(公財)日本ラグビーフットボール協会が、ラグビーを通して次世代のリーダーを育成するために起ち上げた「ラグビー・エンパワメント・プロジェクト」(以下REP) 。2024年度で4期目を数えた同プロジェクトは昨年8~12月にかけて6回の研修が行われ、男子7名、女子13名の20名が修了証を受け取りました。


 最初の研修は8月7日から3日間、福岡市のJAPAN BASEで行われました。西機真・(公財)日本ラグビーフットボール協会 普及育成委員長よりラグビーが掲げる5つのコアバリュー(品位、情熱、結束、規律、尊重)の説明を受け、4期生独自の「6つ目のコアバリュー」を決めることからスタート。グループに分かれて話し合った結果、発信、感謝、挑戦、進化が候補にあがり、多数決で今年度のコアバリューは「進化」に決まりました。


 第1回研修のハイライトは、同時期にJAPAN BASEで合宿していた女子日本代表(サクラフィフティーン)のスタッフ・選手との交流です。生徒が直接インタビューする時間も設けられ、世界で活躍する選手たちの声を聞ける貴重な機会となりました。合宿に参加していた松村 美咲選手は、REPの第1期生でもあります。ラグビーが人生にどんな影響を与えてくれたか、という身近な先輩の話も大きな刺激となりました。


 第2回目からはオンラインでの研修です。8月24日は、JICA(国際協力機構)スポーツ隊員として、2017年から3年間マダガスカルで女子の7人制ラグビーを指導した中野祐貴さんが講師を務めました。同地で東京五輪出場を目指した中野さんは派遣終了後、IOCがジュネーブに設立したスポーツマネジメントを学ぶ大学院に入学。スポーツに携わる仕事でグローバルに活躍したいと挑戦を続けています。周りの仲間が3~4か国語を話せる中で勝負していかなくてはならない厳しさや、多様性の理解を深めることについて講義をしてくれました。


 2人目の講師は、小学校の校長先生で、群馬県初の女子レフリーでもある櫻井美江さん。高校時代にラグビーと出会った後、教員として働きながら結婚・出産を経て、子育てをしながらレフリーの資格を取得した櫻井さんは「人生は短い。やりたいと思った時がチャンス」と、生徒たちに力強いエールを贈ってくれました。


 9月21日の第3回は、日本ラグビーの中心で活躍している二人が講師。一人目は、昨年7月に開催されたパリ五輪で、サクラセブンズのヘッドコーチとして過去最高の9位の成績を収めた鈴木 貴士さん(現・男女7人制コーチングディレクター)。世界の頂点を目指した指導者として、チーム作りのイロハから、ラグビーで培った力を社会に生かすまでの体験談は、誰にとっても参考になるものでした。


 二人目は、男女日本代表オフィシャルパートナーである株式会社ゴールドウイン カンタベリー事業部の森岡 早紀さん。4歳からクラシックバレエに打ち込んでいた森岡さんだが、足をケガしてバレエダンサーの道を断念。その後、様々なスポーツを経て、現在の仕事に携わるまでの経験をわかりやすく語ってくれました。進路を迷った際、「好きを因数分解してみる」という森岡さんのアドバイスは、生徒たちの反応も大きかったです。


 10月19日に開催された第4回研修は、従来とは違う内容となりました。最初に、インドネシアで海外協力隊として日本文化とラグビーを普及している石本海斗さんが現地からオンラインで登場。同国のスポーツ事情や文化の講義を受けた後、インドネシアの高校生たちとREPの生徒たちがオンラインで繋がりました。インドネシアはアニメをはじめ日本の国に対する関心がとても高い国で、オンラインでの交流も参加希望者が多く、人数制限を設けるほどとなり、参加がかなわなかった人もいたそうです。REPの生徒たちは、英語でのコミュニケーションは初めてという人も多く、最初は戸惑いもありましたが、お互いの国の紹介やアニメ・食べ物の話などで友好を深めました。これまでは講義を受ける立場だったのが、オンラインを通じて実際に同年代との学生と交流することができ、「緊張したけど楽しかった」「もっと話したかった」といった感想が聞かれ、刺激を受けた回となりました。


