2011年3月に予定されている、「宮崎を元気にする!復興ラグビー祭」開催に伴い、宮崎県川南町の内野宮町長が、日本ラグビーフットボール協会を表敬訪問し、その後、真下副会長・専務理事とともに、復興ラグビー祭についての記者会見を10月1日、行いました。

  日本協会を訪れた、川南町 内野宮町長と川南ラグビークラブ河野監督
日本協会を訪れた、川南町 内野宮町長と川南ラグビークラブ河野監督

宮崎県は2010年4月から口蹄疫の被害に見舞われ、終息宣言がなされたとはいえ、川南町でも多くの畜産農家の方々が今もなお、苦労をされています。
川南町では、日本ラグビー協会が、セブンズアカデミーパートナークラブとして提携している、川南ラグビークラブが活動をしています。川南ラグビークラブ所属選手も、今回の口蹄疫被害によって、練習を行えないだけではなく、生活にも甚大な影響が及ぼされています。

内野宮町長から「牛をはじめ、豚の被害も甚大なものでした。これから新しく、牛や豚が育つまでは数年かかります。これから、厳しい現実が待ち受けています」と生々しい現状の報告があり、真下副会長・専務理事はそれを受け、「ラグビー協会としてどのような手助けができるか、検討したい。日本代表の合宿地でもあり、パートナークラブが属する川南町を、ラグビーを通じて元気を与えたい」と復興ラグビー祭をはじめ、その他活動へのサポートを約束。

川南ラグビークラブの河野監督は「殺処分を目の当たりにし、牛乳すらも喉を通らない日もありました。充分な練習ができていない状況ではありますが、現在試合で、ディフェンスに対する集中力も上がり、試合中には選手間で今までにない絆を感じる場面もあります」と、苦しい状況の中、ラグビーを通じて一歩一歩前へ進む姿を伝えていただきました。

今回の復興祭のきっかけについて、奥村・日本ラグビー協会事業委員会クラブ大会部門長から「川南町では地域をあげてクラブを応援していただいている。クラブチームの仲間として何が出来るかと考えたとき、クラブチームのメンバーが宮崎に赴き、町を元気にしようと思いました。これまでのクラブチームの交流の中から、今回の復興祭は実施へと動きだしました」とクラブラグビー間での「RUGBY:FOR ALL」の精神から今回の活動の芽吹きが生まれたことが報告されました。

「宮崎を元気にする!復興ラグビー祭」は2011年3月19~21日に開催予定。その他募金活動なども随時実施されます。

東日本トップクラブリーグ所属チームの選手も一緒に
東日本トップクラブリーグ所属チームの選手も一緒に

『宮崎を元気にする! 復興ラグビー祭』2011年3月開催へ

日本ラグビー協会事業委員会クラブ大会部門

家畜の病気・口蹄疫で国内最大の被害を出した「ラグビーのまち」宮崎県川南町で2011年3月、「宮崎を元気にする! 復興ラグビー祭」が開かれることになった。地元の川南ラグビークラブ(林健太郎代表)と交流がある全国のクラブチームが復興を支援するため募金を集め、住民とラガーたちを元気づけようと宮崎へ遠征する。

宮崎県川南町の内野宮正英町長と川南クラブの河野龍司監督、日本ラグビー協会の真下昇副会長・専務理事、奥村敏明・日本協会事業委員会クラブ大会部門長らが10月1日、東京都港区の日本協会で記者会見して発表した。

川南町と川南クラブ、日本ラグビー協会事業委員会クラブ大会部門、東日本トップクラブリーグ(TCL)は「宮崎を元気にする! 復興ラグビー祭」実行委員会を組織した。3月19~21日の3連休に、川南クラブ(林健太郎代表)を含む全国8クラブが出場して川南町運動公園陸上競技場(川南町大字平田2334番1)で7人制大会や高校生の試合、地元農産物の即売会も計画している。内野宮町長が大会会長を務める。

