大学生を中心とした若手選手の育成を目的とする「JAPAN TALENT SQUADプログラム」(JTS=ジャパンタレントスコッド)。3年目を迎えた今年は、国内で4回の合宿を経て、4月には昨年同様、U23日本代表を編成してオーストラリア遠征を敢行し、4試合を行った。JTSプログラムは年間を通して実施されるが、ここでは2月から4月まで行われたJTSプログラムおよびU23日本代表の活動を振り返る。
(U23日本代表は今年もオーストラリアへ遠征し、4試合を戦った)
◇「2~3名が日本代表に上がってほしい」(ジョーンズHC)
あらためて、日本代表の指揮官であるジョーンズHCに、3年目を迎えるJTSプログラムの意義について聞くと、こう語気を強めた。
「現在、リーグワンでプレーする選手の中では、日本代表として『資格のある選手』があまり多くない。だから、JTSプログラムは日本代表の将来の選手層を厚くするための取り組みです。18~22歳の選手が十分に成長しきれていないことが、日本代表が世界の強豪と戦う上での大きな問題となっています。そのためには、体系的な育成プログラムの整備が不可欠です」
JTSプログラムは、S&C(ストレングス&コンディショニング)および栄養面で年間を通したサポートを行いつつ、大学の公式戦を除いた時期に実施される。世界的名将であるジョーンズHCや日本代表スタッフから直接指導を受け、2027年に控えるワールドカップはもちろん、その先の将来に桜のジャージーを背負い、世界の舞台で躍動する選手の育成を目的としている。
一昨年のJTSプログラムからはFB矢崎由高(早稲田大学4年)、昨年はFB竹之下仁吾(明治大学4年 ※今年もJTSに選出)が日本代表入りを果たした。2人は2月に発表された2026年の日本代表候補(55名)にも、リーグワンのトップ選手たちと並んで名を連ねている。
ジョーンズHCは「昨年はジンゴ(竹之下)がJTSプログラムから成長し、日本代表に参加しました。だから、今年のスコッドの中からも2〜3人が同じように日本代表に上がってほしい。そこが目標です」と、今年も若きタレントの成長に期待を寄せた。
◇3年目のJTSプログラム。今年は公募でも募集
6~7月にジョージアでU20世代の世界大会「ワールドラグビー ジュニアワールドチャンピオンシップ」が行われるため、今年のJTSプログラム合宿は大学3~4年生が中心となった。合宿ではジョーンズHCらの指導の下、「超速ラグビー」を掲げる日本代表さながらの練習に取り組むだけでなく、リーグワンのチームの胸を借りて合同練習や試合を行い、研鑽を積んだ。
※「JAPAN TALENT SQUADプログラム2026」参加選手

(若きタレントの育成にも熱心に取り組むエディー・ジョーンズHC)
「試合をすることが学ぶ唯一の方法です。ハードに練習して試合をすることで、自分たちがどこにいるのか、本当のフィードバックを得ることができる。そのサイクルが大事です」(ジョーンズHC)
昨年との違いは、今年は公募でも選手を募集した点だ。FWはポジション別に身長、体重などの体格、BKは立ち幅跳びなどの参加条件があり、自己PR動画やテキストの提出も求められた。
全国から30人ほどの応募があり、結果、SO大鶴誠(京都大学4年)、PR中尾優人(東海大学3年)の2人が、36名からなる今年のJTSスコッドに選出された(※11名のトレーニングスコッドにも公募で参加した白鴎大学、九州共立大学、日本文理大学の選手が名を連ねた)。
指揮官は「(トレーニングスコッドを含めて)3~4人くらい、普段はあまり試合を見ないような大学から来ていた。良い才能を持っている選手もいるが、フィジカル面ではほとんどの選手が発達途上。JTSプログラムは、そういう選手たちにとっても素晴らしい機会となる」と話す。
公募からU23日本代表に選出され、遠征にも参加したのは「最大のチャンスだ」と感じて応募したSO大鶴のみだったが、日本代表を目指す2部以下のリーグや地方大学の選手にとっては、大きな励みになっているに違いない。
◇今年もU23日本代表を編成。ターゲットはU20オーストラリア代表!
2~3月の合宿後、昨年に続いて今年もJTSプログラムの合宿に参加した選手たち(トレーニングスコッドも含む)からジョーンズHCらが35名(FW19名、BK16名)を選抜し、U23日本代表を編成。4月1~15日の日程でオーストラリア遠征を敢行した。なお昨年に続いて遠征に参加した選手は10名だった。
ジョーンズHCは「選手たちのレベルは昨年よりも高くなっている。突出した選手は少ないかもしれないが、全体的な水準は向上している。選手たちのトレーニングに対する姿勢は良く、ほとんどの選手が優れたフィジカルを備えている」と自信をのぞかせていた。
主将は昨年のU20日本代表でスキッパーを務めたNO8中谷陸人(同志社大学3年)、副将はFL中森真翔(筑波大学3年)とWTB白井瑛人(明治大学3年)と昨年の遠征にも参加した2人が指名された。リーグワン所属の選手は埼玉パナソニックワイルドナイツNO8舛尾緑(※立正大学在学中)のみだった。
昨年はU20オーストラリア代表などと対戦し1勝2敗と負け越したが、今年の遠征はほぼ同じ期間にU20オーストラリア代表だけでなく、U20フィジー代表、地元クラブと計4試合が組まれた。
ターゲットは昨年対戦し26-54で大敗したU20オーストラリア代表だった。ジョーンズHCは「日本代表はこれまで、ナショナルレベルでオーストラリア代表に勝ったことはない。だからこそ私たちはその最初のチームになりたい」と意気込んで渡豪した。
◇惜敗も今年はU20オーストラリア代表と対等に戦える姿を見せた!
4月4日に迎えた1戦目は、U20フィジー代表と対戦し、前半こそ24-27でリードされたが、後半、ジャパンらしくアタッキングラグビーを見せて48-39で勝利。9日に対戦したオーストラリア・ストックマンはフィジカル強度が高い中でも前半は19-7とリード、43-31で勝ちきった。
(第1戦 U20フィジー代表戦。副将WTB白井らがトライを挙げて逆転勝利を収めた)
(第2戦 オーストラリア・ストックマン戦。大きな相手にトライを重ねて勝利。写真はアタックするFB増山)
2日後の4月11日、遠征のターゲットとしていたU20オーストラリア代表と激突。攻撃では、ジャパンらしい高速アタックを披露し、守備では前に出るディフェンスが光り、前半は12-17で折り返した。
後半、相手陣内で何度か好機を掴むが、チャンスでトライを挙げられなかったことが響き24-38で敗れた。ただ、昨年よりもフィジカルで互角に戦う時間帯、シーンが増え、大いに成長した姿を見せた。