 第5回研修は11月30日。ファミリー層をターゲットとしたキャンプ用品を展開している株式会社ロゴスコーポレーション・副社長の柴田 晋吾さんが講師を務めました。同志社大学でラグビー部だった柴田さん。現在は経営者として仕事に追われているが、ラグビーとの出会いや現在の仕事に就くまでの経緯や仕事への情熱など、人柄が伝わる親しみやすいトークに生徒たちは引き込まれた様子でした。第2部は一人ひとり、これまでのREPで学んだことや印象的だった講義を柴田さんに対してプレゼンテーションを行いました。ビジネスの第一線で活躍する柴田さんはコミュニケーションの達人。生徒たちの話に熱心に耳を傾け、アドバイスをしていただき、貴重な会話のキャッチボールとなりました。


 最後の研修は12月14~15日に埼玉県熊谷で行いました。初日は、車いすラグビー元日本代表の三阪洋行さんが講師です。高校でラグビー部に所属していたが、練習中のケガで頸椎を損傷し、車いすでの生活に。絶望の底から立ち上がり、リハビリをする中で車いすラグビーと出会った三阪さんは、アテネ五輪に最年少としてオリンピックに出場。北京大会では主力として活躍し、最後の挑戦と挑んだロンドン大会では、選ばれたもののケガで試合に出られなかったが、パリ大会で金メダルを獲得する下地を作りました。現在はアジアパラリンピック委員会・アスリート委員会委員長など様々な肩書を持ち、忙しい毎日を送っています。その半生は、生徒たちに勇気を与えてくれるものでした。


 翌日は、第3回講義に登場していただいた株式会社ゴールドウインの森岡さんが再度登壇。ジャージーを製作する過程でできる端切れを使ってサコッシュに仕立てる作業を実際に体験したり、改めて森岡さんの体験談にも耳を傾けたりと貴重な経験となりました。


 最終回のグループワークのテーマは「ラグビーの魅力発信」。初対面だった第1回から、オンラインでの研修を重ねて絆も深まり、どのグループも積極的な発言が見られました。ラストは「未来をつくる、未来のわたし」をテーマに全員が前に出てスピーチ。1年生から3年生まで、REPで学んだこと、そして自分の将来の夢を語ってくれました。

 プレーヤーでなくても、身近にラグビー好きがいなくても、日本のあちこちにいる同年代のラグビー仲間と出会えるのがREPの魅力です。月1回の講義では、世界で活躍する選手やスタッフ、ラグビーを軸に人生を築いた先輩の話から、自分の将来を描くヒントが見つかります。本プログラムの参加者は全員高校生。みな受験や授業・部活動に忙しいが、REPを通して築かれた絆は、これからも続いていきます。


●修了時アンケート

・REPで学んだこと(一部抜粋)

「ラグビーの文化や歴史、様々な職業との関わりを多く学ぶことができた。それだけでなく、知らない人と積極的に話し、行動を起こすという行動力も学べました」

「1番は英語の必要性を学ぶことができました。インドネシアの学生との交流や沢山の方からのお話を聞き、どの仕事にも大切なことなので、もっと頑張ろうと思えるきっかけになりました」

「積極性。多様な価値観を認め、何事も挑戦する事」

「自分の意見を相手に伝えることの大切さを学びました。自分の思いを伝えるのが苦手で、これまでは相手から話が振られるまで黙っていることが多かったですが、この活動を通して第6回には、グループワーク以外でも話を振る側になったことが増えた気がして、成長を感じました」「4か月間の講義を終えて、話を聞きながら大事なところをメモするなどの話を聞くことに慣れました。また、短い時間で他の人と協力しながら魅力を発信するなどもできるようになりました」


■第6回・修了式レポート

https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/news-topics/20113/
 
■第5回レポート
https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/news-topics/19990/


■第4回レポート
https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/news-topics/19894/


■第3回レポート

https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/news-topics/19621/
 
■第2回レポート
https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/news-topics/19495/
 
■第1回レポート
https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/news-topics/19484/
 
■2024年度「ラグビー・エンパワメント・プロジェクト」参加者決定のお知らせ
https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/news-topics/19395/