川南町はサントリーのWTB長友泰憲選手ら過去に4人の日本代表選手を出した「ラグビーのまち」。71年設立の川南クラブは、全国クラブ大会にも出場経験がある。

東日本TCLの10クラブは「対戦経験もあり、同じクラブの仲間として他人事じゃない」(北海道バーバリアンズの国松一徳さん)と支援に立ち上がった。来年2月まで東京・秩父宮ラグビー場など各試合会場で募金を呼びかけ、浄財を町に寄付する。また、復興祭に数チームを派遣する。「募金を出せる人は、募金を」「募金を呼びかけられる人は、呼びかけを」「チームを宮崎に派遣できるチームは、参加を」と、各チームや選手がそれぞれできる範囲で「One for all, all for one」の精神で取り組む。

既に6月から募金を始めて、12万円を集めたほか、川南クラブが作った寄付金付きTシャツを100枚購入した。募金口座は、ゆうちょ銀行00120-3-338243「宮崎を元気にする復興ラグビー祭 実行委員会」。

川南町内では4月の口蹄疫発生以来、牛を1万3624頭、豚を15万3880頭、殺処分した。川南クラブの選手2人も酪農家で、我が子のように育ててきた牛の処分を強いられた。メンバー約40人には防疫作業に従事した町役場や農協の職員が多く、人通りが絶えた商店街で売り上げが激減した店主もいる。河野龍司監督は「全員が直接・間接の被害を受けた」と話す。

8月27日に終息宣言は出たが、子牛を新しく購入しても育てて再び出荷できるまで最低2年はかかる「長い戦い」が続く。牛126頭を失ったプロップ黒木俊勝(くろぎ・としかつ)選手(30歳)は「大きな落胆とぶつけ場所のない怒り、憤りを感じた。でも『もう一度酪農で勝負してやるんだ!』と気持ちを切り換えた」と振り返る。ウイング、フランカーの後藤裕介(ごとう・ゆうすけ)選手(25歳)は牛97頭を奪われた。「しばらくはラグビーをしたくない」とクラブが自粛を解いて練習を再開しても参加できなかった。2人は今、「全国からの支援に恩返しするため、自分たちが先頭に立って復興のシンボルになる」と復興祭の成功に意欲を燃やしている。

川南クラブは9月12日開幕の九州トップクラブリーグで2連勝と最高のスタートを切った。特にトップリーグ・福岡サニックスOBがそろう玄海タンガロアに勝った26日の第2戦は大きかった。河野監督は会見で「8月までほとんど練習できなかったが、チームの結束力は増した。最後の10分間はタックルばかり。ひたむきにいいタックルができた。牛や豚が助けてくれたと思う」と振り返り、「優勝して全国クラブ大会に出場し、『川南は元気になったよ』とアピールしたい」と言い切った。また募金について「知らないチーム名の振込を通帳の記帳で確認し、『One for
all, all for one』『スクラム』という言葉が頭の中を駆け巡った。ラグビーをやってきて、本当によかった」と話した。

毎試合観戦している内野宮町長は「幸先のよいスタート。選手が一生懸命で、結果が出ている」と評価。復興祭について「本当にありがたい話。全国の人にお越しいただいて、ラグビーをする者同士の親睦を図りたい」と述べた。

日本協会の真下副会長は「川南クラブは7月に、7人制強化のための『セブンズブロックアカデミー』パートナークラブに認定され、お世話になっている。口蹄疫被害に対し、ラグビー協会として何ができるかを考えた。川南クラブには今までのダメージをはねのけて、町民と県民に勇気を与えてほしい」とエールを贈った。

記者会見には、東日本TCL10チームが正ジャージ姿でそろい踏み。タマリバクラブの富野永和ヘッドコーチは「東日本TCLは今年、統一スローガンとして『One Club!』を掲げた。ラグビーを愛する、仲間を愛する、クラブラガーの想いは一つ。もっとラグビーが楽しめるように、もっとラグビーが好きになれるように。ラグビーを通して、互いに競い合い、互いに助け合う」と募金にかける各クラブの思いを代弁した。「東京闘球団」高麗の安秀哲部長も「川南の力になりたい」と力強く語った。

