「HSBCアジア五カ国対抗2010」


韓国代表 13-71 日本代表

【2010年5月1日(土) at 韓国【大邱】・慶山生活体育公園ラグビー場】

韓国代表 13-71 日本代表   韓国代表 13-71 日本代表   韓国代表 13-71 日本代表   韓国代表 13-71 日本代表
ワールドカップ出場に向けた、第1戦目スタート 初キャップながら後半開始早々、流れを変えるトライを奪ってみせたWTB長友 モールで先制トライを奪ったものの、初戦ということもありFWのコミュミケーションには課題も 韓国DFのプレッシャーをはね除け突破をはかるCTB平

text by Kenji DEMURA

前半と後半でまるで違うチームを見ている錯覚に陥ってしまうような、そんな試合だった。
W杯アジア予選も兼ねるアジア5カ国対抗初戦となったアウェーでの韓国戦。
日本代表としては昨年11月のカナダ戦以来のテストマッチ。

ほとんどの選手が日本選手権決勝の行われた2月28日終了後から2ヶ月間、実戦を経験しないまま臨んだ試合でもあった。

「ゲーム勘を取り戻すのに、前半の40分間を要してしまった」
試合後、そう振り返ったのはNO8菊谷崇主将。

確かに、開始10分に敵陣深くのラインアウトをキープし、ドライビングモールからHO堀江翔太が押さえた先制トライを皮切りに3トライを挙げて19-3とリードして折り返したものの、前半のジャパンの戦いぶりはどこかチグハグさを感じさせるものだった。

「最初の試合、しかもW杯予選ということで前半、選手は少しナーバスになっていた面があったと思う。どういう戦い方をするかということを考えすぎて、アグレッシブさが足りなかった」(ジョン・カーワンHC)

立ち上がりからの何となく乗り切れない戦いぶりを象徴するかのように、前半最後のプレーでは、流れ的には完璧と思われたキックパスをWTB遠藤幸佑が韓国インゴール内でまさかのキャッチミス。

「前半はチームも自分も全然ダメだった」(LO北川俊澄)
恐らくは、グラウンド上にいた15人が同じような思いを抱いたまま前半を終了した。

前述したような試合勘のなさ。あるいは、初キャップ組や久しぶりに復帰した選手もいて、試合の中でのコミュミケーションの問題もあったかもしれない。もちろん、ホームでの日本戦という特別な状況の中、立ち上がりに全てをかけてきたような韓国の激しいプレーも、ジャパンがなかなかリズムをつかめなかった要因のひとつではあった。

ただし、産みの苦しみのような40分間を経た後のジャパンは、後半まるっきり見違えるチームとしての姿を披露することになった。

韓国代表 13-71 日本代表   韓国代表 13-71 日本代表   韓国代表 13-71 日本代表   韓国代表 13-71 日本代表
後半は自陣からでも積極的なアタックオプションを多く選択したSOウェブ 途中出場による初キャップ、初ボールタッチで代表初トライを記録したHO湯原 若いチームを体を張ったプレーで引っ張ったNO8菊谷主将 5トライを記録したWTB遠藤の快走

「ここからがスタートだと思って後半を戦っていこう」(カーワンHC)
「プレーしているチームメイトも、見ているチームメイトもみんなでエンジョイしよう」(NO8菊谷主将)

ハーフタイムでのそんな意思確認を経てピッチに戻ってきた直後の後半1分。
初キャップのWTB長友泰憲がCTBライアン・ニコラスの内側に走り込んでくるサインプレーで韓国DFを切り裂いて代表初トライ。

前半はやや消極的なプレーも見られた新顔が思い切った走りでチームに勢いをもたらすと、6分にスクラムからNO8菊谷主将、さらに10分にチップキックからLO大野均と、ベテランFW陣が連続トライで流れを決定づけた。

その後も、「前半のミスを取り返したかった」というWTB遠藤が後半だけで4トライを挙げる快走ぶりを披露するなどほぼ一方的に攻め続けて、終わってみれば81-13というアウェーでは韓国戦最多となる点差をつけて、3年連続優勝、そして7大会連続W杯出場に向けて貴重な第一歩を踏み出すかっこうとなった。

試合前から「最初の20分間が大事」と意識づけられていたにもかかわらず、前半リズムに乗り切れなかった点には課題が残ったものの、後半しっかり自分たちのペースで戦い続けられたことは大いに評価していいだろう。

「前半の40分間は日本のレベルではなかった。後半の40分間で見せられたようなプレーを80分間続けていく必要がある」(カーワンHC)

「立ち上がりに関しては修正していかないといけないが、後半、うまく切り替えられたのは成果だと考えたい」(NO8菊谷主将)

さらに、前述の流れを変えたトライを決めたWTB長友以外にも、フル出場したFLシオネ・バツベイ、さらに途中出場ながら忠実なサポートプレーからの最初のボールタッチで初トライを奪ったHO湯原祐希、やはり短い出場時間ながら持ち前の激しさでアピールしたPR藤田望と、初キャップ組がはつらつとしたプレーぶりを見せた点もポジティブにとらえていい。

「まだまだ今後修正すべき点、やらなければいけないことは多い」(カーワンコーチ)のも確かだが、流れの悪い時にもパニックにならずに、試合中に修正できた点にチームの成長が垣間みられた今季の初テストマッチだった。

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PR藤田も途中出場で初キャップを獲得 3年ぶりの代表復帰となったFB立川は先発フル出場。試合後、安堵の表情浮かべた