新顔も合格点のプレーぶりで15トライ
チームのベースアップ印象づけPNCへ

10日、HSBCアジア五カ国対抗2013(A5N)第4節、UAE―日本戦がドバイで行われ、日本は計15トライを奪い93 - 3で圧勝した。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP Kenji Demura
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すでに前節終了時点で6年連続優勝は確定済みで、1年前に100点ゲームで大勝した相手との対戦。
2年ぶりとなる、アジアでは最も遠いドバイでのアウェー戦は、必然的にA5Nの後に控える、より厳しい戦いを見据えての試合となった。
「PNCのセレクションがかかっている。モチベーションは高く維持されるはずだ」

前日練習の時点でエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、そんなふうに「この試合でプレーするのがベストな23人をピックアップした」というメンバーの心理状態を解説。

ゲームキャプテンを務めたNO8菊谷崇バイスキャプテンはもっと直接的に「若手のメンタル面の強化がこの試合のテーマ」と語っていた。

約8000km離れたドバイに移動しながら、中5日での試合。5時間の時差に、今年は比較的涼しい気候が続いているとはいえ、日中は30℃を優に超える暑さとの戦いもある。

そんな厳しいコンディションと、前述したPNC以降のセレクションという位置づけもあり、前節の韓国戦からは先発15人中12人が入れ替わった日本は、当然のごとく立ち上がりから圧倒的に攻め続けた。

6分に相手ゴール前で得たFKからNO8菊谷ゲームキャプテンが、そのまま突破して先制。

最終的には計15トライを重ねることになる日本だが、試合後、ジョーンズが「あと5トライは取れていた」と語ったとおり、先制トライの後は攻めながらも得点に結びつかない時間帯が続いた。
「新しいタイミングで組むことを試してみたのが、立ち上がりうまくいかなかった」(菊谷ゲームキャプテン)というスクラムで立て続けに反則を取られたり、インゴールまで攻め込みながらもやや強引にフィニッシュまで持っていこうとしたためグラウンディングできないケースが相次いだ。

日本に2本目のトライが生まれたのは21分。敵陣22m付近右タッチライン際で相手のキックをキャッチしたWTB藤田慶和がそのまま前に出た後、ラックから左展開して、逆サイドのWTB今村雄太が左隅に飛び込んだ。

photo by RJP Kenji Demura
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今村が4トライ。3トライの菊谷副将は歴代3位に

初戦のフィリピン戦や、2戦目の香港戦もそうだったが、勝って当たり前のA5Nとはいえ、ブレイクダウンでしつこく絡むことで抵抗を試みる相手に対して、自分たちのテンポでアタックし続けられるようになるのには、それなりに時間がかかるという面もあったのだろう。

加えて、SH内田啓介―SO田村優のハーフ団、クレイグ・ウィング―霜村誠一のCTB陣、FBに小野澤宏時が入るバックスリーと、BKに関しては全く新しい布陣だったことも、試合の流れを完全に自分たちのものにするのに時間がかかった要因のひとつだったことも確かだ。

それでも、前述の2本目のトライ以降は、日本のアタックがしっかり結果につながるケースが多くなり、26分、33分、36分、38分、41分とトライを重ねた。
「長い間、本格的な試合をしていなかったので、最初から出場時間は30~40分くらいと考えていた」(ジョーンズHC)というウィングが前半35分に、霜村も後半5分に退いたのに対して、SH内田は後半19分までプレー。SO田村とバックスリーの3人はフル出場した。

時間の経過とともに、アタックの流れが良くなったこともあって、BジョーンズHCはBK陣のプレーにも、「今日の相手なら自分でもできる」と言いながらも「新しいコンビネーションは概ねしっかりしていた」と一応の合格点評価。

6年ぶりとなる代表復帰を果たした31歳のCTB霜村も、代表初先発の21歳のSH内田も試合後「楽しめた」と語り、ウィングに替わって途中出場して代表初キャップを獲得したCTB中村亮土は「迷うことなくプレーできたし、やれることもわかった」と、手応えを感じていた様子。

ちなみに、「入った時に意識していたのはボールキャリーで前に行くこと」という中村と、やはり後半19分に途中出場して初のテストマッチ出場を果たしたFL安井龍太は、共に初ボールタッチでそのまま自らトライを記録した。

後半は、ここまでは間違いなく日本代表のアタックのキーマンとなっているCTB立川理道がCTBに入って、ボールを外に供給できるようになったこともあって、計8トライ。

WTB今村が4トライ、そして3トライを記録したNO8菊谷ゲームキャプテンは代表でのトライ数を31に伸ばし、大畑大介氏、小野澤の名WTBに次ぐ歴代3位となる偉業達成。 

最終的には、100点ゲームにこそならなかったものの、90点差をつけて6年連続での全勝優勝に花を添えた。
「これ以上はないと言えるほど、ハードなトレーニングを積んできたが、若い選手たちがその成果を出してくれた。間違いなく昨季よりも良くなっている。フィジカルレベルも、自分たちがどういうプレーをするのかも、進歩したことは間違いない。もちろん、次のステージであるPNC(パシフィック・ネーションズカップ)はA5Nとは全く違うレベル。さらにトレーニングを重ねて、チーム力を上げていく必要がある」(ジョーンズHC)

日本代表は試合終了5時間後には、ドバイ国際空港で飛行機に乗り込むというハードスケジュールで11日に日本に到着。

そのままいったん解散した後、フロントロー陣は15日、それ以外は16日に再び集まり、25日に控えるPNC初戦のトンガ戦に向けた東京合宿に入る予定となっている。

photo by RJP Kenji Demura
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