分にはトップリーグXVのPR伊東秀剛がケガで退場を余儀なくされたことで、スクラムがノーコンテストになった影響もあり、終盤はボールを動かす意志に満ちあふれたトップリーグXVが一方的に攻める展開となった。

やはり後半途中出場していたSO君島良夫(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)がテンポ良くボールを振り分け、WTBカーン・ヘスケス(福岡サニックスブルース)やこの日はFB長友泰憲(サントリーサンゴリアス)がシャープなラニンニングでジャパンのDF網を破りにかかる。一方、箕内、佐々木、FLスティーブン・ベイツ(東芝ブレイブルーパス)のFW第3列も、効果的なゲインを繰り返した。

あと一歩のところでミスが出て、なかなかトライにはつながらなかったものの、後半32分にこぼれ球を拾った長友がジャパンDFの穴をついて快走。一矢を報いるかたちとなった(最終スコアは49-7)。

「PNC、そしてW杯に向けた、いい予行演習になった」(カーワンHC)

「トップリーグXV全員が今日の試合のために気持ちをしっかりつくってきてくれたことに感謝したい」(菊谷主将)

ここまで紹介してきたとおり、今でも日本代表としてプレーしていてもおかしくないような実力を持つメンバーも多かったトップリーグXVが挑んできたガチンコ勝負をしっかり受け止め、自分たちの強味を前面に押し出すようにして快勝したジャパン。

この日の一番の目的が復興支援だったことは間違いないが、その一方で、1週間後にPNCを控えるカーワンジャパンがスイッチを入れるための舞台装置としても、実に効果的なチャリティーマッチとなった。