記者会見の様子

「宮崎を元気にする!復興ラグビー祭」がわかるQ&A

Q. 川南町は、なぜ「ラグビーのまち」なのか?
A. 隣町にある県立高鍋高は昔からラグビーが強く、全国高校大会(花園)出場は県内最多の18回です。ライバル県立高鍋農高を含めて、なぜか川南町出身者が多く、高校日本代表や日本代表(SH小西義光、CTB金谷福身、SH児玉耕樹、現役のWTB長友泰憲=サントリー)を川南町から輩出してきました。
ラグビー人口の減少で、現在は川南クラブだけになってしまいましたが、70~80年代には人口約7万人の児湯(こゆ)郡で5チーム(「高鍋クラブ」、「新富クラブ」、「川南クラブ」、「都農クラブ」、「新田原自衛隊ラグビー部」)がしのぎを削っていました。このため、宮崎県内はもとより九州内においても「ラグビーが盛んな町:川南町」と呼ばれています。
Q. なぜ復興のためにラグビー大会を開くのか
A. 川南クラブとは全国クラブ大会などを通じて交流がありましたので、口蹄疫被害は他人事ではありませんでした。そして、私たちにできることはラグビーしかありません。ラグビーを表す「One for All, All for one」という有名な言葉がありますが、まさにその精神だと思っています。
ラグビーが盛んな川南町の町民のみなさんにラグビー観戦やプレーを楽しんでほしいですし、川南クラブには被害のことをひとときでも忘れて、プレーを楽しんでほしいです。経済効果は微々たるものですが、川南クラブ以外の7チーム計70人が宿泊すれば、少しでもお金を落とせるのではと考えています。でも一番には、やはり「地元の人に元気になってほしい」というわれわれのメッセージを直接伝えたい、ということです。
Q. 川南クラブのメンバーの口蹄疫被害は?
A. 酪農家は2人です。プロップ黒木俊勝(くろぎ・としかつ)選手(30歳)は川南町在住。牛126頭の殺処分を強いられました。黒木選手は本日の記者会見に出席できませんが、代わりにコメントを用意させていただきました。

戦後、祖父母が1匹の乳牛を購入し酪農をはじめました。その後、父母や私に引き継がれる中でコツコツと牛を増やして行き、約70頭ほどが搾乳できるまでの規模に拡大していったのですが・・・。今回の口蹄疫の感染により全ての牛を失ってしまいました。当初はそのことに対して、大きな落胆やぶつけ場所のない怒り、憤りを感じましたが「いつまで悔やんでいてもしょうがない。殺処分された我が家の牛たちの為にも、もう一度酪農で勝負してやるんだ!」と気持ちを切り替えました。と同時に、趣味でやらせてもらっている川南クラブのラグビーを通じて、常に応援してくださる地域の方々をはじめ、今回の被害に対して支えてくださった全国の皆様への恩返しをさせていただく為にも、自らがその先頭に立ち「復興のシンボルになるんだ!!」と強く思っています。この度、企画しました「宮崎を元気にする!復興ラグビー祭」では、さらに元気になった川南町を、児湯郡を、宮崎県を、感じてもらえるように頑張りたいと思いますので、どうぞ皆さん会場へ足をお運びください。

ウイング、フランカーの後藤裕介(ごとう・ゆうすけ)選手(25歳)は隣町の木城町在住。牛97頭を殺処分せざるを得ませんでした。後藤選手は本日の記者会見に出席できませんが、代わりにコメントを用意させていただきました。

私は、口蹄疫被害の激震地となりました川南町の隣にあります木城町(きじょうちょう)で、両親と共に酪農を営んでおります。黒木さんと同様、いわば家族のように生活してきた牛たちが、見えない相手(口蹄疫)からの蔓延を防ぐ為に殺処分しなければならなかったことは非常に辛すぎて、当初はラグビーはしばらくはしたくない、出来ない、という気持ちでいっぱいした。実際にチームの合同練習が再開されても参加しない日々を送りました。それほどまでに辛く苦しく悲しい経験をしました。ですが、今は違います。悲しいことに変わりはありませんが、犠牲になっていた我が家の牛たちのためにも、もう一度酪農を再開したいと思っています。その準備に向けて現在、少しずつ整えております。さて、来年(2011年)3月に計画致しましたこの復興ラグビー祭では、大きな被害にあった畜産業だけにとどまらず、その他地元の美味しい特産品を沢山取り揃えた「物産直売コーナー」も設置し、大会を盛り上げたいと考えております。ですから、ラグビーチームの関係者だけでなく、そのご家族やご友人など沢山の方々に足を運んでいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

