昨秋FW戦で完敗したジョージアに完璧なリベンジ

過去にない力強さを獲得し、最高のかたちでRWCへ

 

 

英国時間5日(日本時間6日未明)、日本代表にとってラグビーワールドカップ(RWC)2015前、最後の一戦となるジョージア代表とのテストマッチがイングランド西部のグロスターで行われ、終了3分前にモールで逆転トライを奪った日本が13—10で競り勝ち、いい勢いで2週間後に開幕を控えるRWCイングランド大会を迎えることになった。

 

 

昨年11月23日、2014年の日本代表最後の試合だったトビリシで行われたジョージア代表戦。

「FWがスクラップにされた」

試合後の記者会見でエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチがそんな衝撃的な表現を使ったとおり、日本は強力なジョージアFWにスクラムとモールで粉砕された。

トビリシでの惨劇から約9ヶ月半後。

RWC2105開幕2週間前の最後のテストマッチとして組まれた因縁のジョージアとの再戦。

日本のスクラムとモールが世界で戦えるレベルに進歩したことは試合後の記者会見で今度はジョージアのNO8マムカ・ゴルゴゼ主将が以下のように語ったことからも明らかだったと言っていいだろう。

「過去2回の対戦ではスクラムでもモールでも8割方ドミネートできた。それが今日は五分五分だった。日本におめでとうと言いたい。本当にハードワークしていた。自分たちのPRはトップ14(フランス1部リーグ)でベストの選手。それが今日はスクラムを押せなかった」

 

ジョージア首脳陣が評価したのはスクラムとモールだけではなかった。

「日本はブレイクダウンとラインディフェンスでフィジカルになっていた」(ミルトン・ヘイグ監督)

 

1日にイングランド入りして4日目。

「スクラムとモールにこだわって練習してきた」(FLリーチ マイケルキャプテン)

 

前回、FWのパワープレーで完敗した相手に自分たちの成長を見せつける意図もあったのだろう。

試合開始後の日本は敵ボールのラインアウトをターンオーバーし、モールを押し込んでみせて、ジョージアFWの土肝を抜く。

 

2分にFB五郎丸歩のPGで先制。

15分にラインアウトからフェイズを重ねられた後、DFラインの背後に蹴られたボールをジョージアWTBムラズ・ギオルガゼに押さえられて逆転を許したものの、WTBにツイ ヘンドリックを入れ、敵ボールのスクラムではツイがFLの位置に戻り、SOにリーチ主将、WTBに立川理道というポジショニングが取られたDFラインはしっかり機能。

以降、後半30分にPGを加えられるまで、ジョージアに得点を許さなかった。

 

もっとも、日本も安定したボールデリバリーからテンポいいアタックを続けるものの、敵陣深くまで入ってのミスや状況判断の悪さから、「ワールドカップではしっかりしたDFがないといい成績は残せないので、一番のポイントとして強化してきた」(ヘイグ監督)というジョージアDFの粘りもあって、あと一歩のところでトライラインを超えられないシーンが続いた。

スクラムでも対等以上に戦ってみせた日本。「FW第1列はいい仕事をした」(ジョーンズHC)

スクラムでも対等以上に戦ってみせた日本。「FW第1列はいい仕事をした」(ジョーンズHC)

9ヶ月前にFW戦で完敗したジョージアにモールトライで逆転勝ち。進化を証明した

9ヶ月前にFW戦で完敗したジョージアにモールトライで逆転勝ち。進化を証明した

「自分がトライして、最後は勝つ」と

思っていたNO8マフィが逆転トライ

 

 

トライにこそ結びつかなかったものの、後半6分に途中出場したNO8アマナキ・レレィ・マフィはファーストタッチからパワフルかつシャープな突破でゲインを続け、マフィと同時にグラウンド上に入ってきたWTB松島幸太朗も自陣で相手がノックオンしたボールに反応して足にかけ、あと一歩でトライという場面を作り出すなど、インパクトプレーヤーたちがしっかり特徴を見せながらも得点を重ねられない状況で迎えた後半30分に密集での反則でジョージアがPGを加点。

 

昨秋のジョージア戦以来の日本代表復帰となったNO8マフィ。インパクトある突破でチームを勝利に導いた

昨秋のジョージア戦以来の日本代表復帰となったNO8マフィ。インパクトある突破でチームを勝利に導いた

 

リードしているジョージアが逃げ切り態勢に入ったかに思われたが、日本も「敵陣行ったら、スコアできる。我慢していこう」(リーチキャプテン)と、自分たちのプランに集中。

 

3分後にも、日本のミスの後、ジョージアにPGチャンスを与えるが、ここは相手がミスしたことでワンチャンスでの逆転の可能性を残し、最後はFW陣の進化を証明するかたちでラインアウトからモールを一気に押し込んで「自分がトライして、最後は勝つ」と思ってプレーしていたというNO8マフィがジョージアゴールにタッチダウン。

直後のゴールをFB五郎丸が決めて、13—10。RWC前最後の一戦で昨秋のショッキングな敗戦を払拭する劇的な勝利をものにした。

 

「最後の勝負どころでFWでまとまって、集中力を保ってモールでトライを取れたということはハードワークしてきたからこそできたこと。ワールドカップへいいイメージでいける」(PR畠山健介)

 

「去年の秋、FWで負けたのが、しっかりリベンジできた。ワールドカップに向けて、いい感触できている」(LO大野均)

 

「ジョージアとのタフなセットバトルだったが、今日はこちらが勝っていた。最後に勝ってW杯に入っていけることでいい流れになる。ピークを(RWC初戦の)19日に持っていける」(ジョーンズHC)

リベンジを果たした選手たちを笑顔で迎えるジョーンズHC。最高の流れでRWCへ

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因縁の相手との対戦を力で制した日本は間違いなく、過去のRWCとは違ったスタンダードで、イングランドでのタフバトルに突入する。

 

text by Kenji Demura

 

すっかり日本代表12番を自分のものにしつつあるウィング。攻守においてソリッドなプレーは相変わらず

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