(第3戦 U20オーストラリア代表戦。昨年と違い、フィジカルで互角に戦えるシーンが増えたが惜敗した)
ジョーンズHCは惜しくも勝利できなかった要因を「ラインアウトでミスをし、(相手陣)5m前のモールで2回、トライを決めきれなかった」と唇を噛んだ。ただ選手たちの成長、試合に臨む姿勢には満足しており「(選手たちは)チャレンジが待っていたことを理解し、試合に勝つために、フィジカルなチャレンジを乗り越えないといけないとわかっていて、そのための準備をした」と称えた。
4月14日の遠征最終戦は、ランドウィックと対戦した。昨年31-36で惜敗した相手に攻撃ラグビーを貫いて38-21で快勝。副将の一人FL中森は「体の部分(の疲れ)は仕方ないですが、マインドセットで、U20オーストラリア代表と戦うくらいのマインドをチーム全体に求めたことが勝利につながった」と破顔した。

(第4戦ランドウィック戦。遠征最後の試合、身体的に疲れが残る中でも昨年は負けた相手に快勝した)
◇遠征は3勝1敗と勝ち越し。「選手たちの成長に満足」(ジョーンズHC)
U20オーストラリア代表にこそ勝利できなかったが、U23日本代表は、U20フィジー代表、ランドウィックなどに勝利し、今年は3勝1敗と勝ち越して帰国した。
今回がユース代表として初の海外遠征となったSO大鶴は「短い時間でしたが、桜のジャージーを着て試合に出ることは自分の目標の一つだったので嬉しかった」と言えば、同じくPR田代大介(明治大学4年)は「日本代表の速い展開ラグビーは自分のスタイルに合っていたので本当に楽しかった。今後はもちろん、ワールドカップで日本代表スコッドに入っていくことが目標です」と前を向いた。
昨年に続いて遠征に参加した副将のFL中森は「今年も海外勢と対戦して良い経験ができ、自分としても成長できた。ボールキャリーやモールは通用したし、今後も強みとして出していきながら、フィジカルやタックルなど課題だと感じている部分を改善していきたい」と先を見据えた。
司令塔として遠征4試合に先発し、日本代表候補にも選出されているSO伊藤龍之介(明治大学4年)は「まだまだ自分は代表に食い込むレベルではない。フィジカルが高い中で、いかに、いつも通りのプレーができるかを常に意識したい。日本(の大学レベル)の優しいラグビーではなく、海外の激しいラグビーに対し、常にゲインラインに仕掛けながらアタックできるようになっていきたい」と自らに言い聞かせるように話した。
最後に、ジョーンズHCは遠征を振り返ってこう総括した。「選手の成長にとても満足しています。特に個人の成長を見れば、日本代表で戦える選手を2~3名求めていたところ、そうした選手を見つけられた。PR八田優太、FL石橋チューカ(ともに京都産業大学4年)、HO大塚壮二郎(関西学院大学4年)、SH渡邊晴斗(近畿大学4年)、FL中森、みんなにチャンスがあると思います」
オーストラリア遠征を終え、35名の選手は各大学へと戻り、早速、春の大学シーズンを戦っている。
ワールドカップ開催を来年に控えた今年、ラグビー日本代表は7月から11月にかけてテストマッチを戦う予定だ。世界の強豪と戦うにあたり、日本代表の選手層を厚くするために、若き選手の台頭は欠かせない。
桜のジャージーを目指す若きタレントたちにはオーストラリア遠征で得た自信を次につなげて、次なる舞台での躍動を心待ちにしつつ、昨年のFB竹之下のように、日本代表まで一気に駆け上がる選手が現れることに大いに期待したい。
(文・斉藤健仁)

(遠征を3勝1敗と勝ち越して、大きな笑顔を見せる選手たち)