その他、クラブ員約40人のほとんどが間接的な被害を受けています。4月21日の川南町における口蹄疫発生から7月上旬まで、クラブに所属するJA職員10人、町役場職員8人は防疫作業(殺処分や埋却、消毒)に従事しました。外出の自粛で商店街に人通りがなくなり、おもちゃ屋の売り上げは7割減でした。教員たちは、児童・生徒の心のケアに気を配りました。

Q. 募金の目標金額は?
A. 多ければ多いほどよいと考えていますが、東日本トップクラブリーグが昨年2月から5月まで、日本で唯一の私立ろう学校「明晴学園」の中学部設立のための募金を集めた際は、計18回の募金活動で総額127万7,206円が集まりました。今回の最初の目標も、同額ぐらいと考えています。
Q. なぜ7人制の大会を開催?
A. クラブチームは全員が仕事をしながら、ラグビーに打ち込んでいます。正直、15人制のメンバーをリザーブ(補欠)も含めて派遣する財政的な余裕のあるチームはありません。
でも、2016年のリオ五輪から男女の7人制ラグビーが公式種目になるため、日本協会も7人制の強化を急いでいます。在野の埋もれた逸材を全国各地から発掘したいと、7月に「セブンズブロックアカデミー」パートナークラブ認定クラブを発表しました。認定された9チームのうち川南クラブをはじめ七つがクラブチームです。「クラブから五輪代表を」が、我々の合言葉です。7人制強化のためのよい大会になると思っています。
Q. 7人制大会の参加チームは?
A. 合計8チームを考えています。地元・川南クラブと、東日本トップクラブリーグから数チーム、九州の他のクラブから数チームです。タマリバクラブ(神奈川)と北海道バーバリアンズ、昨シーズンのクラブ日本一、六甲クラブ(兵庫県)にも出場を呼びかけています。
Q. 初日のオープニング・カンファランスとは?
A. 日本のクラブラグビー全体の発展のために、何をすればよいかを話し合う会議です。「セブンズ・ブロック・アカデミー」パートナークラブ認定クラブの多くが集まる会議になれば、と期待しています。
Q. 3日目の「児湯(こゆ)ラグビー祭」とは?
A. 川南町はじめ5町1村で構成する児湯郡のラグビーを愛する老若男女のためのラグビー祭として、毎年開催しています。ラグビースクールから不惑まで年齢別に試合があります。
今回の復興祭は、従来からある児湯ラグビー祭を拡大する形で開催します。そして、できることなら1回限りで終わらせず、翌年以降も開催できたらと希望していますが、そのためにはまず来年の復興祭を成功させることが必要だと考えています。
Q. 実行委員会の委員長は?
A. 大会会長は内野宮正英・川南町長です。実務を担当する実行委員会の委員長は、川南クラブと東日本トップクラブリーグが人選を調整中です。
Q. 東日本トップクラブリーグとは?
A. 強豪クラブ同士の試合数を増やして、クラブの競技力をアップするため、2004年にスタートしました。現在は1部(ディビジョン1)にタマリバクラブ(神奈川)、北海道バーバリアンズ、三鷹オールカマーズ(東京都)、駒場WMM(東京都)、ドラゴンズ龍ケ崎(茨城県)の5チーム。2部(ディビジョン2)に「東京闘球団」高麗、マンダラ東京、戸田オーバーザトップ(埼玉県)、新潟アイビス、常総クラブ(茨城県)の5チームが所属しています。
関西、九州にもそれぞれトップクラブリーグがあり、それぞれの代表を集めたトーナメント戦が来年12~1月に行われる第18回全国クラブ大会です。全国大会で優勝してクラブ日本一になると、日本選手権に出場して大学日本一と1回戦を戦います。